電気代が値上がりする理由は、請求書のなかで単価が動く3つのパーツ、つまり「燃料費調整額」「再エネ賦課金」「託送料金」にほぼ集約できます。 そして2026年8月時点で押さえておきたいのは、いまの請求額には国の値引きが入っていて、その値引きが2026年9月使用分で一区切りになるという点です。
【2026年8月25日時点】 国の電気・ガス料金支援は、2026年7月使用分から9月使用分までの3か月に限って実施されています。電気(低圧)の値引き単価は7月・9月使用分が3.5円/kWh、8月使用分が4.5円/kWhです。資源エネルギー庁は「7月使用分とは、原則としては、7月中の検針日から8月中の検針日までの使用に係る分を指します」と注記しています。10月使用分以降の扱いは、2026年8月25日時点で同サイトに記載がありません。出典: 資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援
この記事でわかること
- 電気代の請求額がどの4つのパーツでできているか
- 値上がりの理由①燃料費調整額が毎月どう決まるか、上限があるプランとないプラン
- 値上がりの理由②再エネ賦課金が2026年度に4.18円/kWhへ上がった算定根拠
- 値上がりの理由③託送料金が電気料金の約30%を占め、更新投資を回収し続ける仕組み
- いまの請求額に入っている国の値引きの期限と、家庭側でできる打ち手
電気代の内訳を4つに分けると、値上がりの理由が見える
家庭の電気料金は、次の4つを足し合わせて計算されます(従量制の場合)。
| パーツ | 何で決まるか | 動きやすさ |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約アンペアなどの契約の大きさ | 契約を変えない限り固定 |
| 電力量料金 | 使用電力量 × 段階別の単価 | 料金改定時に変わる |
| 燃料費調整額 | 使用電力量 × 燃料費調整単価 | 毎月変わる |
| 再エネ賦課金 | 使用電力量 × 全国一律の賦課金単価 | 年1回変わる |
東京電力エナジーパートナーの規制料金プラン「従量電灯B」を例にすると、公表単価は次のとおりです。
| 項目 | 単価(税込) |
|---|---|
| 基本料金 20A | 623円50銭 |
| 基本料金 30A | 935円25銭 |
| 基本料金 40A | 1,247円00銭 |
| 電力量料金 最初の120kWhまで | 29円80銭/kWh |
| 電力量料金 120kWh超〜300kWh | 36円40銭/kWh |
| 電力量料金 300kWh超 | 40円49銭/kWh |
| 最低月額料金 | 328円08銭 |
同社は同じページで「電力量料金は、燃料価格の変動に応じて燃料費調整額を加算あるいは差し引きます」「電気料金を算定する際は、再生可能エネルギー発電促進賦課金を加算します」と明記しています。つまり請求額が動く経路は、単価改定を除けば燃料費調整額と再エネ賦課金の2本、そして使用量そのものということになります。
公表単価をあてはめた計算例
同社が公表している平均モデル(従量電灯B・30A契約・使用電力量260kWh)に、2026年9月分の単価を当てはめると次のようになります。
| 内訳 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 基本料金(30A) | — | 935円25銭 |
| 電力量料金 第1段階 | 120kWh × 29円80銭 | 3,576円 |
| 電力量料金 第2段階 | 140kWh × 36円40銭 | 5,096円 |
| 燃料費調整額 | 260kWh × ▲10円96銭 | ▲2,849円60銭 |
| 再エネ賦課金 | 4円18銭 × 260kWh | 1,086円 |
| 合計 | 約7,843円 |
単価の出典: 東京電力エナジーパートナー 燃料費調整単価等一覧、燃料費調整のお知らせ(2026年9月分)(同社は平均モデルの再エネ賦課金を1,086円と明記)
※合計は公表単価を単純に当てはめた本記事の計算です。実際の請求額は検針日数や割引などで変わります。同社は「基本料金、電力量料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金を合計し、円未満は切り捨てます」としています。
※同社の2026年9月分の燃料費調整単価には、国の電気・ガス料金支援による値引き(低圧4.50円/kWh)が含まれています。260kWhなら1,170円分です。なお電力会社の「◯月分」は請求(検針)の区切り、国の支援の「◯月使用分」は使用の区切りなので、同じ数字でも月の呼び方が一致しない点に注意してください。
理由①:燃料費調整額は「輸入燃料の円建て価格」で毎月動く
燃料費調整制度は、燃料価格の変動を自動的に電気料金へ反映させる仕組みです。東京電力エナジーパートナーは制度を次のように説明しています。
電気料金には、燃料費調整額が含まれています。燃料費調整額とは、貿易統計における原油価格や液化天然ガス価格などから算出される、その時々の平均燃料価格により毎月変動する調整額のことです。 (出典: 東京電力エナジーパートナー 燃料費調整制度とは)
ポイントは3つあります。
- 原油・LNG・石炭の3か月分の貿易統計価格から平均燃料価格を算定する
- 算定した平均燃料価格と基準燃料価格の差で燃料費調整単価を決める
- 各月分の単価は2か月後の電気料金に反映される
貿易統計の価格は円建ての輸入価格です。したがって産油国側の価格が同じでも、為替が円安に振れれば円建ての輸入価格は上がり、燃料費調整額を押し上げます。同社は制度の目的を「火力燃料(原油・LNG〔液化天然ガス〕・石炭)の価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、その変動に応じて、毎月自動的に電気料金を調整する制度です」とも説明しています。輸入した火力燃料の円建て価格が、そのまま毎月の請求書に効いてくるという構造です。
規制料金には上限があり、自由料金にはない
見落とされがちですが、燃料費調整には上限の有無という重要な違いがあります。
東京電力エナジーパートナーの規制料金プラン(従量電灯Bなどの特定小売供給約款にもとづくプラン)では、平均燃料価格が86,100円/klを上回るとプラス調整、下回るとマイナス調整になり、129,200円/kl(基準燃料価格86,100円×1.5)を上回る部分については調整を行わないと定められています。一方で同社は「規制料金プラン(従量電灯などの特定小売供給約款にもとづく料金プラン)には、加算される燃料費調整額の変動単価に上限がある一方、当社の自由料金プラン……においては上限がありませんので、燃料価格が高騰した場合には、当社の自由料金プランの方が燃料費調整額が高くなる可能性があります」と案内しています。
同社は過去の事例として、「世界的な燃料価格高騰の影響で、当社の代表的な料金プランである関東エリアのスタンダードSの30A 260kWhモデルでは、2023年1月の電気料金は、燃料費調整の適用がない場合と比べ、1.4倍程度となりました」とも記載しています。燃料高騰局面でどこまで請求額が伸びるかは、契約しているプランの種類で変わるということです。契約中のプランが規制料金か自由料金かは、検針票や会員サイトのプラン名で確認できます。時間帯別プランの選び方は時間帯別電気料金プランの活用法でも整理しています。
理由②:再エネ賦課金は2026年度に4.18円/kWhへ
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、FIT制度・FIP制度で再エネ電気を買い取る費用を、電気の使用量に応じて全国一律の単価で負担する仕組みです。
経済産業省は2026年3月19日に、次のように公表しています。
2026年度の賦課金単価は、再エネの導入状況や卸電力市場価格等を踏まえ、1kWh当たり4.18円となりました。目安として1ヶ月の電力使用量が400kWhの需要家モデルの負担額を見ると、月額1,672円、年額20,064円となります。 (出典: 経済産業省 2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します)
2025年度は3.98円/kWhでしたので、0.20円/kWhの上昇です(出典: 東京電力エナジーパートナー 賦課金等について、九州電力 再生可能エネルギー発電促進賦課金)。適用期間は2026年5月検針分から2027年4月検針分までです。月400kWh使う家庭なら、単価上昇分だけで月80円の増加になります。
上がった理由は「買取費用」より「回避可能費用」
同じ経済産業省の資料には算定根拠が載っており、内訳を見ると理由がはっきりします。
| 内訳 | 2025年度の想定 | 2026年度の想定 |
|---|---|---|
| 買取費用等 | 4兆8,540億円 | 4兆8,507億円 |
| 回避可能費用等 | 1兆7,906億円 | 1兆6,495億円 |
| 販売電力量 | 7,708億kWh | 7,665億kWh |
出典: 同上(経済産業省)
買取費用そのものはほぼ横ばいです。動いたのは、電力会社が再エネを買い取ることで節約できたとみなす「回避可能費用」で、資料には「過去の市場価格の実績を踏まえて、市場価格に連動する回避可能費用単価を計算」と説明されています。卸電力市場の価格が下がると回避可能費用が減り、その分だけ賦課金として集める額が増えるという関係です。賦課金の仕組みそのものは再エネ賦課金とは何かで詳しく解説しています。
なお同じ資料で、2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)の買取条件は初期投資支援スキームとして**24円/kWh(〜4年目)、8.3円/kWh(5〜10年目)**と示されています。売電で回収するより自家消費に回したほうが有利になりやすい水準です。
理由③:託送料金は電気料金の約30%を占める
3つ目は、家庭の請求書に独立した項目としては現れないコストです。電力・ガス取引監視等委員会は次のように説明しています。
送配電ネットワークを整備・維持し、電気を安定して送り届けるために、電気料金を通じて回収される料金、それが「託送料金」です。……託送料金は電気料金の約30%を占めています。 (出典: 電力・ガス取引監視等委員会 電気の託送料金とレベニューキャップ制度)
同委員会は日本の送配電ネットワークが転換期にあるとして、再エネを需要地へ届けるための増強、高度経済成長期に整備された設備の計画的な更新投資、自然災害に備えた強化という3つの課題を挙げています。
これらの投資を管理する仕組みがレベニューキャップ制度で、2023年4月から導入されました。事業者が5年間の事業計画を作り、必要な費用を国が審査し、達成状況を国が評価します。効率化インセンティブも組み込まれ、必要な投資とコスト効率化の両立を目指す設計です。
さらに同委員会は、2024年4月から発電者も託送料金の一部を負担する「発電側課金」が導入されたこと、2026年度には物価等の上昇および事業報酬の取扱いに関する変更があることを案内しています。設備更新と災害対策の投資が続く限り、託送料金は下がりにくいというのが構造的な見立てです。
いまの請求額には、国の値引きが入っている
2026年8月時点で電気代が「思ったより上がっていない」と感じるとしたら、大きな理由は国の電気・ガス料金支援です。
資源エネルギー庁の特設サイトは、実施の背景をこう説明しています。令和8年5月25日の記者会見で「中東情勢を踏まえた令和8年度補正予算等について」が示され、「今月や来月に直ちに大きく上昇する可能性は低いと認識されるが、その後は、燃料輸入価格の上昇が電気料金に反映されていくと見込んでおり、使用量が多くなる7月から9月において、電気・ガス料金への支援を実施することとされました」というものです。
値引き単価は次のとおりです。
| 適用期間 | 電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス |
|---|---|---|---|
| 2026年7月使用分 | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | 14.0円/m3 |
| 2026年8月使用分 | 4.5円/kWh | 2.3円/kWh | 18.0円/m3 |
| 2026年9月使用分 | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | 14.0円/m3 |
利用者側の申請手続きは不要で、対象事業者が毎月の料金から使用量に応じて値引きします。プロパンガスは対象外です。同サイトは「個人情報(生年月日、住所、家族構成等)や手数料を求める不審な電話が発生しています」として注意を呼びかけています。
統計にもこの効果は表れています。総務省統計局の消費者物価指数(2025年基準)では、2026年7月分の電気代は前年同月比マイナス0.1%、6月分はマイナス1.7%でした(出典: 総務省統計局 消費者物価指数 全国 2026年7月分)。いまの落ち着きは政策と燃料価格の巡り合わせによるものです。支援が終われば低圧で1kWhあたり3.5〜4.5円の値引きが外れるため、燃料費調整単価などの他の条件が変わらなければ、同じ使用量でも請求額は上がります。 値上がりの経緯を時系列で追いたい方は電気代値上げの流れもあわせてご覧ください。
値上がりに備える打ち手を、効果が続く順に
ここまで見た3つの理由に共通するのは、いずれも「買った電力量(kWh)」に単価を掛けて請求されるという点です。単価を家庭側で動かすことはできませんが、掛け算のもう一方は動かせます。
1. 買う電力量そのものを減らす(自家消費)
再エネ賦課金は「賦課金単価に電気のご使用量を乗じて算定」され、燃料費調整額も「各月の燃料費調整単価に使用電力量を乗じて算定」されます(出典: 前掲の東京電力エナジーパートナー各ページ)。電力会社から買うkWhが減れば、その分だけ両方が同時に減るという関係です。太陽光発電で発電した電気を自宅で使う自家消費は、この掛け算の土台を小さくする方法にあたります。考え方は太陽光の自家消費という選択で整理しています。
導入効果は屋根の向き・面積・生活パターンで大きく変わるため、金額は見積もりとシミュレーションで確認してください。
2. 契約の大きさと料金プランを見直す
基本料金は契約アンペアで決まります。先ほどの従量電灯Bの単価表では、30A(935円25銭)と20A(623円50銭)の差は月311円75銭、12か月で約3,700円です(公表単価からの単純計算)。ただしアンペアを下げるとブレーカーが落ちやすくなるため、同時に使う家電の消費電力を確認したうえで判断してください。
3. 断熱で「使わざるを得ない量」を減らす
窓の断熱改修には国の補助事業があります。2026年度は「住宅省エネ2026キャンペーン」として、みらいエコ住宅2026事業、先進的窓リノベ2026事業、給湯省エネ2026事業、賃貸集合給湯省エネ2026事業の4事業が動いています(出典: 住宅省エネ2026キャンペーン)。
先進的窓リノベ2026事業は既存住宅のガラス交換・内窓設置・外窓交換などが対象で、1申請あたりの補助額が5万円以上であることが要件です。補助対象期間は2025年11月28日から遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合は当該時点まで)と公表されています(出典: 先進的窓リノベ2026事業 事業概要)。いずれの事業も予算上限に達した時点で受付終了で、2026年8月25日午前0時時点の予算に対する補助金申請額の割合は、先進的窓リノベ2026事業が19%、給湯省エネ2026事業が39%と公表されています。検討するなら公式サイトの消化率を見ながら動くのが現実的です。
4. 省エネ性能は公的なラベルで比べる
家電の買い替えでは、資源エネルギー庁の「省エネ型製品情報サイト」に登録された製品のエネルギー消費効率や省エネ基準達成率を、省エネ性能カタログ電子版で比較できます。エアコン・テレビ・電気冷蔵庫などは星の数(多段階評価)で区分されているため、店頭の口頭説明ではなく公式データで比べるのが確実です(出典: 省エネ性能カタログ電子版)。
5. 切り替えの勧誘には落ち着いて対応する
国民生活センターは、契約中の電力会社を名乗る訪問や、検針票を見せたことで意図しない契約に至った事例を公表しています。消費者へのアドバイスとして挙げられているのは、検針票の記載情報(氏名、住所、顧客番号、供給地点特定番号等)を慎重に扱うこと、勧誘してきた会社と新たに契約する会社の社名・連絡先を明確に確認すること、料金プランや算定方法の説明を受けてメリット・デメリットを把握してから契約することの3点です(出典: 国民生活センター 電力・ガスの契約トラブル、2026年6月8日更新)。
なお蓄電池の導入を組み合わせて考えている場合、国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、2026年8月時点で新規申請はできません(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。詳細は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。自治体の制度は別に動いており、東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸です(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。
まとめ
- 電気代が値上がりする理由は、燃料費調整額・再エネ賦課金・託送料金の3つに集約できる。いずれも使用電力量に単価を掛けて請求される
- 再エネ賦課金は2026年度に4.18円/kWh(2025年度は3.98円/kWh)。2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用。上昇の主因は買取費用の増加ではなく回避可能費用の減少
- **託送料金は電気料金の約30%**を占め、送配電設備の更新投資と災害対策が続く限り下がりにくい。レベニューキャップ制度のもとで2026年度は物価上昇と事業報酬の取扱いが変更される
- 2026年8月時点の請求額には**国の値引き(7〜9月使用分のみ)**が入っている。家庭側で動かせるのは単価ではなく「買うkWh」。自家消費・断熱・省エネ家電といった使用量そのものを減らす対策ほど、効果が長く続く