ネットゼロエネルギーとは、建物が1年間に使う一次エネルギー消費量を、省エネと敷地内の再生可能エネルギーで正味ゼロに近づける考え方です。 住宅版がZEH(ゼッチ)、非住宅の建築物版がZEB(ゼブ)で、どちらも国が定義と数値の合格ラインを公表しています。
そして押さえておきたいのは、ZEHもZEBも「エコっぽい建物」という雰囲気の話ではなく、UA値と一次エネルギー消費量削減率という2つの数字で判定されるということ。この記事では、環境省・経済産業省とその執行団体であるSII(環境共創イニシアチブ)の公式資料に書かれている要件と金額だけを並べます。
【2026年8月25日時点】 令和8年度の戸建ZEH支援事業(単年度事業)の公募期間は2026年5月21日10時〜2026年12月11日17時ですが、受付は先着順で「申請金額の合計が予算に達した日の17時より後はポータル申請ができなくなります」と公募要領に明記されています。出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請用・PDF)(配布元: ZEH Web 戸建ZEH支援事業の概要)
この記事でわかること
- ネットゼロエネルギーが数えている**「一次エネルギー消費量」という物差し**
- ZEH・Nearly ZEH・ZEH Oriented・ZEH+の公式の数値要件(UA値と削減率)
- 令和8年度ZEH支援事業の地域区分別の補助額と蓄電システム加算の条件
- ZEB・Nearly ZEB・ZEB Ready・ZEB Orientedの削減率とBEI
- 2026年8月時点で動いている制度と止まっている制度
ネットゼロエネルギーの「ネット」は正味という意味
数えているのは電気代ではなく一次エネルギー消費量
「ネットゼロ」の「ネット」は正味、つまり差し引きという意味です。ここで差し引きされているのは電気代ではなく、設計一次エネルギー消費量です。
SIIの公募要領では、一次エネルギー消費量の計算対象が「住戸部分は住宅計算法(暖冷房、換気、給湯、照明(その他の一次エネルギー消費量は除く))」と定義されています。家電のコンセント消費(その他一次エネルギー消費量)は計算に入っていません。つまりZEHの「ゼロ」は、家庭で使う電気すべてを指しているわけではないということです。
再エネの数え方にも条件があります。公募要領の注記では「再生可能エネルギーの対象は敷地内(オンサイト)に限定し、自家消費分に加え、売電分も対象に含める。(ただし余剰売電分に限る。)」とされ、交付要件でも「売電を行う場合は余剰買取方式に限る(全量買取方式は認めません)」と明記されています。屋根に載せた太陽光を全量売電にすると、ZEHの再エネとしては認められません。
「光熱費ゼロ」とは公的資料に書かれていない
公的な定義はエネルギー収支の話であって、電気代がゼロになると約束するものではありません。年間トータルの正味で釣り合わせる設計なので、冬に暖房で消費が増える月があるのは前提です。営業トークで「光熱費ゼロ」と説明された場合は、それが定義上の話ではなく個別の試算であることを確認してください。
太陽光の載せ方から整理したい方は、ZEHと太陽光発電の基礎もあわせて読むと全体像がつかみやすくなります。
ZEHの定義を公式表のまま読む
戸建住宅のZEHは5つの分類に整理されています。以下はSIIの令和8年度公募要領に掲載された定義表(出典表記: 令和6年5月 ZEHフォローアップ委員会「ZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性について」)をそのまま整理したものです。
| 分類 | 外皮基準 | 一次エネ削減率(再エネ等を除く) | 一次エネ削減率(再エネ等を含む) | その他要件 |
|---|---|---|---|---|
| 『ZEH』 | UA値 1・2地域0.40以下 / 3地域0.50以下 / 4〜7地域0.60以下 | 20%以上 | 100%以上 | 再生可能エネルギーを導入(容量不問、全量売電を除く) |
| 『ZEH+』 | 断熱等性能等級6以上 | 30%以上 | 100%以上 | 上記に加え、追加要件❶❷のうち1項目以上 |
| Nearly ZEH | 『ZEH』と同じ | 20%以上 | 75%以上100%未満 | 寒冷地・低日射地域・多雪地域が対象 |
| Nearly ZEH+ | 断熱等性能等級6以上 | 30%以上 | 75%以上100%未満 | 追加要件❶❷のうち1項目以上 |
| ZEH Oriented | 『ZEH』と同じ | 20%以上 | 要件なし | 対象地域に該当。再生可能エネルギー未導入も可 |
出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請用・PDF)
強化外皮基準の注記には「1〜8地域の平成28年省エネルギー基準(ηAC値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA値1・2地域: 0.4W/㎡K以下、3地域: 0.5W/㎡K以下、4〜7地域: 0.6W/㎡K以下とする」とあります。8地域(沖縄など)にはUA値の定めがなく、補助事業の交付要件表でも「-」と記載されています。
Nearly ZEHとZEH Orientedが認められる地域
「太陽光で100%相殺できない」ケースの受け皿が、この2区分です。
- Nearly ZEH: 寒冷地(地域区分1または2)、低日射地域(日射区分A1またはA2)、多雪地域(建築基準法施行令第86条の規定により特定行政庁が定める垂直積雪量100cm以上の地域)
- ZEH Oriented: 都市部狭小地等(北側斜線制限の対象となる用途地域等であって、敷地面積が85㎡未満である土地。ただし住宅が平屋建ての場合は除く)、または多雪地域
なおZEH Orientedとして申請する場合、公募要領はZEH Webの「よくあるご質問」を確認したうえでの申請前のSIIへの相談を必須としています。北側斜線制限の対象であっても補助対象に該当しない場合がある、とも書かれています。
ZEH+の追加要件は蓄電池だけではない
ZEH+の追加要件は、次の2要素のうち1つ以上です。
❶再生可能エネルギーの自家消費の拡大措置(措置例)
- おひさまエコキュート
- 蓄電池(初期実効容量5kWh以上のものに限る)
- 電気自動車(プラグインハイブリッド車を含む)の充電設備(住宅との間で充放電が可能な設備を含む)
- 太陽熱利用システムまたはPVTシステム(いずれも強制循環式で一定の機能要件を満たすもの)
❷高度エネルギーマネジメント: HEMSにより太陽光発電設備等の発電量等を把握した上で、住宅内の暖冷房、給湯設備等を制御可能であること。
注目したいのは、蓄電池の条件が「初期実効容量5kWh以上」と書かれている点です。カタログの定格容量ではなく初期実効容量で線が引かれています。この2つの容量表示の違いは蓄電池の容量(kWh)の選び方で解説しています。
ZEH補助金は地域区分で金額が変わる
令和8年度の戸建ZEH支援事業(環境省事業)は、建物規模ではなくZEHの種別と地域区分で定額が決まる設計です。公募要領には「交付要件を満たす場合に限り、Nearly ZEH及びZEH OrientedはZEHと同額の補助金とします」「Nearly ZEH+はZEH+と同額の補助金とします」と明記されています。
| 補助対象住宅の種別 | 補助額(単年度事業) |
|---|---|
| ZEH(Nearly ZEH・ZEH Orientedを含む) | 地域区分1〜3: 定額55万円/戸、地域区分4〜8: 定額45万円/戸 |
| ZEH+(Nearly ZEH+を含む) | 地域区分1〜4: 定額90万円/戸、地域区分5〜8: 定額80万円/戸 |
複数年度事業という枠もあり、本年度(1年目)はBELS取得に係る費用として定額5万円/戸、後年度(2年目)は高性能断熱外皮・高性能設備に係る費用としてZEHが50万円または40万円/戸、ZEH+が85万円または75万円/戸です。複数年度事業の公募は2026年11月6日10時からで、1年目のみ・2年目のみの申請は受け付けないとされています。
施工側にも条件があります。公募要領は「申請する住宅は、SIIに登録されたZEHビルダー/プランナーが関与(建築、設計又は販売)する住宅であること」と定めています。登録事業者はZEH Webの登録事業者一覧で確認できます。
蓄電システムを追加したときの加算
蓄電システムは追加設備等として加算対象です。加算額は次の3つのうちいずれか低い金額とされています。
- 初期実効容量1kWhあたり2万円
- 蓄電システムの補助対象経費の1/3
- 補助額上限20万円/戸
そのうえで、補助対象になる蓄電システムには要件があります。
- 本年度、SIIに製品登録されていること(令和7年度以前に登録された製品は対象外)
- 蓄電システムの導入価格(設備費+工事費・据付費)が、蓄電容量1kWhあたり11.5万円(目標価格)以下であること
- 導入目的が「再生可能エネルギー・システムにより発電された電力の自家消費量を増加させる」ものであること(非常用の電力確保を目的として限定的に蓄電するものは対象外)
この「1kWhあたり11.5万円以下」は、家庭用蓄電池の本体価格が非公表(オープン価格)とされることの多いなかで、数少ない公的な価格の目安です。見積もりの妥当性を確認する材料になります。対象製品はSIIの蓄電システム登録済製品一覧で検索できます。
蓄電池以外にも、地中熱ヒートポンプ・システム 定額90万円/戸、直交集成板(CLT) 定額90万円/戸、PVTシステム(液体集熱式・パネル面積5㎡以上8㎡未満)65万円/戸などの加算が用意されています。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の4区分
ZEBは住宅ではなく非住宅の建築物が対象です。環境省のZEB PORTALでは、次の4区分が定義されています。
| 区分 | 削減率(再エネを除く) | 削減率(再エネを含む) | BEI |
|---|---|---|---|
| 『ZEB』 | 50%以上 | 100%以上 | BEI≦0.00 |
| Nearly ZEB | 50%以上 | 75%以上100%未満 | 0.00<BEI≦0.25 |
| ZEB Ready | 50%以上 | — | BEI≦0.50 |
| ZEB Oriented | 用途別に40%または30%以上 | — | — |
ZEB Orientedの削減率は用途で分かれており、事務所等・学校等・工場等が40%以上、ホテル等・病院等・百貨店等・飲食店等・集会所等が30%以上です。加えて「建築物全体の延べ面積が10,000㎡以上であること」「未評価技術を導入すること」が要件とされています。
ZEBが推進される背景と、公表されている効果
環境省は、業務部門のCO2排出量が2019年度時点で我が国全体の約2割を占め、1990年度以降、産業部門からのCO2排出量が24%減少したのに対して業務部門からは48%増となっていると説明しています。そのうえで2030年度に業務部門のエネルギー起源CO2排出量を2013年度比で51%削減し、「新築される建築物についてはZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す」としています(出典: 環境省 ZEB PORTAL)。
効果についても環境省は数値を示しており、50%の省エネを実現した場合、標準的なビルと比較して光熱費を40〜50%程度削減できるとしています。延床面積10,000㎡の事務所ビルの例では、公共建築物や自社ビルで年間約1,000万円の削減が可能とされています(出典: 環境省 ZEB PORTAL ZEBのメリット)。
2026年度のZEB実証事業
国の補助事業としては、経済産業省の令和8年度ZEB実証事業(執行団体はSII)があります。補助率は公募区分で異なり、A「ZEB化事業」が新築1/3以内・既存建築物(増築・改築・設備改修)1/2以内、B「既存テナント事業」が1/2以内、C「未評価技術単独事業」が新築・既存とも1/2以内です。補助金額の上限は各公募区分共通で3億円/年、複数年度事業における事業全体の上限は7億円です。対象規模は新築が延べ面積10,000㎡以上、既存建築物が2,000㎡以上とされています。
公募スケジュールは一次公募が2026年5月12日10時〜6月11日17時、二次公募が2026年7月24日13時〜8月17日17時で、2026年8月25日時点では二次公募も締め切られています(出典: SII 令和8年度 ZEB実証事業 公募情報、令和8年度 ZEB実証事業パンフレット(二次公募・PDF))。
2026年8月時点で動いている制度、止まっている制度
国の蓄電池補助金(DR)は止まっている
住宅向けでよく話題になる国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は、2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。次回公募は未公表です(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。
つまり2026年8月時点で、この制度への新規申請はできません。ZEH支援事業の蓄電システム加算(上限20万円/戸)とは別制度なので、混同しないよう注意してください。経緯は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
自治体の制度は動いている
東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は、新規設置の場合で10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸(ユニット増設は6万円/kWh・上限72万円/戸)で、DR参加の場合は加算があります。2026年10月1日以降はSII令和8年度登録品のみが対象です(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026を参照してください。
売電単価は下がっている
2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。
ZEHの判定では余剰売電分も再エネとしてカウントされますが、家計の話としては売電より自家消費に寄せたほうが有利になる場面が増えています。考え方は太陽光の自家消費を増やす方法で整理しています。
追加費用の「相場」は公的には存在しない
ZEHにするための追加費用について、公的機関が「◯◯万円」と示した相場はありません。断熱仕様も設備構成も地域区分・間取り・施工会社で変わるためです。公的な価格の物差しとして使えるのは、前述した蓄電システムの目標価格1kWhあたり11.5万円(設備費+工事費・据付費)くらいと考えてよいでしょう。それ以外は複数社の見積もりで確認するのが現実的です。
制度の方向性として公表されていること
SIIの公募要領は事業趣旨の冒頭で、政策の位置づけを次のように整理しています。
地球温暖化対策計画において、家庭部門では2030年度温室効果ガス排出削減目標として66%削減(2013年度比)が掲げられている。目標達成に向け、住宅・建築物では「省エネ基準への適合義務付け拡大」を主な政策として、2030年度以降新築される住宅についてZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとしている。2025年4月には、すべての新築住宅に対する省エネ基準への適合義務化が開始され、これまで推奨とされていた省エネ性能は最低限の義務へと変化した。 (出典: SII 令和8年度 戸建ZEH支援事業 公募要領(個人申請用・PDF))
同じ資料には、2025年4月にZEH+の定義が改訂されたこと、そして2025年9月に経済産業省より「GX ZEH」および「GX ZEH-M」が定義され、2027年4月より適用されることが公表されたことも記載されています。新築を数年先に検討している場合は、この新区分の内容が固まってから設計を詰めるという選択肢もあります。
一方で、ペロブスカイト太陽電池のような新技術がZEHの達成条件をどう変えるかについては、時期や普及量を示した公的な見通しを確認できませんでした。将来の技術を前提にした資金計画には、現時点で公的な裏付けがありません。
自宅をZEHにすべきか、判断する順番
迷ったら次の順で確認すると論点が整理できます。
- 地域区分を確認する — 外皮基準のUA値も補助額も地域区分で変わります
- 屋根に載る太陽光容量を確認する — 100%相殺が難しければ、Nearly ZEHやZEH Orientedの対象地域に該当するかを見る
- 依頼先がSII登録のZEHビルダー/プランナーか確認する — 補助事業の交付要件です
- 蓄電池を入れるなら要件を照合する — 加算を受けるには本年度のSII登録品で1kWhあたり11.5万円以下。さらにZEH+の選択要件❶として使う場合は初期実効容量5kWh以上(5kWh未満でも追加設備としての加算は可能)
- 補助金前提の計画は受付状況を確認してから組む — 先着順で、予算到達により締め切られます
まとめ
- ネットゼロエネルギーが数えているのは電気代ではなく設計一次エネルギー消費量。再エネは敷地内のものに限られ、全量買取方式の太陽光はZEHの再エネとして認められない
- 『ZEH』の要件はUA値(1・2地域0.40以下、3地域0.50以下、4〜7地域0.60以下)と、削減率20%以上(再エネ除く)・100%以上(再エネ含む)。ZEH+は断熱等性能等級6以上に加えて削減率30%以上と追加要件1項目以上
- 令和8年度の補助額はZEHが地域区分1〜3で55万円/戸、4〜8で45万円/戸、ZEH+が1〜4で90万円/戸、5〜8で80万円/戸。蓄電システム加算は上限20万円/戸で、1kWhあたり11.5万円以下という価格要件がある
- 国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に公募終了、ZEB実証事業も二次公募が2026年8月17日で締切済み。制度を前提にするなら、最新の受付状況を確認してから資金計画を立てる