京セラの家庭用蓄電池は「エネレッツァ(Enerezza)」ブランドで展開されており、2026年8月時点の現行ラインナップは単機能型のEnerezza、マルチ入力型のEnerezza Plus、最新のEnerezza PlusⅡの3シリーズです。 共通する特徴は自社開発のクレイ型リチウムイオン電池(PlusⅡでは「半固体クレイ型」と表記)で、京セラは第三者分析機関の消防法危険物確認評価試験で「非危険物」と判定されたと公表しています(出典: 京セラ Enerezza PlusⅡ)。
ただし蓄電容量も自立運転時の出力も価格の表示方法もシリーズごとに違い、「京セラの蓄電池は◯kWhで◯万円」と一括りにはできません。この記事は公式の製品ページと仕様表PDFの数値だけで整理します。出典を確認できない実売相場や口コミの数字は扱いません。
【2026年8月19日時点】 国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(補助上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募開始し、2026年5月29日に交付申請額の合計額が予算に達したため公募終了しました。2026年8月時点で新規申請はできません。 次回公募は未公表です。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- エネレッツァ3シリーズの違い(単機能型 / マルチ入力型 / ハイブリッド型)
- 公式仕様表に載っている容量・初期実効容量・自立運転出力・寸法・質量
- 「半固体クレイ型」電池の安全性主張がどこまで裏付けのある話か
- 15年保証・20,000サイクルの条件と読み方
- 希望小売価格と、2026年8月時点の補助金の現在地
京セラの家庭用蓄電池は「エネレッツァ」3シリーズ
京セラの住宅用エネルギー製品サイトでは、家庭用蓄電システムとして次の3製品が掲載されています(出典: 京セラ 家庭用製品一覧)。
| シリーズ | 型式の例 | タイプ | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| Enerezza(エネレッツァ) | EGS-LM0550 / LM1100 / LM1650 | 単機能型 | 既設の太陽光パワコンをそのまま使う構成 |
| Enerezza Plus | EGS-MC0550 / MC1100 / MC1650 | マルチ入力型 | 太陽光・燃料電池・外部電源と連携 |
| Enerezza PlusⅡ | EGS-MC / ML / LM 0570・1140・1710 | マルチ入力型・ハイブリッド型・単機能型 | 最新シリーズ。3タイプ×3容量 |
ポイントは、最新のPlusⅡだけが「マルチ入力型・ハイブリッド型・単機能型」の3タイプを持つことです。太陽光パネルを同時新設するならハイブリッド型、既設の太陽光パワコンを使い続けるなら単機能型、というように既存設備に合わせて選べます。ハイブリッド型と単機能型の考え方そのものはハイブリッド蓄電池と単機能蓄電池の違いで整理しています。
型式の下4桁は容量です。Enerezza / Plusは0550=5.5kWh、1100=11.0kWh、1650=16.5kWh、PlusⅡは0570=5.7kWh、1140=11.4kWh、1710=17.1kWh。いずれも蓄電池ユニット1〜3台の構成で、後から積み増せます。
公式仕様表で見るエネレッツァのスペック
ここからは京セラが公開している仕様表PDFの数値です。カタログの宣伝文ではなく、型式ごとの仕様書に記載されている値を引用しています。
容量と初期実効容量
| 項目 | Enerezza(単機能型) | Enerezza PlusⅡ |
|---|---|---|
| 蓄電池定格容量 | 5.5 / 11.0 / 16.5kWh | 5.7 / 11.4 / 17.1kWh |
| 初期実効容量 | 4.7 / 9.4 / 14.1kWh | 5.0 / 10.1 / 15.2kWh |
| 蓄電池ユニット | 1台 / 2台 / 3台 | 1台 / 2台 / 3台 |
出典: Enerezza 仕様表(PDF)、Enerezza PlusⅡ 仕様表(PDF)
見落とされがちなのが初期実効容量です。カタログの「11.0kWh」は定格容量で、JIS C 4413で測る初期実効容量は9.4kWh。しかも仕様表には「実使用時の容量は各種損失をかけた容量となります」と注記されており、実際に使える量はここからさらに目減りします。補助金の算定にも初期実効容量が使われるため、比較はこちらの数字で並べるのが実態に近くなります。
出力と停電時の動作
| 項目 | Enerezza(単機能型) | Enerezza PlusⅡ |
|---|---|---|
| パワコン型式 | SBS-300 | MBS-591 |
| 定格出力(連系) | 3.0kW | 5.9kW |
| 自立運転出力 | 2.0kVA | 6.0kVA(片相3.0kVA) |
| 定格出力電圧 | 連系202V / 自立101V 単相2線式 | AC202V(単相2線式、単相3線に接続) |
| 電力変換効率 | 放電94% / 充電94% | 太陽光発電96.0%(定格出力時) |
| 運転時騒音 | 40dB以下 | 40dB以下 |
ここがシリーズ選択で最も効いてくる差です。単機能型のEnerezzaは自立運転が101V・2.0kVAで、停電時に使えるのは100V回路。オプションの「蓄電分電盤セットH」も仕様表上は「100V対応・特定コンセントタイプ」です。IHやエアコンなどの200V機器を停電時に動かしたいなら、この構成では要件を満たしません。
対してPlusⅡのパワコンはAC202V(単相2線式、単相3線に接続)で自立出力6.0kVA(片相3.0kVA)。オプションの「ERZP 自動切替盤 60AB / 100AB」(税抜300,000円 / 400,000円)も用意されています。ただし仕様表には「ERZP切替盤の配下へ太陽光発電システムやV2Hシステムを接続できません」と明記されているため、EVとの組み合わせは施工店に配線構成を確認してください。
蓄電池ユニット側にも定格電力の上限があります。PlusⅡは5.7kWhで連系1.5kW / 自立3.0kW、11.4kWhで連系3.0kW / 自立4.5kW、17.1kWhで連系4.5kW / 自立4.5kW。Enerezzaの最小構成(EGS-LM0550)は「入出力電力を約1.5kWに抑制します」と注記されています。最小容量を選ぶと出力も下がる点は要注意です。
サイズ・設置条件
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 蓄電池ユニット外形寸法 | W485 × H562 × D280mm |
| 蓄電池ユニット質量 | 約64kg(1台) |
| 使用温度範囲(Enerezza) | 周囲温度 −20〜+40℃ |
| 使用温度範囲(PlusⅡ蓄電池ユニット) | −10〜+45℃(設置温度範囲 −20〜+45℃) |
| 設置場所 | 屋内外設置(重塩害地域および−20℃以下の寒冷地は屋内のみ) |
| 充電目安時間(Enerezza) | 5.5kWh 約4時間 / 11.0kWh 約4.5時間 / 16.5kWh 約6時間(25℃条件、満充電まで) |
蓄電池ユニットは1台で約64kg、16.5kWh(3台)構成なら約192kgです。屋内なら床の耐荷重と搬入経路、屋外なら「直射日光が当たらない場所」を満たす設置面が要ります。現地調査で置き場所を確定してもらいましょう。
「半固体クレイ型」電池の安全性はどこまで確かか
エネレッツァの目玉は電池そのものの構造です。京セラは製品ページで、正負の電極層を従来の液体型リチウムイオン蓄電池の3〜5倍の厚さに設計でき、製造プロセスの簡素化と低コスト化を実現したと説明しています(出典: 京セラ Enerezza)。
安全性に関する主張は3つあり、それぞれに注記が付いています。注記まで含めて読むのが正しい評価の仕方です。
- 「世界初」: 注記は「半固体クレイ型蓄電池として。2019年10月 京セラ調べ」。第三者認定ではなく自社調査に基づく表現です
- 「発煙・発火件数ゼロ」: 注記は「2020年6月〜2025年10月時点での出荷実績において、発煙・発火の報告件数は0件です。2025年11月 京セラ調べ」。約5年半の出荷実績に対する報告ベースの数字です
- 「非危険物」: 第三者分析機関による消防法危険物確認評価試験で京セラの半固体クレイ型電極が「非危険物」と判定され、その結果により蓄電池ユニットとしても非危険物として取り扱われることになった、と説明されています
3つ目の「非危険物」判定は第三者分析機関の試験結果が根拠で、他2つより裏付けが強い主張です。屋内設置を検討している家庭には意味のある材料と言えます。
ただし「非危険物」はリスクがゼロという意味ではありません。消防庁はモバイルバッテリーなど小型のリチウムイオン電池使用製品について、衝撃や圧力による内部損傷・高温環境での異常反応に注意し、発熱・膨張・変形・異臭・異音・液漏れ・充電不具合があれば直ちに使用と充電を中止するよう呼びかけています(出典: 総務省消防庁 リチウムイオン電池の使用時の注意)。この注意喚起は家庭用蓄電池を直接の対象としたものではありませんが、膨張や異臭・異音といった異常のサインは共通します。据置型の蓄電池は自分で取り外せないため、異常に気づいたら運転を止めて施工店とメーカーに連絡するのが原則です。
保証とサイクル寿命の読み方
京セラの保証条件は公式ページに明記されています。
| 保証項目 | Enerezza(単機能型) | Enerezza PlusⅡ |
|---|---|---|
| 機器保証 | 15年 | 15年 |
| 容量保証 | 15年(維持率の記載なし) | 15年(維持率の記載なし) |
| 自然災害保証 | 10年(無償) | 10年 |
| リモコン | 5年保証 | 5年保証 |
出典: 京セラ Enerezza、京セラ Enerezza PlusⅡ
注意したいのは、Enerezza・Enerezza Plus・Enerezza PlusⅡのいずれの製品ページにも、容量保証の「維持率」が書かれていないことです。公表されているのは「容量保証15年」という期間だけで、容量が定格の何%を下回ったら保証対象になるのかは公式サイトからは読み取れません。契約前に保証書で維持率と免責条件を確認してください。
「定格容量の60%」という数字を見かけますが、これは容量保証の基準ではなくサイクル寿命の説明です。Enerezza PlusⅡの製品ページには「20,000サイクルを過ぎても約60%の電池容量を維持する性能」(Enerezza Plusは「20,000サイクル後でも約60%の電池容量を維持」)と記載され、その注記に 「京セラ所定の条件で充放電を繰り返し、定格容量の60%に劣化するまでの回数となります。あくまで目安の数値であり、実際はお客さまの設置状況や使用状況により異なります。またサイクル数を保証するものではありません。」 と明示されています。
つまり20,000サイクルも60%という数字も、保証値ではなく所定条件下の目安値です。契約で担保されているのは「容量保証15年」という期間までで、そこに維持率が紐づいているかどうかは公表資料からは確認できません。サイクル数の大きさで判断せず、容量保証の年数と維持率、保証の申し込みが別途必要かどうかを見積書と保証書で確認しましょう。
実際、Enerezza Plusの機器保証には「保証については別途お申し込みが必要です。お申し込みがない場合は、1年間の機器保証となります。」という条件が付いています。さらに同ページには 「1年間の機器保証の場合、自然災害保証は対象外となりますのでご注意ください。」 と書かれており、申し込みを忘れると機器保証が1年に縮むだけでなく、10年の自然災害保証まで失う設計です(出典: 京セラ Enerezza Plus)。ここは施工店任せにせず、引き渡し時に保証登録が完了しているかを確認しておきたい項目です。
価格と補助金の現在地
希望小売価格は公表されている
家庭用蓄電池はオープン価格のメーカーが多いなかで、京セラは希望小売価格を公表しています。
| 製品 | 容量 | 希望小売価格 |
|---|---|---|
| Enerezza(EGS-LM0550) | 5.5kWh | 3,036,000円(税込) |
| Enerezza(EGS-LM1100) | 11.0kWh | 5,236,000円(税込) |
| Enerezza(EGS-LM1650) | 16.5kWh | 7,436,000円(税込) |
| Enerezza Plus(EGS-MC0550) | 5.5kWh | 3,421,000円(税込) |
| Enerezza PlusⅡ 単機能型(EGS-LM0570) | 5.7kWh | 2,625,000円(税抜) |
| Enerezza PlusⅡ ハイブリッド型(EGS-ML0570) | 5.7kWh | 4,150,000円(税抜) |
| Enerezza PlusⅡ マルチ入力型(EGS-MC0570) | 5.7kWh | 4,350,000円(税抜) |
出典: 京セラ Enerezza、京セラ Enerezza Plus、Enerezza PlusⅡ 仕様表(PDF)
注意点が2つあります。ひとつはEnerezza / Plusは税込表示、PlusⅡは税抜表示で、そのまま並べると比較を誤ること。もうひとつは、これらは仕様表の注記にある屋外設置の場合の機器一式(蓄電池ユニット・パワコン・通信モデム・リモコン・ケーブル類など)の価格で、工事費は含まれていないことです。
そして最も重要なのは、実際の販売価格は販売店により異なり、公表されていない点です。公的な物差しとしては国のDR補助金の要件があり、令和7年度補正事業の公募要領では「蓄電システム購入価格と工事費の合計が、2025年度の目標価格以下であること」とされ、2025年度目標価格は設備費+工事費・据付費(税抜)で12.5万円/kWh(蓄電容量) でした(出典: SII 公募要領(PDF))。希望小売価格はこの水準を大きく上回るため、そのまま予算の目安にするのは適切ではありません。総額は見積もりで確認してください。見積書の読み方は蓄電池の見積書チェックポイントで解説しています。
補助金は「国は終了、自治体は継続」
国の令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業は、補助単価3.45万円/kWh(初期実効容量)と工事費3/10以内、1申請あたりの補助上限60万円という内容でしたが、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。2026年8月時点で新規申請はできません。 経緯と次回の見通しはDR補助金の終了と次回公募にまとめています。
自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は蓄電容量10万円/kWh(助成対象経費(税抜)が上限)で、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸。DR実証に参加する場合はエネルギーマネジメント機器およびIoT関連機器を設置すれば1台あたり15万円、設置しなければ10万円が加算されます。さらに令和8年10月1日以降に事前申込をする場合はSIIが登録している機器に限るという要件が加わります(出典: クール・ネット東京)。申請予定の型番が登録リストにあるかは事前にSIIの機器一覧で確認してください。制度の全体像は東京都の蓄電池補助金にまとめています。
なお2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。売電単価が下がるほど、自家消費に回す蓄電池の相対的な価値は上がります。
京セラ蓄電池が向いている家庭・向いていない家庭
公式仕様から読み取れる範囲で整理すると、次のようになります。
向いている家庭
- 屋内設置を検討していて、電池そのものの安全性評価を重視したい(消防法の危険物確認評価試験で「非危険物」と判定という第三者試験の裏付けがある)
- 5.5kWh(PlusⅡは5.7kWh)単位で、後から2台目・3台目を積み増していきたい
- 15年の機器保証・容量保証という長期の条件を重視する
- 太陽光に加えて燃料電池や外部電源も組み合わせたい(マルチ入力型のPlus / PlusⅡ)
向いていない・要確認の家庭
- 停電時に200V機器を使いたいのに、単機能型Enerezza(自立101V・2.0kVA)で提案されている
- 最小容量で導入しようとしている(EGS-LM0550は入出力電力を約1.5kWに抑制、PlusⅡ 5.7kWhは連系1.5kW / 自立3.0kW)
- ERZP自動切替盤の配下にV2Hや太陽光を接続する前提で計画している(仕様表で接続不可と明記)
- 起動電力の大きい家電を停電時に確実に動かしたい(仕様表に「起動時の電力が大きい家電製品や消費電力が大きい家電製品は、機種により動作しない場合があります。(例:掃除機、遠赤外線ヒーター、洗濯機、ポンプ、電子レンジ、電気ストーブ、エアコン、冷蔵庫等)」と注記)
他メーカーとの比較では、2026年8月3日に日本発売されたテスラ Powerwall 3が13.5kWh・9.69kW・保証10年、価格は非公表です。容量と出力で選ぶか、15年保証と積み増し設計で選ぶかという判断になります(テスラ Powerwall 3レビュー)。
なお蓄電池は訪問販売のトラブル相談が増えている分野です。国民生活センターによると、太陽光発電システムの訪問販売に関するPIO-NET相談件数は2023年度304件、2024年度613件と増えています(出典: 国民生活センター(2025年6月4日公表))。その場で契約せず、型番と保証条件を持ち帰って比較しましょう。
まとめ
- 京セラの家庭用蓄電池はエネレッツァ3シリーズ。容量は5.5〜16.5kWh(PlusⅡは5.7〜17.1kWh)、蓄電池ユニット1〜3台で構成します
- 「非危険物」判定は第三者分析機関の消防法危険物確認評価試験に基づくもの。「世界初」「発煙・発火件数ゼロ」は京セラ調べの表現です
- 保証は機器・容量とも15年。ただし容量保証の維持率は公式サイトに記載がなく、保証書での確認が必要です。よく見る「20,000サイクル・約60%」はサイクル寿命の目安値で、保証値ではありません
- 希望小売価格は公表されていますが工事費は別。実売価格は販売店により異なります。国のDR補助金は2026年5月29日に公募終了し、2026年8月時点で新規申請はできません
停電時に何を動かしたいかで選ぶべきシリーズが変わります。型番・自立運転出力・保証条件の3点を明記した見積書を複数社から取り、条件をそろえて比較してください。