【2026年8月19日時点】補助金の状況が変わっています 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募を開始し、2026年5月29日に交付申請額が予算に達したため公募が終了しました。2026年8月時点で新規申請はできません。出典: SII DR家庭用蓄電池事業
「蓄電池があれば停電しても安心」とよく言われます。では実際に停電したとき、蓄電池のある家では何が起きるのか。 ここが分からないまま導入すると、「思っていたのと違った」という結果になりかねません。
結論から言うと、停電時の体験は機種の選び方でまるで違うものになります。 家中の電気がほぼそのまま使える構成もあれば、リビングの照明と冷蔵庫だけが生き残る構成もあります。停電時に取り出せる出力も、メーカー公表値で2kVA台から9kW台まで幅があります。
この記事は、編集部が個人の感想ではなくメーカーが公表している公式仕様と公的機関の情報をもとに、停電時に実際に起こることと、導入後に自分で確かめておくべきことを整理したものです。
この記事でわかること
- 停電した瞬間から何秒で電気が戻るのか(メーカー公式の表記)
- 全負荷型と特定負荷型で停電時の体験がどう変わるか
- メーカー公式が公表している停電時出力の実際の数値
- 「何時間もつのか」を自分の家の数字で計算する方法
- 導入後にやっておく停電の事前チェックと落とし穴
停電した瞬間、蓄電池のある家では何が起きるのか
「数秒後」には電気が戻る
家庭用蓄電池には自立運転モードが備わっています。系統(電力会社の送電)が止まったことを検知すると、蓄電池に貯めた電力を家庭内に供給する動作です。
シャープは自社のクラウド蓄電池システムについて、「停電になると自動で自立運転に切替するため、数秒後には太陽光発電または蓄電池からの放電で電気を使うことができます」と説明しています。ただし同社は初期設定の変更が必要とも注記しており、買っただけで自動切替になるとは限りません(出典: シャープ クラウド蓄電池システム)。
ニチコンも単機能蓄電システムESS-U5シリーズについて、停電時は特別な操作なしで自動的に切り替わると案内しています。ただし同ページは**「蓄電システムの蓄電池残量がない場合は、充電のために自立運転への切り替えが必要です」** とも注記しており、残量が尽きていれば自動では済みません(出典: ニチコン ESS-U5シリーズ)。
一方で、切替に何秒かかるかを数値で公表していないメーカーは多いのが実情です。テスラも2026年8月3日のPowerwall 3日本発売のプレスリリースで容量・出力・保証は明記していますが、切替時間には触れていません(出典: テスラ公式プレスリリース)。「一瞬も途切れない」と説明されることがありますが、公式仕様として確認できないため、パソコンやサーバーなど瞬断を嫌う機器がある場合は販売施工店に個別に確認してください。
太陽光発電だけの家との違い
蓄電池がなく太陽光発電だけの場合、停電時の体験はかなり異なります。シャープの自立運転案内によると、太陽電池パワーコンディショナの自立運転時の定格出力は1.5kVAで、ハイブリッドパワコンでも機種により1.5kVAまたは2.0kVAです。これに対し蓄電池連携型パワーコンディショナ(JH-55KF4B/55KF4)は5.5kVAと公表されています。ただし同ページの注記では、蓄電池のみで運転する場合は接続する蓄電池ユニットに応じて4.0kVA・3.0kVA、それ以外は2.0kVAとされています。5.5kVAは太陽光が発電している状況を含む最大値で、夜間に蓄電池だけで取り出せる電力はこれより小さくなります(出典: シャープ 自立運転モード切替方法)。
さらに太陽光だけの自立運転には、「発電電力より消費電力が小さな機器を使用してください」「天候の変化により使用できる電力が変動します」 という制約があり、夜間や悪天候では使えません。停電復帰時に手動で連系運転へ戻す操作も必要です。蓄電池を足す意味は、この「夜と天気に左右されない」部分にあります。
太陽光との組み合わせ全体の考え方は停電対策としての蓄電池活用法でも整理しています。
全負荷型と特定負荷型で「停電体験」はまるで違う
停電時の体験を最も大きく左右するのが、全負荷型か特定負荷型かという選択です。
- 全負荷型: 家中のコンセント・回路に給電する方式。オムロンは「お家にある家電全てへ給電する全負荷型。停電時でもエアコンやIH調理器など200Vの家電を使うことができる」と説明しています(出典: オムロン マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズ)
- 特定負荷型: あらかじめ決めた回路だけに給電する方式。同社は「停電時の給電先を特定の家電に限定する特定負荷型。停電時に使う電気を限定することで電気の使い過ぎを防ぎ、細く長く電気を使うことができます」としています
シャープはこの2つを「家中まるごと停電対応」と「ココだけしっかり停電対応」という言い方で分けており、特定負荷型については「あらかじめ決めておいたところだけ電気が使えて、蓄電池の電気を長く使うことができます」と案内しています(出典: シャープ クラウド蓄電池システム)。
つまり全負荷型は快適だが減りが早く、特定負荷型は不便だが長くもつという関係です。どちらが正解かは、停電時に何を守りたいか(在宅医療機器、乳幼児のいる家庭の空調、テレワーク環境など)で決まります。
なお全負荷型の場合、ニチコンのESS-U4シリーズのように自動切替分電盤を組み合わせて家じゅうをバックアップする構成になります(出典: ニチコン ESS-U4シリーズ)。分電盤の工事が絡むため、後から方式を変えるのは簡単ではありません。購入時にどちらにするかが「停電体験」を決めてしまうと考えてください。
停電時に使える出力は機種で大きく違う
「全負荷型なら何でも使える」わけではありません。停電時に同時に取り出せる電力には上限があり、メーカー公式値には次のような差があります。
| メーカー | 製品・シリーズ | 蓄電容量(定格) | 停電時(自立運転時)の出力 | 負荷タイプ |
|---|---|---|---|---|
| テスラ | Powerwall 3 | 13.5kWh | 9.69kW | 全負荷 |
| ニチコン | ESS-U5L1 | 9.7kWh | 5.9kVA | 全負荷・特定負荷に対応 |
| ニチコン | ESS-U5M1 | 7.7kWh | 4.0kVA | 全負荷・特定負荷に対応 |
| ニチコン | ESS-U4X1 | 16.6kWh | 片相1.5kVA・合計3.0kVA | 全負荷(自動切替分電盤) |
| オムロン | KPBP-Aシリーズ 全負荷型 | 6.3〜16.4kWh | 最大4kVA | 全負荷 |
| パナソニック | 創蓄連携システムS+ | 3.5〜37.8kWh | 2.0kVA(単相2線設定)〜4.0kVA(単相3線設定) | 電力切替ユニットに特定負荷ブレーカ付の設定あり |
| シャープ | 蓄電池連携型パワコン JH-55KF4B/55KF4 | ー(パワコン単体の公表値) | 5.5kVA(蓄電池のみの場合は4.0/3.0/2.0kVA) | 「家中まるごと」「ココだけ」の2方式を用意 |
出典: テスラ公式プレスリリース、ニチコン ESS-U5、ニチコン ESS-U4、オムロン KPBP-A、パナソニック 創蓄連携システムS+、シャープ 自立運転モード切替方法
読み方の注意が2つあります。
- kVAとkWは単位が違います。 kVAは皮相電力、kWは有効電力で、単純に横並び比較はできません。同じメーカー内での比較か、販売店に実際に使えるW数を確認するのが確実です。
- 上限は「発電状況により制限される場合がある」と注記されています。 オムロンは全負荷型の最大4kVAについてこの旨を明記しています。カタログ上限がいつでも出るわけではありません。
- 同じ数値でも前提となる構成が違います。 表の各行は蓄電池ユニット単体の値だったり、パワーコンディショナ単体の値だったりします。とくにシャープの5.5kVAはパワーコンディショナの自立運転定格出力で、蓄電池のみで運転する場合は4.0kVA・3.0kVA・2.0kVAに下がると注記されています。自宅で組む構成の実際の値は、見積書と取扱説明書で確認してください。
注目すべきは、容量が大きいほど停電時出力も大きいとは限らない点です。ニチコンのESS-U4X1は16.6kWhと大容量ですが停電時出力は合計3.0kVA(片相1.5kVA)で、9.7kWhのESS-U5L1の5.9kVAより小さい値です。容量(kWh)だけでなく停電時の出力(kVA/kW)を見積書で確認してください。 容量そのものの決め方は蓄電池の容量の選び方で解説しています。
「何時間もつか」を自分で計算する
停電がどれくらいしのげるかは、次の式で概算できます。
もつ時間(時間)≒ 実際に使える蓄電量(kWh) ÷ 停電中の合計消費電力(kW)
ここで重要なのが「実際に使える蓄電量」です。カタログの蓄電容量は定格容量であり、そのまま全部が取り出せるわけではありません。シャープは仕様表の注記で、蓄電池容量(定格容量)7.7kWhについて次のように明記しています。
JIS C 4413に基づいた値です。実際に使用できる容量は使用する機器や蓄電池の内部温度によって変動します。また、電力変換効率や蓄電池保護等により少なくなります。 出典: シャープ 蓄電池システム 仕様/寸法
どのくらい少なくなるかはメーカー・機種・条件によるため、一律の割合で言い切ることはできません。見積もり時に「この機種で停電時に実際に取り出せるのは何kWhか」を販売施工店に確認しましょう。
その上で、使える蓄電量と消費電力を仮に置くと、計算例は次のようになります(あくまで割り算の結果であり、実測値ではありません)。
| 停電中の合計消費電力 | 使える蓄電量5kWh | 使える蓄電量8kWh | 使える蓄電量12kWh |
|---|---|---|---|
| 0.2kW | 約25時間 | 約40時間 | 約60時間 |
| 0.5kW | 約10時間 | 約16時間 | 約24時間 |
| 1.0kW | 約5時間 | 約8時間 | 約12時間 |
| 2.0kW | 約2.5時間 | 約4時間 | 約6時間 |
自宅の家電が何Wなのかは、製品本体の銘板シールや取扱説明書の定格消費電力に書かれています。停電時に動かしたい家電をリストアップして合計しておくと、必要な容量と出力が具体的に見えてきます。
太陽光発電を併用していれば日中に充電しながら使えるため、上表よりも長く持ちます。ただしシャープが自立運転の注意として明記しているとおり、発電量は天候で変動します。 「晴れれば数日」は成立しても、「どんな天候でも数日もつ」とは言えません。電気自動車を電源として使う選択肢もあり、こちらはEVを停電時のバックアップ電源にする方法で扱っています。
停電を先に「体験」しておく——導入後にやる4つの確認と落とし穴
本番の停電で初めて操作を覚えるのは、いちばん避けたいシナリオです。導入後に次の4点を確認しておきましょう。
1. 自動切替が有効になっているか
シャープは自動切替について「初期設定の変更が必要」と注記しています。設置直後の初期設定のままだと自動で切り替わらない可能性があるということです。施工業者の引き渡し時に、自動切替が有効かどうかを口頭ではなく画面や設定表で確認してください。
2. 自立運転で給電される場所を把握しているか
特定負荷型では、給電される回路が事前に決められています。冷蔵庫やルーターのコンセントが対象外だったという事態を避けるため、対象回路とコンセントの位置を紙に書いて分電盤の近くに貼っておくのが確実です。全負荷型でも、停電時出力の上限を超える使い方はできません。
3. 運転モードと残量の設定を見直したか
多くの製品には運転モードの選択があります。シャープは深夜の割安な時間帯に充電して朝夕に放電する経済性モードを紹介する一方、ユーザー事例として「常に蓄電池の残量を30%キープするように設定」という運用も掲載しています。経済性を優先する設定のままだと、停電が起きた時間帯によっては残量が少ないことがあります。防災を重視するなら残量の下限設定を見直しましょう。
また、気象情報と連動して自動で充電する仕組みもあります。シャープはAI雷注意報と連携して停電リスクの高い警報発令時に自動充電する機能を、ニチコンはESS-U5シリーズで気象警報や早期注意情報[高]の発表時に自動で満充電にする制御を案内しています。台風や雷が事前に分かる災害では有効です。ただしニチコンはこの制御について**「事前に見守りサービスと本サービスに加入いただいた方が対象です」** と注記しており、本体を買えば自動で付いてくる機能とは限りません。契約内容に含まれているかを確認してください。
4. 切替手順を実際に確認したか
シャープは自立運転モードへの切替方法を、クラウド連携エネルギーコントローラ、マルチエネルギーモニタ、カラー電力モニタ、リモコン、屋内用パワコンなど機器の種類ごとに手順ページと動画で公開しています。家族全員が操作できる状態にしておきましょう。
ただし、ブレーカーを落として停電を再現する試験は自己判断で行わないでください。 分電盤の操作は機器や設定に影響する可能性があります。テストを希望する場合は取扱説明書の記載を確認し、販売施工店に方法を相談するのが安全です。
復電時の火災リスクにも注意
停電中よりも、電気が戻った瞬間のほうが危ないケースがあります。東京都防災ホームページは、感震ブレーカーの解説の中で「地震の揺れに伴う電気機器からの出火や、停電が復旧したときに発生する火災など、地震による火災の約6割は電気が原因と言われています」と注意を促しています(出典: 東京都防災ホームページ 出火防止対策)。停電時は使っていた家電のスイッチを切っておく、避難時はブレーカーを落とす、といった基本動作も併せて家族で共有しておきましょう。
補助金は2026年8月時点でどうなっているか
停電対策で蓄電池を検討するなら、費用面の現在地も押さえておく必要があります。
- 国のDR家庭用蓄電池事業(上限60万円/申請) は2026年3月24日公募開始、2026年5月29日に予算到達で公募終了。次回の公募は本記事の執筆時点で未公表です(SII)。詳細はDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています
- 東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業 は蓄電容量10万円/kWh(助成対象経費が上限)で、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸。DR実証に参加する場合はエネルギーマネジメント機器の設置有無に応じて1台あたり10万〜15万円が加算されます。事前申込は令和8年5月29日開始で、令和8年10月1日以降の事前申込はSIIの令和8年度登録済製品のみが対象になります(クール・ネット東京)。詳しくは東京都の蓄電池補助金をご覧ください
補助金の締切に合わせて機種を急いで決めると、停電時出力や負荷タイプの検討が甘くなりがちです。「補助金の額」ではなく「停電時に何が使えるか」で選ぶという順序を守ってください。
まとめ
- 停電時、多くの蓄電池は自動で自立運転に切り替わり数秒で給電が始まります(シャープ公式表記)。ただし自動切替には初期設定の変更が必要な場合があり、切替時間を数値で公表していないメーカーも多いため、取扱説明書と販売施工店で確認が必要です
- 停電体験を決めるのは全負荷型か特定負荷型かと停電時出力です。メーカー公式値でも2.0kVAから9.69kWまで幅があり、容量(kWh)だけを見て選ぶと「使えると思っていた家電が動かない」ことになります
- 持続時間は「実際に使える蓄電量 ÷ 合計消費電力」で概算できます。カタログの定格容量は電力変換効率や電池保護により全量は使えない旨がメーカー仕様書に注記されています
- 導入後は自動切替の設定・給電される回路・残量の下限設定・切替操作の4点を確認しておきましょう。ブレーカー操作を伴う試験は自己判断せず、取扱説明書と販売施工店の指示に従ってください