関東で太陽光発電を検討していると、「関東は日照条件が良い」「補助金が手厚い」といった話をよく見かけます。ただ、その根拠として挙げられている数字は出所が示されていないことが多く、鵜呑みにすると導入判断を誤ります。この記事は、気象庁の平年値と各自治体の公式ページだけを見て、関東1都6県の実際のところを整理したものです。
関東の主要な気象官署の年間日照時間は1,926.7〜2,153.7時間(気象庁1991〜2020年平年値)で、最長の前橋と最短の東京の差は約12%にとどまります。つまり関東内では「どの県に住んでいるか」より「屋根の条件」と「その自治体の補助金がいま使えるか」のほうが金額インパクトが大きい、というのが実態です。
【2026年8月25日時点】 家庭用蓄電池向けの国のDR補助金(令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業、上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募開始、交付申請額が予算に達したため2026年5月29日に公募終了しました。次回公募は公表されていません(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。都県の補助金も受付状況が年度途中で変わるため、金額・期間は各公式ページで最新の情報を確認してください。
この記事でわかること
- 関東1都6県の年間日照時間(気象庁の平年値・出典付き)
- 東京都の設置義務化が誰に課される制度なのか
- 1都6県の補助金が2026年8月25日時点で使えるかどうか
- 補助金の条件が太陽光の設計そのものを縛るという話
- 契約前に確認すべき4つのチェックポイント
関東1都6県の年間日照時間(気象庁の平年値)
まず、関東各都県の代表的な気象官署における年間日照時間の平年値(1991〜2020年の30年平均)です。すべて気象庁「過去の気象データ検索」の平年値ページから引用しています。
| 都県 | 観測地点 | 年間日照時間の平年値 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 群馬県 | 前橋 | 2,153.7時間 | 気象庁 |
| 埼玉県 | 熊谷 | 2,106.6時間 | 気象庁 |
| 神奈川県 | 横浜 | 2,018.3時間 | 気象庁 |
| 茨城県 | 水戸 | 2,000.8時間 | 気象庁 |
| 栃木県 | 宇都宮 | 1,961.1時間 | 気象庁 |
| 千葉県 | 千葉 | 1,945.5時間 | 気象庁 |
| 東京都 | 東京 | 1,926.7時間 | 気象庁 |
前橋(群馬)と熊谷(埼玉)が長く、東京・千葉が短い、という並びになります。ただし**最長の前橋と最短の東京の差は約12%**です。年間の売電収入・削減額が仮に10万円規模だとすれば、都県間の日照差で説明できるのはせいぜい1万円前後という水準感になります。
「日照時間が長い=発電量が多い」ではない
日照時間は「直射日光が一定以上の強さで地表を照らした時間」の合計であり、パネルが受け取るエネルギー量そのもの(日射量、kWh/m²)とは別の指標です。同じ日照時間でも、太陽高度・雲の状態・大気の透明度によって受け取れるエネルギーは変わります。
そして実際の発電量は、日射量に加えて次の要素で大きく動きます。
- 屋根の方位(真南からのずれ)
- 屋根の傾斜角
- 隣家・電柱・樹木・自宅の別棟による影
- パネル容量とパワーコンディショナの容量比
- 表面の汚れ、積雪、経年劣化
都県間の12%の差より、自宅の屋根条件のほうが発電量を左右します。「群馬だから有利」「東京だから不利」と一般論で判断せず、自分の屋根で何kWh発電するのかを事業者のシミュレーションで確認してください。シミュレーションの前提が妥当かどうかの見方は太陽光の見積書の読み方で整理しています。
東京都の「太陽光パネル設置義務化」は誰が対象か
関東の太陽光で避けて通れないのが、東京都の建築物環境報告書制度です(2025年4月1日施行)。報道の見出しだけが独り歩きしているので、制度の対象を正確に押さえます。
| 項目 | 内容(東京都環境局の公式表記) |
|---|---|
| 対象建築物 | 延べ面積が2,000㎡未満の新築の規格建築物(中小規模特定建築物) |
| 義務の対象者 | 1年間に都内で建設等する中小規模特定建築物の延べ面積の合計(都内年間供給面積)が20,000㎡以上の建物供給事業者=特定供給事業者 |
| 20,000㎡未満の事業者 | 任意で義務対象者になること、任意で報告書を提出することが可能 |
| 義務の中身 | ①断熱・省エネ性能の確保 ②太陽光発電設備等の設置 ③電気自動車充電設備等の設置 ④施主や購入者等への環境性能の説明 ⑤建築物環境報告書の都への提出 |
読み取るべきポイントは3つです。
1. 義務を負うのは住宅を供給する事業者であり、個人ではありません。 大手ハウスメーカー等が一定規模以上の住宅を都内に供給する場合に、事業者側に基準適合の義務がかかります。
2. 既存住宅は対象外です。 制度の対象は「新築」の規格建築物なので、いま東京都に住んでいる方が自宅に後から設置する義務はありません。
3. 棟ごとの一律義務ではありません。 都内年間供給面積という事業者単位の基準で対象者が決まる制度設計です。「東京都で家を建てれば全戸にパネルが載る」という説明は正確ではありません。
なお、この制度の対象になるかどうかにかかわらず、東京都の助成金(後述)は個人が自分の住宅に設置する場合にも使えます。義務と補助は別の話です。
関東1都6県の補助金【2026年8月25日時点】
関東は自治体によって制度の型がまったく違います。県が直接個人に交付するタイプ、市町村経由でしか受け取れないタイプ、太陽光と蓄電池の同時導入が条件のタイプに分かれます。
| 都県 | 県レベルの太陽光補助 | 2026年8月25日時点の受付状況 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 既存住宅 3.75kW以下 15万円/kW(上限45万円)、3.75kW超 12万円/kW。新築住宅 3.6kW以下 12万円/kW(上限36万円)、3.6kW超 10万円/kW | 事前申込は2026年5月29日開始、交付申請兼実績報告は2026年6月30日〜2029年3月30日 | クール・ネット東京 |
| 神奈川県 | 太陽光 7万円/kW+蓄電システム1台15万円(太陽光と蓄電池の併せ導入が条件) | 第1期は終了。第2期は2026年9月7日8時30分〜9月30日の電子申請、先着500件程度 | 神奈川県 |
| 埼玉県 | 太陽光 7万円/kW(上限35万円)、蓄電池 10万円/件 | 太陽光は受付終了。蓄電池・エネファームは受付中 | 埼玉県 |
| 栃木県 | 太陽光 7万円/kW(上限28万円)+蓄電池は対象経費の1/3(上限25万8千円) | 2026年5月11日〜10月30日の先着順で受付中。予算に対する受付金額の割合は約70%(2026年8月18日現在) | 栃木県 |
| 群馬県 | 個人は太陽光 7万円/世帯。蓄電池は別制度で、太陽光を設置済みの住宅が対象・対象経費の1/3 | 受付終了(2026年6月29日〜7月20日、抽選結果は7月31日公表) | 群馬県 |
| 千葉県 | 県から個人への直接交付はなし。県は市町村に補助金を交付し、申請窓口は各市町村 | 市町村ごとに異なる | 千葉県 |
| 茨城県 | 県の制度は家庭用蓄電池向けで、県から住民への直接交付はなし。申請窓口は各市町村(県は制度を持つ市町村に補助)。太陽光は市町村の制度次第 | 市町村ごとに異なる | 茨城県 |
東京都の助成単価は関東の県レベル制度で最も高い
東京都の「令和8年度 家庭における太陽光発電導入促進事業」は、既存住宅への設置で3.75kW以下は15万円/kW(上限45万円)、3.75kWを超える場合は12万円/kWという単価です。新築住宅は3.6kW以下が12万円/kW(上限36万円)、3.6kW超が10万円/kWとなります。いずれも太陽光発電システムの助成対象経費の合計金額が上限です(出典: クール・ネット東京)。
単価だけで計算すると、既存住宅に5kWなら12万円/kW×5kW=60万円が目安です。ただし助成対象経費を超える助成は出ないため、実際の交付額は見積内容で変わります。
陸屋根には上乗せもあり、既存の戸建で陸屋根なら架台設置経費10万円/kW、防水工事経費18万円/kWが加算対象です(材料費・工事費の合計が上限)。
蓄電池を同時に検討している場合は、別事業の「令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業」で蓄電容量1kWhあたり10万円、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸の助成があります。DR実証に参加する場合は1台あたり10万〜15万円の加算があり、また2026年10月1日以降の事前申込はSIIの令和8年度登録済製品のみが対象です(2026年4月1日〜6月30日に契約締結または契約・工事完了した事業を除く経過措置あり)(出典: クール・ネット東京)。都の制度の全体像と区市町村の上乗せは東京都の蓄電池・太陽光補助金にまとめています。
「県の補助がない」=「補助が受けられない」ではない
千葉県と茨城県は、県から個人への直接交付を行っていません。千葉県の公式ページには「県民の皆様の申請窓口は、補助事業を実施している各市町村になります。(直接、県から設置される方への補助金の交付は行っておりません。)」と明記されています。茨城県も同様に「県から直接、補助金の交付は行っておりません」としています。
つまりこの2県では、お住まいの市町村に制度があるかどうかがすべてです。県の一覧ページで自分の市町村を確認し、その市町村の公式ページで金額と受付状況を見に行く手順になります。「県の補助がないから不利」という単純な話ではありません。
補助金の条件が、太陽光の設計そのものを縛る
見落とされがちなのが、補助の要件が設備の設計や運用まで指定している点です。金額だけ見て契約すると、後から「その構成では補助対象外」となりかねません。
蓄電池との同時導入が条件になっている県がある
- 神奈川県: 太陽光発電と蓄電池を併せて導入することが対象要件(出典)
- 埼玉県: 太陽光の補助を受けるには蓄電池を同時に設置する必要がある(出典)
- 栃木県: 太陽光と蓄電池を一体的に新規導入する個人が対象で、太陽光単独・蓄電池単独は対象外(出典)
太陽光を先に入れて後から蓄電池を足す進め方が合理的なケースもありますが、これらの県では同時導入でないと県補助が使えません。順番の判断材料は太陽光だけ先に入れるのはアリかで整理しています。
FIT認定を受けないことが条件になっている県がある
埼玉県(出典)と栃木県(出典)は、補助対象の要件として固定価格買取制度(FIT)の認定を受けないこと(栃木県はFIT制度またはFIP制度の認定を取得しないこと)、および発電量の30%以上を自家消費することを掲げています。
これは見積もりの前提を根本から変える条件です。売電収入を織り込んだ回収シミュレーションを受け取っている場合、その前提と補助金の要件が矛盾していないか確認してください。
なお2026年度に新規認定を受ける住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh、調達期間は10年間です(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。5年目以降は買う電気の単価を大きく下回るため、そもそも売電前提の設計自体が以前ほど有利ではなくなっています。
国庫補助との併用が制限される場合がある
埼玉県は、補助対象設備を同じにする国の補助事業および国庫支出金を財源とする市町村の補助事業等との併用ではないことを要件としています(出典)。「国・県・市の3階建てで全部もらえる」と説明されたら要件を自分で読んでください。
国の家庭用蓄電池向け補助金(DR家庭用蓄電池事業、上限60万円/申請)は2026年5月29日に公募終了しており、2026年8月25日時点では新規申請ができません。現況と次回に向けた考え方は国のDR補助金は終了、次回はどうなるにまとめました。国の制度全体の整理は2026年の補助金ガイドを参照してください。
関東で契約前に確認すべき4つのチェックポイント
1. 交付決定前に契約・着工していないか
神奈川県は「交付決定の通知前に着手した場合は、補助金交付の対象となりません」と明記しており、審査に2〜3か月を要するとしています(出典)。栃木県も交付決定前の着工は対象外です。
「今月中に契約すれば間に合います」という営業トークが、そのまま補助金失格の原因になり得ます。 契約日・着工日と交付決定日の前後関係は、公式ページの記載を自分で読んで確認してください。
2. 年度途中で受付が終わることを前提にスケジュールを組む
2026年8月25日時点で、群馬県の県補助2制度は受付終了(2026年7月20日締切、抽選結果は7月31日公表)、埼玉県は太陽光分が受付終了、栃木県は予算消化率が約70%(2026年8月18日現在)まで進んでいます。
先着順・抽選・予算上限のいずれでも、年度が始まってから動き出すと間に合わない制度があるのが関東の実情です。神奈川県のように第2期の枠が設定されるケースもあるため、逃した場合は次の受付回があるかを確認しましょう。
3. 補助要件と見積書の前提が矛盾していないか
県によっては「蓄電池と同時」「FIT認定を受けない」「自家消費30%以上」が要件です。見積書の経済効果シミュレーションが売電収入を前提にしているのに、申請予定の補助金がFIT認定不可を要件にしている、という組み合わせは成立しません。
見積書のどの欄を見て何を検算するかは太陽光の見積書の読み方に整理してあります。
4. 訪問販売での契約を急がない
国民生活センターは、太陽光発電・蓄電池の販売に関する消費者トラブルについて注意喚起を公表しています。2021年6月3日公表分では、消費者へのアドバイスとして「太陽光発電・蓄電池の購入をする際は、複数業者から見積もりを取ること」「長期的な経済効果を過度に期待しないこと」が挙げられています(出典)。
ただし、複数見積もりを取れば安全というわけでもありません。2025年6月4日公表の「太陽光発電システムの販売に関し、解約や返品ができないなどのトラブルが増加」では、「40社以上の見積もりを取得され、検討された方でも問題が生じているため注意が必要」としています(出典)。見積もりの数より、契約書面と補助金要件を自分で読んで確認することが重要です。
導入判断を組み立てる5ステップ
ここまでを踏まえた実務的な順番は、次のようになります。
- 住んでいる自治体の制度を先に確認する。 都県レベル(上の表)と、市区町村レベルの両方。千葉県・茨城県は市町村が本体です。
- 受付期間と残予算を見る。 受付終了していれば、その年度は対象外という前提で計画を組み直します。
- 補助要件から設備構成の制約を洗い出す。 蓄電池同時導入の要否、FIT認定の可否、自家消費率の条件、SII登録製品の縛りなど。
- その制約を満たす前提で複数社に見積もりを依頼する。 制約を先に伝えないと、比較できない見積もりが集まります。
- 交付決定前に契約・着工しない。 ここを守れないと、金額の比較そのものが無意味になります。
日照条件から入ると「群馬・埼玉が有利」という結論になりがちですが、手取りを左右するのはこの5ステップです。
まとめ
- 関東の主要気象官署の年間日照時間平年値は前橋2,153.7時間〜東京1,926.7時間で、差は約12%。都県間の差より屋根の方位・傾き・影の条件のほうが発電量を左右します(出典: 気象庁)
- 東京都の建築物環境報告書制度は都内年間供給面積20,000㎡以上の建物供給事業者に義務を課す制度で、既存住宅の個人所有者に設置義務はありません(2025年4月1日施行)
- 2026年8月25日時点で申請できるのは東京都と栃木県(10月30日まで先着)。神奈川県は第1期終了後で、第2期の受付は9月7日〜9月30日です。埼玉県は太陽光分が受付終了、群馬県は県の2制度とも受付終了、千葉県・茨城県は市町村が窓口です
- 補助要件が設備構成を縛ります(蓄電池同時導入、FIT認定不可、自家消費30%以上など)。交付決定前の契約・着工は対象外になるため、公式ページで要件と期限を自分で確認してから進めてください