【2026年8月28日時点】 2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhです。出典: 資源エネルギー庁「調達価格等一覧」。また国の家庭用蓄電池補助金(令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業、上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、2026年8月時点で新規申請はできません。出典: SII 公式
「曇りの日が多い土地だけど、太陽光発電は元が取れるのだろうか」——導入前にいちばん多い不安のひとつです。
結論から言うと、曇りでも雨でも太陽光発電は発電します。メーカーの公式説明では晴れの日と比べて1割〜5割程度です。そして年間の発電量を左右するのは「日照時間の長さ」ではなく「全天日射量」で、この2つは同じ順番には並びません。
この記事では、メーカー公式の説明と気象庁が公表している平年値だけを使って、曇りと発電量の関係を確認します。
この記事でわかること
- 曇り・雨の日の発電量についてメーカーが公式に何と言っているか
- 曇天でも発電が続く理由(直達日射と散乱日射の違い)
- 「日照時間」で判断すると読み違える理由と、気象庁による日照時間の定義
- 気象庁の平年値で見た地域別・月別の日射量データ
- 曇りを前提に導入計画をどう組むか
曇り・雨の日の発電量は「晴天比1割〜5割」
まずメーカーの公式見解です。長州産業のFAQ「発電量は曇りや雨などの天候によって違いますか?」には、次のように書かれています。
太陽電池の出力は、ほぼ日射量に比例します。明るさにもよりますが日射量がゼロでなければ曇りや雨の日でも発電はできます。ただし、晴れの日と比較すれば1割〜5割程度の発電となります。
出典: 長州産業 よくある質問
京セラも同様に、「発電電力は入射する光エネルギーに比例しますので、雨の日であっても、日射があれば発電します」と説明し、注記で「晴天時よりも発電量は劣ります」と添えています(出典: 京セラ「曇りや雨の日でも発電するのですか。」)。
ポイントは2つです。
- 出力はほぼ日射量に比例する。 天候そのものではなく、パネル面に届く光の量で決まります
- 「1割〜5割」の幅が非常に大きい。 薄曇りと土砂降りでは届く光の量がまったく違うため、「曇りの日は◯%」と一律に言うことはできません
なお、発電量がゼロになるケースもあります。京セラの公式Q&Aは「太陽電池全面に雪が積もり日射がさえぎられますと発電しません」と明記しています(出典: 京セラ「雪が積もっても発電しますか。」)。雲は光を通しますが、積雪はパネル面を物理的に覆ってしまうため、曇りとはまったく別の問題です。積雪地での対策は雪国・寒冷地の太陽光発電で詳しく扱っています。
曇りでも発電できる理由:直達日射と散乱日射
地表に届く太陽の光は、大きく2種類に分かれます。気象庁の用語解説では次のように定義されています。
- 直達日射:太陽光球面から直接地上に到達する太陽放射
- 散乱日射:大気成分により散乱・反射して天空の全方向から届く太陽放射
出典: 気象庁「日射に関する用語」
晴天時は直達日射が主役ですが、雲に覆われると直達日射が遮られ、代わりに散乱日射が主役になります。散乱日射は「天空の全方向から届く」ため、太陽の位置が雲で見えなくてもパネル面には光が届き続けます。これが、曇りでも発電がゼロにならない物理的な理由です。
そしてこの2つを合わせた「全天日射量」が、太陽光発電の発電量に直結する指標になります。
「日照時間」で判断すると読み違える
多くの人が地域の日当たりを「年間日照時間」で比べますが、太陽光発電の判断材料としては注意が必要です。気象庁は日照時間を次のように定義しています。
直射日光が地表を照射した時間。直達日射量が0.12kw・m⁻²以上として定義。
出典: 気象庁 予報用語「日照時間」
つまり日照時間は、直達日射が一定の強さを超えた時間だけを数えています。曇天時の散乱日射はどれだけ届いていても日照時間には1分も加算されません。一方で太陽光パネルは、その散乱日射でも発電します。日照時間と発電量がずれるのはこのためです。
天気の呼び方にも同じズレがあります。気象庁の観測上の定義では、「晴れ」は全雲量が2以上8以下の状態、「曇り」は全雲量9以上で中・下層の雲が多い状態、「薄曇り」は全雲量9以上で上層の雲が多い状態です(出典: 気象庁 予報用語「天気」)。空の8割が雲でも観測上は「晴れ」であり、体感の「曇り空」とは一致しません。天気予報の印象で発電量を推し量るのは、そもそも精度の高い方法ではないということです。
東京の月別データ:梅雨の6月は冬晴れの12月の約1.8倍
気象庁が公表している東京の平年値(統計期間1991〜2020年)を、日照時間・全天日射量・雲量の3つで並べます。
| 月 | 日照時間(時間) | 全天日射量(MJ/m²・日平均) | 平均雲量 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 192.6 | 9.4 | 4.3 |
| 2月 | 170.4 | 11.5 | 5.4 |
| 3月 | 175.3 | 13.3 | 6.2 |
| 4月 | 178.8 | 16.1 | 6.7 |
| 5月 | 179.6 | 17.3 | 7.4 |
| 6月 | 124.2 | 14.8 | 8.5 |
| 7月 | 151.4 | 15.6 | 8.0 |
| 8月 | 174.2 | 15.8 | 7.4 |
| 9月 | 126.7 | 11.9 | 7.8 |
| 10月 | 129.4 | 9.8 | 7.1 |
| 11月 | 149.8 | 8.6 | 5.9 |
| 12月 | 174.4 | 8.1 | 4.7 |
| 年 | 1,926.7 | 12.7 | 6.6 |
読み取れることは明確です。
- 6月は日照時間124.2時間・平均雲量8.5と、年間で最も曇りがちな月。それでも全天日射量は日平均14.8MJ/m²で、年平均の12.7MJ/m²を上回ります
- 12月は日照時間174.4時間・平均雲量4.7と晴天が多いのに、全天日射量は8.1MJ/m²で年間最低水準。6月の約55%です
- 言い換えると、梅雨の6月の日射量は、冬晴れの12月の約1.8倍
夏は日の出から日の入りまでが長く、太陽高度も高いため、曇りがちでも1日に受け取る光の総量は冬を上回ります。「梅雨は発電しない」というイメージは、日照時間だけを見た誤解です。
なお全天日射量の単位MJ/m²は、3.6で割るとkWh/m²になります。東京の年平均12.7MJ/m²は約3.5kWh/m²/日です。
曇りが多い地域は太陽光発電に不利なのか
同じく気象庁の平年値(1991〜2020年)で、主要都市を比べます。
| 地点 | 年間日照時間(時間) | 年平均全天日射量(MJ/m²・日平均) | 年平均雲量 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 1,718.0 | 12.3 | 7.4 |
| 仙台 | 1,836.9 | 12.5 | 7.0 |
| 新潟 | 1,639.6 | 12.4 | 7.8 |
| 東京 | 1,926.7 | 12.7 | 6.6 |
| 名古屋 | 2,141.0 | 14.0 | 6.5 |
| 大阪 | 2,048.6 | 13.6 | 6.8 |
| 高松 | 2,046.5 | 13.9 | 6.6 |
| 福岡 | 1,889.4 | 13.3 | 6.8 |
| 那覇 | 1,727.1 | 14.5 | 7.2 |
出典: 気象庁「平年値(年・月ごとの値)」統計期間1991〜2020年・資料年数30年(札幌・仙台・新潟・東京・名古屋・大阪・高松・福岡・那覇。地点は検索トップから選択できます)
- 新潟は年間日照時間1,639.6時間と一覧で最短、平均雲量7.8と最も曇りがちです。それでも年平均の全天日射量は12.4MJ/m²で、東京の12.7MJ/m²に対して2%程度の差にとどまります
- 札幌も日照時間は東京より約11%短いのに、全天日射量の差は約3%です
- 那覇は日照時間が東京より約10%短く雲量も多いのに、全天日射量は14.5MJ/m²と一覧で最多です
日照時間の差はそのまま発電量の差にはなりません。「曇りが多い=太陽光発電に向かない」という判断は、指標の選び方を間違えている可能性があります。
ただし、ここで比べている全天日射量は水平面で観測した値です。実際のパネル出力は設置方位・傾斜角・影のかかり方で変わりますし、積雪地では前述のとおりパネル面が雪で覆われている間は発電しません。「全天日射量が近い=発電量も同じ」ではないので、地域の条件は個別に確認してください。
一方で、方位による差はもっと直接的です。長州産業のFAQでは「南向きを100%とすると、東・西向きは80〜85%となります」と説明されています(出典: 長州産業 よくある質問)。天候より先に確認すべきなのは屋根の条件で、詳しくは屋根の向き・角度と発電効率で解説しています。
曇りを前提に導入計画を組む
天候は変えられないので、曇りの日があることを織り込んだ設計にします。
1. 「売る」より「使う」を前提に考える
2026年度の住宅用FIT(10kW未満)の買取価格は、1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁)。5年目以降の単価は大きく下がるため、発電した電気を自宅で使う「自家消費」の比率が経済性を左右します。曇りの日は発電量が落ちて買電が増えるぶん、自家消費の設計はより重要になります。考え方は太陽光の自家消費を増やす方法にまとめています。
2. 蓄電池は「曇りが続く日」を基準に選ぶ
蓄電池は、晴れた日の余剰を夜に回す装置です。曇りが数日続けば充電しきれない日も出ます。容量を決めるときは晴天日ではなく、曇天が続いたときにどこまで賄いたいかから逆算するのが実務的です。
補助金については、国の家庭用蓄電池補助金(令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)が2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、2026年8月時点で新規申請はできません(出典: SII)。経緯と次回に向けた準備はDR補助金の終了と次回の見通しを参照してください。自治体の制度は別枠で動いており、東京都は令和8年度に蓄電容量1kWhあたり10万円(DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸)を助成しています(出典: クール・ネット東京)。
3. 見積もりのシミュレーションは「元データ」を確認する
販売店が提示する年間発電量のシミュレーションは、何らかの日射量データを前提にしています。公的に公開されているものとしてはNEDO「日射に関するデータベース」があります。見積もりを比較するときは、どの日射量データを使い、設置方位・傾斜角・損失をどう見込んだかを確認してください。同じ屋根でも前提が違えば数字は変わります。
参考として、太陽光発電協会(JPEA)は住宅用システムの年間発電電力量の目安を1kWシステムあたり1,183kWh/kW/年(JPEAは「経産省 調達価格等算出委員会の2019年度意見書により設備利用率13.5%として」算出したと注記しています)と示しています(出典: JPEA 住宅用太陽光発電システムのメリット)。あくまで全国的な目安であり、実際の値は地域と屋根の条件で変わります。投資回収の計算方法は太陽光パネルの投資回収シミュレーションを参照してください。
まとめ
- 曇りや雨でも太陽光発電は発電する。メーカーの公式説明では晴天比1割〜5割。ただし雲の厚さで幅が大きく、一律の数値では表せない
- 発電がゼロになるのは夜間のほか、積雪などでパネル面が完全に覆われた場合。雲に覆われているだけなら散乱日射で発電は続く
- 判断指標は日照時間ではなく全天日射量。日照時間が東京より約15%短い新潟でも、年平均の全天日射量の差は2%程度にとどまる
- 東京の平年値では、曇りがちな6月(14.8MJ/m²)の日射量は晴天が多い12月(8.1MJ/m²)の約1.8倍。梅雨=発電しない、ではない