HEMS(ヘムス)とは、家庭で使うエネルギーを「見える化」し、対応する家電や住宅設備を「制御」するシステムです。 ここまでは以前から変わりません。変わったのは位置づけのほうです。2026年の日本では、国の住宅補助金の一部でHEMSの設置が必須要件になりました。
国土交通省と環境省の合同事業「みらいエコ住宅2026事業」で最も補助額が大きいGX志向型住宅(1〜4地域で125万円/戸)は、断熱性能などと並べて「高度エネルギーマネジメントの導入」を要件に挙げ、対象をエコーネットコンソーシアムに掲載された認証済みコントローラに限定しています。「HEMSっぽい機能があるから大丈夫」では通らない段階に入りました。
【2026年8月25日時点】 みらいエコ住宅2026事業のGX志向型住宅では、高度エネルギーマネジメント(HEMS)でIP通信を用いる製品を使う場合などについて、建築確認申請書の提出日が2026年7月1日以降の住宅では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度」(JC-STAR)で★1以上の適合ラベルを取得した製品であることが必須要件になりました。出典: みらいエコ住宅2026事業 新築住宅の省エネ性能
【2026年8月25日時点】 蓄電池側の話として、国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。次回公募は未公表のため、この補助金を前提にした計画は立てられません。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- 公式資料に書かれているHEMSの定義と、実際にできること
- 互換性を左右するECHONET LiteとAIF認証の関係
- HEMSが補助金の必須要件になった2026年の状況
- メーカーが公表している型番と価格(非公表のものは非公表と記載)
- 導入前に確認したい、サービス終了リスクを含む5つのチェック項目
HEMSとは何か(公式の定義)
HEMSは Home Energy Management System の略です。通信規格を策定しているエコーネットコンソーシアムは、次のように説明しています。
家庭で使うエネルギーをかしこく管理するシステムのことです。HEMSを設置することにより、電気の発電量や使用量、ガス・水道の使用量をモニター画面などで「見える化」したり、HEMS対応の家電や住宅設備を「制御」することができるようになります。 (出典: エコーネットコンソーシアム HEMSとは?)
ポイントは、HEMSが「計測する箱」ではなく「つなぐ役割」だということです。測ったデータをもとに、エアコンや給湯機、蓄電池、太陽光のパワーコンディショナといった別メーカーの機器へ指示を出せます。
パナソニックも公式サイトで「政府は2030年までに全ての住まいにHEMSを設置することを目指しています」と、平成24年「グリーン政策大綱」(内閣官房 国家戦略室)を出典に挙げて説明しています(出典: パナソニック HEMS(ヘムス)とは?)。
HEMSでできること3つ
1. 見える化
家全体だけでなく、分電盤の分岐回路ごとの使用量を把握できます。パナソニックの既築向け計測ユニット(MKN73318)は、標準仕様で主幹と分岐8回路までの計測に対応します(出典: パナソニック 計測機器ラインアップ)。回路単位なので「エアコンなのか、給湯なのか」を切り分けられます。
なお、「HEMSを入れると電気代が何%下がる」という公的な統計は見当たりません。 エコーネットコンソーシアムの説明も「節電意識が高まり、電気使用のムダを省いて電気代を節約できます」という定性的な表現にとどまっています。削減率を断定する営業説明を受けたら、その数字の出どころを確認してください。
2. 機器の制御
HEMS対応機器であれば、外出時の一括オフや、給湯機の沸き上げ時間の調整といった操作ができます。どの機種と何ができるかはメーカーの対応表で決まるため、「うちのエアコンは対応しているか」を型番単位で確認するのが実務です。
シャープは自社のHEMSサービス「COCORO ENERGY」について、クラウド上のAIが蓄電池を制御し、「余剰電力活用AI」か「夜間電力活用AI」を選んで切り替えられると説明しています(出典: シャープ HEMS(ヘムス)COCORO ENERGY)。
3. スマートメーターとの連携(Bルート)
電力会社のスマートメーターから、宅内のHEMS機器へ直接データを送ってもらう仕組みが「Bルート」です。東京電力パワーグリッドは、電力メーター情報発信サービス(Bルートサービス)について次の点を公表しています(出典: 東京電力パワーグリッド 電力メーター情報発信サービス)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 内容 | スマートメーターで計測したデータをHEMS機器へ送信する |
| 取得できるもの | 30分ごとの電気の使用量、現在使っている電流値等 |
| 費用 | データの送信に費用はかからない |
| 前提 | HEMS機器等の宅内設備は利用者が用意する |
| 品質 | ベストエフォート型。通信環境によりデータの遅延・欠損が生じる場合がある |
| 手続き | 供給地点特定番号を用意し、申込書・本人確認書類等を提出する |
エコーネットコンソーシアムによれば、平成26年4月1日に施行された省エネ法の改正により、各電力会社は2025年度までに全世帯にスマートメータを設置しました。Bルートを使うには、AIF認証(従来のSMA認証)を取得したHEMS機器の準備と各電力会社への申込みが必要です(出典: エコーネットコンソーシアム スマートメータとは?)。
互換性のカギはECHONET LiteとAIF認証
HEMSで一番つまずきやすいのが「つながるはずの機器がつながらない」問題です。ここを規定しているのがECHONET Lite規格です。
エコーネットコンソーシアムは、ECHONET Lite規格が2012年2月に経済産業省が設置したスマートハウス標準化検討会において、HEMSにおける公知な標準インターフェースとして推奨されたと説明しています。さらに2015年には主要部分がISO/IEC 14543-4-3およびIEC 62394として、2023年には蓄電池がISO/IEC 14543-4-302として国際標準規格に認定されました(出典: エコーネットコンソーシアム エコーネットとは?)。
普及規模も公表されています。同コンソーシアムの出荷状況報告によると、2013年度から2025年度までに出荷されたECHONET Lite規格搭載機器の累計出荷台数は1億6,885.3万台に達しています(出典: エコーネットコンソーシアム 出荷状況調査報告)。
ここで押さえておきたいのが、規格に「対応している」ことと「認証を取っている」ことは別だという点です。補助金の要件になっているのはAIF仕様に対応した認証済み製品であり、コンソーシアムのホームページに掲載されているかどうかで判定されます。掲載製品はECHONET Lite AIF認証製品一覧で公開されています。
2026年、HEMSは補助金の必須要件になった
みらいエコ住宅2026事業のうち、新築に対する補助は国土交通省と環境省の合同事業です。予算は長期優良住宅・ZEH水準住宅分が1,450億円(国土交通省)、GX志向型住宅分が750億円(環境省)とされています(出典: みらいエコ住宅2026事業 事業概要)。
新築の補助額は以下のとおりです。
| 補助対象住宅 | 1〜4地域 | 5〜8地域 |
|---|---|---|
| GX志向型住宅 | 125万円/戸 | 110万円/戸 |
| 長期優良住宅 | 80万円/戸 | 75万円/戸 |
| ZEH水準住宅 | 40万円/戸 | 35万円/戸 |
このうちGX志向型住宅(戸建)は、次の①〜④すべてに該当する必要があります。
- 断熱等性能等級6以上
- 再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量削減率35%以上
- 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量削減率100%以上(寒冷地・低日射地域は75%以上、多雪地域・都市部狭小地等は要件なし)
- 高度エネルギーマネジメントの導入
④の中身は明確です。「ECHONET Lite AIF仕様」に対応する「コントローラ」として、一般社団法人エコーネットコンソーシアムのホームページに掲載されている製品を設置すること、と定められています。エコーネットコンソーシアム側も「性能を満たす製品であっても、掲載されていない(認証を受けていない)製品は補助対象になりません」と念を押しています(出典: エコーネットコンソーシアム みらいエコ住宅2026事業とは)。
加えてセキュリティ要件が入りました。HEMSでIP通信を用いる製品を使う場合、建築確認申請書の提出日が2026年6月30日以前の住宅ではJC-STAR★1以上の適合ラベル取得製品の使用が「推奨」でしたが、**2026年7月1日以降の住宅では「必須要件」**になっています(出典: みらいエコ住宅2026事業 新築住宅の省エネ性能)。太陽光のパワーコンディショナやアダプタ、ゲートウェイなどIP通信機能を持つ構成機器も同じ扱いです。
ZEH全体の流れとしても、エコーネットコンソーシアムは2027年導入予定のGX-ZEH基準で高度エネルギーマネージメント要件の必須化が進められていると説明しています(出典: エコーネットコンソーシアム ZEH及びGX-ZEHとは?)。ZEHの考え方はZEHと太陽光発電の基礎にまとめています。
自治体の制度でもエネルギーマネジメント機器は評価されています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は蓄電容量10万円/kWh(DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸)で、DR実証に参加してエネルギーマネジメント機器およびIoT関連機器を設置する場合は1台当たり15万円の加算があります(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026、国のDR補助金の状況は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
実際の製品と価格(公式表記)
家庭用の設備は本体価格を公表しないメーカーが多いなか、パナソニックは希望小売価格を掲載しています。
| 品番 | 商品名 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|
| MKN713 | AiSEG2(7型モニター機能付) | 92,200円 |
| MKN7138 | 7型モニター機能付用電源(壁掛取付時に必要) | 10,000円 |
| MKN704 | AiSEG2 | 46,000円 |
| MKN705 | AiSEG2(集合住宅用) | 46,000円 |
これはコントローラ本体だけの価格です。実際にはこれに計測機器が加わります。パナソニックの構成では、既築向けが計測ユニット(MKN73318、主幹と分岐8回路まで)または太陽光のみ計測するMKN73301、新築向けが分電盤「スマートコスモ(マルチ通信型)」(代表品番BHM85182J)です。これらの計測機器と工事費は公式サイトに価格の記載がないため、総額は見積もりで確認するという前提になります。
シャープはHEMSサービス「COCORO ENERGY」として、JH-RVB1、JH-RV11、ロボホンライトヘムスを掲載しています。同社のHEMSサービス利用には会員サイト「COCORO MEMBERS」への会員登録が必要で、ロボホンライトヘムスには別途クラウド連携エネルギーコントローラが必要と案内されています。なお、価格は公式サイトに記載がありません(出典: シャープ HEMS(ヘムス)COCORO ENERGY)。
一方、三菱電機は公式サイトで「三菱HEMSの販売を終了いたしました」と告知しています(出典: 三菱電機 HEMS)。既存ユーザー向けのアフターサービス案内とあわせて、スマートフォン用アプリの公開終了も告知されています。HEMSは機器とクラウドサービスの組み合わせで成り立つため、販売終了やサービス終了が起きうる商品カテゴリである点は、10年以上使う設備を選ぶうえで無視できません。
導入前に確認したい5つのこと
1. 何を制御したいのかを先に決める。 見える化だけが目的なら、必要なのは計測ユニットとモニターです。蓄電池やエコキュートの自動制御まで求めるなら、対象機器がAIF認証を取得しているかを型番で確認します。
2. 補助金を狙うなら「認証済み製品リストに載っているか」を先に見る。 GX志向型住宅では、性能を満たしていても未掲載の製品は補助対象外です。建築確認申請の時期によってはJC-STAR★1以上も必須になります。
3. 分電盤の状態を現地で見てもらう。 既築で後付けするのか、分電盤ごと交換するのかで工事の内容が変わります。ここは写真や口頭では決まりません。
4. Bルートの申込みは別手続きだと理解する。 東京電力パワーグリッドの場合、供給地点特定番号を用意し、申込書と本人確認書類等の提出が必要です。
5. サービス提供期間とアプリの継続性を聞く。 クラウド連携やAI制御を売りにする製品ほど、サーバー側のサービスが止まると価値が下がります。契約前に、保証期間・部品供給期間・アプリの提供方針を書面で確認しましょう。
HEMSは太陽光や蓄電池とセットで提案されることが多い設備です。国民生活センターは2021年6月3日の「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」で、PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数が2016年度325件から2020年度1,314件へ増加したことを示し、その場で契約せず家族や知人に相談すること、複数の企業から見積もりを取って十分に比較検討することを呼びかけています(出典: 国民生活センター)。
なお、2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。売電単価が下がるほど、発電した電気を家の中で使い切る制御の重要度が上がります。HEMSが注目される背景はここにあり、デマンドレスポンスの仕組みや蓄電池とスマートホームの連携とあわせて考えると全体像がつかみやすくなります。
まとめ
- HEMSは家庭のエネルギーを**「見える化」し、対応機器を「制御」する**システム。通信規格はECHONET Liteで、2012年に経済産業省の検討会がHEMSの標準インターフェースとして推奨した
- 2026年のポイントは補助金要件。みらいエコ住宅2026事業のGX志向型住宅(1〜4地域125万円/戸)は、AIF認証済みコントローラの設置が必須。建築確認申請が2026年7月1日以降ならJC-STAR★1以上も必須
- 価格はメーカーで扱いが異なる。パナソニックはAiSEG2(MKN704)を**希望小売価格46,000円(税抜)**と公表しているが、計測機器と工事費は非公表のため見積もりで確認する
- 電気代の削減率を示す公的な統計はない。断定的な数字を提示されたら出どころを確認し、三菱HEMSのように販売終了もありうる前提で、保証とサービス継続性まで書面で押さえる