災害時の電源確保で蓄電池が担う役割は、「停電を検知して自動で切り替わること」と「太陽光だけでは越えられない出力の壁を越えること」の2つです。 逆に言えば、容量(kWh)だけを見て選ぶと、停電当日に動かせない家電が出ます。判断材料になるのは**停電時の定格出力(W)**と、家中が使える全負荷か一部だけの特定負荷かの2点です。
【2026年8月25日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に交付申請額が予算に達して公募終了しています。次回公募は未公表で、現時点で新規申請はできません。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- 内閣府の被害想定が示す停電の規模と復旧までの日数
- 太陽光の自立運転が1,500Wで頭打ちになる理由(メーカー公式表記)
- 主要メーカーの停電時の定格出力と、全負荷/特定負荷の違い
- 蓄電池・ポータブル電源・発電機の安全面での使い分け(NITEの注意喚起)
- 2026年8月時点の補助金の実際の状況と、契約前に確認すべきこと
何日分を備えるのか:公的な被害想定から逆算する
中央防災会議・南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループが令和7年3月に公表した最大クラス地震の被害想定では、最大約2,950万軒が停電し、東海三県・近畿三府県・山陽三県・四国・九州二県のいずれも約9割で停電すると想定されています。停電人口は1日後で最大約3,730万人です。
復旧の見通しについては、同資料が電力の復旧推移をこう説明しています。
電力は、発災直後に需要側の被災と発電設備の被災により需給バランスが不安定になることを主要因として広域的に停電が発生する。一般送配電事業者間の電力融通により、需給バランス等に起因した停電は数日間で一部が解消される。電柱被害に基づく配電支障の解消は、復旧に約1~2週間を要する。 (出典: 内閣府 南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について【定量的な被害量】(令和7年3月・PDF))
95%復旧までの予測日数も地域別に示されており、東海(静岡・愛知・三重)と近畿(和歌山・大阪・兵庫)は約1週間、山陽(岡山・広島・山口)は数日間〜約1週間とされています。
**「数日間は自力でしのぐ」「電柱被害が絡めば1〜2週間かかりうる」**という2段構えが現実的な前提です。1週間分をまるごと家庭用設備でまかなうのは無理でも、初動の数日を電気のある状態で過ごせるかは装備の選び方で変わります。
太陽光だけでは1,500Wが上限になる
すでに太陽光発電を載せている家庭でも、停電時にそのまま家中の電気が使えるわけではありません。系統が止まると発電は自動的に停止し、手動で「自立運転モード」に切り替えて、専用の自立運転用コンセントから使う形になります。
このときの上限をパナソニックは公式サイトで明記しています。
自立運転で使用できる電力は1500Wまでです。 発電電力は日射量に左右されるため1500Wで使用できない場合もあります。 (出典: パナソニック 停電時の太陽光発電の使い方)
つまり、日射がなければ1,500Wも出ませんし、夜間は使えません。停電が長引いて日射がない状態が続くと、モニタの日時情報が保持できずパワーコンディショナが起動しなくなる場合があることも同社は案内しています。
操作手順も事前に把握しておく必要があります。太陽光発電協会(JPEA)は、自立運転用コンセントの位置確認 → 取扱説明書で切替方法を確認 → 主電源ブレーカーをオフ → 太陽光発電ブレーカーをオフ → 自立運転モードに切替 → 機器を接続、という流れを示し、停電復旧時には自立運転モードの解除 → 主電源ブレーカーオン → 太陽光発電ブレーカーオンの順で元に戻すよう求めています(出典: JPEA 停電時でも電気が使えます)。同協会は2026年8月14日にも、豪雨災害を受けて同機能の使用方法を改めて周知しています(出典: JPEA お知らせ)。
太陽光の自立運転は「使えるが、エアコンや電子レンジを回す前提の機能ではない」。そこを超えたい場合に検討対象になるのが蓄電池です。
蓄電池の停電時性能は「出力」と「負荷の範囲」で見る
切り替わるまでの時間
オムロンは蓄電システムについて「停電発生後、約5秒後に自動で非常時の自立運転に切り替わり、電気が使えるようになります」と案内しています。同時に、**「停電時に使える電気製品は、特定負荷用分電盤にあらかじめ配線しておいた機器です。家中の電気はまかなえませんのでご注意ください」**とも明記しています(出典: オムロン 停電時の使い方)。
自動で立ち上がることと、家中が使えることは別の話です。混同したまま契約すると、停電当日に「使えると思っていたコンセントが死んでいる」ことになります。全負荷型と特定負荷型の考え方は全負荷型と特定負荷型の違いで詳しく整理しています。
メーカー公式仕様で見る停電時の出力
停電時に何が動かせるかは、容量(kWh)ではなく自立運転時の定格出力(W)で決まります。2026年8月25日時点の各社公式表記は次のとおりです。
| メーカー・シリーズ | 蓄電容量 | 停電時(自立運転)の定格出力 | 負荷の範囲・200V |
|---|---|---|---|
| 京セラ Enerezza PlusⅡ | 5.7kWh | 3,000W | 公式製品ページに全負荷/特定負荷の別の記載なし |
| 京セラ Enerezza PlusⅡ | 11.4kWh / 17.1kWh | 4,500W | 同上 |
| ニチコン ESS-U5シリーズ | 7.7kWh / 9.7kWh | 高出力5.9kW(タイプL接続時) | 全負荷および200V対応。停電時は全負荷接続と特定負荷接続を選択可 |
| ニチコン ESS-U4M1 / ESS-U4X1 | 11.1kWh / 16.6kWh | 公式ページに定格出力の記載なし | 全負荷対応 |
| オムロン KPBP-Aシリーズ | 6.5〜16.4kWh | 2.0kVA(トランスユニット接続時4.0kVA) | 特定負荷対応。トランスユニット接続時に全負荷・単相3線式AC202V/101V |
出典: 京セラ Enerezza PlusⅡ、ニチコン 単機能蓄電システム、オムロン マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズ 仕様
京セラは別途、大容量パワーコンディショナについて「パワーコンディショナの定格出力は、自立運転時6,000VAです」とも注記しています。
京セラは注釈で「蓄電池ユニットの台数(定格容量)により最大出力電力・最大充電電力が変わります。5.7kWhは定格電力(自立運転)3,000W、11.4kWhは定格電力(自立運転)4,500W、17.1kWhは定格電力(自立運転)4,500Wです」と明記しています。同じシリーズでも台数で停電時の出力が変わるため、見積書には容量だけでなく自立運転時の出力を書かせてください。
なお本体価格は、家庭用蓄電池ではメーカーが公式サイトに掲載していないのが一般的で、上記3社の製品ページにも価格の記載はありません。費用は販売店の見積もりで確認する前提で読み進めてください。
災害を想定した付加機能
災害対策に効く機能もメーカー公式で確認できます。京セラEnerezza PlusⅡは「レジリエンスモード」として、大雨や暴風などの警報に応じて自動で強制充電し、停電に備えて電気を蓄えると案内しています。またマルチ入力型の外部電源接続機能は、車載のAC100Vコンセントから充電できる機能ですが、同社の注釈では**「停電時のみの機能です。200W〜1,500WのAC100Vコンセントを備えた車・ポータブルバッテリー・発電機などが対象です。オプションのEXボックス・EXケーブルが必要です」**とされています。追加部材が要る点は見積もり時の確認事項です。
停電時の実際の動きは停電時の蓄電池の使い方もどうぞ。
ポータブル電源・発電機との使い分けは「安全上の制約」で決まる
据置型の蓄電池が唯一の答えではありません。ただしポータブル電源と発電機には、公的機関が注意喚起している固有のリスクがあります。
エンジン発電機は屋外専用
NITE(製品評価技術基盤機構)は、携帯発電機について次のように注意喚起しています。
発電機運転中の排ガスには一酸化炭素が含まれており、屋内で使用すると一酸化炭素中毒になるおそれがあります。 (出典: NITE 災害時の一酸化炭素に注意!)
同機構は屋内だけでなく、物置・倉庫・車内・テント内など換気が悪く排ガスがこもる場所での使用も避けるよう求めており、屋外で使う場合も「出入口、窓など開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用してください」としています(出典: NITE 室内で携帯発電機を使用して一酸化炭素中毒)。集合住宅のベランダや隣家と近い狭小地では、現実的に使いにくい選択肢です。
ポータブル電源はリコール情報の確認が前提
ポータブル電源は工事不要で室内に置ける手軽さがある一方、NITEはリコール対象製品について次のように注意喚起しています。
ポータブル電源には可燃性の電解液を含むリチウムイオン電池が複数個入っていて、一度発火すると複数個の電池が次々に発火して大きな火災につながるおそれがあります。 (出典: NITE リコール製品に注意(ポータブル電源))
同機構は、リコール対象であれば「異常が認められなくても直ちに使用を中止し、販売店や製造事業者に連絡してください」と案内しています。防災用に買って仕舞い込むと告知に気づけないため、購入時に型番を控え、定期的にリコール情報を確認する運用がセットになります。
据置型との比較の考え方はポータブル電源と据置型蓄電池の比較にまとめています。
3つの選択肢の性格
| 項目 | 家庭用蓄電池(据置) | ポータブル電源 | エンジン発電機 |
|---|---|---|---|
| 設置 | 電気工事が必要 | 工事不要 | 工事不要 |
| 停電時の起動 | 自動切替の機種あり(オムロンは約5秒) | 手動で機器を接続 | 手動で始動 |
| 使用場所 | 屋外設置+屋内へ給電 | 屋内可 | 屋外のみ(NITEが屋内使用を注意喚起) |
| 太陽光との連携 | 連携可(日中に充電しながら使える) | 別売のソーラーパネルで充電できる製品がある | 連携不可 |
| 日常利用 | 日々の電気の使い方に組み込める | 持ち出して使える | 基本は非常時のみ |
容量・出力・価格は製品ごとに異なるため、具体的な数値は公式仕様で確認してください。
必要な容量は「動かす機器の定格」から積み上げる
「何kWh必要か」は一般論で決められません。家電の消費電力は同じ品目でも機種差が大きいためです。次の順で考えます。
- 停電時に動かしたい機器を書き出す(冷蔵庫、照明、通信機器、医療機器など)
- それぞれの定格消費電力を本体の銘板や取扱説明書で確認する(一般的な相場値ではなく、自宅の実機の表示を見る)
- 同時に使うときの合計W数を出し、蓄電池の停電時定格出力(2.0kVAなのか5.9kWなのか)に収まるかを見る
- 1日の使用時間をかけてWhにし、想定する日数分を足す
- 蓄電池の「実効容量」と突き合わせる
5つ目が見落とされがちです。カタログの蓄電容量と初期実効容量は、別の数値として公式仕様に書かれています。オムロンKPBP-Aシリーズでは、KP-BU164-2Sが蓄電容量16.4kWhに対し実効容量14.8kWh、KP-BU130C-Aが13.0kWhに対し11.6kWh、KP-BU127-Bが12.7kWhに対し11.4kWhと表記されています(出典: オムロン KPBP-Aシリーズ 仕様)。試算は実効容量ベースで行うのが安全側です。
太陽光と組み合わせていれば日中の充電で持ち時間は延びますが、悪天候が続けば延びません。「何日持つ」は幅を持った試算として扱ってください。
2026年8月時点のお金と、契約前に確認すること
国の補助金は申請できない期間に入っている
冒頭のとおり、国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に交付申請額が予算に達し、公募終了しています。SIIの公表では交付決定総額は約35.9億円・8,508件です。次回公募は未公表のため、2026年8月時点で国の補助金を前提にした資金計画は組めません。経緯と次回の見通しは国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
一方で自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は、蓄電池パッケージが蓄電容量10万円/kWh・DR実証に参加しない場合の上限120万円/戸、蓄電池ユニット増設が6万円/kWh・上限72万円/戸です。事前申込は令和8年5月29日開始、交付申請兼実績報告は令和8年6月30日開始とされています。さらに、令和8年10月1日以降に事前申込する場合(4月1日〜6月30日に契約・工事完了の事業を除く)は、SIIによって令和8年度の登録済製品一覧に登録された機器のみが助成対象となります(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026を参照してください。
「災害が不安」という気持ちは狙われやすい
国民生活センターは2021年6月3日に家庭用蓄電池の勧誘トラブルについて注意喚起を公表しています。PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数は2016年度325件、2017年度553件、2018年度926件、2019年度1,302件、2020年度1,314件と増加傾向にありました。同センターは「その場で契約をせずに複数社から見積もりをとり比較検討しましょう」とアドバイスしています(出典: 国民生活センター 家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!)。
防災は感情が動きやすいテーマです。その場で判断せず、見積書に次の項目があるかを確認してください。
- 蓄電池ユニットの型式と、蓄電容量・初期実効容量の両方
- 停電時(自立運転)の定格出力(W または VA)
- 全負荷か特定負荷か、特定負荷なら停電時に生きる回路の一覧
- 200V機器(エアコン、IHクッキングヒーターなど)が停電時に使えるかどうか、必要な追加機器
- 停電から給電開始までが自動か手動か
- 太陽光と連携する場合、停電時に充電できるか
- 機器保証・容量保証の年数と対象機器
まとめ
- 内閣府の被害想定(令和7年3月)では南海トラフ巨大地震で最大約2,950万軒が停電し、95%復旧まで数日間〜約1週間、電柱被害に基づく配電支障の解消には約1〜2週間を要するとされている
- 太陽光だけの自立運転はパナソニック公式表記で1,500Wが上限で、日射量次第ではそこまで出ないこともある。夜間は使えない
- 蓄電池の停電時の定格出力は公式仕様で2.0kVA〜5.9kWと幅があり、全負荷か特定負荷かで停電時の体験がまるごと変わる。容量(kWh)だけで選ばない
- 発電機は屋内・車内・テント内での使用をNITEが注意喚起、ポータブル電源はリコール情報の定期確認が前提。2026年8月時点で国の補助金は申請できないため、資金計画は自治体制度と自己資金で組む