自宅のEV充電器にかかるお金は「機器代」と「電気工事費」の2つに分かれ、総額を決めるのはメーカーではなく販売店・工事店の見積もりです。 本体価格を公式サイトに載せていない製品が多く、「相場は◯万円」と断定できる公的な数字は存在しません。
この記事では、国の補助金の要領・メーカー公式の仕様書・電力会社の料金表に書かれている数字だけを並べます。補助金の上限額は「国がこの工事にいくらまで出すと決めたか」という公的な物差しなので、見積書を読む基準に使えます。
【2026年8月29日時点】 国の充電インフラ補助金(令和7年度補正)のうち、「戸建て住宅充電用コンセント」は2026年3月31日17時〜2026年9月30日17時で申請受付中です(応募要領に「申請額の累計が予算額を超えると予想される場合には、交付申請期間中であっても受付を終了します」と記載があります)。一方「V2H充放電設備」は2026年7月17日に受付が始まったものの、2026年8月28日到着分で予算額を超過したため、NeVが交付規程第21条にもとづき申請期間を短縮し、2026年8月27日(木)中にセンターへ到着した交付申請をもって受付を終了しました。8月28日(金)以降の到着分は無効で、次回公募(令和8年度予算等)は未公表です。出典: 次世代自動車振興センター 充電インフラ補助金、同 V2H充放電設備・外部給電器 受付終了のお知らせ(2026年8月28日・PDF)
この記事でわかること
- 自宅用の充電設備の3タイプと、公式に公表されている出力・充電時間
- 費用を構成する機器代と工事費、国が工事費として認めている項目
- 国の補助金の上限額と申請期限、そして落とし穴
- 自治体の上乗せ(東京都のV2H助成を例に)
- 契約前に確認したい5つのポイント
自宅用の充電設備は大きく3タイプ
次世代自動車振興センター(NeV)は補助金の参考資料で、EV向けの設備を「充電設備」と「V2H充放電設備」に分け、充電設備をさらに急速充電設備・普通充電設備(据付タイプ、壁掛けタイプ)・コンセントスタンド・コンセントに整理しています。自宅の駐車場で現実的な選択肢になるのは、このうちコンセント、壁掛けタイプの普通充電設備、V2Hの3つです。
同資料はコンセントを「最小限の工事での設置が可能」なタイプとし、V2Hは「災害等による停電時には、EV等を家庭などの非常用電源として使うことができます」と説明しています(出典: NeV 充電設備とV2H充放電設備について(PDF))。
出力と充電時間について、日産は公式サイトで次のように示しています(60kWhのバッテリーを満充電にする目安)。
| タイプ | 出力 | 満充電までの目安 | 日産公式の位置づけ |
|---|---|---|---|
| コンセントタイプ | 3kW | 約20時間 | 「設置費用を抑えたい方向け」。別途充電ケーブルが必要 |
| 壁掛けタイプ | 6kW | 約10時間 | 「大容量バッテリーEV向け」。充電ケーブル付き |
| V2Hタイプ | 6kW | 約10時間 | 「EVを太陽光連携や災害時バックアップ電源化したい方向け」 |
出典: 日産 自宅で充電。同ページは前提を「約60kWhのバッテリーを3kWで充電する場合約20時間、6kWで充電する場合約10時間となります」と説明しています。また戸建ての設置手順は3ステップで示され、工事は「STEP 03 コンセント設置工事(半日程度)」と記載されています。
コンセントは補助対象の型式が公開されている
国の補助金では、対象になる型式が一覧で公開されています。2026年3月31日更新版に載っているのは次の3メーカーです。
| メーカー | 型式 | 出力 |
|---|---|---|
| 河村電器産業 | ECL | 3.2kW |
| 東芝ライテック | DC2333EN | 3kW |
| パナソニック | WK39115K / WK3911K / WK4322B・Q・S・W / WK4422B・Q・S・W | 4kW |
出典: NeV 令和7年度補正(戸建て住宅充電用コンセント)補助対象充電設備型式一覧表(PDF)
壁掛け型は出力ごとに必要な回路が変わる
壁掛け型の代表例、パナソニックのELSEEV hekia S Mode3(2025年8月発売の新モデル)の公式仕様では、出力ごとに定格電流が異なります。
| 出力 | 品番(標準タイプ) | 定格 | ケーブル長 | 質量 |
|---|---|---|---|---|
| 3kW | DNH3311 | 16A 200V AC(単相) | 約5m | 約3.9kg |
| 4.8kW | DNH3411 | 24A 200V AC(単相) | 約5m | 約5.0kg |
| 6kW | DNH3611 / DNH3612 / DNH3613 | 30A 200V AC(単相) | 約5m / 約7m / 約10m | 約5.0〜6.9kg |
防水保護等級はJIS C 0920 IP55相当(充電用コネクタ部除く)、使用温度範囲は-30℃〜+40℃、設置場所は屋内・屋側・屋外。同社は「6kW充電時には30Aの電流が長時間流れるため、ブレーカの定格は40Aが必要となります」とも注記しています(出典: パナソニック ELSEEV hekia S Mode3)。
出力を上げるほど、充電器そのものだけでなく分電盤側の工事が増えるという構造です。なお同社は、内線規程に6kW EV充電設備の施設方法が追加され「方式C」により電源を住宅分電盤主幹ブレーカの1次側に設置できるようになったとも案内しています。
費用は「機器代」と「工事費」に分かれる
機器代:公式に価格が出ている製品は少ない
EV充電器は本体価格を公式サイトに載せないメーカーが目立ちます。前掲のパナソニックELSEEV hekia S Mode3の製品ページにも、仕様・寸法・品番は載っていますが価格の記載はありません。
数少ない公表例が河村電器産業の標準価格表です。2026年7月1日改定版では、補助対象型式一覧にも載るEV充電用コンセントECLの標準価格が13,700円、ECLGが17,700円と記載されています。同価格表は「本価格表に掲載しております商品の価格には、消費税が含まれておりません」と明記しているため、いずれも税抜です(出典: 河村電器産業 価格表(PDF))。
つまり**この2型式に限れば本体は1万円台(税抜)**で、費用の大半は工事側にあります。壁掛け型やV2Hの本体価格は公表されていないため、販売店の見積もりで確認するしかありません。
工事費:国が「何を工事費と認めるか」を公開している
工事の中身は補助金の応募要領を読むと具体的に分かります。戸建て住宅充電用コンセントの応募要領では、補助対象の工事項目が次のように整理されています。
| 工事項目 | 対象となる内容 |
|---|---|
| 基礎工事 | 据付けに必要な基礎工事の材料費・労務費 |
| 据付工事 | 据付にかかる労務費 |
| 本体搬入費 | 設置場所までの搬入費 |
| 電気関連工事 | ケーブル・アース線の部材費と労務費、配管工事、ブレーカーと盤の設置、配線の敷設(掘削・埋設・貫通工事など) |
| 諸費用 | 雑材・消耗品、養生、設置・配置の検討にかかる費用 |
一方、交通運搬費・廃材処分費・一般管理費・現場管理費・共通仮設費は補助対象外と明記されています(出典: NeV 令和7年度補正 戸建て住宅充電用コンセント 応募要領(PDF))。見積書がこの区分で割れているかが読みやすさの目安です。
V2Hの応募要領では、さらに工事項目ごとの補助上限額まで公開されています。
| 工事項目 | 項目ごと補助上限額 |
|---|---|
| 基礎工事 | 35,000円 |
| 据付工事 | 80,000円 |
| 本体搬入費 | 15,000円 |
| 電気関連工事 | 300,000円 |
| 諸費用 | 120,000円 |
| 1基設置の場合の補助金交付上限 | 550,000円 |
出典: NeV 令和7年度補正 V2H充放電設備 応募要領(PDF)(公共施設・災害拠点以外、つまり個人宅等の区分)
これは**相場ではなく「国が補助対象として認める上限」**ですが、V2Hの電気関連工事に30万円までの枠がある点は、工事の規模感を掴む材料になります。V2Hの仕組み自体はV2Hとは?仕組み・メリット・導入費用にまとめています。
国の補助金の受付状況(2026年8月29日時点・コンセント枠は受付中)
戸建て住宅充電用コンセント:定額・上限5万円
令和7年度補正予算の「戸建て住宅充電用コンセント」補助金は、購入費と設置工事費の合算に対して定額(1/1以内)で、上限5万円です(応募要領の別表で補助金交付上限額を50千円と規定)。主な条件は次のとおりです。
- 申請できるのは、コンセントを購入・所有し、設置する土地の使用権限を有する個人
- 設置場所は「申請者の住民登録のある住所地の戸建て住宅に附随する駐車場」(戸建て住宅=「共同住宅および長屋以外の一戸の独立した住宅」)
- 設置できるコンセントは1基に限る
- 発注・施工開始・支払いはいずれも交付決定日以降であること
- 設置完了日から5年間の保有義務期間があり、処分には事前承認が必要
- 交付申請期間は2026年3月31日17時〜2026年9月30日17時、実績報告期限は2027年1月29日
もっとも見落としやすいのが「交付決定前に発注・着工してはいけない」というルールです。応募要領は「新品」を「交付決定通知書発行日以降に充電用コンセントの発注をし、(中略)保証開始日が交付決定日以降の充電用コンセント」と定義しています。EVの納車に合わせて先に工事を済ませると、補助金が使えません。なお国の他の補助金との重複は不可ですが、応募要領は「地方公共団体の補助制度は、本補助金と重複して申請できる場合があります」としています。
V2H充放電設備:設備費1/2+工事費上限55万円(2026年8月27日到着分で受付終了)
V2Hは金額の桁が変わります。設備費は「購入費(税抜)×補助率(1/2以内)」と「型式ごとにセンターが定める補助金交付上限額」のいずれか低い方です。型式ごとの上限額一覧(2026年7月17日更新)では、掲載型式の多くが750千円(75万円)、型式によって449千円〜750千円の幅があります。同一覧には充電出力・放電出力も併記され、たとえばニチコンのVCG-666CN7は充電5.9kW/放電5.9kW、新電元工業のEVS010T200Bは充電11kW/放電9.9kWと記載されています(出典: NeV 型式ごとの補助金交付上限額(PDF))。
個人宅でV2Hに申請する場合は、設置場所にEV・PHEV・FCVを保有していることを証する書類(車検証など)の提出が必要で、車検証の「使用の本拠の位置」が設置場所住所と一致している必要があります。交付申請期間は当初2026年7月17日〜2026年9月30日17時とされていましたが、後述のとおり2026年8月27日到着分で受付が終了しました。実績報告期限は2027年1月29日です。
そしてこの枠は期限前に埋まりました。NeVは2026年8月21日付のお知らせで、V2H充放電設備・外部給電器の配分額約55億円に対して同日時点の予算残額が約5億円と公表していましたが、その後2026年8月28日到着分で予算額を超過。交付規程第21条にもとづき申請期間を短縮し、2026年8月27日(木)中にセンターへ到着した交付申請をもって受付を終了しました。8月28日(金)以降の到着分は無効で、次回公募(令和8年度予算等)は2026年8月29日時点で未公表です(出典: NeV 令和7年度補正 V2H充放電設備・外部給電器 受付終了のお知らせ(2026年8月28日・PDF))。次回公募の情報はNeVの最新のお知らせで確認してください。迷う場合は蓄電池とV2Hの比較も参考に。
自治体の上乗せ:東京都のV2H助成の例
自治体の制度は国とは別枠です。東京都の「令和8年度 戸建住宅におけるV2H普及促進事業」(クール・ネット東京)は、助成対象経費(V2H本体の購入費と設置工事費、税抜)に対して次の助成を行います。
- 通常の申請: 助成対象経費 × 1/2 − 国その他の団体の補助金(千円未満切捨て、上限50万円)
- 増額申請: 要件を満たす太陽光発電システム(発電出力50kW未満など)とEV・PHEVを所有している場合、助成対象経費 × 10/10 − 国その他の団体の補助金(上限100万円)
対象は都内の戸建住宅への新規設置で、CEV規程に基づきNeVが補助対象と認めるV2Hであることが条件です。事前申込は2026年5月29日開始、受付終了は2027年3月31日17時とされています(出典: クール・ネット東京 令和8年度 戸建住宅におけるV2H普及促進事業、同 手引(PDF))。
同じ手引の助成額シミュレーションでは、本体55万円+工事40万円=95万円、本体70万円+工事40万円=110万円という金額が計算例に使われています。相場の公表ではありませんが、公的資料に出てくる数少ない金額感です。
なお家庭用蓄電池のほうは事情が違い、国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了、次回は未公表です(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。詳しくは国のDR補助金の終了と次回の見通し、都の蓄電池制度は東京都の補助金2026を参照してください。
充電にかかる電気代を公式単価で計算する
ランニングコストは契約中の料金プランの単価で決まります。東京電力エナジーパートナーの「スマートライフ(SまたはL)」の電力量料金は、午前1時〜午前6時が27.86円/kWh、午前6時〜翌午前1時が35.76円/kWhです。同ページの注記どおり、いずれも税込かつ燃料費調整額を含まない単価です(出典: 東京電力エナジーパートナー スマートライフ(オール電化))。
この夜間単価で60kWhを充電すると、単純計算で 60kWh × 27.86円 = 約1,672円です。ただし電気料金にはこれに加えて燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金がかかり、充電ロスも含まれていないため、実際の負担はこれより上振れします。
同社は燃料費調整額について、2023年1月の関東エリアのスタンダードS(30A・260kWhモデル)で「燃料費調整の適用がない場合と比べ、1.4倍程度となりました」という過去事例を挙げています。単価だけで長期の回収計算をしないほうがいい理由です。
昼間に太陽光の余剰電力で充電できるなら話が変わります。2026年度の住宅用FIT(10kW未満)の売電単価は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。売電8.3円と夜間充電27.86円を並べれば、自家消費に回す価値のほうが大きいという関係です。ガソリン車との比較はEVの電気代とガソリン車の維持費比較で扱っています。
契約前に確認したい5つのこと
1. 工事は電気工事士が行うか
パナソニックは公式ページで、配線工事は「電気工事士」の資格のある方が施工すること、地中埋設配線工事は電気工事士の有資格者が「内線規程」に従って施工することを求めています。IoT EVコンセントの案内でも「設置には電気工事士免許が必要です。最寄りの電気工事店さまや住宅会社さまへお問合せください」としています(出典: パナソニック EV・PHEV充電用コンセント、同 IoT EVコンセント)。
2. 補助金を使うなら、交付決定が出るまで発注しない
国の補助金は交付決定日以降の発注・着工・支払いが条件です。「先に着工しましょう」と言われたら、その場で交付決定の有無を確認してください。
3. 見積書が工事項目ごとに割れているか
前掲の区分(基礎工事、据付工事、本体搬入費、電気関連工事、諸費用)で内訳が出ていれば、他社見積もりとの比較が楽になります。「工事一式」だけの見積書では、何が入っていて何が入っていないかを読み取れません。
4. 金額の妥当性は行政もチェックしている
東京都の手引は、本体購入費の「適正価格はメーカーの希望小売価格を上限とします」とし、設置工事費も金額の設定が悪質と判断された場合は「虚偽申請とみなし」と記載しています。補助金の枠に合わせて金額を膨らませた見積もりは申請者側のリスクになるという構図です。
5. 出力を上げるなら分電盤まで見る
6kWの充電器は30Aが長時間流れるため、ブレーカの定格は40Aが必要とメーカーが案内しています。現地調査では、分電盤の空き回路、主幹の容量、駐車場までの配線ルート(掘削・埋設が要るか)を確認してもらいましょう。ここが工事費の差になります。
まとめ
- 費用は機器代と電気工事費で決まり、総額は見積もりでしか確定しない。本体価格を公表するメーカーは少なく、公表例は河村電器産業のEV充電用コンセントECLの標準価格13,700円(税抜)
- 2026年8月29日時点で受付が続いているのはコンセント側だけ(定額(1/1以内)・上限5万円、最終提出期限2026年9月30日17時)。V2Hは設備費1/2以内(型式ごとの上限は多くが75万円)と工事費上限55万円という内容だったが、予算超過により2026年8月27日到着分で受付終了(次回公募は未公表)
- 交付決定前の発注・着工は補助対象外。設置は1基まで、5年間の保有義務期間あり。個人宅のV2HはEV等の保有を証する書類が必要
- 東京都の令和8年度V2H助成は1/2・上限50万円、太陽光とEVを持つ場合の増額申請は10/10・上限100万円(国の補助額は控除)