【2026年9月1日時点】 国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(上限60万円/申請)は、2026年5月29日に交付申請額が予算に達したため公募終了しました。2026年9月1日時点で新規申請はできず、次回公募は未公表です。出典: SII
停電対策として蓄電池は有効ですが、「何日でも電気が使える設備」ではありません。 メーカーが公表している「定格出力可能時間」は、たとえばニチコンの16.6kWhモデルで300分(5時間)です。政府が家庭に推奨する備蓄日数は3日分、大規模災害時は1週間分。この差をどう埋めるかが、停電対策として蓄電池を選ぶときの本当の論点になります。
この記事でわかること
- メーカー公表スペックで見る停電時に使える時間の考え方
- カタログの kWh と実際に取り出せる初期実効容量の差
- 全負荷型と特定負荷型の違い、そして自立出力の上限
- 停電時につないではいけない機器・動かない可能性がある機器
- 2026年9月1日時点の補助金の状況と、価格の調べ方
機種別では、テスラPowerwall 3の自立運転時出力9.69kWを国産4社の公式値と並べた比較をPowerwall 3は停電時にどこまで使えるかにまとめています。
停電時に蓄電池は何時間使えるのか
まず「何日分」備えるかを決める
日本は台風の常襲地帯です。気象庁の平年値(1991〜2020年の30年平均)では、日本への台風の接近数は年11.7個、上陸数は年3.0個とされています。出典: 気象庁 台風の平年値
首相官邸の「災害に対するご家庭での備え」は、飲料水・食料などの備蓄を3日分とし、「大規模災害発生時には、『1週間分』の備蓄が望ましい」としています。出典: 首相官邸
電気は水や食料と違い、買い置きの量を大きく増やせません。家庭用蓄電池が貯められるのは、後述する各社の公表値で7.7〜16.6kWh程度。この有限の電気を「何に、何日使うか」を先に決めないと、容量も機種も選べません。
メーカー公表の「定格出力可能時間」で見る
「10kWhなら何時間使えるか」という目安はネット上に多く出回っていますが、条件が示されていない数字は当てになりません。確実なのは、メーカーが仕様書に載せている「定格出力可能時間」です。 これは定格出力で連続放電したときに何分持つかを示す値で、各社が公式に公表しています。
| 製品 | 蓄電容量 | 初期実効容量 | 定格出力 | 定格出力可能時間 |
|---|---|---|---|---|
| ニチコン ESS-U4X1 | 16.6kWh | 14.4kWh | 3.0kW | 300分 |
| ニチコン ESS-U4M1 | 11.1kWh | 9.4kWh | 3.0kW | 195分 |
| シャープ JH-WB2021 | 9.5kWh | 8.0〜8.1kWh | — | 連系150分・自立150〜220分 |
| ニチコン ESS-U5L1 | 9.7kWh | 8.6kWh | 5.9kW(自立5.9kVA) | — |
| ニチコン ESS-U5M1 | 7.7kWh | 6.8kWh | 4.0kW(自立4.0kVA) | — |
出典: ニチコン ESS-U4シリーズ、ニチコン ESS-U5シリーズ、シャープ 蓄電池システム品番一覧
シャープJH-WB2021は、組み合わせるパワーコンディショナによって自立運転時の値が変わります(JH-55NF3・JH-40NF2・JH-55KF4B構成は150分で初期実効8.1kWh、JH-55KT3B・JH-42KT2B構成は220分で初期実効8.0kWh)。同じ蓄電池でも周辺機器の構成でスペックが動くため、見積書の型番まで確認してください。
読み方の注意点は次の2つです。
- これは「上限まで出し続けたとき」の時間。 16.6kWhのESS-U4X1でも、3.0kWを出し続ければ5時間で空になります。逆に使う家電を絞れば大幅に長く持つため、最短ケースだと理解してください
- 実際の持続時間は接続する家電の構成で変わるため、「◯kWhなら◯時間」という一律の目安は存在しません
カタログの kWh がそのまま使えるわけではない
見落とされがちなのが初期実効容量です。シャープはJH-WB2021(9.5kWh)の初期実効容量を「8.0〜8.1kWh(JEM 1511に基づく値)」と明記。ニチコンも定格容量と初期実効容量を分けて公表しています。
各社の公表値から計算すると、ここに挙げた5機種では初期実効容量は定格容量のおよそ84〜89%(16.6→14.4kWh、11.1→9.4kWh、9.7→8.6kWh、7.7→6.8kWh、9.5→8.0kWh)。ただしこの比率は全製品共通ではなく、国のDR家庭用蓄電池事業に登録された166製品では最小73.0%・中央値84.8%・最大91.9%と幅があります(出典: SII 蓄電システム製品一覧・2026年9月8日取得)。測定規格はニチコンESS-U4とシャープがJEM 1511、ニチコンESS-U5はJIS C 4413です。つまり「10kWhの蓄電池」は、実際には8kWh台を取り出せる設備と考えるのが正確です。容量の考え方は蓄電池の容量(kWh)の選び方も参照してください。
さらに蓄電池は経年で容量が落ちます。ニチコンESS-U4シリーズの本体保証は10年で、内容は「充電可能容量50%以上を、設置から10年保証」というもの。購入時に申し込めば有償で5年延長でき、最長15年まで伸ばせます。保証は「容量が減らない」保証ではない点は理解しておきましょう。ESS-U5シリーズは15年保証ですが、ニチコンオーナーズ倶楽部への無料会員登録と、引き渡し後6ヶ月以内の申請が条件です(ニチコン ESS-U5シリーズ)。申請を忘れると15年保証は受けられないため、契約時に販売店へ手続きを確認してください。
全負荷型と特定負荷型の違い
停電対策で最初に決めるのが、停電時に電気を送る範囲です。
ニチコンの用語集は「全負荷対応分電盤」を**「停電時に家庭全体に電力を供給する分電盤のこと」**と定義しています。出典: ニチコン 蓄電池用語集
一方の特定負荷型は、あらかじめ選んだ回路(冷蔵庫、照明など)だけに供給します。ニチコンではESS-U5シリーズが「全負荷&特定負荷対応モデル」、ESS-U4シリーズが「全負荷200V対応モデル」と整理されています。
| 全負荷型 | 特定負荷型 | |
|---|---|---|
| 停電時の給電範囲 | 家庭全体 | あらかじめ選んだ回路のみ |
| 200V機器(エアコン・IH) | 対応機種あり | 基本的に対象外 |
| 電気の減り方 | 使いすぎると早く空になる | 絞られる分、長く持ちやすい |
| 必要な工事 | 全負荷対応分電盤 | 重要負荷の回路分け |
「全負荷」でも同時に使える電力には上限がある
全負荷型は家中のコンセントに電気が来るという意味であって、すべての家電を同時に動かせるという意味ではありません。
たとえばニチコンESS-U4シリーズの定格出力は3.0kW。200Vのエアコンと IHクッキングヒーターを同時に全開で使えば、この上限は簡単に超えます。
停電時の出力上限は機種で大きく異なります。シャープが公表する自立運転時の出力は、太陽電池パワコン(JH-40FD2Pなど)で1.5kVA、ハイブリッドパワコン(JH-55KT3Bなど)で2.0kVA、蓄電池連携型パワコン(JH-55KF4Bなど)で5.5kVAです。ただしシャープは注記で、「蓄電池のみの場合」は接続する蓄電池により3.0kVAまたは4.0kVA、それ以外は2.0kVAとしています。日射のない夜間の停電ではこちらが実力値になる点に注意してください。出典: シャープ 自立運転について
容量(kWh)ではなく出力(kW/kVA)が、停電時に「同時に何を動かせるか」を決めます。 見積もりでは自立運転時の出力も確認してください。詳しい比較は全負荷型と特定負荷型の違いで解説しています。
停電時につないではいけない機器・動かない機器
シャープは自立運転について、**「人命に直接かかわる医療機器および人身の損傷に至る可能性のある装置」と「灯油やガスを用いた暖房機器」**を接続しないよう明記しています。さらに停電時には、モーター駆動機器(冷蔵庫、エアコンなど)や起動時に大電流が流れる機器、アースが必須の機器は利用できない可能性があるとしています。出典: シャープ 自立運転について
つまり、在宅医療機器の停電対策を蓄電池だけに委ねるのは適切ではありません。 人工呼吸器や在宅酸素などを使っている場合は、機器メーカーが指定する非常用電源と予備バッテリーを基本とし、かかりつけ医療機関や自治体の案内に従ってください。
また、太陽光発電協会(JPEA)は**「停電時に備え、平常時にあらかじめ『自立運転機能』の操作方法を確認しておくことをお奨めいたします」**としています。切り替え方法は機種ごとに異なります。出典: JPEA 停電時の対応
導入後に一度は実地で試しましょう。手順は蓄電池の停電時動作テストにまとめています。
太陽光との併用で長期停電に備える
蓄電池単体は「貯めた分を使い切ったら終わり」の設備です。1週間規模の停電に備えるなら、日中に発電して充電し直せる太陽光発電との併用が現実的な選択肢になります。ただし期待値は正しく持ちましょう。
- 太陽光の自立運転は日射があるあいだだけ動きます。天候・季節・屋根の方位で発電量は大きく変動します
- パワーコンディショナ単体の自立運転出力はシャープの例で1.5kVA。太陽光だけでエアコンや IHを動かすことは想定されていません
- 発電量は立地と設備条件で決まるため、「1日◯kWh発電できる」と一律に断定できる数字はありません。 設置予定地の日射条件に基づくシミュレーションを出してもらってください
経済性でも、発電した電気を売るより使う流れが強まっています。2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです。出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等
後半の単価が下がる設計のため、自家消費に回す価値が相対的に高まっています。 防災と日常の電気代対策が同じ方向を向くのが、太陽光と蓄電池を組み合わせる利点です。
2026年9月1日時点の補助金と価格の調べ方
国の補助金は受付終了
国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(上限60万円/申請)は当初2026年12月10日までの公募予定でしたが、2026年5月29日に交付申請額が予算に達したため終了しました。次回公募は未公表です。出典: SII 経緯はDR補助金終了後の動向で追っています。
自治体の制度は別枠(東京都の例)
自治体の補助は国と別枠です。東京都の「令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業」は次の内容です。
- 蓄電池パッケージ: 蓄電容量10万円/kWh(税抜経費が上限)、DR実証不参加の場合の上限120万円/戸
- DR実証に参加する場合は10万円〜15万円/台の加算
- 蓄電池ユニット増設: 6万円/kWh、DR実証不参加の場合の上限72万円/戸
- 事前申込は令和8年5月29日、交付申請兼実績報告は令和8年6月30日開始。対象は都内の住宅に新規設置された機器
- 令和8年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIの令和8年度登録済製品一覧に登録された機器のみが対象(令和8年4月1日から6月30日までに契約締結または契約・工事完了した分を除く)
出典: クール・ネット東京
金額・受付期間・対象機器の条件は自治体ごとに異なり、年度途中で終了することもあります。お住まいの自治体の公式ページで最新状況を確認してください。
価格は「公表しているメーカー」と「非公表」に分かれる
価格は各社で方針が分かれます。ニチコンは希望小売価格を公表しており、ESS-U4X1が税抜4,500,000円、ESS-U4M1が税抜3,700,000円です(いずれも工事費別)。出典: ニチコン ESS-U4シリーズ
一方、2026年8月3日に日本で発売されたテスラ Powerwall 3(13.5kWh、9.69kW、保証10年)は価格が非公表です。出典: Tesla Japan プレスリリース(2026年8月3日) 実際の支払額は機器代に工事費・分電盤工事・諸経費が乗るため、公表価格と見積もり総額は一致しません。 複数社から見積もりを取り、内訳を比べてください。
なお訪問販売で契約した場合は、特定商取引法に基づき法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であればクーリング・オフができます。出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド 訪問販売 不安なときは消費者ホットライン「188」へ。手口は蓄電池・太陽光の訪問販売にまとめています。
蓄電池を入れるほどではない場合の代替として、ポータブル電源のメーカー別の保証・返品条件はポータブル電源の主要メーカー比較で比較しています。
まとめ
- 使える時間はメーカーの「定格出力可能時間」で確認する。 ニチコンESS-U4X1(16.6kWh)は3.0kWで300分、シャープJH-WB2021(9.5kWh)は連系運転時150分・自立運転時150〜220分
- カタログの kWh は満額使えない。 取り出せる初期実効容量は、本文で挙げた5機種では定格容量の約84〜89%(SII登録166製品全体では73.0〜91.9%・中央値84.8%)
- 全負荷型でも同時に使える電力には上限がある。 容量(kWh)だけでなく自立運転時の出力(kW/kVA)を確認する。医療機器の接続はメーカーが禁じており、在宅医療の停電対策は機器メーカーと医療機関の指示に従う
- 2026年9月1日時点で国のDR補助金は受付終了。 自治体制度は別枠のため、居住地の公式サイトで受付状況を確認する