太陽光発電の「10年後」に起きるのは、FIT(固定価格買取制度)の買取期間が終わって売電単価が下がることです。そして「20年後」までに想定しておきたいのが、パワーコンディショナ(パワコン)の交換という実費です。 設備そのものは20年で止まる前提では作られていませんが、お金の流れの変わり目は10年目と20年目に来ます。
この記事は、2026年8月25日時点で公開されている一次情報だけを使って、その2つの節目に何が起きるかを整理したものです。前提の置き方しだいでいくらでも結果が動く「25年間の累計利益」のような試算は扱わず、公表されている単価・保証値・費用相場をそのまま示します。
【2026年8月25日時点】 買取価格・補助金・法制度は変わります。本文の数値はいずれも各出典の公表時点のものです。導入前に最新の公式情報をご確認ください。基準となる価格表は資源エネルギー庁「買取価格・期間等」にあります。
この記事でわかること
- 10年目にFITが終わったあと、売電単価が実際にいくらになるか(電力会社の公表単価)
- 売電を続けるのと自家消費に回すのとで、1kWhの価値がどれだけ違うか
- 20年後のパネルの出力が、メーカー保証上どこまで下がる想定か
- 20年間でかかる点検費用とパワコン交換費用の相場
- 2026年8月時点の補助金の状況と、撤去・リサイクルの新しい法律
10年後:FITの買取期間が終わる
住宅用太陽光発電(10kW未満)の調達期間は10年間です。2026年度に認定を受けた場合の調達価格は、運転開始からの年数で2段階に分かれています。
| 期間 | 調達価格 |
|---|---|
| 運転開始から4年目まで | 24円/kWh |
| 5〜10年目 | 8.3円/kWh |
| 調達期間 | 10年間 |
つまり2026年度に導入する人にとっては、単価が大きく下がる最初の節目は10年後ではなく5年目です。初期投資支援スキームによって前半に厚く配分されているためで、「10年間ずっと24円」ではありません。
買取期間が終わったあとの単価
FIT期間が終わると、余剰電力は小売電気事業者の買取メニューで売ることになります。調達価格等算定委員会が2025年12月時点で確認した各社の買取メニューの売電価格は、平均10.0円/kWh、中央値9.5円/kWhでした(令和8年度以降の調達価格等に関する意見、2026年2月5日)。同意見では、10円/kWh水準以上のメニューは電気供給とのセット販売や蓄電池併設などの条件付きであることが比較的多い、とも指摘されています。
実際の各社の公表単価は次のとおりです。
| 事業者・メニュー | 買取単価 |
|---|---|
| 東京電力エナジーパートナー「再エネ買取標準プラン」 | 8.50円/kWh(税込) |
| 中部電力ミライズ「プレミアムプラン」 | 8円/kWh |
| 中部電力ミライズ「WAONプラン」 | 7円/kWh+2ポイント/kWh |
| 中部電力ミライズ「シンプルプラン」(申込をしない場合) | 7円/kWh |
出典: 東京電力エナジーパートナー「再エネ買取標準プラン」、中部電力ミライズ「新たなデンキ買い取りサービス」(いずれも税込、非化石価値を含む)
手続きを忘れるとどうなるか
東京電力エナジーパートナーは、FIT期間中に同社へ売電していた場合、期間終了後は手続きなしで自動的に標準プランでの買取に移ると案内しています。一方、中部電力ミライズは、2017年4月以降に引越しなどで再エネ契約の契約変更があった場合は電話での申込が必要で、申込をしないとどの事業者とも未契約の状態になり、一般送配電事業者による無償引き取りの対象になると注意喚起しています。
「放っておいても勝手に売れ続ける」とは限らないということです。中部電力ミライズは買取期間満了日を満了の約4か月前までに郵送書面で知らせると案内しているので、通知が届いたら自分の契約先の扱いを確認してください。卒FIT前後の段取りはFIT終了後の手続きガイドにまとめています。
10年後の分かれ道:売り続けるか、自分で使うか
10年目以降は、1kWhを売るか自分で使うかで価値が3倍前後違う状態になります。
| 電気1kWhの行き先 | 価値 |
|---|---|
| 卒FIT後に売る | 7〜10円程度(上記の各社メニュー) |
| 自分で使う(買電を減らす) | 27.45円/kWh(2026年度の想定値) |
自家消費分の便益27.45円/kWhは、大手電力の直近10年間の家庭用電気料金単価に消費税率10%を加味して調達価格等算定委員会が設定した値です(同意見)。参考として、家電公取協が公表している電力料金の目安単価は31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定)です(全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問)。
ただし、自家消費に回すのは口で言うほど簡単ではありません。同意見が2025年1〜8月のシングル発電案件を分析したところ、**余剰売電比率は平均64.8%(中央値60.7%)**でした。発電した電気の6割前後は自宅で使いきれずに売られている、というのが実態です。
自家消費率を上げるには、昼間に電気を使う家電を動かす、エコキュートの沸き上げ時間を変える、蓄電池やV2Hで昼の電気を夜に回す、といった「受け皿」が要ります。いずれも追加投資が必要で、それ自体が回収できるかは別問題です。蓄電池やV2Hを足すかどうかは、それ自体で採算が取れるかを個別に見積もって判断してください。
2026年8月時点の補助金の状況
10年目以降の自家消費シフトで蓄電池を検討する人が多いため、補助金の現況も確認しておきます。
国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(上限60万円/申請)は、2026年3月24日に公募が開始されましたが、2026年5月29日に交付申請額の合計が予算に達したことを確認したため公募は終了しています。次回の公募は本記事の執筆時点で公表されていません(SII 事業概要)。2026年8月時点で、この国の補助金に新規申請することはできません。 経緯はDR補助金終了と次回の見通しにまとめています。
自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は、蓄電容量あたり10万円/kWh(助成対象経費(税抜)が上限)で、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸です。DR実証に参加する場合は、1台当たり10万〜15万円の加算があります。なお2026年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIが令和8年度の登録済製品一覧に登録した機器のみが助成対象となる点に注意が必要です(クール・ネット東京)。詳細は東京都の2026年度補助金で解説しています。
20年後:パネルとパワコンはどうなっているか
パネルの出力保証は25年目まで示されている
「20年で寿命」というイメージがありますが、メーカーが公表している出力保証はもっと長い期間を対象にしています。ハンファジャパンは機種ごとに保証する出力値を明示しています。
| 機種 | 初年度の出力値 | 25年目の出力値 |
|---|---|---|
| Re.RISE-NBCシリーズ | 99% | 90.6%(30年目88.9%) |
| Re.RISE-G3シリーズ | 98.5% | 88.9% |
| Re.RISE Sシリーズ | 98% | 84.8% |
| Q.TRON M-G2.4+ | 98.5% | 90.58% |
パナソニックは「モジュール出力25年保証(無償)」を設けており、太陽電池モジュールの出力がJIS C 8918の公称最大出力に対して10年で81%未満、または25年で72%未満になった場合を保証の対象としています(パナソニック 太陽光発電システムの保証)。
保証値は「これ以下になったら対応します」という下限であって、実際の出力がそのとおりに落ちるという意味ではありません。それでもメーカーごとに25年目の水準に幅があることは、機種選びの判断材料になります。劣化の考え方は太陽光パネルの劣化率、寿命全般は太陽光パネルの寿命で詳しく扱っています。
パワコンはパネルより先に寿命が来る
20年後を考えるうえで現実的な支出はこちらです。京セラは公式サイトで、パワーコンディショナの製品寿命は10〜15年程度、法定耐用年数は太陽光パネルと同じく17年と説明しています(京セラ「パワーコンディショナの寿命は?」)。
保証面では、パナソニックがパワーコンディショナを含む住宅用周辺機器に「システム機器瑕疵15年保証(無償)」を、ハンファジャパンがパワーコンディショナの「最長15年買い替え保証」を設けています。いずれも申請や施工条件があるため、契約時に販売店へ確認が必要です。
10年後・20年後にかかるお金と、撤去するときの話
調達価格等算定委員会は、太陽光発電協会へのヒアリング調査をもとに、5kWの設備を想定した場合の維持費を次のように整理しています。
| 項目 | 相場 |
|---|---|
| 定期点検 | 3〜5年ごとに1回程度が推奨、1回あたり約3.8万円程度(前年度調査では約4.1万円程度) |
| パワーコンディショナ交換 | 20年間で一度は交換され、38.4万円程度(前年度調査では42.3万円程度) |
| kW当たりの年間運転維持費への換算 | 約5,740円/kW/年 |
出典: 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(2026年2月5日、調達価格等算定委員会)
同意見は、パワコン交換費の相場が前年度調査から上昇した要因として人件費増などを挙げています。20年スパンでは点検とパワコン交換で数十万円規模の実費が発生する、と見込んでおくのが安全です。
一方で、FIT認定案件の定期報告データ(2025年設置案件)に表れている運転維持費の平均は1,045円/kW/年で、想定値の3,000円/kW/年を下回っています。同意見は、定期報告データの88%が0円/kW/年であり、対象年に点検費用や修繕費用が発生していない案件が多く存在する可能性を指摘しています。つまり、推奨どおりに点検している家庭ばかりではない、というのが現状です。
太陽光発電協会も、住宅用システムについて設置後1年目、その後は4年に1度の定期点検を推奨しています(JPEA「長く使っていただくために」)。
参考:初期費用の実勢値
回収を考えるうえでの入口の数字も、同じ意見書に載っています。住宅用太陽光発電(10kW未満)の新築案件について、**2025年設置の平均システム費用は28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW)**で、2026年度の想定値25.5万円/kWを上回りました。平均値の内訳は太陽光パネルが約47%、工事費が約29%です。
これは全国の申請データの平均であって、個別の見積額ではありません。実際の価格は屋根の形状・施工条件・販売店によって変わるため、複数社の見積もりで確認してください。
撤去・処分するときの費用と、2026年に公布された新法
2026年に制度が動きました。「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」(令和8年法律第33号)が2026年5月29日に成立し、6月5日に公布されています(環境省「太陽光パネルリサイクル関連」)。
背景として、経済産業省は法律案の閣議決定時に「2030年代後半以降に太陽光パネルの排出量が顕著に増加し、年間最大50万t程度に達すると予想される」と説明しています(経済産業省 2026年4月3日 報道発表)。
ここは誤解しやすいところですが、対象になるのは、収益事業で使われている(いた)「事業用太陽電池」を廃棄する事業者です。さらに廃棄計画の届出義務は、廃棄重量が政令の要件に該当する「多量事業用太陽電池廃棄者」に限られます。住宅の屋根に載せた自家消費用の設備が直ちに義務対象になるわけではありません。ただし法律の附則には、排出量の見込みや費用の推移を勘案して幅広い廃棄関係者への義務付けなど所要の措置を検討する規定が置かれています。
住宅用の撤去については、太陽光発電協会が次の点を案内しています(JPEA「住宅用太陽光発電システムの廃棄を検討している方へ」)。
- 廃止を決める前に、パワーコンディショナなどの修理や交換を先に相談する(買取期間終了後も、故障がなければ自家消費のメリットは続く)
- 費用は「屋根から取り外す撤去工事費」と「産業廃棄物としてのリサイクル・最終処分費」の2つに分かれ、設置状況やパネルの状態で変動する
- 複数業者から見積もりを取ることが推奨される
- FIT認定を受けている場合は廃止届が必要
- 補助金を受給している場合、法定耐用年数(17年)未満での廃棄時に返還義務が生じることがある
- 取付金具を外した屋根の防水処理が必要
導入すべきか判断するための4つの前提
ここまでの一次情報を、判断材料として整理します。
- 売電単価は下がる前提で考える。 2026年度認定なら5年目から8.3円/kWh、卒FIT後も7〜10円台が現実的な水準です。「売電で稼ぐ」より「買電を減らす」が主戦場になります。
- 自家消費に回せる量が回収を決める。 売電7〜10円に対して自家消費の便益は27円台。ただし実態の余剰売電比率は平均64.8%で、自家消費を増やすには生活パターンの調整か追加設備が要ります。
- 20年で点検とパワコン交換の実費を見込む。 点検は1回約3.8万円、パワコンは20年で一度・38.4万円程度が相場です。初期費用だけで判断すると足りません。
- 見積もりは複数社から取り、その場で契約しない。 国民生活センターは、太陽光発電設備や家庭用蓄電池の購入は高額な契約になるため、突然の訪問をきっかけに勧誘されたり契約を急かされてもその場で契約はせず、複数社から見積もりを取って比較検討するよう呼びかけています。訪問販売に該当する場合、契約書面を受け取った日を含む8日間はクーリング・オフが可能です(国民生活センター)。
まとめ
- 10年後の変化はお金の流れ。 FITの調達期間は10年間で、満了後の売電単価は各社メニューで7〜10円台(2025年12月時点の調査で平均10.0円/kWh、中央値9.5円/kWh)。2026年度認定では5年目から8.3円/kWhに下がります。
- 20年後の設備は「動いているが費用が発生する」。 出力保証は25年目で84.8〜90.6%と示す機種があり、パネルが20年で止まる前提ではありません。ただしパワーコンディショナは製品寿命10〜15年程度で、20年間で一度は交換され38.4万円程度が相場です。
- 売るより使うほうが価値が高い。 自家消費分の便益は2026年度想定で27.45円/kWh。ただし実態の余剰売電比率は平均64.8%で、自家消費を増やすには受け皿が必要です。
- 制度は動いている。 国のDR蓄電池補助金は2026年5月29日に公募終了、太陽電池廃棄物のリサイクル法は2026年6月5日に公布。導入前・撤去前には最新の公式情報をご確認ください。