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太陽光発電と次世代技術

ペロブスカイト太陽電池とは?2026年の実用化状況と「今買うか待つか」の判断基準

エネチョイス編集部

この記事の結論

ペロブスカイト太陽電池は、ABX3というペロブスカイト結晶構造の材料(代表的にはA=有機アンモニウム、B=鉛、X=ヨウ素)を発電層に使う次世代型太陽電池です。2009年に日本の研究者が初めて作製した日本発の技術で、フィルム型は重量が一般的なシリコン太陽電池の10分の1とされ(経済産業省の試算はフィルム型を1平方メートルあたり1.5kgと設定)、耐荷重の低い屋根や壁面にも設置できます。ただし2026年8月時点で一般住宅向けに市販されている製品は確認できず、供給は自治体や事業者の先行導入が中心です。政府は2040年に約20GWの導入を目標としています。

「軽くて薄くて曲げられる次世代の太陽電池」として注目されるペロブスカイト太陽電池。日本発の技術で、政府も導入目標を掲げています。

結論から言うと、ペロブスカイト太陽電池は2026年8月時点で「自治体や事業者の先行導入が始まった段階」であり、一般住宅の屋根向けに市販されている製品は確認できません。「家庭用の発売を待つ」という判断をするなら、待機期間も価格も公表されていないという前提を理解しておく必要があります。

【2026年8月25日時点】 政府は2024年11月28日の「次世代型太陽電池戦略」で、2040年に約20GWの導入と、2030年までの早期にGW級の生産体制構築を目標に掲げています。出典: 経済産業省 次世代型太陽電池戦略

この記事でわかること

  • ペロブスカイト太陽電池の仕組みと3つのタイプ
  • 公的資料で確認できる重量・効率・発電コスト目標
  • 2026年8月時点で「誰が買えるのか」の実態
  • 公共施設の導入事例から見えるコスト感
  • 住宅の場合に「今買うか、待つか」をどう決めるか

太陽光発電と未来のエネルギー

ペロブスカイト太陽電池とは

経済産業省の資料によれば、ペロブスカイト太陽電池とは3種類のイオン(代表的にはA:有機アンモニウム、B:鉛、X:ヨウ素)がABX3のペロブスカイト結晶構造で配列する材料を発電層に用いた太陽電池の総称で、国内研究者が開発した日本発の技術と位置づけられています。

同資料では、2009年に初めて作製された時点の発電効率は3〜4%だったこと、2012年に固体型が英国と日本の研究者らによって共同開発され安定性が向上したことを皮切りに研究開発が加速したこと、そして2024年11月時点でセルの発電効率が26.7%まで向上したことが記されています(出典はNREL Best Research-Cell Efficiency Chart)。最初の論文は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らのグループによるもので、2012年の成果はオックスフォード大学との共同研究として公開されています(桐蔭横浜大学 宮坂研究室)。

3つのタイプがある

同戦略では、ペロブスカイト太陽電池を次の3タイプに整理しています。

タイプ概要位置づけ
フィルム型軽量で柔軟。建物壁面など従来設置が困難だった場所に導入可能日本勢が大型化・耐久性で大きくリード。耐久性向上が課題
ガラス型建材の一部として高層ビルや住宅の窓ガラスの代替設置が期待フィルム型より耐水性が高く耐久性を確保しやすい
タンデム型(ガラス)既存のシリコン太陽電池の置き換えを狙う積層構造開発の進捗はフィルム型・ガラス型に劣り、引き続き研究開発段階

出典: 経済産業省 次世代型太陽電池戦略

「ペロブスカイト=ペラペラのフィルム」というイメージが先行しがちですが、窓ガラスに使うタイプや、シリコンパネルの上に重ねるタイプもあるという点は押さえておきたいところです。

シリコン系と何が違うのか

軽さは公的資料でも「約10分の1」

同戦略の廃棄・リサイクルに関する資料では、ペロブスカイト太陽電池について「重量は、一般的なシリコン太陽電池の1/10であり軽量化が可能。容積は、一般的なシリコン太陽電池の1/20」と記載され、試算の前提としてフィルム型を1.5kg/㎡としています。これが「耐荷重の低い屋根に載せられる」という最大の価値の根拠です。

実際、さいたま市が環境省事業で挙げた導入理由は「本市の全公共施設の約1割が耐荷重などの制約により、従来の太陽電池の設置が困難である」というものでした(環境省 ペロブスカイト太陽電池の導入事例集)。

変換効率は「セル」と「モジュール」で大きく違う

研究レベルのセル効率26.7%という数字だけを見ると、すでにシリコンと互角に見えます。しかし製品サイズのモジュールになると数字は下がります。

  • パナソニックのガラス型は、実用サイズ(804cm²)のモジュールで**変換効率18.1%**を実現したと公表しています(パナソニック ガラス型ペロブスカイト太陽電池
  • 経済産業省が導入量を試算する際の前提は、屋根・壁面が150W/㎡(変換効率15%)、窓が**75W/㎡(同7.5%)**でした

つまり現段階では、同じ面積あたりの発電量で結晶シリコンを上回るわけではありません。価値は「面積あたりの効率」ではなく「これまで載せられなかった場所に載せられること」にあります。

弱い光でも発電しやすいとされる

リコーは自社の技術ページで、ペロブスカイト太陽電池について「照度の低いエリアや垂直設置でも効率よく発電できるという特徴があります」と説明しています(リコー インクジェット印刷ペロブスカイト太陽電池)。ただし住宅の屋根で年間発電量がどれだけ変わるかを示した公的なデータは、2026年8月時点で確認できません。年間の発電量を語る数字が出てきたら、出所を確認することをおすすめします。

2026年8月時点でどこまで実用化しているのか

ここが最も誤解の多い部分です。「事業化が始まった」のは事実ですが、買えるのは自治体や事業者というのが実態です。

積水化学工業(フィルム型・SOLAFIL)

積水化学工業は2024年12月26日の取締役会でペロブスカイト太陽電池の量産化を決議し、大阪府堺市のシャープ本社工場の建物などを譲り受けて製造設備を導入する計画を公表しました。新会社の積水ソーラーフィルム株式会社は資本金1億円、株主は積水化学86%・日本政策投資銀行14%です。2027年に100MW製造ライン稼働、2030年にはGW級の製造ライン構築を目指すとしています(積水化学 ペロブスカイト太陽電池の量産化に関するお知らせ)。

そして2026年3月27日、積水化学と積水ソーラーフィルムの連名で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」の事業開始を発表しました。今回事業化されたのは金属屋根を設置対象とする製品で、供給対象として挙げられているのは次の2つです。

  1. 環境省2025年度公募の導入支援事業で採択されたさいたま市、滋賀県、西日本高速道路株式会社、福岡県、福岡市
  2. 東京都の**「都有施設へのAirソーラー先行導入事業」**

同リリースは「2026年度は、現有設備による限定的な生産量となります」と明記しており、2027年度の100MW規模生産ライン立ち上げを最優先事項としています(積水化学 SOLAFIL事業開始のお知らせ)。

パナソニックホールディングス(ガラス型)

ガラス基板に発電層を直接形成する「発電するガラス」建材として開発中で、任意の透過性やグラフィックパターンを描けること、遮熱効果があることを特徴に挙げています。2026年3月に技術部門施設での実装と長期実証実験の開始が発表されました(パナソニック公式)。

カネカ(タンデム型)

ヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の上にペロブスカイト層を積層するタンデム型を開発中です。2026年3月18日からさいたま市と屋外実証事業を開始し(実証期間は2027年3月26日まで)、約995mm×約1085mmのパネル2枚を設置する規模です。2028年度にタンデム型の製品販売開始を予定としています(カネカ ニュースリリース)。

リコー

インクジェット印刷でペロブスカイト太陽電池を成膜する技術を開発しており、2025年にはリコー・大和ハウス工業・NTTアノードエナジーのコンソーシアムによる社会実装に向けた技術開発・実証事業が、NEDOのグリーンイノベーション基金に採択されています。開発・実証段階です。なお同社が製品化している「固体型色素増感太陽電池」は、ペロブスカイト太陽電池とは別の技術です(リコー 技術ページ)。

いくらかかるのか

住宅向けの価格は公表されていません。参考になるのは、環境省が公開した公共施設の導入事例です。いずれもフィルム型、パネル1枚あたり110Wで、体育館などの屋根への設置です。

実施団体導入規模総事業費
さいたま市(小学校体育館)5.28kW3,990万円
滋賀県(博物館・高校体育館)29.92kW23,510万円
福岡県(高校体育館)14.52kW8,789万円
福岡市(小中学校体育館)25.08kW19,536万円

出典: 環境省 令和7年度ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業 事例集

この補助事業は事前調査・導入計画策定と設備等導入の両方を支援対象としており(環境省 事業概要)、上表は導入初期の実証としての性格が強い総事業費です。なお事例集に費目の内訳は記載されていません。量産後の価格を示すものではありませんが、現時点では住宅用の結晶シリコンとは比較にならない水準であることは読み取れます。住宅の太陽光をいくらで導入できるかは太陽光発電の投資回収シミュレーションで整理しています。

国が掲げる発電コスト目標

次世代型太陽電池戦略は、グリーンイノベーション基金で2025年までに20円/kWh、2030年までに14円/kWhが可能となる技術の確立を掲げ、2040年には自立化が可能な発電コスト(10円/kWh〜14円/kWh以下)の実現を目指すとしています。裏を返せば、現時点の発電コストはまだそこに届いていないということです。

課題とデメリット

耐久性と施工上の論点

次世代型太陽電池戦略では、フィルム型について「発電コストの低下に向けては、引き続き、耐久性の向上に係る技術開発が必要」とされています。また住宅・建築物分野の設置・施工上の課題として、以下が「今後整理が必要と考えられる事項」に挙げられています。

  • 地震や風雨によるパネルの剥離、建築物の部位ごとの剥離・損傷
  • 設置した外壁や屋根の火災時における燃え広がりの懸念
  • パネルの不具合による漏電・火災の懸念
  • 雨水等による固定部分の腐朽・劣化、パネル設置に伴う雨漏りの懸念
  • 住宅・建築物本体とパネルの耐用年数の違いによる更新工事の計画・実施方法の未整備

NEDOは需要家・設計者向けに「フレキシブル太陽電池を利用した太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン」を公開しており、荷重・耐力設計やフレキシブル材料の燃焼性に関する考え方を整理しています(NEDO)。裏を返せば、施工の作法はいま整備されている最中です。従来型パネルの寿命の考え方は太陽光パネルの寿命で解説しています。

鉛への対応

発電層に鉛を含む点は事実として押さえておくべきです。次世代型太陽電池戦略は「0.5g/㎡程度含有する鉛について適切な処理・回収を行う必要がある」「リサイクル技術については、現在、開発段階」と記載しています。なおFIT/FIP制度では、有害4物質(鉛、ヒ素、カドミウム、セレン)の含有情報登録が義務付けられています。

建築基準法への適合

太陽光パネルを住宅・建築物に設置する場合は建築基準法の基準への適合が求められ、建材一体型か、ビス・接着剤で設置するか、架台を用いるかによって適用される規定が変わります。屋根では防火関係規定(法第22条、法第62条)や構造関係規定(令第39条)などが関係し、具体的な適用は仕様や設置方法に応じた個別判断が必要とされています。

資源面ではプラス材料もある

主要原材料のヨウ素について、環境省の事業概要は「我が国が世界シェアの約30%を占める」と記載しており、次世代型太陽電池戦略も日本は世界第2位の産出量としています。エネルギー供給構造の観点では、国産化しやすい材料であることは強みです。

住宅では「今買うか、待つか」をどう決めるか

判断は、屋根の条件で分かれます。

(1)耐荷重に問題がなく、結晶シリコンが載る屋根の場合

待つ理由は乏しいと考えられます。住宅向けのペロブスカイト製品は市販時期も価格も保証条件も公表されておらず、待機期間が読めません。その間の電気代削減の機会は戻ってきません。2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)の売電単価は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhと段階的に下がる設定で(資源エネルギー庁 買取価格・期間等)、いまは「売る」より「自家消費する」設計が基本になっています。

(2)耐荷重が低い、屋根形状が特殊など従来型が載らない場合

こちらは待つ選択肢に意味があります。ただし待つ場合も、量産ライン(2027年度の100MW規模)と、タンデム型の製品販売(2028年度予定)という2つの節目を目安に、価格と保証条件が出てから判断するのが現実的です。

(3)「ペロブスカイトが出るから今の見積もりを保留したい」場合

見積もりの比較自体は、いま進めておいて構いません。相場感を把握しておけば、数年後に判断し直すときの基準にもなります。相見積もりの読み方は太陽光の見積もり比較のポイントにまとめています。

なお訪問販売などで「間もなく家庭用ペロブスカイトが出る」「今の契約でペロブスカイトに交換できる」といった説明を受けた場合は、根拠となるメーカーの公式発表を確認してください。2026年8月時点で、住宅向け製品としての発売時期・価格・保証条件を公表しているメーカーは確認できません(カネカが公表しているのはタンデム型の製品販売開始時期のみで、住宅向けの仕様や価格には触れていません)。

補助金は「事業者向け」が中心

  • 環境省「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業」は令和8年度予算額70億円(令和7年度は50.2億円)。補助対象は地方公共団体、民間事業者・団体等で、設備等導入の補助率は2/3、3/4です(環境省 事業概要
  • 東京都「Airソーラー設置事業者支援事業」は対象が民間事業者等、助成率は10分の10、上限は1件あたり3億円。都は2035年におけるAirソーラー都内導入目標を約1GWとしています(クール・ネット東京

個人が住宅で使える制度は、従来型の太陽光発電と蓄電池が中心です。国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」は2026年5月29日に予算到達で公募を終了しており(SII)、次回の公募は公表されていません。詳しくはDR補助金の終了と次回の見通しをご覧ください。東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸です(クール・ネット東京)。都内の制度は東京都の補助金まとめで整理しています。

まとめ

  • ペロブスカイト太陽電池は2026年8月時点で「自治体・事業者の先行導入フェーズ」。一般住宅向けに市販されている製品は確認できず、積水化学のSOLAFILの供給先も環境省事業の採択自治体や東京都の都有施設です
  • 強みは効率ではなく「載せられる場所が増えること」。重量は一般的なシリコン太陽電池の約10分の1(フィルム型で1.5kg/㎡として試算)で、耐荷重の低い屋根や壁面が対象になります
  • 課題は耐久性・鉛の処理・施工方法の整備。国の資料でも剥離、防火、雨漏り、耐用年数の違いなどが「今後整理が必要」とされています
  • 屋根に問題がないなら待つ理由は乏しい。量産ライン(2027年度)とタンデム型の製品販売(2028年度予定)が次の節目で、価格と保証が出てから判断するのが現実的です

よくある質問

Q.ペロブスカイト太陽電池は家庭でいつ買えるようになりますか?

A.2026年8月時点で、一般住宅の屋根向けに市販されている製品は確認できません。積水化学工業とその子会社の積水ソーラーフィルムは2026年3月27日にフィルム型「SOLAFIL」の事業開始を発表しましたが、供給先は環境省事業に採択された自治体(さいたま市、滋賀県、福岡県、福岡市)や西日本高速道路、東京都の都有施設への先行導入で、2026年度は現有設備による限定的な生産量とされています。同社は2027年度の100MW規模生産ライン立ち上げを最優先事項に挙げています。カネカはタンデム型の製品販売開始を2028年度に予定しています。

Q.ペロブスカイト太陽電池のデメリットは何ですか?

A.経済産業省の次世代型太陽電池戦略では、耐久性の向上が発電コスト低減の課題として挙げられています。また発電層に1平方メートルあたり0.5g程度の鉛を含むため適切な処理・回収が必要で、リサイクル技術は開発段階とされています。住宅や建築物への設置では、地震や風雨によるパネルの剥離、火災時の燃え広がり、雨漏り、建物本体とパネルの耐用年数の違いなどが今後整理が必要な事項として整理されています。

Q.今の太陽光パネルを買わずにペロブスカイトを待つべきですか?

A.住宅向けの市販品と価格・保証の情報が公開されていない以上、「待つ」という判断は待機期間が読めないという前提で考える必要があります。環境省の事例集に載る公共施設の導入では、5.28kWの設置で総事業費3,990万円(さいたま市)といった規模感で、調査・設計・工事を含む導入初期の実証コストです。すでに屋根の耐荷重に問題がなく結晶シリコンが設置できる住宅であれば、待つ合理性は高くありません。一方で耐荷重の低い屋根など従来型が載らない住宅は、量産と価格の情報が出るまで様子を見る選択肢もあります。

Q.ペロブスカイト太陽電池に補助金は使えますか?

A.環境省の「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業」(令和8年度予算額70億円)の補助対象は地方公共団体、民間事業者・団体等で、個人住宅は対象として挙げられていません。東京都の「Airソーラー設置事業者支援事業」も対象は民間事業者等で、助成率は10分の10、上限は1件あたり3億円です。個人が住宅で使える国や自治体の補助制度は、2026年8月時点では従来型の太陽光発電と蓄電池が中心です。

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