【2026年8月28日時点】 2026年度(令和8年度)の「新築戸建ZEH」補助事業は公募受付中で、単年度事業の締切は2026年12月11日17時ですが、先着順のため申請額の合計が予算に達した日で受付は終了します(その日の申請は抽選)。一方、国の家庭用蓄電池向けDR補助金は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、新規申請はできません。出典: SII 令和8年度 新築戸建ZEH 公募情報(一般公募)、SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
ZEH(ゼロエネルギー住宅)は、「断熱」「高効率設備」「創エネ」の3つで、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロに近づける住宅です。その基準は雰囲気ではなく、外皮平均熱貫流率(UA値)と一次エネルギー消費量削減率という2つの数値で厳密に決められています。
そして2025年4月には原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務づけられ、2030年には「ZEH水準の省エネ住宅」が新築の標準になる方向が示されています。判断は「ZEHにするか、しないか」から「どの区分を狙うか」へ移りつつあります。
この記事では、補助金額の詳細ではなく、ZEHの基準そのものを公式資料の数値で読み解きます。
この記事でわかること
- ZEHの定義と、収支ゼロが数えているエネルギーの範囲
- UA値と一次エネルギー消費量削減率の地域別基準
- 『ZEH』・Nearly ZEH・ZEH Oriented・ZEH+の4区分の違いと選び方
- 税制上の**「ZEH水準」とZEHが別物である**理由
- 2025年の省エネ基準義務化と2030年目標が家づくりに与える影響
ZEH(ゼロエネルギー住宅)とは
SII(環境共創イニシアチブ)が運営するZEH Webは、ZEHを「建物の断熱性能を高めて、高効率な設備を導入することによって消費するエネルギーを少なくすることで『省エネ』を実現するとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを創り出す『創エネ』によって、エネルギー収支が正味ゼロになることを目指した住宅」と定義しています(出典: SII ZEH Web)。
つまりZEHは3つの要素の組み合わせです。
- 断熱:外皮(壁・屋根・床・窓)の性能を上げ、暖冷房で必要なエネルギーそのものを減らす
- 省エネ設備:高効率エアコン、高効率給湯機、LED照明、省エネ換気などでエネルギーを上手に使う
- 創エネ:太陽光発電などの再生可能エネルギーで、敷地内でエネルギーを創る
「収支ゼロ」が数えているエネルギーの範囲
ここが最も誤解されやすいポイントです。ZEHの計算対象は電気代ではなく、建築物省エネ法に基づく設計一次エネルギー消費量です。しかも令和8年度ZEH支援事業の公募要領では、計算は「空調(暖房・冷房)、給湯、換気、照明に係る各設備に関する一次エネルギー消費量に限定し、『その他一次エネルギー消費量』は除きます」と明記されています(出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請向け))。
冷蔵庫やテレビなどの家電の消費電力はこの「その他」に入るため、計算に含まれません。**「ZEHだから電気代ゼロ」ではなく、「制度が定める5用途について、年間の設計値が正味ゼロ以下」**という意味だと理解しておくと、見積もり時のシミュレーションを冷静に読めます。
収支は年間の正味(ネット)で見るため、発電の少ない冬に買電し、余る季節に売電する実態は変わりません。売電は余剰買取方式に限られ、全量買取方式は認められていません(同 公募要領)。
なお2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 固定価格買取制度 買取価格)。売電で稼ぐより、創った電気を自宅で使う設計が合理的な水準です。
ZEHの数値要件を読み解く
外皮性能(UA値)の地域別基準
UA値(外皮平均熱貫流率)は、住宅全体からどれだけ熱が逃げやすいかを示す指標で、小さいほど高断熱です。日本は地域区分1〜8に分けられ、寒冷地ほど厳しい基準が課されます。
| 地域区分 | 『ZEH』のUA値 (断熱等性能等級5以上) | ZEH+のUA値 (断熱等性能等級6以上) |
|---|---|---|
| 1・2地域 | 0.40以下 | 0.28以下 |
| 3地域 | 0.50以下 | 0.28以下 |
| 4地域 | 0.60以下 | 0.34以下 |
| 5〜7地域 | 0.60以下 | 0.46以下 |
| 8地域 | 基準値なし(—) | 基準値なし(—) |
出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請向け)(単位はW/㎡K)
8地域はUA値の基準値がない代わりに、ZEH+では冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)5.1以下が求められます。ηAC値は日射をどれだけ室内に入れないかを示す指標で、ZEH+では5地域3.0以下、6地域2.8以下、7地域2.7以下。東京や大阪を含む6地域では、夏の日射遮蔽も設計要素になります。
一次エネルギー消費量削減率
もう1つの軸が削減率です。基準一次エネルギー消費量に対して、何%削減できる設計かを見ます。
| 区分 | 再エネ等を除く削減率 | 再エネ等を含む削減率 |
|---|---|---|
| 『ZEH』 | 20%以上 | 100%以上 |
| Nearly ZEH | 20%以上 | 75%以上100%未満 |
| ZEH Oriented | 20%以上 | 要件なし(再エネ未導入も可) |
| 『ZEH+』 | 30%以上 | 100%以上 |
| Nearly ZEH+ | 30%以上 | 75%以上100%未満 |
出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請向け)
「再エネ等を除く削減率」は断熱と設備の実力、「再エネ等を含む削減率」は太陽光の載せ方で決まります。**ZEHとZEH+の本質的な差は補助金額ではなく、この左の列(20%と30%)と外皮基準(等級5以上と等級6以上)**にあります。
ZEHの4区分と、どれを狙うべきか
『ZEH』
標準形です。UA値・削減率の3要件をすべて満たし、太陽光発電などで再エネ等を含む削減率100%以上を達成します。
Nearly ZEH
再エネ等を含む削減率が75%以上100%未満でも認められる区分です。対象は**寒冷地(地域区分1または2)、低日射地域(日射区分A1またはA2)、多雪地域(垂直積雪量100cm以上)**に限られます。北海道・東北や日本海側の雪国で、屋根に十分な太陽光を載せても収支ゼロに届きにくいケースの受け皿です。
ZEH Oriented
再エネ未導入でも認められる区分です。対象は、北側斜線制限の対象となる用途地域等であって敷地面積85㎡未満の土地に建築される住宅(平屋を除く)、または多雪地域の住宅に限定されます。都市部の狭小地で屋根面積を確保できない場合の選択肢ですが、公募要領はSIIへの事前相談を求めています。
ZEH+
外皮を断熱等性能等級6以上(UA値1〜3地域0.28以下、4地域0.34以下、5〜7地域0.46以下)、再エネ等を除く削減率30%以上まで引き上げた上位区分です。ZEH+側にも寒冷地・低日射地域・多雪地域向けに、再エネ等を含む削減率75%以上100%未満で足りる**Nearly ZEH+**が用意されています。
「選択要件」は『ZEH』とZEH+の両方で必須
令和8年度の公募要領は「ZEH及びZEH+において、『選択要件』のうち1つ以上を採用することが必須の要件です(ただし、ZEH Orientedは必須ではありません)」と明記しています。ZEH+だけの上乗せ条件ではなく、標準の『ZEH』でも1つ以上採用しなければ補助対象になりません。
- ❶ 再生可能エネルギーの自家消費の拡大措置(次から1つ以上を措置)
- ❶-1 初期実効容量5kWh以上の蓄電システム
- ❶-2 PVTシステム(太陽光発電パネルと太陽熱集熱器が一体のもの)
- ❶-3 太陽熱利用システム
- ❶-4 昼間に沸き上げをシフトする機能を有する給湯機
- ❶-5 電気自動車(PHEVを含む)の充電設備または充放電設備
- ❷ 高度エネルギーマネジメント(HEMSで太陽光発電などの発電量を把握したうえで、住宅内の暖冷房・給湯設備等を制御できること)
このほか、BELS(省エネ性能表示評価書)で『ZEH』であることを示す証書の取得も交付要件です。
出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請向け)、SII 令和8年度 ZEH補助金パンフレット
市場はすでにZEH+側に寄っています。SIIの集計では、令和7年度の戸建ZEH補助事業の交付決定は合計2,209件、内訳はZEHが436件、ZEH+が1,773件と全体の約8割でした(出典: SII 令和7年度 交付決定関連情報)。同資料は、2027年度から適用開始予定の「GX ZEHシリーズ」で一次エネルギー消費量削減率35%以上が求められることにも触れています。これから設計する家なら、ZEH+以上を前提に相談するのが素直な読み方です。
「ZEH水準」とZEHは別物
住宅ローン控除や住宅性能表示で出てくる**「ZEH水準省エネ住宅」は、ZEHとは要件が違います**。国税庁は「ZEH水準省エネ住宅」を、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の家屋と定義しており、太陽光発電の設置は要件に含まれていません(出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合)。
整理するとこうなります。
- ZEH水準:断熱と省エネ設備の「等級」の話。太陽光は要件外
- 『ZEH』:ZEH水準に相当する性能に加えて、再エネで収支100%以上まで持っていく話
ハウスメーカーが「ZEH基準クリア」と言うとき、どちらを指しているかは確認する価値があります。補助金の交付要件としての『ZEH』を満たすには、太陽光発電などの再エネ導入と、SIIに登録されたZEHビルダー/プランナーの関与が必要です(登録事業者はSIIの公表ページで検索できます)。
税制面では、住宅ローン控除に「ZEH水準省エネ住宅」の区分が用意されています。令和8年度税制改正で制度は5年延長され(入居が令和8年1月1日〜令和12年12月31日)、令和8年以降に入居する場合のZEH水準省エネ住宅の借入限度額は新築・既存とも3,500万円・控除期間13年です。4,500万円が適用されるのは子育て世帯・若者夫婦世帯(19歳未満の子がいる、または夫婦のいずれかが40歳未満)の上乗せ措置に限られます(国土交通省 住宅ローン減税)。令和6年・令和7年に居住した場合の借入限度額は3,500万円・各年の控除限度額24.5万円(特例対象個人=子育て世帯等は4,500万円・31.5万円)でした。省エネ基準を満たさない「その他の住宅」は、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものなどの経過措置に当たらない限り控除を受けられません(同 国税庁ページ、令和7年4月1日現在法令等)。2026年(令和8年)入居分の取扱いは同ページに記載がないため、契約前に国税庁の最新情報を確認してください。
2025年の義務化と2030年目標が意味すること
制度の流れも押さえておきましょう。
- 2024年(令和6年)4月1日施行:建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示(出典: 国土交通省 改正建築物省エネ法・建築基準法)
- 2025年(令和7年)4月1日施行:原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合を義務付け(同上)
- 2030年:「ZEH水準の省エネ住宅」が新築の標準に(出典: 国土交通省 建築物省エネ法のページ)
資源エネルギー庁のZEH解説ページも、第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)の政府目標として「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」を挙げています(出典: 資源エネルギー庁 ZEHに関する情報公開について)。
義務化された省エネ基準は、ZEH水準よりもう1段低い水準です。2025年4月以降に建つ家は最低ラインを満たしていますが、それはZEHでもZEH水準でもない点は押さえておきたいところです。
導入判断で確認したい4つのこと
1. 追加費用は「相場」ではなく見積もりで確認する
ZEH仕様の追加費用は断熱仕様・窓・設備構成・依頼先で大きく変わり、公的に定まった相場はありません。「一般的に○○万円アップ」という数字は出所を確認したうえで扱い、同じ間取りで仕様違いの見積もりを2案出してもらうのが現実的です。
2. 光熱費の削減額は一次エネルギー計算とセットで見る
削減率は制度上の指標であって電気代ではなく、実際の削減額は地域・世帯人数・在宅時間・電力プランで変わります。申請では設計一次エネルギー消費量を計算するので、その結果を見せてもらい、想定電力量に自分の電力単価を掛けて試算するのが確実です。
3. 補助金は先着方式で締切がある
令和8年度の新築戸建ZEHは先着方式で、単年度事業の公募期間は2026年5月21日10時から2026年12月11日17時までです。ただし公募要領は「申請金額の合計が予算に達した日の17時より後はポータル申請ができなくなります」としており、締切日より前に受付が閉じる可能性があります(予算到達日に届いた申請は抽選)。補助額は定額で、ZEHが地域区分1〜3で55万円/戸・4〜8で45万円/戸、ZEH+が1〜4で90万円/戸・5〜8で80万円/戸(出典: SII 令和8年度 ZEH補助金パンフレット)。加算は、蓄電システムが「初期実効容量1kWhあたり2万円」「補助対象経費の1/3」「上限20万円/戸」のうち最も低い額、EVの充電・充放電設備が上限10万円/戸、高度エネルギーマネジメントが定額2万円/戸です(出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請向け))。金額の内訳や併用ルールはZEH補助金2026の条件でまとめています。
4. 蓄電池は国と自治体で状況が違う
家庭用蓄電池への国の補助金(令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業、上限60万円/申請)は、2026年5月29日に予算到達で公募終了しました。2026年8月時点で新規申請はできず、次回の実施は公表されていません(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。
一方、自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は10万円/kWhで、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸です(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。選択要件として蓄電池を入れるなら、住んでいる自治体の制度も並べて確認してください。ZEHやZEBを含む「ネットゼロエネルギー」全体の考え方はネットゼロエネルギーとはで整理しています。
まとめ
- ZEHは断熱・省エネ設備・創エネの3要素で、暖房・冷房・換気・給湯・照明の一次エネルギー消費量を年間で正味ゼロに近づける住宅。家電は計算に含まれず、電気代がゼロになるという意味ではない
- 『ZEH』はUA値(1・2地域0.40以下、3地域0.50以下、4〜7地域0.60以下)と削減率(再エネ等を除き20%以上、再エネ等を含めて100%以上)が要件。ZEH+は断熱等性能等級6以上と再エネ等を除く削減率30%以上でさらに厳しい
- 補助金を受けるには「選択要件」(蓄電池・PVT・昼間沸き上げ給湯機・EV充電設備・高度エネルギーマネジメント)を1つ以上採用することが『ZEH』でも必須。BELS取得とZEHビルダー/プランナーの関与も要る
- 寒冷地・低日射・多雪地域はNearly ZEH、都市部狭小地等はZEH Orientedという受け皿がある
- 税制上の「ZEH水準省エネ住宅」は断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上で、太陽光発電は要件外。補助金の『ZEH』とは別物
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