家庭のカーボンニュートラルを考えるとき、最初にやることは「削減アクションを並べること」ではなく「自宅のCO2がどこから出ているかを知ること」です。 環境省の2024年度確報値によれば、家庭部門のCO2排出量1億4,600万トンのうち68.7%が電力由来。ガスや灯油ではなく、電気の使い方が主戦場だとデータが示しています。
この記事では、環境省・資源エネルギー庁・国土交通省・SII・東京都・国民生活センターなどの一次資料に載っている数値だけを並べ、出典はその都度示します。裏取りできない削減率や費用相場は載せていません。
【2026年8月25日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に「交付申請額の合計額が予算に達したことを確認したため」公募終了しています。次回公募は未公表です。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- カーボンニュートラルの公式な定義と、家庭部門に置かれている削減目標
- 家庭のCO2がどのエネルギー・どの用途から出ているかの最新実数
- 費用をかけずにできる行動の、公的資料に載っている条件付きの削減量
- 断熱・太陽光・蓄電池が効く理由と、2026年度の売電単価
- 2026年8月時点で使える制度と使えない制度
カーボンニュートラルとは何か、家庭には何が求められているか
環境省はカーボンニュートラルを「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」と定義しています。ゼロにするのは「排出そのもの」ではなく「排出から吸収を差し引いた正味の量」です(出典: 環境省 脱炭素ポータル カーボンニュートラルとは)。
日本は2020年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言し、そこへ至る中間目標として2030年度に2013年度比46%減、2035年度に同60%減、2040年度に同73%減を掲げています。2024年度の温室効果ガス排出・吸収量は約9億9,400万トン(CO2換算)で、2013年度比28.7%減。2013年度以降の最低値で、初めて10億トンを下回りました(出典: 環境省 2024年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(概要))。
そのなかで家庭部門に置かれている目標は、**2030年度に排出量7,000万トン(2013年度比66%減)**です。この水準は「部門別で最大の削減率目標」だと説明されています(出典: 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2025」、スマートライフおすすめBOOK 2026年度版掲載)。
一方、2024年度の家庭部門の実績は1億4,600万トンです。すでに2013年度比29.9%減まで来ていますが、目標の7,000万トンまではさらに半分以下にする必要があります。参考までに、2024年度の温室効果ガス総排出量10億4,600万トン(吸収量を差し引く前・全ガス合計)と並べると家庭部門は約14%にあたります。ただしこれは上記2資料の数字からの単純計算で、環境省がこの割合を明示しているわけではありません。
家庭のCO2はどこから出ているのか
2024年度の家庭部門のCO2を、エネルギー種別に分解すると次のようになります(出典: 環境省 2024年度 家庭部門におけるエネルギー起源CO2)。
| エネルギー種 | 2024年度のCO2排出量 | 家庭部門に占める割合 | 2013年度比 |
|---|---|---|---|
| 電力 | 1億トン | 68.7% | ▲32.5% |
| 都市ガス | 2,010万トン | 13.7% | ▲6.8% |
| 灯油 | 1,620万トン | 11.1% | ▲36.0% |
| LPG | 950万トン | 6.5% | ▲27.0% |
| 地域熱供給 | 6万トン | 0.04% | ▲16.0% |
| 合計 | 1億4,600万トン | 100% | ▲29.9% |
電力が約7割です。しかも2013年度からの削減幅のうち最も大きいのは電力(4,800万トン減、32.5%減)で、電源の低炭素化と省エネ機器の普及が効いています。家庭部門の電力消費量は2024年度に2,520億kWhで、2013年度から12.0%減りました。
世帯当たりで見ると用途の優先順位が見える
同じ資料の世帯当たりの数字は、さらに実感に近いものです。2024年度の世帯当たりCO2排出量は2,390kgCO2(2013年度比36.0%減、2023年度比1.5%減)。用途別の内訳は次のとおりです。
| 用途 | 世帯当たりCO2排出量 | 構成比 | 2013年度比 |
|---|---|---|---|
| 照明・家電製品等 | 1,040kgCO2 | 43.8% | ▲46.9% |
| 暖房用 | 550kgCO2 | 23.2% | ▲19.8% |
| 給湯用 | 460kgCO2 | 19.4% | ▲32.6% |
| 厨房用 | 180kgCO2 | 7.7% | ▲26.3% |
| 冷房用 | 140kgCO2 | 5.9% | +4.8% |
照明・家電製品等が4割超で最大で、2013年度からの削減が最も進んだのもここ(46.9%減)です。省エネ家電とLEDの普及が効いたと考えられます。一方、冷房用だけが2013年度比で増えています(+4.8%)。夏の高温化を踏まえると、冷房は削るより効率の良い機器で受け止めるほうが現実的です。
なお、マイカーのガソリンは家庭部門ではなく運輸部門に計上されます。「家庭のCO2」の内訳に自動車を混ぜた表を見かけますが、国の統計上は別勘定です。
エネルギー消費量ベースでも傾向は同じで、2023年度の世帯当たりエネルギー消費28,006MJのうち動力・照明他34.2%、給湯27.7%、暖房24.2%、ちゅう房9.7%、冷房4.2%です(資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版)」)。
費用をかけずに効く行動と、公表されている実測値
「エアコンを1度変えると約10%の省エネ」といった丸めた数字がよく流通していますが、公的資料に載っている試算は条件付きの実数です。以下はすべてスマートライフおすすめBOOK 2026年度版(企画・制作は一般財団法人家電製品協会。編集ワーキンググループに資源エネルギー庁と環境省が参加、当該ページの出典表記は資源エネルギー庁ウェブサイト)の掲載値で、電気代は電力料金目安単価31円/kWh(税込)で換算されています。
- 暖房の設定温度を21℃から20℃に(外気温6℃、2.2kWのエアコン、9時間/日)→ 年間で電気53.08kWhの省エネ、CO2削減量25.9kg、約1,650円の節約
- 暖房を1日1時間短縮(設定温度20℃)→ 年間40.73kWh、CO2 19.9kg、約1,260円
- 冷房を1日1時間短縮(設定温度28℃)→ 年間18.78kWh、CO2 9.2kg、約580円
- フィルターを月に1〜2回清掃(目詰まりした2.2kWエアコンとの比較)→ 年間31.95kWh、CO2 15.6kg、約990円
照明の交換効果も同資料に条件付きで示されています(年間点灯時間2,000時間=1日5〜6時間)。
- 8畳用の蛍光灯シーリングライト(68W)→ LEDシーリングライト(34.9W): 年間消費電力量136kWh → 69.8kWh、約49%省エネ、約2,050円おトク
- 白熱電球(54W)→ 電球形LEDランプ(7.5W): 108kWh → 15kWh、約86%省エネ、約2,880円おトク
行動の見直し1つあたりの削減量は、年間で数十kg-CO2の規模です。世帯当たり2,390kgCO2に対して数%。積み上げる価値はありますが、これだけで家庭部門の目標水準に届くわけではなく、設備側を動かす話が必要になります。
設備で動かす:断熱・給湯・太陽光・蓄電池
窓の断熱が最初に来る理由
冷暖房のエネルギーは、その多くが開口部から出入りしています。同じ資料に引かれている国土交通省の値によれば、夏の冷房時(昼)は73%の割合で熱が入り、冬の暖房時は58%の割合で熱が流出します。だから窓・ドアの断熱改修は、暖房用(世帯当たり550kgCO2)と冷房用(同140kgCO2)の両方に同時に効きます。既存住宅の対策としては、窓の複層ガラス化や内窓の追加、屋根・天井への断熱材敷き詰め、外壁の断熱施工が挙げられています。
給湯は機器の効率がそのまま効く
給湯用は世帯当たり460kgCO2、エネルギー消費ベースでは27.7%を占める大きな塊です。ヒートポンプ式給湯機やハイブリッド給湯機など、高効率機器への置き換えが直接効きます。機器の省エネ性能は統一省エネラベル(温水機器ラベル)で比較できます。
太陽光発電は「売る」より「使う」が前提の時代
住宅用(10kW未満)太陽光発電の国内導入件数は、2024年度で累計358.3万件に達しています(出典: 一般社団法人太陽光発電協会、スマートライフおすすめBOOK 2026年度版掲載)。
ただし経済性の構造は変わりました。2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。一方、省エネ試算に使われる電力料金目安単価は31円/kWh(税込・全国家庭電気製品公正取引協議会)です。つまり買う電気の単価のほうが売電単価より高く、余剰を売るより自分で使うほうが単価の面で有利という関係で、5〜10年目の8.3円/kWhではその差が決定的になります。自家消費率の考え方は太陽光の自家消費を増やす方法で解説しています。
蓄電池は自家消費率を引き上げる装置
蓄電システムは、昼に発電した電気をためて夜に使う、あるいは電気料金の安い時間帯に充電して昼に使う設備です。停電時に使える範囲は構成によって異なり、特定負荷分電盤につないだ機器だけが使える構成と、全負荷型があります。
家庭用蓄電池の本体価格は、メーカーがオープン価格としていることが多く、公式サイトに記載がないのが一般的です。価格は販売店の見積もりで確認するという前提で検討してください。容量・保証年数・容量保証の判定値といった契約上の条件は蓄電池の寿命と保証で公式表記のまま比較しています。
新築ならZEH水準、2026年度の補助額
SIIのパンフレットはZEHを「外皮の断熱性能の大幅な向上と、高効率な設備・システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネを実現(省エネ基準比20%以上)。その上で、再エネを導入して、年間の一次エネルギーの収支をゼロとすることを目指した住宅」と説明しています。令和8年度ZEH支援事業の交付要件では、『ZEH』は強化外皮基準(UA値は1・2地域0.4W/m2K以下、3地域0.5以下、4〜7地域0.6以下)を満たしたうえで、再エネを除く一次エネルギー消費量削減率20%以上、再エネ等を含めて100%以上。『ZEH+』は削減率30%以上かつ外皮基準が断熱等性能等級6以上です(出典: SII 令和8年度ZEH補助金パンフレット)。
令和8年度の新築戸建ZEHの補助額は次のとおりです。
| 区分 | 補助額 |
|---|---|
| 『ZEH』 | 1〜3地域 55万円/戸、4〜8地域 45万円/戸 |
| 『ZEH+』 | 1〜4地域 90万円/戸、5〜8地域 80万円/戸 |
| 追加:蓄電システム(初期実効容量5kWh以上) | 上限20万円/戸 |
| 追加:EV(PHEVを含む)の充電設備または充放電設備 | 上限10万円/戸 |
| 追加:高度エネルギーマネジメント | 定額2万円/戸 |
| 追加:昼間に沸き上げをシフトする機能を有する給湯機 | 定額2万円/戸 |
パンフレットには補助額の例として、『ZEH+』の6地域で蓄電システムと高度エネマネを導入した場合に最大102万円という記載があります。公募は先着方式(先着順・都度交付)で、新築戸建ZEHの単年度事業の公募期間は2026年5月21日10時から12月11日17時までです(出典: SII ZEH補助金 新築戸建住宅)。
新築注文住宅のZEH比率は2024年度で42.6%。内訳はハウスメーカー76.7%、一般工務店25.2%と差が大きく、依頼先によって選択肢が変わります(出典: 環境共創イニシアチブ「ネット・ゼロ・エネルギーハウス実証事業調査発表会2025資料」)。国土交通省は、2030年度以降の新築住宅についてZEH水準の省エネ性能の確保を目指すとしています。ZEHの全体像はZEHと太陽光発電のガイドで扱っています。
2026年8月時点で使える制度・使えない制度
使えないもの
国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正、上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、2026年9月時点で新規申請はできません。次回公募は未公表です。「国の蓄電池補助金が出るので今が有利」という説明を受けたら、その場で公募状況を確認してください。経緯は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
受付中のもの
- 住宅省エネ2026キャンペーン: 新築とリフォームを対象にした4事業(みらいエコ住宅2026事業、先進的窓リノベ2026事業、給湯省エネ2026事業、賃貸集合給湯省エネ2026事業)で構成されています。みらいエコ住宅2026事業は新築だけでなくリフォームも対象で、リフォーム側は「躯体(床・壁・天井)の断熱改修を含む、幅広いリフォーム工事」が対象です。新築の第2期は2026年5月13日〜12月31日ですが、注文住宅の新築(ZEH水準住宅に限る)の第2期は2026年9月30日までと締切が早く設定されています(出典: 住宅省エネ2026キャンペーン)
- 先進的窓リノベ2026事業: 補助上限は住宅1戸あたり100万円。製品の性能と大きさに応じた定額を積み上げる方式で、1申請あたりの合計補助額が5万円以上の工事が対象です。交付申請は遅くとも2026年12月31日まで(出典: 先進的窓リノベ2026事業)
- 令和8年度ZEH支援事業: 補助額は前章のとおり。新築戸建ZEHの単年度事業は2026年12月11日まで
- クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金): 令和7年度補正の車両分と戸建て住宅充電用コンセント(1基あたり上限5万円・2026年9月30日17時まで)は申請受付中です。V2H充放電設備・外部給電器は予算超過により、2026年8月27日にセンターへ到着した交付申請をもって受付を終了しました(次回公募は未公表)。予算残高は随時公表されます(出典: 次世代自動車振興センター 令和7年度補正 車両、令和7年度補正 V2H充放電設備・外部給電器 交付申請受付終了のお知らせ(2026年8月28日)、戸建て住宅充電用コンセント補助金 応募要領)
- 東京都 令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業: 蓄電池パッケージは10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸。DR実証に参加する場合は1台当たり10万円または15万円の加算があります。2026年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIが登録している機器のみが助成対象になります(2026年4月1日から6月30日までに契約締結または契約・工事完了した事業は除く)(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026を参照してください
契約の前に
国民生活センターは2021年6月3日に「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」を公表しています。PIO-NETに寄せられた相談件数は2016年度の325件から2020年度の1,314件へと増加傾向にあり、太陽光発電システムの無料設置をうたわれたものの実際には高額な費用が必要だった、といった事例が挙げられています(出典: 国民生活センター)。
見積もりの段階では、次の点を書面で確認しておくと後戻りが減ります。
- 補助金を前提とした金額なら、その制度の公募状況と申請主体(施工店か自分か)
- 太陽光の想定発電量が、売電と自家消費のどちらの単価で試算されているか
- 蓄電池の型式、蓄電容量と初期実効容量、保証年数と容量保証の判定値
- 断熱改修なら、使う製品が補助事業の登録製品かどうか
まとめ
- 家庭部門のCO2は2024年度で1億4,600万トン(2013年度比29.9%減)。うち68.7%が電力由来で、電気の使い方が主戦場。マイカーのガソリンは運輸部門で別勘定
- 世帯当たりは2,390kgCO2。用途別では照明・家電製品等43.8%、暖房23.2%、給湯19.4%が大きく、冷房用だけが2013年度比で増えている
- 行動の見直しは年間で数十kg-CO2の規模。**設備側(窓の断熱・高効率給湯・太陽光・蓄電池)**を動かさないと、2030年度目標の7,000万トン(2013年度比66%減)の水準には届かない
- 2026年9月時点で国のDR蓄電池補助金は公募終了。住宅省エネ2026キャンペーン、ZEH支援事業、CEV補助金、東京都の助成は受付中だが、いずれも予算到達で終わるため、申し込み前に公式サイトで状況を確認する