【2026年8月25日時点】 国のDR家庭用蓄電池補助金(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了し、新規申請はできません(次回は未公表)。出典: SII。2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhです。出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等。制度は動くため、契約前に公式サイトで最新情報を確認してください。
「北海道は雪が多いから太陽光発電は無理」とよく言われます。ところが気象庁の平年値を開くと、少なくとも日射量については話が違います。
北海道で太陽光発電のハードルになるのは日射量ではなく、積雪の設計です。 気象庁の平年値(1991〜2020年)で日平均の全天日射量は札幌12.3MJ/m2、東京12.7MJ/m2。札幌は東京の約97%です。むしろ梅雨のない6月は札幌が東京を約27%上回ります。一方で12月と1月は東京の約6割まで落ち、屋根には垂直積雪量140cm(札幌市)分の荷重がかかります。判断すべきは「日照」ではなく「荷重と落雪と自家消費率」です。
この記事は、気象庁・北海道庁・建築基準法の条文・メーカーの公式説明書・北海道電力の公表単価という一次情報だけで構成しています。
この記事でわかること
- 札幌・帯広・釧路・旭川と東京の日射量と日照時間の実データ
- 「低温だと効率が上がる」の正体と限界(温度係数はセル温度にかかる)
- 北海道庁が定める垂直積雪量と、そこから出る積雪荷重の実数
- 雪止めを付けると荷重が増える建築基準法上のジレンマ
- 北海道電力の電気料金とFIT価格から回収を判断する式
北海道の日射量は東京とほぼ同じ
まず気象庁の平年値(統計期間1991〜2020年)で、水平面の全天日射量(日平均)と年間日照時間を並べます。
| 地点 | 年間日照時間 | 全天日射量 年値(MJ/m2・日) | 年間降雪の深さ合計 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 1,718.0時間 | 12.3 | 479cm |
| 帯広 | 2,020.1時間 | 12.7 | 198cm |
| 釧路 | 1,957.6時間 | 観測なし | 127cm |
| 旭川 | 1,566.5時間 | 12.0 | 557cm |
| (参考)東京 | 1,926.7時間 | 12.7 | 8cm |
釧路は気象庁が全天日射量を観測していない地点です。出典: 気象庁 平年値(札幌、帯広、釧路、旭川、東京)
帯広は全天日射量が東京と同じ12.7MJ/m2で、年間日照時間は東京を約90時間上回ります。 釧路の1,957.6時間も東京より長い数字です。太平洋側は冬に晴れる日が多く、降雪も札幌479cmに対し帯広198cmと半分以下。逆に日本海側の旭川は日照1,566.5時間・降雪557cmと道内でも条件が厳しい部類ですが、それでも全天日射量は12.0MJ/m2で東京の約94%あります。「北海道」とひとくくりにできないのが、まず押さえるべき点です。
月別に見ると強い月と弱い月がはっきり分かれる
札幌と東京の全天日射量(日平均・MJ/m2)を月別に比べます。
| 月 | 札幌 | 東京 | 対東京 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 6.0 | 9.4 | 約64% |
| 5月 | 18.4 | 17.3 | 約106% |
| 6月 | 18.8 | 14.8 | 約127% |
| 8月 | 15.9 | 15.8 | 約101% |
| 12月 | 4.9 | 8.1 | 約60% |
| 年値 | 12.3 | 12.7 | 約97% |
北海道には本州のような梅雨がなく、6月の日射量は札幌が東京を約27%上回ります。5月も札幌が上です。逆に12月・1月は東京の約6割で、ここに積雪でパネルが覆われる時間が重なります。年間で均して約97%という数字は、「夏に貯金して冬に吐き出す」構造の結果だと理解してください。
なお、ここで比べているのは水平面の日射量です。実際の発電量は屋根の方位・傾斜角・影・積雪でパネルが覆われる時間で変わるため、日射量が同じでも発電量が同じにはなりません。
「低温だと効率が上がる」の正体と限界
寒冷地の太陽光でよく語られる低温メリットは事実ですが、条件付きです。
シャープの太陽電池モジュールNU-440SNの設置工事説明書には、温度係数が公称値として明記されています。
| 項目 | 温度係数(NU-440SN) |
|---|---|
| 最大出力 | -0.300%/℃ |
| 開放電圧 | -0.259%/℃ |
| 短絡電流 | +0.046%/℃ |
この係数がかかるのはセル温度であって、外気温そのものではありません。カタログの公称最大出力はセル温度25℃が基準なので、セル温度が25℃より10℃低ければ最大出力は3.0%高く、10℃高ければ3.0%低くなる計算です。晴天時のパネルは日射で温まるため、外気温がそのままセル温度になるわけではない点に注意してください。
気象庁の平年値では8月の日平均気温が札幌22.3℃、東京26.9℃で4.6℃の差があります。同じ日射・同じ設置条件なら札幌のほうがセル温度は上がりにくい、というのが低温メリットの中身です。ただし前節のとおり冬の日射量が東京の約6割まで落ちるため、年間で見て北海道が有利になるという話ではありません。
寒冷地こそストリング設計を確認する
見落とされがちなのが開放電圧です。温度係数がマイナスということは、低温では開放電圧が上がるということです。同じ説明書は推奨最大直列数を「最大システム電圧÷(公称開放電圧×1.25)」で計算するとし、この1.25を「最低推定動作温度が-40℃の場合の安全係数」と説明しています。モジュールの使用環境も、環境温度の下限が-40℃と明記されています。
つまり、冬の朝のような低温時にパワーコンディショナーの最大入力電圧を超えないよう、1ストリングに何枚直列でつなぐかは寒冷地ほどシビアに効きます。見積書の枚数配置は屋根の割り付けではなく電気設計であり、これを説明できるかは施工会社の実力を測るものさしになります。
垂直積雪量から出る「本当の重さ」
ここからが北海道の本題です。
建築基準法施行令第86条第1項は、積雪荷重を「積雪の単位荷重×屋根の水平投影面積×その地方における垂直積雪量」で計算すると定めています。第2項は単位荷重を積雪量1cmごとに1平方メートルにつき20ニュートン以上と規定し(多雪区域については特定行政庁が規則で別に定めることができます)、第3項で垂直積雪量は特定行政庁が規則で定めるとしています(e-Gov 建築基準法施行令)。
北海道庁が公表している主な市の垂直積雪量は次のとおりです。
| 市 | 垂直積雪量 | 単位荷重20N換算 |
|---|---|---|
| 小樽市 | 150cm | 3,000N/m2(約306kg/m2相当) |
| 札幌市 | 140cm(南区の一部190cm) | 2,800N/m2(約286kg/m2相当) |
| 旭川市 | 130cm(江丹別(春日、嵐山を除く)230cm) | 2,600N/m2(約265kg/m2相当) |
| 帯広市 | 130cm | 2,600N/m2(約265kg/m2相当) |
| 北見市 | 100cm | 2,000N/m2(約204kg/m2相当) |
| 釧路市 | 70cm(旧音別町90cm、旧阿寒町100cm) | 1,400〜2,000N/m2(約143〜204kg/m2相当) |
| 函館市・苫小牧市・室蘭市 | 70cm | 1,400N/m2(約143kg/m2相当) |
出典: 北海道 建設部住宅局建築指導課 垂直積雪量(建築基準法施行令第86条第3項に基づく)。同ページは多雪区域以外の区域を「垂直積雪量100cm未満の区域」としています。
同じ北海道でも函館市と小樽市では倍以上違います。 「北海道だから雪に強い架台」ではなく、「自分の市町村の垂直積雪量に対応した設計か」が正しい問い方です。
モジュール単体の荷重性能との関係
モジュール側にも荷重性能があります。前述のシャープNU-440SNの設置工事説明書の「荷重性能(静荷重)」表は、1つの工法につき絶対最大定格値・試験荷重・設計荷重の3つを併記しています。ボルト固定の正圧は絶対最大定格値3,000Pa・試験荷重6,000Pa・設計荷重4,000Pa、負圧は2,400Pa・3,600Pa・2,400Paです。試験荷重と設計荷重はIEC61215およびIEC61730で規定される値で、試験荷重は設計荷重に安全係数1.5を掛けた値だと注記されています。
ここで設計荷重だけを見ると数字を読み違えます。正圧の設計荷重4,000Paを建築基準法の単位荷重(積雪1cmあたり20N/m2)で割れば積雪200cm相当という計算になりますが、同じ表のボルト固定・正圧の絶対最大定格値は3,000Paで、こちらは積雪150cm相当です。設置の上限として効くのは、低いほうの数値です。
さらに荷重性能は固定方法で変わります。同表のクリップ固定①・④は正圧の設計荷重が2,400Pa(積雪120cm相当)にとどまり、札幌市の垂直積雪量140cmを下回ります(クリップ固定②・③は正圧の設計荷重4,000Pa)。「このモジュールなら北海道で使える」と製品名だけで言い切れる話ではなく、どの工法で何箇所固定するかまで含めた設計の問題です。
いずれにせよこれはモジュール単体の話で、架台・屋根の下地・住宅本体が同じだけ持つかは別問題です。製品側では対応範囲が地域の指標で示されており、シャープのNU-458SUは製品ページで「垂直積雪量最大150cmまでの地域に設置可能」としています(458W、変換効率23.0%、出力保証25年、機器保証15年)。
見積もり時に確認したいのは次の3点です。
- 提案されたモジュールと架台が、自分の市町村の垂直積雪量に対応しているか
- 屋根の下地・小屋組が積雪荷重に耐えるか(既存住宅なら特に)
- 荷重の根拠として、どの数値・どの規定を使っているか
落雪対策と積雪荷重は同時に成立しない
北海道で最も現実的なトラブルは落雪です。町田市は公式サイトで、国民生活センターの情報として**「パネル上を滑り出た積雪は、一般的な屋根に比べて遠くまで落下する」**と注意喚起し、家族の頭部に直撃してむち打ち症になった例や、隣家のテラス・物置・サンルームの屋根が壊れた例を挙げています(町田市)。同ページは、パネル上の雪下ろし作業をする場合についても「パネル表面は非常に滑りやすい」ため特に注意が必要だとしています。
ここで多くの記事が触れないのが、雪止めを付けると積雪荷重が増えるという条文上の関係です。
建築基準法施行令第86条第4項は、屋根勾配に応じて積雪荷重を減らせる「屋根形状係数」を定めています。式は次のとおりです。
μb = √cos(1.5β) (μb: 屋根形状係数、β: 屋根勾配(度))
| 屋根勾配 | 屋根形状係数(式による計算値) |
|---|---|
| 20度 | 約0.93 |
| 30度 | 約0.84 |
| 40度 | 約0.71 |
| 45度 | 約0.62 |
同項では、勾配が60度を超える場合は屋根の積雪荷重を零とすることができるとされています。ところが同項は冒頭で**「屋根に雪止めがある場合を除き」**と明記しています。つまり雪止めを設けると、勾配による荷重低減は使えません。
- 勾配を立てて雪を落とす → 荷重は減るが、落雪の到達距離が伸びる
- 雪止めで落雪を止める → 落雪リスクは下がるが、荷重低減が使えず屋根に載る重さが増える
この2つは同時には成立しません。 どちらを取るかは、隣地との距離、通路や駐車場の位置、屋根と小屋組の余力で決める設計判断です。町田市が、建築の設計者とパネル設置業者の双方に相談したうえで対策を検討するよう案内しているのは、まさにこの理由からです。
なお、雪下ろしのためにパネルに乗るのは避けてください。シャープの設置工事説明書は「太陽電池モジュールの上に乗らないでください」と明記しています。屋根上作業そのものの転落リスクもあります。
北海道で回収を判断する式
北海道の経済性は、実は発電量より電気料金で決まります。
1kWhの価値を並べる
| 使い道 | 1kWhあたりの金額 | 出典 |
|---|---|---|
| 自宅で使う(従量電灯B・280kWh超の第3段階) | 45円70銭 | 北海道電力 従量電灯 |
| 自宅で使う(従量電灯B・120〜280kWhの第2段階) | 41円98銭 | 同上 |
| FITで売る(1〜4年目) | 24円 | 資源エネルギー庁 |
| FITで売る(5〜10年目) | 8.3円 | 同上 |
従量電灯Bの電力量料金は第1段階(〜120kWh)35円69銭、第2段階41円98銭、第3段階(280kWh超)45円70銭(基本料金は30Aで1,254円00銭)。これに燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金が別途かかります。
自家消費1kWhの価値は、FIT1〜4年目の売電の約1.9倍、5年目以降は約5.5倍です。 北海道で太陽光を検討する意味は売電収入ではなく、高い買電単価を削れる点にあります。オール電化や暖房で電気を多く使う家ほど有利になる構造です。
費用側の一次情報
JPEA(太陽光発電協会)は経済産業省 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月)を出典に、2025年の10kW未満・新築設置のシステム費用は平均28.9万円/kW、中央値29.4万円/kWと公表しています(JPEA)。機器一式と電気工事・設置工事費を含む額です。
ただしこれは全国の統計値です。積雪地で架台や雪対策がどれだけ上乗せになるかを示す一次情報は確認できませんでした。金額は見積もりで確認してください。
判断のための式
年間メリット(円) = 年間発電量(kWh) ×[ 自家消費率 × 買電単価 + (1 − 自家消費率) × 売電単価 ]
回収年数の目安 = 実質負担額(補助金差引後) ÷ 年間メリット
本記事では、北海道の年間発電量(kWh/kW)の推計値は示しません。当編集部が一次情報として確認できたのは日射量の平年値までで、実際の発電量は方位・傾斜角・影・積雪でパネルが覆われる時間に左右されるためです。業者のシミュレーションを受け取ったら、次の3点を確認してください。
- どの日射量データを使ったか(公的なデータベースか、自社の独自値か)
- 積雪期の発電低下を見込んでいるか、見込んでいるなら何%か
- 自家消費率を何%に置いたか、その根拠は何か
3番目が最も差を生みます。自家消費率が10ポイント違うと、発電1kWhあたりの価値は約2.2円変わります(45円70銭と24円の差の10%)。売電が8.3円になる5年目以降は、その差が約3.7円/kWhに広がります。計算の組み立て方は太陽光発電の投資回収を自分で計算する方法にまとめています。
なお北海道エリアでは、北海道電力ネットワークが再生可能エネルギーの出力制御について需給バランス制約・送電容量制約の情報と見通しを公開しています(北海道電力ネットワーク)。売電を前提に資金計画を立てる場合は、契約前に適用の有無を施工会社と確認してください。
補助金・共同購入と、業者選びの注意点
使える補助金は市町村の制度
北海道(道)には個人が直接申請できる住宅用の補助金はなく、窓口は市町村です。
札幌市の再エネ省エネ機器導入補助金制度(2026年度)は、太陽光発電が1kWあたり2万円(上限13万9千円)、定置用蓄電池が1kWhあたり1万6千円(上限6万4千円)。第2回募集は2026年9月1日〜11月4日(郵送必着)です。注意したいのは、太陽光の補助を受けるには定置用蓄電池またはEVと接続することが条件で、モジュール合計出力1.5kW以上、全量売電は対象外という点です(札幌市)。太陽光だけを載せる計画では、札幌市の補助は使えません。
道は補助金とは別に「太陽光発電及び蓄電池システム共同購入事業」を実施しています。2026年度の参加登録期間は2026年4月9日〜12月9日、設置対象地域はさっぽろ連携中枢都市圏・胆振管内11市町・旭川市。参加登録に費用はかからず、購入を義務づけるものではないと道が案内しています(北海道)。市町村ごとの金額や申請順序の違いは北海道の蓄電池・太陽光補助金で整理しました。
点検商法の相談は7年で10倍以上に増えている
国民生活センターは2025年6月4日、太陽光発電システムの点検商法に関する相談が急増していると公表しました。PIO-NETに登録された相談件数は2017年度57件、2021年度90件、2022年度154件、2023年度304件、2024年度613件と推移しています(国民生活センター)。
積雪地では「雪で架台がゆがんでいる」「落雪で近所に迷惑がかかる」といった不安が説得材料に使われやすい環境があります。その場で判断を求められたら、契約せず複数社に確認するのが基本です。手口の見分け方は太陽光・蓄電池の詐欺的な営業、相見積もりの取り方は太陽光の見積もり比較にまとめました。
防災の観点
札幌市は補助制度の目的に、ブラックアウトの経験から非常時でも電気が使える自立分散型電源の構築を掲げています。北海道で太陽光と蓄電池をセットで考える意味は、行政側の制度設計にも織り込まれています。停電時の実際は停電時に蓄電池で何が使えるかをご覧ください。
まとめ
- 日射量は不利ではない。 気象庁平年値の全天日射量(日平均)は札幌12.3・帯広12.7・東京12.7MJ/m2。6月は札幌が東京を約27%上回り、12月は約6割に落ちる
- 勝負どころは積雪の設計。 北海道庁の垂直積雪量は小樽市150cm・札幌市140cm・函館市70cmと市町村で倍以上違う。施行令86条の単位荷重(積雪1cmあたり20N/m2)で換算すると札幌は約286kg/m2相当
- 雪止めと荷重低減は両立しない。 施行令86条4項の屋根形状係数は「屋根に雪止めがある場合を除き」適用される。落雪を止めるか荷重を減らすかは設計判断
- 経済性は高い買電単価で決まる。 従量電灯B第3段階45円70銭に対しFITは1〜4年目24円/kWh。自家消費率をどう置いたシミュレーションかを確認する