両面発電(両面受光型)パネルは、表面だけでなく裏面に届いた光でも発電するモジュールです。ただし発電量がどれだけ増えるかは、パネルの性能よりも「地面の明るさ・地面からの高さ・傾斜角」といった設置条件でほぼ決まります。
産業技術総合研究所と長岡技術科学大学の研究グループが日本18地点を対象に試算した結果では、裏面による発電量の増加率(BGe)の地域差は±1%程度にとどまる一方、アレイ仕様(高さ・列間隔)を変えると増加率は4〜17%の範囲で動きました。出典: 日本太陽エネルギー学会講演論文集(2022)「両面受光型太陽電池における裏面受光による発電電力変動要因の分析および簡易的な発電電力量増加率計算モデルの開発」
【2026年8月28日時点】 2026年度の住宅用太陽光発電(10kW未満)のFIT買取価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです。出典: 資源エネルギー庁「固定価格買取制度 買取価格・期間等」
この記事でわかること
- 両面発電パネルの仕組みと、性能指標である**両面発電率(Bifaciality)**の意味
- 発電量の増加率が設置条件でどこまで変わるか(公的機関の試算データ)
- 効果が出る設置条件・出にくい設置条件のチェックリスト
- 住宅の屋根置きが不利な理由と、現実的な設置場所
- カーポートや地上設置にした場合の建築基準法・電気事業法の扱い
両面発電パネルとは何か
従来の太陽電池モジュールは、裏面が不透明なバックシートで覆われています。両面受光型は裏面をガラスまたは透明なポリマーバックシートにし、裏面から入った光でも発電できる構造にしたものです。
IEA(国際エネルギー機関)のPVPS Task 13報告書によれば、セル裏面の変換効率は表面の60%超から90%超まで幅があり、n-PERT型セルは両面発電率が最大95%まで到達しうるとされています。出典: IEA PVPS Task 13, Report T13-14:2021「Bifacial Photovoltaic Modules and Systems」(Executive Summary)
両面発電率(Bifaciality)という指標
前掲の日本太陽エネルギー学会論文では、両面発電率(φBifi)を「裏面と表面の標準試験条件での最大出力の比」と定義し、主にデバイスに依存しおおむね0.7〜0.95の値をとると説明しています。カタログで「両面発電率80%」とあれば、同じ光量を裏面に当てたとき表面の80%の出力が得られるという意味です。
両面受光型モジュールの電流電圧特性の測定方法は、国際規格 IEC TS 60904-1-2(Photovoltaic devices - Part 1-2: Measurement of current-voltage characteristics of bifacial photovoltaic (PV) devices)で定められています。第2版は2024年11月7日発行です。出典: IEC Webstore
実製品では、カナディアン・ソーラー・ジャパンの産業用モジュール「TOPBiHiKu6(CS6.2-66TB-640/645/650)」が最大85%の両面発電とうたっています(公称最大出力650W、外形寸法2382mm×1134mm×30mm、質量32.8kg、積雪荷重5400Pa、風圧荷重2400Pa)。出典: カナディアン・ソーラー・ジャパン 製品ページ
メリットはどれくらいあるのか
裏面によってどれだけ発電量が増えるかは BGe(Bifacial energy gain) で表されます。前掲の産総研らの論文は、日射量データベースMETPV-20の1時間値を用い、PVsystで日本18地点・アレイ高さ4条件・アレイピッチ3条件を計算しました(アルベド60%、両面発電率70%、傾斜20度、方位0度、アレイ幅3m)。
さらに同論文は、郡山市の1地点に絞ってアルベド・高さ(0〜2m)・ピッチ(4.5〜8m)・傾斜角(10〜40度)・アレイ幅(1〜4m)を振った感度解析も行っています。両方の計算から得られた結論は次のとおりです。
| 変動要因 | 論文が示した結果 | どの計算によるか |
|---|---|---|
| 地域(緯度・気象) | 変動は**±1%程度**にとどまる | 日本18地点 |
| アレイ仕様(高さ・ピッチ) | BGeは**4〜17%**の範囲で変動 | 日本18地点 |
| 地面からの高さ | 0mで5%程度、1mで15%超 | 郡山市1地点の感度解析 |
| 地面のアルベド | BGeとアルベドはほぼ線形 | 郡山市1地点の感度解析 |
| 傾斜角 | 角度が大きいほどBGeも大きい | 郡山市1地点の感度解析 |
いずれもアルベド60%(太陽電池のリサイクルガラスを敷設した想定)を前提にした地上設置アレイのシミュレーション値であり、住宅屋根の実測値ではありません。同論文はエッジ効果・架台梁による遮光・裏面照度ムラによるミスマッチを補正係数1として除外している点にも注意が必要です。
つまり**「両面だから何%増える」という言い方は成立せず、増加率は設置条件の関数**だということです。同論文は、片面受光型の出力係数(PR)が通常70〜90%の範囲にあるのに対し、両面受光型では100%を超える場合もあると補足しています。
海外の実測を集めたIEA PVPS報告書も同じ方向を示しています。同報告書は「アルベドは両面PVの性能に影響する最も重要な立地条件のひとつ」とし、自然地表面(アルベド0.2〜0.3)に単軸追尾で設置したケースでは、増加率は一般に10%未満にとどまると述べています。増加率はアルベド・散乱光比率・アレイ高さ・列間隔・モジュール間の隙間が大きいほど上がる、というのが同報告書の整理です。
設置条件チェックリスト
1. 地面や床面がどれだけ明るいか
裏面に届く光の大半は地面からの反射光です。地表面の反射率が状態によって大きく違うことは、気象庁も紫外線について次の例を示しています(出典は環境省「紫外線環境保健マニュアル」)。
| 地表面 | 紫外線の反射率 |
|---|---|
| 新雪 | 80% |
| 砂浜 | 25% |
| 草地・アスファルト | 10%もしくはそれ以下 |
出典: 気象庁「地表面の反射と紫外線」
これは紫外線域の反射率であり、太陽光全波長のアルベドと同じ数値ではありません。ただし地表面の状態で反射の桁が変わるという傾向は、そのまま設置判断に使えます。前掲の産総研らの試算が前提としたアルベド60%は、芝生や暗色の舗装では大きく下回ります。
2. 地面からの高さと列の間隔
郡山市の感度解析で示された「高さ0mで5%程度、1mで15%超」という開きは、架台にどれだけ余裕を持たせるかがそのまま発電量に効くことを意味します。同論文は、この高さによる変化がアレイピッチによる変化よりも大きい依存性を示したと述べています。列間隔を広げるほどBGeが上がる傾向も確認されていますが、効き方は高さのほうが強いということです。
3. 傾斜角と方位
同論文では傾斜角が大きいほどBGeも大きくなる傾向が確認されています。IEA PVPS報告書は、東西向きの垂直設置が両面PVに特に適した構成で、発電時間帯が広がる、汚れがたまりにくい、土地を他用途と併用しやすいといった利点があると整理しています。フェンスや防音壁への設置が海外で採用されているのはこのためです。
4. 積雪地はどうか
IEA PVPS報告書は、降雪の多い立地は積雪期のアルベド上昇により両面PVの恩恵を受けやすいとしています。ただし雪がパネル表面を覆えば表面側が発電できません。積雪地での検討は、落雪や雪下ろしの設計とセットで考える必要があります。詳しくは雪国の太陽光発電で押さえるポイントもあわせてご覧ください。
住宅の屋根置きが不利な理由
屋根面に近いほど裏面の取り分が減る
一般的な住宅の屋根設置は、屋根面から数センチ〜十数センチの架台にモジュールを載せます。これは前掲の試算でいう「高さ0m」に近く、BGeが最も小さくなる領域です。屋根材が暗色であればアルベドも低くなり、二重に不利になります。
国内の住宅用ラインナップに両面受光型がほとんどない
2026年8月時点で確認できる範囲では、国内主要メーカーの住宅用モジュールは片面受光型が中心です。
- 長州産業の住宅用ラインナップ(Gシリーズ・Bシリーズ・Nシリーズ・ほっとパネル)に両面受光型の掲載はありません。出典: 長州産業 太陽電池モジュール
- カナディアン・ソーラー・ジャパンでは、住宅用はTOPHiKu6(片面)、両面受光型のTOPBiHiKu6/7は産業用として区分されています。出典: カナディアン・ソーラー・ジャパン モジュール一覧
- ハンファジャパン(Qセルズ)の住宅用ラインナップ(Re.RISE-NBCシリーズ)にも、両面受光型の掲載は確認できません。出典: ハンファジャパン 太陽光パネル
確認したのは上記3社の公式ラインナップであり、国内で住宅用の両面受光型が一切流通していないという意味ではありません。取り扱いの有無は施工店に確認してください。
サイズと重量が住宅屋根向きではない
同じカナディアン・ソーラー・ジャパンの製品で比べると差は明らかです。
| 項目 | 住宅用(片面)CS6.2-48TM-465 | 産業用(両面)CS6.2-66TB-640/645/650 |
|---|---|---|
| 公称最大出力 | 465W | 650W |
| モジュール変換効率 | 23.3% | 24.1% |
| 外形寸法 | 1762mm×1134mm×30mm | 2382mm×1134mm×30mm |
| 質量 | 21.3kg | 32.8kg |
1枚あたり約1.5倍の重量と60cm超の長さの差は、住宅屋根の荷重条件と割り付けに直接効いてきます。住宅で両面受光型を検討するなら、屋根ではなくカーポート・地上架台・フェンスが現実的な選択肢です。
カーポート・地上設置にする場合の法令上の扱い
建築基準法
国土交通省は2つの技術的助言を出しています。
屋上設置の場合(令和5年3月13日・国住指第473号): 建築物の屋上に当該建築物へ電気を供給するために設置する太陽電池発電設備は建築基準法第2条第3号の建築設備に該当し、設置後の建築物は建築基準関係規定に適合する必要があります。そのうえで、メンテナンス等を除いて架台下の空間に人が立ち入らず、居住・執務・作業・集会・娯楽・物品の保管などの屋内的用途に供しないものについては、既存建築物の屋上への設置は同法第2条第13号の増築に該当せず、法第87条の4に規定する場合を除き建築確認は不要とされています。逆に、架台下を物置などに使う設計ではこの扱いになりません。出典: 国土交通省 国住指第473号
土地に自立して設置し、下を駐車場として使う場合(令和6年7月10日・国住指第165号): 支柱および太陽光発電設備からなる空間に壁を設けず、かつパネルの角度・間隔等からみて雨露をしのぐ等の屋根としての効用を有しない構造と判断されるものは、建築基準法第2条第1号に規定する建築物に該当しないとされています。出典: 国土交通省 国住指第165号
両面受光型はパネル間に隙間を空けて裏面に光を回す設計と相性がよく、この「屋根としての効用を有しない」構造と重なりやすい形状です。一方で雨よけを兼ねた密閉型のカーポートにすると建築物として扱われる可能性があります。どちらに該当するかを判断するのは特定行政庁ですので、設計段階で施工業者と自治体に確認してください。カーポート全般の検討ポイントはソーラーカーポートの選び方にまとめています。
電気事業法
太陽光発電協会(JPEA)の整理では、10kW未満は一般用電気工作物として扱われ、工事計画の届出や主任技術者の選任は不要です。出典: JPEA「太陽光発電に関する法律」
10kW以上になると義務が増えます。経済産業省の委託事業サイトによれば、太陽電池発電設備は10kW以上50kW未満で基礎情報の届出、10kW以上500kW未満で使用前自己確認が必要です。出典: 小出力発電設備の保安規制。カーポートや地上架台は屋根より広く敷けるため、住宅でも10kWを超えることがあります。
デメリットと注意点
IEA PVPS報告書が挙げている技術的な留意点は、そのまま検討時のチェック項目になります。
- 裏面の照度ムラ: 裏面に届く光は表面よりはるかに不均一で、モジュール内やストリング内で電気的ミスマッチが生じます
- 動作電流が高くなる: 両面アレイは片面より高いDC電流で動作するため、配線・ヒューズ・パワーコンディショナの容量計算を見直す必要があります
- PID(電位誘起劣化): 両面ガラス構造でEVA封止材を使う場合、ガラス由来のナトリウムイオンによりPIDが起きやすくなります。ポリオレフィン系封止材の採用で大きく抑えられます
- LeTID: PERCセルは製造時の安定化処理が適切でないと光・高温誘起劣化の影響を受けます
- エッジ効果: 小規模なアレイは端の効果が支配的になり、実測値をそのまま大規模システムに外挿できません
加えて、両面受光型モジュール単体の価格は公表されていないことが多く、相場を断定できません。住宅用システム全体の費用については、太陽光発電協会が2025年の10kW未満・新築設置で**平均28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW)**という数値を公表しています。出典: JPEA「設置費用はいくらかかりますか?」
蓄電池を併せて検討する場合、国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、2026年8月時点で新規申請はできません。出典: SII 事業概要。自治体制度は継続しており、東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸です。出典: 東京都地球温暖化防止活動推進センター
向いているケース・向いていないケース
| 検討したい設置 | 判断 | 根拠 |
|---|---|---|
| ソーラーカーポート | 検討価値あり | 地面から高さを取れる。壁なし構造なら建築物に該当しない扱いがありうる |
| 地上架台(明るい舗装・砂利) | 検討価値あり | 高さとアルベドの両方を設計で確保できる |
| 東西向きの垂直フェンス | 検討価値あり | IEA PVPSが両面PVに適した構成として挙げている |
| 住宅の屋根(暗色・密着架台) | 効果は限定的 | 高さ0m相当かつ低アルベド。国内の住宅用ラインナップも片面が中心 |
| 屋根の荷重に余裕がない場合 | 不向き | 両面ガラス構造は1枚あたりの質量が大きい |
判断の順序としては、「両面にするか」より先に「裏面に光が回る設置ができるか」を確認するのが実務的です。回らないなら、同じ予算を高効率の片面モジュールや設置枚数に充てるほうが合理的でしょう。
まとめ
- 両面発電パネルの実力は**両面発電率(おおむね0.7〜0.95)**とBGe(設置条件で決まる増加率)の掛け算で決まる。カタログの増加率だけを見て判断しない
- 産総研らの試算では地域差は±1%程度にとどまり、アレイ仕様を変えるとBGeは4〜17%の範囲で動く。郡山市の感度解析では高さ0mで5%程度、1mで15%超と、架台の設計が結果を左右する(いずれも地上設置アレイのシミュレーション値)
- 住宅では屋根置きが最も不利。2026年8月時点で国内主要メーカーの住宅用ラインナップも片面受光型が中心で、両面受光型はカーポート・地上・フェンスが現実的な選択肢
- カーポートは国交省の技術的助言(令和6年7月10日)で建築物に該当しない扱いがありうるが、判断は特定行政庁が行う。容量が10kWを超えると電気事業法上の手続きも変わる
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