太陽光の「自家消費」と「FIT」は、どちらかを選ぶものではありません。 住宅用(10kW未満)は制度上「余剰買取」で、自家消費した残りだけが買取対象になるからです。実際に決めるのは「売電か自家消費か」ではなく、発電量のうち何割を自分で使うかという配分です。
そして2026年度のFIT価格は「1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh」という階段型に変わりました。同じ設備のまま、5年目を境に有利な使い方が入れ替わるのが2026年の実態です。以下、公的資料と電力会社の料金表だけで構造を整理します。
【2026年8月25日時点】 2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT調達価格は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh、調達期間は10年間です。この価格は2025年度下半期の認定分にも適用されています。出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等
この記事でわかること
- 住宅用太陽光では自家消費とFITが二択にならない制度上の理由
- 2026年度のFIT価格が**階段型(24円→8.3円)**になった経緯と、付いてくる制約
- 自家消費1kWhと売電1kWhの価値を、国の想定値と電力会社の料金表で比べる方法
- 国が置く想定値と、委員会が確認した実績値のズレ
- **11年目以降(卒FIT)**に単価がどう変わるか
住宅用太陽光は「自家消費が先、売電はその残り」
まず前提の確認です。資源エネルギー庁はFIT制度の概要で、買取の対象範囲を次のように説明しています。
発電した電気は全量が買取対象になりますが、住宅の屋根に載せるような10kW未満の太陽光の場合やビル・工場の屋根に載せるような10~50kWの太陽光の場合は、自分で消費した後の余剰分が買取対象となります。 (出典: 資源エネルギー庁 FIT・FIP制度 制度の概要)
つまり住宅用太陽光は、設置した時点で自動的に「自家消費+余剰売電」です。「自家消費型」と「FIT型」という2つの商品があるわけではありません。
10kW以上50kW未満の事業用太陽光でも事情は同じで、資源エネルギー庁は「10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電のFIT新規認定には、自家消費型の地域活用要件を設定する」と注記しています。調達価格等算定委員会も「低圧事業用太陽光発電(10kW以上50kW未満)に対して30%超の自家消費を求めている」と記しています(出典: 調達価格等算定委員会 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(PDF))。
さらに事業用太陽光(地上設置)は、2026年度の落札案件を除き、2027年度以降はFIT/FIP制度の新規認定対象になりません(出典: 経済産業省 2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価)。国の支援は「売るための太陽光」から「屋根に載せて自分で使う太陽光」へ、明確に軸足を移しています。
2026年度のFIT価格は「階段型」に変わった
2025年度上半期まで、住宅用太陽光の調達価格は10年間ずっと同じ単価でした。それが2025年度下半期の認定分から、前半に厚く後半に薄い階段型に切り替わっています。
| 区分 | 2025年度上半期(従来) | 2025年度下半期の認定以降・2026年度・2027年度 |
|---|---|---|
| 住宅用太陽光(10kW未満) | 15円/kWh(調達期間10年間) | 24円/kWh(1〜4年目)、8.3円/kWh(5〜10年目) |
| 事業用太陽光・屋根設置(10kW以上) | 11.5円/kWh(調達期間20年間) | 19円/kWh(1〜5年目)、8.3円/kWh(6〜20年目) |
出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等、資源エネルギー庁 屋根設置太陽光発電の初期投資支援スキーム(PDF)
このリーフレットは目的を「屋根設置太陽光発電の導入を加速するため発電事業者の早期の投資回収を支援します」と説明し、メリットとして「返済額のうち利息分を抑えられる」「投資回収年数を短縮できる」を挙げています。
見落とされがちな「条件付き認定」
同じリーフレットのQ&Aには、契約前に知っておきたい制約が書かれています。単価が下がる5年目以降にFITをやめてnonFITの自家消費+余剰売電に切り替えられるか、という質問への回答です。
原則として、再エネ特措法に基づく認定を受けた事業は、認定発電設備を廃止(撤去及び処分)しない限り、FIT/FIP制度から離脱することは認められていません。(中略)「階段型の価格設定」による初期投資支援スキームの適用を受ける案件は、調達期間中に特定契約によらない売電を行うことができない旨の条件付き認定を行うこととします。
つまり、5年目以降に「8.3円は安いから、FITをやめて別の売り方に切り替える」という乗り換えはできません。10年間の枠内でできるのは、自家消費の割合を上げて売電量を減らすことだけです。設備の売り方と使い方の比較は売電と自家消費どちらを優先すべきかでも整理しています。
自家消費1kWhと売電1kWhの価値を、国の数字で比べる
売電の価値は調達価格そのものなので、1〜4年目は24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhです。では自家消費1kWhの価値はいくらでしょうか。
国はFIT価格を計算するとき、この値を「自家消費分の便益」として明示的に置いています。調達価格等算定委員会の意見書によると、2026年度の想定値は27.45円/kWhで、大手電力の直近10年間(2014〜2023年度)の家庭用電気料金単価に消費税率10%を加味して設定されたものです。
今回の見直しでは、同じ考え方で直近10年間(2015〜2024年度)に置き換えて計算すると27.86円/kWhになると示されました。ただし委員会はこう結論づけています。
自家消費分の便益については、昨年度設定した2026年度の想定値をやや上回る水準となっているが、ウクライナの影響を受けた2021・2022年を含んだ水準となっている点を踏まえ、引き続き動向を注視することとし、想定値を据え置くこととした。 (出典: 調達価格等算定委員会 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(PDF))
つまり2026・2027年度の算定に使われている自家消費1kWhの価値は27.45円/kWhです。27.86円/kWhは「同じ計算方法を最新データに当てはめるとこうなる」という参考値であって、採用値ではありません。
ただしどちらも全国・10年平均の値です。実際の家庭では、その世帯に適用されている単価で決まります。東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bは三段階制で、電力量料金は税込で次のとおりです。
| 段階 | 適用範囲 | 電力量料金(税込) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 最初の120kWhまで | 29円80銭/kWh |
| 第2段階 | 120kWhをこえ300kWhまで | 36円40銭/kWh |
| 第3段階 | 上記超過 | 40円49銭/kWh |
同ページには「電力量料金は、燃料価格の変動に応じて燃料費調整額を加算あるいは差し引きます」「電気料金を算定する際は、再生可能エネルギー発電促進賦課金を加算します」と注記されています。再エネ賦課金の2026年度単価は4.18円/kWhで、2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます(出典: 経済産業省 2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価)。
資源エネルギー庁は賦課金の特徴として「ご負担額は電気の使用量に比例します」と説明しています。買う電気が減れば賦課金の負担も減るため、自家消費は電力量料金だけでなく燃料費調整額と再エネ賦課金も同時に回避するという点で、単価表の数字以上の意味を持ちます。
想定値と実績値のズレを見る
委員会は住宅用太陽光の想定値を置くにあたって、実績データも並べています。想定値と実績が食い違っている項目こそ、見積もりを読むときの手がかりになります。
| 項目 | 2026・2027年度の想定値 | 委員会が確認した実績 |
|---|---|---|
| システム費用 | 25.5万円/kW | 2025年設置の新築案件は平均28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW) |
| 運転維持費 | 3,000円/kW/年 | 定期報告データの平均1,045円/kW/年 |
| 設備利用率 | 13.7% | 2025年1〜8月のシングル発電案件の平均14.1%(過去4年平均14.2%) |
| 余剰売電比率 | 70.0% | 同期間の平均64.8%(中央値60.7%) |
| 自家消費分の便益 | 27.45円/kWh | 直近10年で再計算すると27.86円/kWh |
| 調達期間終了後の売電価格 | 10.0円/kWh | 2025年12月時点の買取メニューの平均10.0円/kWh(中央値9.5円/kWh) |
| 調達期間 | 10年間 | ― |
出典: 調達価格等算定委員会 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(PDF)、資源エネルギー庁 買取価格・期間等
読み取るべき点は2つです。ひとつは、実際の設置費用(平均28.9万円/kW)が国の想定値(25.5万円/kW)を上回っていること。委員会は上位30%のトップランナー水準が25.6万円/kWで想定値と概ね同水準だとしており、想定値は「安く入れられた層」の水準だとわかります。もうひとつは、余剰売電比率の実績が想定値より低いこと。想定70.0%に対し実績は平均64.8%(中央値60.7%)で、裏返すと実際の自家消費率は平均約35%、中央値約39%です。
自家消費率を上げると、いくら変わるのか
設備利用率13.7%という想定を使うと、5kWの設備の年間発電量は5kW×8,760時間×13.7%で約6,000kWhになります(本記事による試算)。想定どおり自家消費率30%なら、自家消費1,800kWh、売電4,200kWhという配分です。
ここから、自家消費率を30%から50%に引き上げた場合の差額を試算すると次のようになります。移動する電気は6,000kWh×20%=1,200kWhです。
| 時期 | 1kWhあたりの差 | 年間の差額(1,200kWh分) |
|---|---|---|
| 1〜4年目 | 27.45円 − 24円 = 3.45円 | 約4,100円 |
| 5〜10年目 | 27.45円 − 8.3円 = 19.15円 | 約23,000円 |
| 11年目以降 | 27.45円 − 10.0円 = 17.45円 | 約20,900円 |
※本記事による試算です。27.45円/kWhは調達価格等算定委員会が置く自家消費分の便益の想定値、10.0円/kWhは同委員会が置く調達期間終了後の売電価格の想定値であり、実際の金額は世帯の電気料金単価・生活パターン・設備条件で変わります。
1〜4年目は自家消費に寄せてもほとんど差が出ず、5年目以降に効いてくるという形がはっきり出ます。逆に言えば、導入初期に「自家消費すればすぐ元が取れる」と説明された場合は、その根拠となる単価と年次を確認したほうがよいということです。回収年数の計算方法は太陽光の投資回収シミュレーションで解説しています。
11年目以降(卒FIT)に何が変わるか
住宅用太陽光の買取期間は10年間です。資源エネルギー庁の情報サイト「どうする?ソーラー」は「住宅用太陽光発電電力の余剰電力は、固定価格で買取期間が10年と定められていることから、2019年以降、買取期間を順次満了していくことになります」と告知しています(出典: 資源エネルギー庁 どうする?ソーラー)。
満了後は国が価格を保証しないため、単価は各小売電気事業者の買取メニュー次第です。委員会が確認した実勢は次のとおりです。
今回、2025年12月時点で確認できた買取メニューにおける売電価格を確認したところ、その平均値は10.0円/kWh、中央値は9.5円/kWhであった。
そのうえで委員会は「10円/kWh水準以上のメニューは、当該小売電気事業者による電気供給とのセット販売や、蓄電池併設等の条件付きであることが比較的多いため、状況を注視することが重要である」と注記しています。卒FIT後の高めの単価は、多くの場合ひも付きの条件があるという前提で見比べる必要があります。
ここで気づくのは、5〜10年目の8.3円/kWhは、卒FIT後の想定値10.0円/kWhよりも低いということです。階段型の後半は、FIT期間中でありながら市場の買取メニュー水準を下回る単価になっています。買取期間満了後の手続きや選択肢はFIT買取期間が満了したあとの選び方にまとめています。
我が家はどちらに寄せるべきか
金額は世帯ごとに変わるため、断定ではなく確認すべき論点として整理します。
- 日中の在宅時間が長い家庭: 発電時間帯にそのまま消費できるため、追加投資なしで自家消費率が上がります。まず太陽光のみで導入し、1年分の実績を見てから蓄電池を検討する順序も現実的です
- 日中不在の共働き家庭: 発電と消費のピークがずれて自家消費率は上がりにくく、5年目以降は発電量の多くが8.3円/kWhでの売電になります。昼の電気を夜に持ち越す手段が要るかが論点です
- オール電化住宅: 消費電力量が大きい分、自家消費に回せる余地も大きくなります。ただし従量電灯Bは三段階制なので、自家消費で削れるのは上の段階の単価からです
- これから新築で設置する家庭: 国の想定値25.5万円/kWに対し、2025年設置の新築案件の実績平均は28.9万円/kWです。見積もりがこの幅から大きく離れるなら、その理由(屋根形状、足場、パワコン容量など)を書面で説明してもらいましょう
補助金と維持費で確認しておくこと(2026年8月時点)
自家消費率を上げる主な手段は蓄電池ですが、2026年8月時点の補助金の状況は限定的です。
国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に交付申請額の合計額が予算に達したため公募が終了しています。次回公募は公表されていません(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。この点は国のDR補助金の終了と次回の見通しに詳しくまとめています。
自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は、蓄電池パッケージの助成額が蓄電容量10万円/kWh(助成対象経費(税抜)が上限)で、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸、参加する場合は加算があります。令和8年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIが令和8年度の登録済製品一覧に登録した機器のみが助成対象です(出典: 東京都 令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026を参照してください。
維持費も回収計算に入れておく項目です。調達価格等算定委員会が太陽光発電協会へのヒアリングで得た内容として、5kWの設備では発電量維持や安全性の確保の観点から3〜5年ごとに1回程度の定期点検が推奨されており、1回当たりの点検費用の相場は約3.8万円程度、「パワコンについては、20年間で一度は交換され、38.4万円程度が一般的な相場である」と記載されています。これをkW当たりの年間運転維持費に換算すると約5,740円/kW/年となり、想定値の3,000円/kW/年を上回ったとされています。設備本体の価格は販売店により異なるため、見積書で内訳と保証範囲を確認するのが前提です。
まとめ
- 住宅用太陽光(10kW未満)は制度上余剰買取で、自家消費とFITは二択ではない。決めるのは発電量の配分
- 2026年度のFIT調達価格は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhの階段型。初期投資支援スキームの適用案件は、調達期間中に特定契約によらない売電ができない条件付き認定
- 国が置く自家消費1kWhの価値は27.45円/kWh(据え置き。最新データで再計算すると27.86円/kWh)。1〜4年目は拮抗し、5年目以降に自家消費が明確に上回る
- 卒FIT後の買取メニューは平均10.0円/kWh、中央値9.5円/kWh(2025年12月時点)。国のDR補助金は2026年5月29日で公募終了しているため、補助金前提の資金計画は現状の公募状況を確認してから組む