マンションのEV充電器で難所になるのは工事ではなく、「総会の決議」と「補助金の時期」です。 2026年8月29日時点で、マンション向けの国の補助金は申請受付が終わっており、動いているのは東京都などの自治体の助成です。総会をいつ開けるかが、そのまま工程を決めます。
【2026年8月29日時点】 国の「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進補助金」のうち、マンション等が対象となる充電設備(令和7年度補正予算 第1期・第2期)は申請提出期間が終了しています。受付中なのは戸建て住宅充電用コンセントだけで、V2H充放電設備と外部給電器も2026年8月27日に受付を終了しました。出典: 次世代自動車振興センター「充電設備補助金」
この記事でわかること(数字はすべて公的機関・補助金執行団体の公表値です)
- 国と自治体の補助金がいまどうなっているか
- 分譲マンションで必要になる決議の種類と、その根拠
- 補助金申請に総会または理事会の議事録が要るという実務
- 設置費用と電気代を誰が負担するかの決め方
- 機械式駐車場・受変電設備など、つまずきやすい論点
2026年8月時点の前提:国は締切、自治体は受付中
国の補助金は「マンション等」向けが受付終了
国の充電インフラ補助金は、次世代自動車振興センターが執行しています。同センターの充電設備補助金ページでは、**「令和7年度補正予算 充電設備 第1期・第2期」は「申請提出期間は終了しました」**と表示され、受付中と明記されているのは「戸建て住宅充電用コンセント」だけです。V2H充放電設備と外部給電器も2026年8月27日に受付を終了しています(次世代自動車振興センター)。マンション向けの区分はこの第1期・第2期に含まれるため、2026年8月29日時点で新規の交付申請はできません。次期の公募予定も公表されていません。
とはいえ、制度の中身は次の公募を待つときの判断材料になります。マンション向けの区分は正式には「マンション、月極駐車場及び事務所・工場等への充電設備設置事業(基礎充電)」といい、補助率は**充電設備の購入費が1/2以内、設置工事費が定額(1/1以内)**です。申請できるのは地方公共団体・法人・個人で、法人格をもたない管理組合や共同住宅のオーナー・居住者も申請者になれます(申請の手引き「マンション等への設置」PDF、同「事業の概要」PDF)。
東京都の助成は令和8年度分を受付中
自治体の助成は動いています。東京都(クール・ネット東京)の**充電設備普及促進事業(居住者用)**は、令和8年度の申請受付を2026年6月26日に開始し、受付期限は令和9年3月31日(水)17時。ただし申請額が予算額に到達した時点で受付終了とされています。
助成の上限額は次のとおりです(クール・ネット東京 公式)。上の3行は設置工事費の上限、受変電設備とパレット更新経費は設備購入費と設置工事費を合わせた上限です。
| 対象 | 上限額 |
|---|---|
| 普通充電設備等 | 1基目135万円、2基目以降68万円/基 |
| 充電用コンセント | 1基目95万円、2基目以降48万円/基 |
| 上記2区分を機械式駐車場に設置する場合 | 1基目171万円、2基目以降86万円/基 |
| 受変電設備(充電設備の合計出力50kW以上の場合に限る) | 435万円 |
| 機械式駐車場パレット更新経費 | 140万円/パレット |
| 先行工事(将来設置予定の区画への事前配管等) | 7万円/区画、機械式駐車場は30万円/区画 |
通信機能付きの充電設備を導入する場合は、設置工事費の上限額に1基あたり3万円(超急速・急速充電設備は10万円)が上乗せされます。遠隔制御用のエネルギーマネジメント設備も上限30万円まで対象です。
設備購入費は「購入価格または上限額のいずれか低い金額から国補助を差し引いた額」。集合住宅では「設置場所の建物に居住する者のための設備であること」と、国の補助対象機器として承認された設備であることが要件です。国の補助金を併用する場合は、国の交付額が確定した通知を受けてから都に交付申請する順番になります。
区市町村の助成は上乗せできる
区市町村レベルの助成もあります。千代田区の「令和8年度千代田区クリーンエネルギー自動車充電設備等導入費助成制度」は、マンション共用部について区内の新築または既存マンションの管理者または管理組合等を助成対象者とし、普通充電設備・充電用コンセント・充電用コンセントスタンドは1台あたり最大30万円、急速充電設備とV2Hは最大50万円(複数台申請時の上限合計は50万円・税抜き)。区は「経済産業省や東京都の助成と合わせて利用することができます」と明記する一方、先着順で予算がなくなり次第終了、管理組合等は「議決書の写しまたは、これに代わるもの」の提出が必要としています(千代田区 公式)。
お住まいの自治体の制度は次世代自動車振興センターの地方自治体支援制度一覧から確認できます。探し方は自治体の補助金の探し方も参考にしてください。
分譲マンションは「決議」から始まる
普通決議で済むケースが規約コメントに書かれた
分譲マンションで最初にぶつかるのが、総会決議の種類です。国土交通省の**令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)**では、総会の議事は原則として出席組合員の議決権の過半数で決します(第47条第2項)。一方、敷地及び共用部分等の変更のうち「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除くものは、出席組合員及びその議決権の各4分の3以上が必要です(第47条第3項第二号)。
そのうえで、同規約のコメント第47条関係には次の記述があります。
カ)充電設備の設置工事に関し、充電器自体の設置及び配線を通すために必要な配管の設置など、建物の躯体部分や敷地への加工の程度が小さい工事を行う場合や、敷地へ相当程度の加工を加えることなく受変電設備を変更する場合は、普通決議により実施可能と考えられる。
一方で、駐車場の増改築工事(充電設備の設置工事等ほかの工事に伴って行われる場合を含む)で大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議によるとも書かれています。コメントは冒頭で「基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断による」と断っているため、規模の大きい計画では管理会社や施工会社と決議要件を事前にすり合わせておくのが安全です(国土交通省「マンション標準管理規約」、単棟型PDF)。
なお令和7年の改正では、区分所有法の改正を受けて特別多数決議に定足数の規定が設けられ、総会成立の定足数も「議決権総数の半数以上」から「議決権総数の過半数」に見直されています。
補助金の申請には議事録が要る
決議は制度上も必須です。国の補助金では、分譲マンション等について**「交付申請時に『住民総会』で充電設備の設置が決議されている、または理事会での合意がされていること」が要件とされ、住民総会の議事録(作成日・開催日・マンション名称・承認の記載が必須)を提出します。総会の開催が間に合わない場合は、理事会の議事録に加えて住民総会の開催予定日**の記載が求められます(申請の手引き「マンション等への設置」PDF)。
なお管理組合が申請者になる場合は「マンション等簡易申請」を選ぶことができ、申請要件・提出書類・申告できる工事項目が通常の交付申請とは異なります。どちらで申請するかで必要書類が変わるため、手引きで先に確認しておくと手戻りが減ります。
多くの管理組合は通常総会が年1回です。公募の再開に合わせて動けるよう、理事会での合意だけでも先に取っておく価値があります。
費用と電気代の負担は先に決める
標準管理規約のコメント第15条関係(駐車場の使用)には、充電設備について次の指摘があります。
電気自動車等用充電設備(以下「充電設備」という。)を設置する際には、充電設備の使用上のルールや使用料についても、併せて駐車場使用細則等に定めることが望ましい。また、設置時には充電設備の設置にかかる費用や、充電設備の運用及び維持費を誰がどの程度負担するかについてあらかじめ総会で決議をしておくことが望ましい。
同コメントは、使用細則の例や費用負担の考え方について、一般社団法人マンション計画修繕施工協会が作成した「既存の分譲マンションへの電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)充電設備導入マニュアル」を参照するよう案内しています。
電気代の目安は、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める**電力料金目安単価31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定)**が基準になります(同協議会 公式)。実際の単価は契約プランで変わるため、共用部の契約単価を確認したうえで課金ルールを設計してください。
なお国の補助金では、充電設備の利用者は当該マンション等の居住者または駐車場の契約者に限られ、受電元は共用部の配電盤・分電盤等または充電設備専用の別引込であることが原則とされています(全戸数と同数以上の区画に設置する場合は各戸の分電盤を受電元にすることも可)。時間貸し駐車場やカーシェアリング用の区画は対象外です。
設備は「普通充電」が基本になる
自宅など車両の保管場所で行う充電は「基礎充電」と呼ばれ、マンション向けの補助事業もこの区分です。夜間の駐車時間を使う普通充電が中心になります。
次世代自動車振興センターのEV・PHV用語集は、普通充電器(200Vの場合)を入力電圧は単相200V交流、定格出力は3kW程度、充電時間は5〜7時間程度と整理しています。同センターは普通充電を「設備導入費用の負担が少なく住宅や事務所や宿泊施設など長時間駐車する場所での利用に適している」と説明しています。充電時間は車両のバッテリー容量や残量で変動します。
ただしこの用語集ページには「本ページは2013年に作成していますので、最新の実態と合わない部分があります」という注記があります。出力や充電時間は現在の製品実態と差がある可能性があるため、導入する機種の実出力はカタログと見積書で確認してください(次世代自動車振興センター「充電システムについて」)。
補助金の要件面では、設置する充電設備はOCPP1.6以降またはECHONET Liteに準拠した普通充電設備、充電用コンセント、充電用コンセントスタンドであることが求められます。通信を介さずに課金や制御を行う場合はこの準拠が不要となる一方、普通充電設備と充電用コンセント(スタンド)の併設は不可とされています。
充電器の種類や選び方はEV充電器の種類と選び方、200V工事の中身はEV充電の200V工事で扱っています。
賃貸マンションと、つまずきやすい論点
賃貸は「所有者の許諾」が起点
賃貸マンションの場合、申請者が所有者でないときは所有者の許諾が必要です。国の補助金では、所有者から許諾を受けた法人または居住者が申請する際、許諾書に「設置完了から保有義務期間(5年間)以上、許諾されていること」の記載を求めています。なお、賃貸マンション等の所有者が自らの駐車場に設置する目的の申請は、この事業区分の対象外です。
5年間の処分制限
補助金を受けた設備は、設置が完了した日から5年間、法令を遵守して管理する義務があります。この期間内にやむを得ず処分する場合は事前に財産処分の手続きが必要で、補助金の全部または一部の返還を求められることがあります。千代田区の助成でも事業完了日から5年間の処分制限期間が設けられ、満了していない月数分を月割りで返還する仕組みです。長期修繕計画との整合を取っておきたいところです。
機械式駐車場と受変電設備
機械式駐車場は費用が跳ねやすい領域です。東京都の助成が機械式駐車場向けに1基目171万円という高い上限を設け、パレット更新経費に1パレット140万円、先行工事に1区画30万円という枠を別建てしているのは、パレットの大型化や配管の引き回しに追加工事が要るためです。
合計出力が50kW以上になると受変電設備の改修が視野に入り、東京都の助成では上限435万円が設定されています。段階的に増設する計画なら、将来分の配管を先に通す「先行工事」を同時に申請しておくと2期目以降の負担を抑えられます。
蓄電池をあわせて検討する場合はマンションに蓄電池は設置できるか、EVを家庭用電源として使う仕組みはV2Hとはをご覧ください。
まとめ
- 国の充電設備補助金(マンション等を含む令和7年度補正予算 第1期・第2期)は、2026年8月29日時点で申請提出期間が終了。次期は未公表で、受付中なのは戸建て住宅充電用コンセントのみです
- 動いているのは自治体の助成です。東京都の充電設備普及促進事業(居住者用)は令和8年度分を令和9年3月31日17時まで受付中(予算到達時点で終了)、区市町村の助成は上乗せできる場合があります
- 分譲マンションは総会または理事会の議事録が補助金申請の必須書類。令和7年改正のマンション標準管理規約コメントでは、躯体・敷地への加工の程度が小さい充電設備の設置工事は普通決議で実施可能と考えられる、と整理されています
- 設置費用だけでなく、充電設備の使用料・運用維持費を誰がどう負担するかを、駐車場使用細則と総会決議で先に決めておくことが望ましいとされています