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家庭用蓄電池システムの外観

蓄電池の火災リスクは実際どのくらい?公的データと安全な選び方【2026年版】

エネチョイス編集部

この記事の結論

リチウムイオン電池が原因の火災は増えていますが、消防庁が令和8年1月に公表した調査では、出火件数の上位を占めるのはモバイルバッテリー・電動工具・携帯電話機などの持ち運び製品で、家庭に据え付ける蓄電システムは製品別集計の項目にも挙がっていません。一方で、家庭用蓄電システムのリコール(発煙・発火のおそれ)は2022年以降も複数公表されており、リスクがゼロというわけではありません。JIS規格に基づくJET認証を取得した製品を選び、メーカー指定の条件で施工し、リコール情報と異常のサインを定期的に確認することが、現実的にできる対策です。

「蓄電池って火事になるんじゃないの?」——モバイルバッテリーの発火事故がニュースになるたび、そう感じる方は少なくありません。

公的データを確認すると、増えているリチウムイオン電池火災の中心は持ち運びできる小型製品で、家庭に据え付ける蓄電システムは統計の主役ではありません。ただし発煙・発火のおそれによるリコールは実際に複数公表されており、「リスクは小さいが、ゼロではない」というのが2026年8月時点の正確な言い方です。

この記事では、消防庁・経済産業省・東京消防庁・国民生活センターなどの一次情報をもとに、蓄電池の火災リスクの実像と、家庭でできる現実的な対策を整理します。

この記事でわかること

  • 消防庁の最新調査で見るリチウムイオン電池火災の実態(何が燃えているのか)
  • 家庭用の据置型蓄電池がモバイルバッテリーと構造的に違う点
  • 2022年以降に実際に公表された家庭用蓄電システムのリコール事例
  • JET認証・JIS規格・LFP電池という安全性の判断材料
  • 異常のサインと、火災を疑ったときに取るべき行動

【2026年8月19日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了し、新規申請はできません。次回の公募は未公表です。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業

蓄電池の火災リスクを公的データで確認する

リチウムイオン電池火災は増えている

消防庁が2026年1月29日に公表した「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果」によると、全国の消防機関が覚知したリチウムイオン電池等からの出火件数は次のように推移しています。

期間火災件数
令和4年(1〜12月)601件
令和5年(1〜12月)739件
令和6年(1〜12月)982件
令和7年(1〜6月)550件

出典: 消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表」(令和8年1月29日)(廃棄された電池を回収中の塵芥車およびごみ処理関連施設からの火災を除く)

件数だけ見れば右肩上がりで、不安になる数字です。ただし重要なのは**「何が燃えているのか」**です。

燃えているのは持ち運びできる製品が中心

同じ調査の製品別内訳(令和6年)は以下のとおりです。

製品出火件数(令和6年)
モバイルバッテリー290件
電動工具89件
携帯電話機85件
ポータブル電源54件
コードレス掃除機50件
電動アシスト自転車50件

出典: 消防庁 同調査結果

上位はすべて持ち運びできる製品です。この調査の製品別集計には、家庭に据え付ける蓄電システムという項目自体が設けられていません(「その他」に含まれる可能性は残ります)。

東京消防庁のデータも同じ傾向です。住宅内で発生したリチウムイオン電池関連火災は令和6年中に115件で過去最多となりましたが、内訳の最多はモバイルバッテリー35件、次いで電気カミソリ13件、携帯電話機10件。約6割が充電中に発生しています。

出典: 東京消防庁「住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災」

据置型の蓄電池がモバイルバッテリーと違う理由

統計上の傾向には理由があります。モバイルバッテリーと家庭用の据置型蓄電池では、置かれている条件が大きく異なります。

観点モバイルバッテリー等家庭用の据置型蓄電システム
物理的な衝撃落下・圧迫・カバンの中での変形が日常的固定設置で衝撃を受けにくい
温度環境夏の車内やこたつの近くなど過酷な場所に置かれるメーカー指定の動作温度範囲内に設置する前提
充電の制御非純正の充電器が使われることがある専用のパワーコンディショナーが充放電を制御
施工消費者が自分で扱う有資格者による電気工事と系統連系
認証PSEマークの確認が推奨されるJIS規格に基づく第三者認証が事実上の前提

消防庁も、リチウムイオン電池を使う際の注意点として「強い衝撃や圧力はNG」「高温になる場所は避けよう」を挙げています。また前掲の火災調査では、出火原因は製品ごとに異なり、モバイルバッテリーは外部衝撃・高温下での使用、電動工具は非純正バッテリーの使用、携帯電話機は外部衝撃・分解が多いと分析されています。据置型の蓄電池は、これらの要因の多くが構造的に発生しにくい使われ方をしています。

出典: 消防庁 リチウムイオン電池総合対策ポータルサイト「使うとき」 / 消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表」

たとえば2026年8月3日に日本発売が発表されたテスラ Powerwall 3は、容量13.5kWh・出力9.69kW、保証期間10年という仕様が公表されています。据置型の製品は、動作温度範囲や設置条件がメーカーの仕様書・施工要領書に明示され、その範囲内で使うことが前提になっています。設置予定場所がその範囲に収まるかどうかは、見積もりの段階で施工業者に確認してください。

蓄電池の安全設置イメージ

消防法上の位置づけ

火災予防条例における蓄電池設備の規制も、2023年5月31日公布の省令改正で見直されました。消防庁の解説によれば、規制対象の区分は「アンペアアワー・セル」から**「蓄電池容量(キロワット時)」**に変更され、次のように整理されています。

  • 蓄電池容量が10キロワット時以下のもの、および10キロワット時を超え20キロワット時以下で出火防止措置が講じられたものは、規制の対象から除外
  • 蓄電池容量20キロワット時以下の蓄電池設備は、消防長(消防署長)への届出を要しない

出典: 消防庁「消防の動き」2023年8月号(省令改正の概要)

一般的な家庭用蓄電池の容量はこの範囲に収まることが多く、届出が不要なケースが大半です。ただし条例は自治体ごとに定められるため、設置前に管轄の消防本部や施工業者に確認しておくと安心です。「規制対象外=安全が保証された」という意味ではない点にも注意してください。

実際に起きた家庭用蓄電システムのリコール事例

とはいえ「据置型なら心配いらない」と言い切ることはできません。経済産業省のリコール情報には、家庭用蓄電システムの事例が実際に公表されてきました。

リコール実施日事業者製品理由対策
2022年4月4日ニチコン家庭用蓄電システム ESS-U2M1 / U2M2 / U2MS / U4M1(2016年9月〜2021年6月販売の一部)電池モジュールから発煙する可能性対策品に交換
2022年6月27日(2023年4月3日に対象追加)オムロンソーシアルソリューションズ蓄電池ユニット KP-BU65-A / KP-BU98-B ほか 計21,134台蓄電池ユニットから発煙する可能性ソフトウェア更新
2024年1月18日京セラリチウムイオン蓄電システム「マルチDCリンクタイプ」LBN-0650 879台蓄電池ユニットから発煙・発火の可能性ソフトウェアの更新
2024年9月10日村田製作所All in One 蓄電池一体型システム MPR01S4023MR / MPR01S5535MR 357台筐体内の湿度が高くなり内部のフィルムコンデンサが発熱・溶融するおそれ点検・交換

出典: 各社のリコール告知ページ ニチコン / オムロンソーシアルソリューションズ / 京セラ / 村田製作所(いずれも経済産業省リコール情報に掲載された案件です)

ここから読み取れることは2つあります。

ひとつは、国内大手メーカーの製品でもリコールは起こりうるということ。もうひとつは、いずれも発煙・発火に至る前の段階で公表され、無償の交換やソフトウェア更新で対応されているということです。ソフトウェア更新で対策できる事例が複数あるのは、据置型の蓄電システムが充放電をきめ細かく制御している証拠でもあります。

だからこそ、消防庁も「定期的にリコール情報を確認」を購入後のポイントとして挙げています。消費者庁のリコール情報サイト、経済産業省のリコール情報、NITEのSAFE-Liteで、型番を控えて年に一度チェックする習慣をつけましょう。

出典: 消防庁 リチウムイオン電池総合対策ポータルサイト「買うとき」

なお、メーカーからの連絡を受け取るには販売店やメーカーへの設置登録が済んでいることが前提になります。設置時の書類は保管しておいてください。業者選びの基本は蓄電池業者の選び方でも解説しています。

火災リスクを下げる製品選び:認証と電池の種類

JET認証とJIS規格を確認する

日本で流通する定置用の蓄電システムは、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)の試験・認証が事実上の共通の物差しになっています。JETが扱う主な規格は次のとおりです。

規格対象
JIS C 8715-2産業用リチウム二次電池の単電池・電池システムの安全性要求事項(部品認証)
JIS C 4412低圧蓄電システム(S-JET認証)
JIS C 4441定置用大型蓄電システム(JETオリジナルの認証マーク)

出典: JET「リチウムイオン蓄電池、蓄電システム等の試験・認証サービス」

さらにJETは2023年5月15日から、JIS C 4441の**耐類焼性能試験に特化した「プロパゲーション試験認証」**を開始しています。これは1つの電池セルが熱暴走を起こしたときに、隣のセルへ連鎖しないかを確認する試験です。熱暴走の連鎖こそがリチウムイオン電池火災を大きくする要因なので、この認証の有無は安全性を判断する具体的な材料になります。

出典: JET「蓄電システムの『プロパゲーション試験認証』を開始しました」

LFP(リン酸鉄リチウム)という選択肢

正極材にリン酸鉄リチウム(LFP)を使う製品は、高温環境下での安定性が高いとして各社が採用を進めています。

具体的な公表例として、京セラは半固体クレイ型のEnerezza PlusII(5.7 / 11.4 / 17.1kWh)について、LFPと引火点の高い自社開発電解液の採用、JIS C 4441プロパゲーション試験認証の取得、第三者分析機関による消防法危険物確認評価試験での**「非危険物」判定**を公表しています。

ただし京セラ自身が「非危険物という判定結果は得られたが、あくまでも可燃物であり、自治体ごとに定められる火災予防条例の対象になる」と注記している点は見落とさないでください。LFPだから燃えない、という理解は正確ではありません。

出典: 京セラ「リチウムイオン蓄電システム Enerezza PlusII」

主要メーカーの製品スペックの横並び比較は家庭用蓄電池の比較【2026年版】、テスラ製品の詳細はPowerwall 3のレビューにまとめています。

見積もり時に確認したい5項目

確認項目見るポイント
第三者認証JET認証の有無(家庭用の据置型は主にJIS C 4412のS-JET認証)
熱暴走への備えJIS C 4441プロパゲーション試験認証の取得状況
動作温度範囲仕様書に記載された範囲と、設置予定場所の実際の環境が合っているか
屋外設置の耐候性防水・防塵の等級、耐塩害、浸水への配慮
リコール履歴と連絡体制過去の公表内容と、設置後の連絡先が明確か

なお、家庭用蓄電池の本体価格はメーカーがオープン価格としている例が多く、公式サイトに定価が掲載されていないのが一般的です。価格は販売店により異なるため、見積もりで確認してください。

設置場所・施工・その後の点検で差がつく

設置場所の考え方

製品側の安全設計がどれだけ優れていても、仕様の想定外に置けば意味がありません。仕様書に記載された動作温度範囲を守ること、直射日光が長時間当たり続ける面を避けること、浸水の可能性を検討することが基本です。

浸水については、ハザードマップで自宅の浸水想定を確認したうえで、施工業者と設置高さを相談するのが現実的です。屋外設置型でも、水没を前提とした設計にはなっていません。

施工と系統連系

蓄電池の設置は電気工事であり、太陽光発電と連系する場合は電力会社への手続きも伴います。メーカーが認定する施工要件を満たした事業者に依頼し、施工後の動作確認と、施工に対する保証の範囲を書面で確認しましょう。

「火災の危険がある」と不安をあおる点検商法に注意

安全性への不安は、悪質な訪問販売にとって格好の入口です。国民生活センターは2025年6月4日、「太陽光発電システムの点検商法が急増!」として注意喚起を行いました。全国の消費生活センター等に寄せられた「太陽光発電システムの点検商法」に関する相談件数は、2017年度の57件から2024年度は613件へと増加しています(同センターが集計しているのは太陽光発電システムに関する相談で、蓄電池単体の集計ではありません)。

出典: 国民生活センター「太陽光発電システムの点検商法が急増!」(2025年6月4日)

「点検が義務化された」「このままでは火災になる」といった説明で不安をあおり、その場での契約を迫るのが典型的な手口です。点検の要否はまずメーカーや設置業者に確認し、訪問時に即決しないことが最大の防御になります。手口の詳細は太陽光・蓄電池の詐欺・悪質商法で解説しています。

異常のサインと、火災を疑ったときの行動

消防庁は、リチウムイオン電池の異常を示す**「見逃し厳禁 5つのSOS」**を公表しています。

サイン具体的な状態
持てないほど熱い、充電中に異常に発熱する
本体が膨らんでいる、変形している
臭・音変な臭いがする、パチパチと異音がする
液体が漏れ出している
動作充電が急に終わる、突然電源が切れる

出典: 消防庁 リチウムイオン電池総合対策ポータルサイト「使うとき」

消防庁は、これらに該当したら「まだ動くから」と使い続けず、直ちに使用と充電を中止するよう呼びかけています。据置型の蓄電池に置き換えると、次の順序になります。

  1. 本体には触れず、リモコンまたは分電盤のブレーカーで運転を停止する
  2. 周囲の可燃物を離し、その場に人を近づけない
  3. 製品の型番と製造番号、症状を控えてメーカーの相談窓口または施工業者に連絡する
  4. 火や煙が出ている場合は、まず身の安全を確保して119番通報する。消防庁は「状況が許せば正しい方法で消火にあたり、無理な消火はせず、手に負えない場合はすぐに避難する」よう呼びかけています

日常的にできることは、モニターやアプリのエラー表示を見る習慣をつけること、そして屋外設置なら筐体の変形や液漏れの痕跡がないかを時々目視することです。異常のサインは、多くの場合いきなり火災になる前に現れます。

補助金の最新状況については国のDR補助金が終了した件と次回の見通しもあわせてご覧ください。

まとめ

  • 消防庁の令和8年1月公表の調査では、リチウムイオン電池等からの火災は令和6年に982件と増加傾向にあるものの、製品別の上位はモバイルバッテリー290件・電動工具89件・携帯電話機85件など持ち運び製品で、家庭に据え付ける蓄電システムは製品別の集計項目に挙がっていません
  • 一方で、家庭用蓄電システムの発煙・発火のおそれを理由とするリコールは2022年以降も複数公表されています。型番を控え、消費者庁・経済産業省・NITEのリコール情報を定期的に確認する習慣が有効です
  • 製品選びでは、JIS規格に基づくJET認証(家庭用の据置型は主にJIS C 4412のS-JET認証)と、熱暴走の連鎖を確認するJIS C 4441プロパゲーション試験認証の有無が具体的な判断材料になります。LFP採用製品も安定性が高いとされますが、可燃物であることに変わりはありません
  • 異常時は消防庁の「5つのSOS」(熱・形・臭や音・漏れ・動作)を目安に、本体に触れず運転を停止し、メーカーまたは施工業者へ連絡。火や煙が出ていれば119番通報して避難してください

よくある質問

Q.家庭用蓄電池が火災になる確率はどのくらいですか?

A.「据置型の家庭用蓄電池」を独立した区分として集計した公的な発生率の統計は公表されていません。消防庁が令和8年1月に公表した調査では、リチウムイオン電池等から出火した火災は令和6年で982件ですが、製品別の内訳はモバイルバッテリー290件、電動工具89件、携帯電話機85件などで、家庭用の据置型蓄電システムは項目として挙がっていません。ただし発煙・発火のおそれを理由とするリコールは実際に公表されているため、リスクがゼロというわけではありません。

Q.家庭用蓄電池の設置に消防署への届出は必要ですか?

A.消防庁が示す火災予防条例の考え方では、蓄電池容量20キロワット時以下の蓄電池設備は消防長(消防署長)への届出を要しないとされています。また蓄電池容量10キロワット時以下のもの等は規制の対象から除かれています。一般的な家庭用蓄電池の容量はこの範囲に収まることが多いですが、条例は自治体ごとに定められるため、設置前に管轄の消防本部や施工業者に確認しましょう。

Q.LFP(リン酸鉄リチウム)の蓄電池は安全性が高いのですか?

A.LFPは高温環境下でも安定性が高い正極材として各社が採用しています。たとえば京セラは半固体クレイ型のEnerezza PlusIIについて、LFPと引火点の高い自社開発電解液の採用、JIS C 4441プロパゲーション試験認証の取得、第三者分析機関による消防法危険物確認評価試験での「非危険物」判定を公表しています。ただし同社も「非危険物と判定されてもあくまで可燃物であり、火災予防条例の対象になる」と注記しています。

Q.蓄電池から異臭や異音がしたらどうすればよいですか?

A.消防庁は異常のサインとして「熱・形・臭や音・漏れ・動作」の5つを挙げ、該当したら直ちに使用と充電を中止するよう呼びかけています。家庭用蓄電池の場合は本体に触れず、リモコンや分電盤のブレーカーで運転を止め、メーカーの相談窓口または施工業者に連絡してください。火や煙が出ている場合は、まず身の安全を確保して119番通報してください。消防庁は、状況が許せば正しい方法で消火にあたり、無理な消火はせず手に負えない場合はすぐに避難するよう呼びかけています。

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