国税庁の質疑応答事例では、給与所得者が自宅に太陽光発電設備を家事用資産として設置し余剰電力を売却している場合、その売電収入は「雑所得」に該当するとされています。そして給与を1か所から受けている給与所得者は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると所得税の確定申告が必要になります。
【2026年8月25日時点】 本記事の税務に関する記載は、国税庁の質疑応答事例(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づき作成されたもの)および「令和7年4月1日現在法令等」時点のタックスアンサーに基づいています。制度は改正されることがあり、個別の事情による判断も分かれます。最終的な判断は所轄税務署または税理士にご確認ください。出典: 国税庁 質疑応答事例「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」
この記事でわかること
- 売電収入がどの所得区分になるか(国税庁が示す4つのケース)
- 「20万円ルール」の正確な条件と、判定に使う金額
- 必要経費と減価償却の計算(耐用年数17年・定額法の償却率0.059・業務用割合の考え方)
- 所得税とは別ルールになる住民税の申告
- 補助金を受け取った年の取扱いと、申告の実務(時期・保存書類)
売電収入はどの所得になる?国税庁が示す4つのケース
所得区分は「誰が」「どこに」設置したかで変わります。 国税庁は質疑応答事例で、太陽光発電の余剰電力の売却収入について次のように整理しています。
| 設置の状況 | 所得区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 給与所得者が自宅(家事用資産)に設置 | 雑所得 | 質疑応答事例 |
| 個人商店主が自宅兼店舗に設置 | 事業所得の付随収入 | 質疑応答事例 |
| 不動産賃貸業者が賃貸アパートに設置 | 不動産所得の収入金額 | 質疑応答事例 |
| 農業者が営農型太陽光発電を導入 | 事業所得の付随収入 | 質疑応答事例 |
自宅ケースの回答要旨は「余剰電力の売却収入については、それを事業として行っている場合や、他に事業所得がありその付随業務として行っているような場合には事業所得に該当すると考えられますが、給与所得者が太陽光発電設備を家事用資産として使用し、その余剰電力を売却しているような場合には、雑所得に該当します」と明記されています。
つまり、会社員が自宅の屋根に載せた太陽光の余剰売電は、原則として雑所得。この記事は主にこのケースを前提に解説します。自宅兼店舗の場合は、設備が事業所得を生ずべき業務の用に供されている限り「全て事業所得の付随収入とするのが相当」とされているため、事業所得側での処理になります。
「20万円ルール」の正しい読み方
よく言われる「20万円以下なら申告不要」は、給与所得者に関する所得税の規定です。 国税庁タックスアンサーNo.1900では、確定申告が必要な給与所得者として次のように示されています。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得・退職所得を除く)の合計額が20万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けていて、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額(給与所得・退職所得を除く)との合計額が20万円を超える人
いずれも「確定申告をすれば税金が還付される人」は除かれます。また3つ目については、給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の人は申告不要とする注書きがあります。
出典: 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
判定に使うのは「売電収入」ではなく「雑所得」
ここが最も誤解されやすいポイントです。判定するのは振り込まれた売電収入の額ではなく、必要経費を差し引いた後の雑所得の金額です(雑所得の計算式は「総収入金額 − 必要経費」。国税庁 No.1500 雑所得)。減価償却費を経費に入れると金額は大きく下がりますが、設備の規模や売電量によって結果は変わります。「どうせ20万円に届かないはずだから計算しない」ではなく、実額を出したうえで判定してください。
雑所得の赤字は切り捨て
雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得と損益通算できません(No.1500、No.2250 損益通算)。損益通算の対象は不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つに限られます。「太陽光の赤字で給与の源泉所得税が還付される」という説明を受けたら、それは雑所得の話としては成り立ちません。
必要経費と減価償却の考え方(耐用年数17年)
太陽光発電設備は「機械及び装置」に分類され、耐用年数は17年。 国税庁の質疑応答事例は、太陽電池モジュールやパワーコンディショナーなどが一体となって発電・送電等を行う自家発電設備であることから、耐用年数省令別表第二の「55 前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの」の「その他の設備」「主として金属製のもの」に該当し、17年になると述べています。
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産の定額法の償却率は、耐用年数17年の場合0.059です(国税庁 減価償却資産の償却率等表(PDF))。
業務用割合は「発電量のうち売却した電力量の割合」
同じ質疑応答事例には、「必要経費に算入する減価償却費の額は、発電量のうちに売却した電力量の占める割合を業務用割合として計算した金額となります」とあります。自家消費に対応する部分は家事費であり、必要経費になりません。
計算のしかた(数値は計算方法を示すための仮定です)
以下は計算の手順を示すための仮の数値です。実際の金額は、ご自身の契約書・領収書と電力会社の検針票の実数に置き換えてください。
| 項目 | 仮の数値 | 計算 |
|---|---|---|
| 設備一式の取得価額 | 1,500,000円 | 契約書・領収書で確認 |
| 年間発電量 | 5,000kWh | 検針票・モニタで確認 |
| うち売電量 | 2,500kWh | 検針票で確認 |
| 業務用割合 | 50% | 2,500 ÷ 5,000 |
| 年間の減価償却費 | 44,250円 | 1,500,000 × 0.059 × 50% |
定額法の各年の償却費の額は「取得価額 × 定額法の償却率」で、設備を年の中途で取得した年は、この金額を12で除してその年分において業務に使用していた月数を乗じた額になります(出典: 国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却)。設置初年度は上表の44,250円より小さくなります。
売電収入は「売電量 × 買取単価」。単価は認定を受けた年度の価格が調達期間中続くため、ご自身の単価は検針票で確認してください。2026年度に新規認定を受ける住宅用(10kW未満)の調達価格は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。1〜4年目の単価を当てはめると売電収入は2,500 × 24 = 60,000円、雑所得は60,000 − 44,250 = 15,750円となり、メンテナンス費や保険料の按分額を引くとさらに小さくなります。
経費に入れられるもの・入れられないもの
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 経費になり得る | 減価償却費、点検・清掃などのメンテナンス費用、パワーコンディショナー等の修繕費、損害保険料、設備ローンの利息部分(いずれも業務用割合で按分) |
| 経費にならない | 自家消費に対応する部分、設備ローンの元本返済額 |
なお、取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満のものは、その全額を業務の用に供した年分の必要経費にできます(国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。
上の表のうち減価償却費と業務用割合の考え方は質疑応答事例に明記がありますが、メンテナンス費・修繕費・保険料・支払利息の扱いは、国税庁が太陽光発電について個別に列挙しているものではありません。業務との関連性と按分根拠を示せることが前提になるため、金額が大きい項目は所轄税務署に確認してください。
住民税の申告は所得税とは別ルール
所得税の20万円ルールは、住民税には適用されません。 ここを見落とすと後から住民税の追加賦課を受けることがあります。
横浜市の案内では、市民税・県民税の「申告する必要がある人」として、1月1日現在で市内に住所があった人のうち次のような人が挙げられています。
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得以外の所得(配当、不動産、雑所得など)の金額の合計額が20万円以下の人
- 給与所得以外に各種の所得(配当、不動産、雑所得など)のあった人(上記に該当する人を除く。この区分は「所得税の確定申告書を税務署へ提出しない場合」に申告が必要とされています)
そのうえで「所得税の確定申告書を税務署へ提出された人は、同時に市民税・県民税の申告をしたものとみなされます」「申告が必要にもかかわらず、申告されなかった場合は、本市で課税のための調査を行い、追加の賦課を行う場合があります」と明記されています(出典: 横浜市 市民税・県民税申告書に関するよくあるご質問)。
| ケース | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 雑所得が20万円超 | 必要 | 確定申告により申告済みとみなされる |
| 雑所得が20万円以下・確定申告をする | 任意(他の理由で申告する場合を含む) | 確定申告により申告済みとみなされる |
| 雑所得が20万円以下・確定申告をしない | 不要 | 市区町村への申告が必要になり得る |
運用は自治体ごとに異なります。お住まいの市区町村(.lg.jpのサイト)の「市民税・県民税の申告」ページをあわせて確認してください。
補助金・10kW以上・消費税——判断に迷いやすい3つの論点
1. 補助金を受け取った年の取扱い
固定資産の取得に充てるために国や地方公共団体の補助金の交付を受け、その目的に適合した固定資産を取得した場合は、確定申告書に一定の事項を記載することを条件に、その取得に充てた部分の金額を総収入金額に算入しない取扱いがあります(「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」の添付が必要)。この適用を受けた資産の取得費は補助金相当額を控除した残額になり、減価償却費もその金額を基礎に計算します(出典: 国税庁 No.2202 国庫補助金等を受け取ったとき)。
なお補助金の受付状況は2026年に動いています。国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(補助上限60万円/申請)は2026年5月29日に交付申請額の合計が予算に達し公募終了しており、2026年8月時点で新規の申請はできません(次回公募は未公表。出典: SII 事業概要)。一方、東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は10万円/kWh・DR実証に参加しない場合の上限120万円/戸で受付中です。ただし令和8年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIが令和8年度の登録済製品一覧に登録した機器のみが助成対象になります(出典: クール・ネット東京)。詳細は国の蓄電池補助金の終了と次回の見通し、東京都の蓄電池補助金をご覧ください。
2. 10kW以上・全量売電のケース
10kW以上の設備で全量売電を行う場合も、所得区分は容量だけで機械的に決まるわけではありません。前掲の質疑応答事例の注書きは全量売電に触れており、「給与所得者がこの全量売電を行っている場合の売電収入も、上記と同様に、それが事業として行われている場合を除き、雑所得に該当すると考えられます」としています(出典: 国税庁 質疑応答事例)。つまり分かれ目は容量ではなく「事業として行っているか」です。
事業所得に該当する場合は青色申告の対象となり、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいることなどの要件を満たすと、青色申告特別控除(55万円、一定の要件を満たす場合は65万円、または10万円)が使えます(出典: 国税庁 No.2072 青色申告特別控除)。
「何kW以上なら事業所得」と容量だけで断定する情報には根拠が示されていないことが多く、実際の判断は所轄税務署に確認するのが確実です。
3. 消費税
個人事業者はその年の前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けている場合は、課税売上高にかかわらず免除されません(出典: 国税庁 No.6501 納税義務の免除)。
申告の実務:時期・帳簿・保存書類
所得税の確定申告は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までに行います(出典: 国税庁 No.2020 確定申告)。期限日が土日祝にあたる年は翌開庁日にずれるため、国税庁の確定申告特集で年ごとの日程を確認してください。申告書は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成・提出できます。
帳簿・書類の保存義務
住宅用の雑所得のケースでは、保存義務の有無が収入金額で変わります。
| 区分 | 義務 |
|---|---|
| 業務に係る雑所得で前々年分の収入金額が300万円以下 | 現金預金取引等関係書類の保存義務なし(現金主義の特例を選択できる) |
| 同・前々年分の収入金額が300万円超 | 現金預金取引等関係書類を5年間保存 |
| 同・前々年分の収入金額が1,000万円超 | 確定申告書に収支内訳書などの添付が必要 |
| 不動産所得・事業所得・山林所得がある人 | 帳簿・書類を5年間(記帳制度に基づく法定帳簿は7年間)保存 |
出典: 国税庁 No.1500 雑所得、No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
保存義務がない場合でも、減価償却費の計算には設備の取得価額がわかる契約書・領収書が要ります。購入時の書類は設備を使い続ける限り手元に残しておくのが実務的です。
導入前の段階なら太陽光発電の投資回収シミュレーションと見積書の読み方、FIT期間が終わったあとの扱いは卒FIT後の売電と選択肢をご覧ください。
まとめ
- 給与所得者が自宅に設置した太陽光の余剰売電収入は雑所得(国税庁 質疑応答事例)。給与を1か所から受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。
- 判定に使うのは売電収入ではなく**「売電収入 − 必要経費」の雑所得**。減価償却は耐用年数17年・定額法の償却率0.059で、発電量のうち売却した電力量の割合を業務用割合として按分します。自家消費分は経費になりません。
- 住民税は所得税とは別ルール。所得税の確定申告をしない場合、市区町村への申告が必要になり得ます。自治体の案内を確認してください。
- 自宅兼店舗・賃貸アパート・営農型は所得区分が変わり、10kW以上でも容量だけで事業所得と決まるわけではありません。判断に迷う場合は所轄税務署または税理士へ。