電気代の「今後」で今いちばん確度が高いのは、2026年10月使用分から国の値引きが外れることです。 低圧の電気は9月使用分まで3.5円/kWhの値引きが入っていますが、10月使用分からはこれがなくなります。月400kWhの家庭なら単純計算で月1,400円分の押し上げです。
一方で、「2030年に電気代が何%上がる」といった数字を国が公式に出した資料はありません。この記事では、日程と単価が決まっている値上がり要因だけを公的資料から拾って並べます。
【2026年8月28日時点】 2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWh(2025年度は3.98円/kWh)。国の電気・ガス料金支援は2026年7月使用分〜9月使用分。出典: 経済産業省 報道発表(2026年3月19日)、資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援
この記事でわかること(数字はすべて公的機関の公表値です)
- 2026年度の再エネ賦課金の単価と年間負担額
- 国の値引き支援がいつ終わり、いくら分戻るのか
- 燃料費調整額が何か月遅れで反映されるか
- カーボンプライシングの導入日程と、公表されていないこと
- 家庭側でできる対策と、制度上の自家消費の価値
電気代を構成する4つの要素
電気料金は大きく4つの要素でできています。それぞれ「誰がいつ決めるか」が違うため、値上がりの読み方も変わります。
| 要素 | 決まり方 | 2026年8月時点で確認できること |
|---|---|---|
| 基本料金・従量料金 | 小売電気事業者が設定(託送料金を含む) | 会社・プランごとに異なり、改定は各社の公表による |
| 燃料費調整額 | 貿易統計の燃料価格をもとに毎月変動 | 約3か月前の平均燃料価格が反映される |
| 再エネ賦課金 | 毎年度、経済産業大臣が全国一律で設定 | 2026年度は4.18円/kWh(前年度3.98円) |
| 国の値引き支援 | 予算措置。期間限定でマイナスに働く | 2026年7月〜9月使用分のみ。低圧3.5円/kWh |
要因1:再エネ賦課金の増加
2026年度は4.18円/kWh
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、FIT制度・FIP制度で買い取った再エネ電力のコストを電気の利用者で分担する仕組みです。経済産業省は2026年3月19日、2026年度の賦課金単価を1kWhあたり4.18円と発表しました。月400kWhの需要家モデル(総務省家計調査に基づく一般的な世帯の使用量)では月額1,672円、年額20,064円です(経済産業省 報道発表)。
前年度と比べると次のとおりです。
| 年度 | 賦課金単価 | 400kWhモデルの月額 | 同 年額 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 3.98円/kWh | 1,592円 | 19,104円 |
| 2026年度 | 4.18円/kWh | 1,672円 | 20,064円 |
1年で0.20円/kWh、年額では960円の増加です。2026年度の単価は2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます。2027年度以降の単価は毎年3月ごろの発表を待つことになり、将来の単価を予測した公式資料はありません。
算定根拠として経済産業省が示した2026年度の想定は、買取費用等が4兆8,507億円、回避可能費用等が1兆6,495億円、販売電力量が7,665億kWhです。
電力会社から「買う量」に比例してかかる
資源エネルギー庁は賦課金の特徴として「ご負担額は電気の使用量に比例します」と説明し、賦課金は「毎月の電気料金とあわせていただいています」としています(資源エネルギー庁 固定価格買取制度)。負担額は電気料金と一緒に請求される=電力会社から購入した電力量に比例するので、自宅の太陽光で発電してそのまま使った分には賦課金が乗りません。なお単価は毎年度、経済産業大臣が決め、推測値と実績値の差は翌々年度の単価で調整されます(同ページ)。仕組みの詳細は再エネ賦課金の解説も参考にしてください。
要因2:燃料費調整額と国際情勢
約3か月遅れで料金に届く
燃料費調整制度は、火力発電に使う燃料の輸入価格の変動を電気料金に反映させる仕組みです。北海道電力は、2026年6月の貿易統計値(原油、LNG、海外炭の価格)の公表を受けて2026年4〜6月の平均燃料価格が確定し、2026年9月分の電気料金に適用すると案内しています(北海道電力 燃料費等調整制度)。3か月分の平均が、およそ3か月後の請求に届く構造です。同社は「為替レートの変動などによる燃料価格の変化」を反映する制度だとも説明しており、円安も同じ経路で効いてきます。
発電の約7割はまだ火力
第7次エネルギー基本計画(2025年2月18日閣議決定)によると、2023年度(速報値)の電源構成は火力68.6%、再エネ22.9%、原子力8.5%、エネルギー自給率は15.2%でした。同計画は火力について「足下の供給の7割を満たす供給力」と記しています。2040年度の見通しは再エネ4〜5割程度、原子力2割程度、火力3〜4割程度です(第7次エネルギー基本計画の概要)。燃料の輸入価格が家計に響く構造は、当面続く前提で考えるのが現実的です。
国の値引きは2026年9月使用分で終わる
資源エネルギー庁の特設サイトによると、国の電気・ガス料金支援は2026年7月使用分から9月使用分まで。低圧(一般家庭)の値引き単価は7月・9月使用分が3.5円/kWh、8月使用分が4.5円/kWhです(資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援)。
同サイトは実施の背景として2026年5月25日の総理記者会見を挙げ、「その後は、燃料輸入価格の上昇が電気料金に反映されていくと見込んでおり、使用量が多くなる7月から9月において、電気・ガス料金への支援を実施することとされました」と説明しています。政府自身が燃料輸入価格の上昇を織り込んでいる点は押さえておきたいところです。
10月使用分から値引きがなくなると、月400kWhの家庭で単純計算1,400円分の押し上げになります。ただしこれは現在公表されている実施期間を前提にした話で、2026年8月28日時点で10月以降の延長・再開は公表されていません。延長が決まれば前提は変わるので、上記の特設サイトで実施期間を確認してください。直近の料金の動きは2026年の電気代の見通しでも整理しています。
要因3:託送料金と送配電コスト
送配電網の維持・更新費用は託送料金として小売の料金に含まれています。第7次エネルギー基本計画は、DXやGXの進展に伴い電力需要の増加が見込まれるとしたうえで、「地域間連系線、地内基幹系統等の増強を着実に進める」と明記しています(同計画の概要)。
ただし、この投資が家庭1軒あたり年間いくらの負担増になるかを示した公的な試算は、2026年8月時点で確認できません。「年間◯円上がる」という数字を見かけたら、出所を確認したうえで扱ってください。この記事では金額を書きません。
要因4:カーボンプライシングの導入
日程は閣議決定済み
GX2040ビジョン(2025年2月18日閣議決定)は、成長志向型カーボンプライシング構想として次の日程を示しています(内閣官房 GX2040ビジョン)。
- 排出量取引制度:2026年度から本格稼働
- 化石燃料賦課金:2028年度から導入
- 発電事業者への有償オークション:2033年度から導入
「家庭の電気代が◯円上がる」という国の試算はない
同ビジョンは続けて、「化石燃料賦課金及び発電事業者への有償オークションについては、2023年度に成立したGX推進法に基づき、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で導入することとなっている」と記しています。
カーボンプライシングは長期の値上がり要因として意識しておくべきものですが、家庭の電気代が年間いくら増えるかを国が金額で公表した資料はありません。断定的な金額の記述には根拠を求めてください。2030年前後について政府計画に書かれている数字は2030年のエネルギー予測で整理しています。
ガス代の今後はどうなる?
都市ガス
国の電気・ガス料金支援は都市ガスも対象で、値引き単価は2026年7月・9月使用分が14.0円/㎥、8月使用分が18.0円/㎥です(資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援)。電気と同じく9月使用分で終了します。都市ガスの原料はLNGが中心で、電気と同じ燃料調達の影響を受けます。
LPガス(プロパンガス)
同サイトは「プロパンガスを使っているのだけど…」という設問に対し、今回の対象となりませんと明記しています。都市ガスとLPガスでは、国の支援の届き方そのものが違う点に注意してください。ガス併用と電化の比較はオール電化とガス併用のコスト比較も参考になります。
家庭でできるエネルギーコスト対策
制度上、自家消費1kWhの価値は27円台
調達価格等算定委員会は、2026年度の住宅用太陽光の自家消費分の便益を27.45円/kWhと設定しています(意見書本文の値。結論部分の別紙では27.31円/kWhで、どちらにせよ27円台です)。これは大手電力の直近10年間(2014〜2023年度)の家庭用電気料金単価に消費税率10%を加味した値です。同じ考え方で1年ずらした直近10年(2015〜2024年度)で計算すると27.86円/kWhになります(調達価格等算定委員会 意見PDF)。
**自家消費の価値の定義そのものが「家庭用電気料金単価」**なので、電気代が上がるほど自家消費の価値も上がる関係です。
一方で売電は、2026年度のFIT価格が1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh(資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。買取期間が終わったあとの売電単価は、2025年12月時点で確認された小売電気事業者の買取メニューで平均10.0円/kWh、中央値9.5円/kWhでした。
ただし実態として、住宅用の余剰売電比率は平均64.8%(中央値60.7%)で、発電した電気の6割前後は売電に回っています(同意見PDF)。自家消費を増やすには、日中に家電を動かす、給湯やEV充電を昼に寄せるといった運用の工夫が要ります。詳しくは太陽光の自家消費を増やす方法をご覧ください。
補助金は「いま出ているもの」を確認する
国の「令和7年度補正 DRリソース導入のための家庭用蓄電システム等導入支援事業」(1申請あたり上限60万円)は、2026年5月29日に交付申請額が予算に達して公募が終了しました。次回の予定は公表されていません(SII 公式)。2026年8月時点で新規申請はできませんので、「国の補助金が使えます」という説明を受けたら根拠を確認してください(国の蓄電池補助金のいま)。
自治体の助成は続いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸です。お住まいの自治体の公式ページで最新の公募要領を確認しましょう。
まとめ
- 公表済みの直近の日程:国の電気・ガス料金支援は2026年9月使用分まで。低圧の値引き3.5円/kWhが外れると、月400kWhなら単純計算で月1,400円分の押し上げ(2026年9月1日時点で延長の公表はなし)
- 年単位で効く要因:2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWh(前年度比+0.20円)。400kWhモデルで年20,064円、前年度から960円の増加
- 長期の要因:化石燃料賦課金は2028年度、発電事業者への有償オークションは2033年度から。ただし「エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で導入」とされ、家庭負担額の公式試算はない
- 対策の軸:制度上、自家消費1kWhの価値は27.45円/kWhで、売電の5〜10年目8.3円/kWhを大きく上回る。国の蓄電池補助金は公募終了済みのため、自治体の助成の有無から確認する