長州産業の「スマートPVマルチ」は、1台のパワーコンディショナに対して蓄電容量3種類 × 全負荷・特定負荷・単機能の3タイプを組み合わせる、構成の自由度が高い蓄電システムです。 そして、メーカー希望小売価格が公式カタログに税込で明記されているため、見積書の金額を突き合わせる基準を持てます。
この記事では、公式サイトとカタログで確認できた仕様・価格・保証だけを使って整理します。カタログに載っていない数値(充放電サイクル回数など)は「載っていない」とそのまま書きました。
【2026年8月19日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は、2026年5月29日に交付申請額が予算に達して公募終了しています。2026年8月時点で新規申請はできません。次回公募は公表されていません。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- スマートPVマルチの蓄電容量・実効容量・寸法・質量(公式カタログの数値)
- 全負荷 / 特定負荷 / 単機能で停電時にできることがどう変わるか
- メーカー希望小売価格(税込)と、そこに含まれていない費用
- 15年保証・30年保証・10年施工保証の対象範囲と条件
- 導入前に確認したい設置条件と期限の制約
長州産業はどんなメーカーで、蓄電池は何を出しているか
長州産業株式会社は、山口県山陽小野田市に本社・工場を置く1980年10月設立のメーカーです。資本金4億1000万円、従業員880名。太陽光発電システムと環境機器のほか、有機ELデバイスや半導体製造装置、水素エネルギー機器なども手がけています(出典: 長州産業 会社概要)。
太陽光・蓄電システムの製品情報は専用サイト cic-solar.jp にまとまっています。2026年8月時点で公開されている蓄電システムは次の4系統です。
| 製品名 | 蓄電容量 | カタログ |
|---|---|---|
| Smart PV multi(第1世代) | 6.5 / 9.8 / 16.4kWh | spvm_260518 |
| Smart PV multi(第2世代) | 6.3 / 6.5 / 9.7 / 12.7 / 13.0kWh | spvm2_260518 |
| Smart PV plus | 7.04 / 14.08kWh | spvp_240710 |
| Smart PV plus | 7.7 / 15.4kWh | spvp_260518 |
公式表記は「Smart PV multi」、カタログ本文では「スマートPVマルチ」です。以下は情報がもっとも詳しい第1世代(6.5 / 9.8 / 16.4kWh)を中心に見ていきます。
スマートPVマルチの仕様を公式カタログで確認する
蓄電池ユニット
| 項目 | CB-LMP65A2 | CB-LMP98A2 | CB-LMP164A2 |
|---|---|---|---|
| 蓄電池容量 | 6.5kWh | 9.8kWh | 16.4kWh |
| 実効容量 | 5.9kWh | 8.8kWh | 14.8kWh |
| 種類 | リチウムイオン電池 | 同左 | 同左 |
| 公称電圧 | DC102.76V | DC154.14V | DC256.9V |
| 外形寸法(横×高さ×奥行き) | 490×847×147mm | 490×741×295mm | 490×1010×295mm |
| 質量 | 約65kg | 約102kg | 約150kg |
| 充電回復時間 | 約3時間(25℃・満充電まで) | 同左 | 同左 |
| 使用周囲温度 | -10〜45℃(結露・氷結なきこと) | 同左 | 同左 |
注目したいのは実効容量です。表記の「6.5kWh」がそのまま使えるわけではなく、実際に出し入れできるのは5.9kWh。他社と比べるときは、カタログ容量ではなく実効容量で揃えると実態に近づきます。
設置環境は「海岸および汽水域から500mを超える屋外設置、または屋内設置」と定められており、海に近い立地では重塩害対応タイプが必要です。質量も16.4kWhで約150kgあり、屋外に自立設置する場合は基礎(オプション・税込16,500〜95,700円)が要ります。
マルチ蓄電パワーコンディショナ(PCS-RP2A / PCS-RPS2A)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最大充放電電力 | CB-LMP164A2:5.9kW / CB-LMP98A2:4.0kW / CB-LMP65A2:2.5kW |
| 太陽光入力(ハイブリッド時) | 最大6.6kW・DC450V |
| 電力変換効率 | 蓄電池側 放電95.0〜96.0%・充電95.0〜95.5%(容量により異なる) / 太陽光側 95.0%(定格出力時) |
| 自立運転時の定格出力 | 単機能・ハイブリッド:2.0kVA / ハイブリッド(トランスユニット接続時):4.0kVA |
| 外形寸法 | 450×562×232mm(ケーブルボックス含む)、本体 約21kg |
| 設置場所・取付け | 屋外・壁掛け(ネジ止め) |
| 使用周囲温度 | -20〜50℃ |
| 保護構造 | IP55(一般タイプ)/ IP66(重塩害対応タイプ) |
ハイブリッド構成では太陽光の直流を最大6.6kWまで取り込めます。ハイブリッド型と単機能型の違いはハイブリッド蓄電池と単機能蓄電池の違いで解説しています。
なお、充放電サイクル回数はカタログの仕様一覧に記載がありません。長期の劣化は、後述の「15年・初期の60%」という保証条件で読むのが実務的です。
停電時に何が使えるか:全負荷・特定負荷・単機能の違い
同じ蓄電池ユニットでも、周辺機器の組み合わせで停電時の使い勝手が大きく変わります。
| タイプ | 追加構成 | 自立運転時の最大出力 | 停電時に使える範囲 |
|---|---|---|---|
| 全負荷対応型ハイブリッド | PVユニット+トランスユニット+全負荷用分電盤 | 4.0kVA(夜間は最大2.5kVA) | 家中のすべての回路。エアコン・IH調理器・エコキュート等の200V機器も使用可 |
| 特定負荷対応型ハイブリッド | PVユニット+特定負荷用分電盤 | 2.0kVA | あらかじめ決めた回路の100V機器 |
| 単機能 | 特定負荷用分電盤 | 2.0kVA | あらかじめ決めた回路の100V機器 |
ここで見落とせないのが、全負荷タイプの4.0kVAに付いた注記です。カタログのシステム構成表には、停電時の交流側最大出力4.0kVAについて「夜間及び天候により太陽光発電の発電量が十分でない場合、最大2.5kVAになります」と書かれています。あわせて「自立出力として蓄電池からの放電出力だけでなく、一部は太陽光からの出力が必要な場合があります」との注記もあります。つまり4.0kVAは太陽光が発電している日中の値で、夜間の停電では2.5kVAが上限ということです。200V機器を停電対策の軸に据えるなら、この差を前提に容量と構成を決めたいところです。
またカタログには「無停電電源装置(UPS)ではありません。切替操作時に瞬断が発生します」との注記もあります。停電の瞬間もパソコンが落ちない、という製品ではありません。
使用時間の目安もカタログに載っています。全負荷対応型・9.8kWhの例では、冷蔵庫(約100W)24時間、照明(約180W)10時間、テレビ(約160W)4時間、エアコン(約600W)2時間、IH調理器(約1000W)1時間などを「合わせて」使えるとされています。ただしこれは新品の蓄電池ユニットがフル充電されている場合の試算で、機器の動作を保証するものではないと注記されています。
後からハイブリッド・全負荷に変更できる
単機能で導入しておき、既設の太陽光パワコンが故障した時点でPVユニットに置き換えてハイブリッド化、さらにトランスユニットを追加して全負荷対応型にする、という段階的な導入がカタログで案内されています。
ただしPVユニット・トランスユニットの追加は、マルチ蓄電パワーコンディショナの設置から5年以内という条件付きです。単機能から入るなら、5年というタイムリミットを念頭に置いてください。
価格:メーカー希望小売価格が公開されている
長州産業はカタログにメーカー希望小売価格(税込)を掲載しています。以下は「機器セット+タイプ別必須別売品セット+必須別売品」の合計(標準仕様)です。
| タイプ | 6.5kWh | 9.8kWh | 16.4kWh |
|---|---|---|---|
| 全負荷対応型ハイブリッド | 5,110,600円 | 5,749,700円 | 8,214,800円 |
| 特定負荷対応型ハイブリッド | 4,134,900円 | 4,774,000円 | 7,239,100円 |
| 単機能 | 3,137,200円 | 3,776,300円 | 6,241,400円 |
いずれも税込・標準仕様です。重塩害仕様は別価格で、たとえば全負荷対応型9.8kWhは6,065,400円。出典: Smart PV multi カタログ
第2世代は機器セット(パワコン+蓄電池ユニット+ゲートウェイ)の価格が公開されており、6.5kWh 2,963,400円、9.7kWh 3,602,500円、13.0kWh 5,025,900円(一般タイプ・税込)です。ただしこれは機器セット単体の価格で、上の表(分電盤やケーブル類を含んだシステム合計)とは範囲が違います。世代間で金額を並べて比べないでください。
この価格をそのまま予算にしてはいけない理由
重要なのは、カタログ裏表紙に書かれた次の一文です。
本カタログ掲載商品の価格には、配送料・設置調整費・工事費、使用済み商品の引き取り費等は含まれておりません。
つまり上の表は工事費が入っていない定価です。家庭用蓄電池は販売施工店が独自に価格設定するため、実際の契約金額はこの表の数字とは異なります。最終的には複数社の見積もりで判断してください(見積書チェックリスト)。
なお、オプションの電力計測ユニット(KP-GWAP-MUBP)は税込110,000円、表示ユニット(KP-GWAP-D)は税込88,000円で、追加費用になります。
保証とネットワーク機能
保証の対象範囲
長州産業の長期保証制度は次の4本立てです。
| 保証 | 期間 | 対象 |
|---|---|---|
| 構成機器保証 | 15年 | マルチ蓄電パワーコンディショナ、蓄電池ユニット、PVユニット、トランスユニット、特定負荷用分電盤、全負荷用分電盤 |
| ゲートウェイ・電力計測ユニット | 10年 | マルチ蓄電システム用ゲートウェイ、電力計測ユニット(ゲートウェイの液晶部は2年) |
| 太陽電池モジュール出力保証 | 30年 | 1年目99%、2〜25年目は前年比0.375%減、26〜30年目は90%固定 |
| 施工保証(雨漏り保証含む) | 10年 | 太陽電池モジュール設置部からの雨漏り |
出典: Smart PV multi カタログ 安心の長期保証制度
蓄電池ユニットの15年保証は「蓄電可能容量(初期の60%)が保証の対象」と明記されています。15年間劣化しないという意味ではなく、初期容量の60%を下回った場合に保証が働く設計です。
条件面では以下の記載も見逃せません。
- 保証の適用には、長州産業が認定した施工認定店による施工が必須
- 保証書は内容を確認して保管が必要(提示できない場合は保証が適用されない)
- 保証開始日は電力会社との電力受給開始日
- 他メーカーの太陽電池モジュールおよびその他部材は保証の対象外
施工店が長州産業の認定店かどうかは、契約前に確認しておきたいポイントです。
ネットワーク機能
インターネット環境と無料のWeb登録を前提に、以下の機能が用意されています。
- AI機能(夜間充電量の制御): 翌日の天候情報に基づき、晴れ予報なら夜間充電を減らし、雨・曇りなら増やす(グリーンモード)
- AI機能(気象警報との連動): 気象警報が発令されると、満充電になるよう自動で充電を開始
- 遠隔確認機能・見守り機能: HEMS等の追加機器なしで発電・消費・充放電をWebで確認でき、異常時はメールで通知
- スマホアプリ: 「エネルギーシステムコントローラ」でモニタリングと設定
運転モードはグリーンモード・経済モード・安心モードの3種類です。天候連動の自動制御は搭載されているため、「長州産業には自動制御機能がない」という説明は事実と異なります。
導入前に確認したい注意点と、補助金の現在地
事実ベースの注意点
公式カタログから読み取れる確認ポイントを整理します。
- サイズと重量: 16.4kWhは約150kg・490×1010×295mm。屋外自立設置には基礎(オプション・税込16,500〜95,700円)が必要になる場合があります
- 設置環境の制約: 一般タイプの屋外設置は「海岸および汽水域から500mを超える」場所が条件です(屋内設置は距離の条件なし)。500m以内で屋外に置くなら重塩害対応タイプが必要で、9.8kWh全負荷の場合は標準仕様5,749,700円に対し6,065,400円と価格が上がります
- 温度条件: 蓄電池ユニットの使用周囲温度は-10〜45℃(第1世代)。寒冷地や高温になる場所の可否は施工店に確認を
- サイクル回数は非公開: 仕様一覧に記載がなく、他社と「○○回」で横並び比較できません
- UPSではない: 停電時の切替で瞬断が発生します
- 拡張の期限: PVユニット・トランスユニットの後付けはパワコン設置から5年以内
- 保証は認定店施工が前提: 施工店選びが保証の有無に直結します
なお、蓄電池を訪問販売で契約した場合、法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録によりクーリング・オフができます(出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド 訪問販売)。
補助金は「国が止まって、自治体が動いている」状態
2026年8月19日時点の状況は次のとおりです。
- 国: 令和7年度補正のDR家庭用蓄電池事業(上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募開始、2026年5月29日に予算到達で公募終了。新規申請はできません(SII)。経緯はDR補助金の終了と次回の見通しへ
- 東京都: 令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸(参加時は加算あり)。2026年10月1日以降はSIIの令和8年度登録済製品一覧に登録された機器のみが助成対象(クール・ネット東京)。詳細は東京都の蓄電池補助金へ
2026年度のFIT買取価格(10kW未満)は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhです(資源エネルギー庁)。売電収入より、自家消費でどれだけ買電を減らせるかが軸になります。
向いている家庭・向かない家庭
向いている家庭
- 停電時に200V機器(エアコン・IH・エコキュート)を使いたい → 全負荷対応型(自立4.0kVA、ただし夜間・悪天候時は最大2.5kVA)
- 初期費用を抑え、将来ハイブリッド化・全負荷化したい → 単機能から段階導入(5年以内)
- 定価が公表されている製品で、見積もりの妥当性を判断したい
向かない・要検討の家庭
- 設置スペースが狭い、屋外に基礎を作れない(特に16.4kWh・約150kg)
- 海岸や汽水域から500m以内に屋外設置したいが、重塩害仕様の追加コストを許容しにくい
- 施工業者を価格だけで選びたい(保証適用に認定店施工が必要なため)
他メーカーとの比較は2026年の蓄電池比較もあわせてご覧ください。参考までに、2026年8月3日に日本で販売開始されたテスラ Powerwall 3は13.5kWh・定格出力9.69kW・保証10年で、価格は非公表(設置は2026年9〜10月以降の見込み)です。容量の刻みや保証年数の軸で見ると、長州産業とは性格の異なる製品です。
まとめ
- 6.5 / 9.8 / 16.4kWh(実効5.9 / 8.8 / 14.8kWh)に、全負荷・特定負荷・単機能の3タイプを組み合わせる蓄電システム。停電時の自立出力は全負荷4.0kVA(夜間・悪天候時は最大2.5kVA)、特定負荷・単機能2.0kVA
- メーカー希望小売価格が公開されている(標準仕様9.8kWhで全負荷5,749,700円・単機能3,776,300円・税込)。工事費は含まれないため、支払額は複数社の見積もりで確認を
- 保証は構成機器15年(蓄電池は初期容量の60%)・モジュール出力30年・施工10年。適用にはメーカー認定店による施工が条件
- 補助金は2026年8月時点で国のDR事業が終了し、自治体の制度が中心。10月以降は対象機器の登録要件が変わるため、型番単位で確認を