停電の備えは「何を買うか」より先に、「何日分を、どの家電まで動かすか」を決めると失敗しません。 そのうえで、工事なしで始めるならポータブル電源、燃料があるかぎり発電を続けたいなら携帯発電機、家全体を数日支えたいなら太陽光+蓄電池、と役割で選び分けるのが現実的です。
そして電源をそろえること以上に大事なのが、使い方を間違えると備えた製品そのものが事故を起こすという事実です。この記事では、価格の相場話ではなく、公的機関が公開している事故統計とメーカー公式仕様だけを使って、それぞれの選択肢の限界を先に示します。
【2026年8月25日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・1申請あたり上限60万円)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。次回公募は未公表のため、国の補助金を前提にした購入計画は現時点では立てられません。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- 停電の「長さ」から必要な備えを逆算する考え方
- ポータブル電源・携帯発電機・太陽光+蓄電池がそれぞれ賄える範囲と限界
- NITEの事故統計から見える、やってはいけない使い方
- 停電が復旧した後に起きる通電火災の防ぎ方
- 2026年8月時点の補助金の状況と、契約前の確認事項
まず「何日分」を決める
備えの規模は、想定する停電の長さで決まります。数時間で復旧する停電と、数日続く停電では必要なものがまったく変わるからです。
内閣府の令和2年版防災白書によると、令和元年房総半島台風(2019年の台風第15号)では最大約93万4,900戸が停電しました。白書は「現場の被害状況の確認や倒木の処理に時間を要したこと等により、復旧作業が長期化するなど、大きな被害が生じた」と記録しています。同じ災害で住家の半壊・一部損壊は76,483棟に達しました(出典: 内閣府 令和2年版防災白書)。つまり大規模災害では、「翌日には戻る」という前提が崩れることがあります。
備蓄の日数の目安は政府が公表しています。首相官邸の「災害に対するご家庭での備え」では、飲料水は3日分(1人1日3リットルが目安)、非常食も3日分(アルファ米などのご飯、缶詰、乾パンなど)とされ、大規模災害に備えるなら1週間分が望ましいと案内されています。あわせてマッチ、ろうそく、カセットコンロなども挙げられています(出典: 首相官邸 災害に対するご家庭での備え)。
電源も同じ考え方で構いません。まず1日分を確実に確保し、そのうえで3日分に伸ばす手段を足すという順番です。1日分で押さえたいのはスマートフォンの充電、照明、情報収集の手段。3日分に伸ばすなら、冷蔵庫や夏冬の冷暖房まで視野に入ります。
ここで先に決めておくと後がラクなのが、動かしたい家電の消費電力(W)と、使いたい時間です。仕様表の「容量(Wh・kWh)」だけを見て選ぶと、容量は足りているのに定格出力(W)が届かず起動しない、という失敗が起きます。動かしたい家電の銘板や取扱説明書で消費電力を確認し、電源側の定格出力・瞬間最大出力と突き合わせてください。ドライヤーや電子レンジ、電気ケトルのような発熱系の家電は、容量よりも先に出力の壁に当たります。
選択肢は大きく3つに分かれる
停電時の電源確保の手段は、性格の違いで3つに分けると整理しやすくなります。
| 手段 | 性格 | 得意なこと | 構造的な限界 |
|---|---|---|---|
| ポータブル電源 | 貯めた分だけ使う | 工事不要ですぐ導入できる。持ち出せる。平常時にも使える | 使い切ったら充電手段が要る。家全体は賄えない |
| 携帯発電機 | 燃料がある分だけ作る | 燃料を足せば発電を続けられる | 屋内では使用できない。騒音と燃料の備蓄が要る |
| 太陽光+蓄電池 | 作って貯める | 分電盤経由で家の回路に給電できる。日中に再充電できる | 工事と設置スペースが必要。導入費用が大きい |
太陽光発電だけを設置している場合は、パワーコンディショナの自立運転機能という第4の選択肢があります。JPEA(太陽光発電協会)は「ご自宅に太陽光発電システムを設置されている方は、停電時でも『自立運転機能』で電気を使うことができます」として、自立運転用コンセントの位置を確認する、取扱説明書で切替方法を確認する、主電源ブレーカーを切る、太陽光発電ブレーカーを切る、自立運転モードに切り替える、機器を接続する、復旧時は逆の手順で戻す、という流れを公開しています。ただし同協会は「メーカーや機種によって操作方法が異なる場合がありますので、お持ちの取扱説明書をご確認頂く」よう案内しています(出典: JPEA 停電時でも電気が使えます)。
大事なのは、この手順を停電してから調べ始めると間に合わないことです。自立運転用コンセントがどこにあるか、切替スイッチはどれか、平常時のうちに一度確認しておくだけで、実際の停電時の初動がまったく変わります。
そして自立運転は、日射があるときにしか使えません。夜間や雨天をまたいで連続して使いたいなら、貯める仕組みが要ります。この違いが、太陽光だけの家と蓄電池がある家を分ける最大のポイントです。
ポータブル電源|工事なしで始められる。ただし電池である
ポータブル電源は、NITEの定義では「リチウムイオン電池などの充電式電池を内蔵した大容量かつ可搬型の蓄電装置で、交流100V出力に対応するなどしたもの」です(出典: NITE 災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!)。工事が要らず、キャンプなど平常時にも使えるため、最初の一台として選ばれやすい選択肢です。
一方で、リチウムイオン電池の製品であることは変わりません。NITEの集計では、2020年から2024年までの5年間にリチウムイオン電池搭載製品の事故は1,860件あり、そのうち約85%(1,860件中1,587件)が火災事故に発展しています。製品別の内訳ではポータブル電源が110件(重傷1件、軽傷14件・被害者21人)で、モバイルバッテリー361件、電動アシスト自転車202件、電動工具171件、充電式掃除機157件、ノートパソコン134件に続く規模です。事故は気温の上昇とともに増え、6月から8月にピークを迎える傾向が確認されています(出典: NITE 『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心)。ポータブル電源については、NITEは別の注意喚起のなかで「一般的に総エネルギー量が大きい製品は、事故発生時の発熱量も大きくなるため、大容量のポータブル電源はより注意が必要です」としています(出典: NITE 災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!)。
NITEが挙げている使用時の注意点は次の3つです。
- 落とすなど衝撃を与えない。強い衝撃の後に発熱や変形などの異常を感じたら使用を中止し、製造・輸入・販売事業者の修理窓口に相談する
- 高温環境下での使用は控える。長期間使わない場合は箱に入れ、直射日光の当たらない冷暗所に保管する
- 屋外では防水・防塵性能を持つ製品の使用を検討する
実際の事故例として、屋外に置いたポータブル電源を樹脂製ケースで覆っていたものの覆いが不十分で、雨水などが浸入して短絡し、内蔵のリチウムイオン電池セルが異常発熱して出火した可能性がある事例(2022年3月・宮城県)が公表されています。屋根のない屋外で継続使用していた製品が車両内で焼損した事例(2022年8月・東京都)もあります。「屋外でも使える」と「雨に濡れても平気」は別物だということです。
備蓄品として買ったまま数年触っていない、という状態も避けたいところです。NITEは携帯発電機やポータブル電源のなかにはリコール対象品もあるとして、消費者庁リコール情報サイトやNITE SAFE-Liteでの確認を促しています。年に一度、防災の日などのタイミングで通電確認とリコール確認をセットで行うのが現実的です。
価格については、メーカーや販売チャネルによって幅が大きく、公式サイトに定価を掲げていない製品もあります。容量(Wh)・定格出力(W)・瞬間最大出力・保護等級(IP等級)・保証年数を仕様表で確認したうえで、販売店の価格を比較するのが確実です。定置型の家庭用蓄電池との使い分けはポータブル電源と定置型蓄電池の違いで詳しく整理しています。
仕様表で見る項目が決まったら、用途・容量・使い方の3つを選んで候補メーカーの公式ストアを絞り込めます。
条件から選ぶ:用途と容量で候補メーカーを絞る
用途・必要な容量・使い方の3つを選ぶと、条件に合う公式ストアを最大2つ表示します。据え置きで大容量が要る場合は、ポータブル電源ではなく定置型蓄電池へ分岐します。
停電対策や在宅ワーク用に持ち運べる1kWh級です。製品別に保証年数を明示する公式ストアと、UPSモード・拡張バッテリーを公式が説明する公式ストアを表示しました。価格・在庫はカードに載せていません(日次で変わるため)。公式ストアの税込価格と在庫を確認してください。
Jackery 公式サイト公式ストア・最大5年保証(登録で延長)PR
- 株式会社Jackery Japanの公式ストア。ポータブル電源とソーラーパネルのセット(Solar Generator)を展開
- 保証は規約上、基本2年・Pro/Plusシリーズ3年。5年目までの延長には公式サイトでの製品保証登録が必要
- 返品は到着後30日以内・未使用未開封が条件。返送料は原則購入者負担
- 商品ページに消費電力から稼働時間を出すシミュレーターあり
条件・注意:商品ページの「保証登録不要の5年保証」と規約の記載が食い違うため、登録して延長するのが確実。EPS切替(20ms以内)はUPSではないと公式が注記。Explorer 1000 Plusなど販売終了の型番に注意
Jackery公式サイトで価格を見る →EcoFlow 公式サイト公式ストア・機種別に2〜5年保証提携申請中
- EcoFlow Technology Japan株式会社の公式ストア。DELTA・RIVERシリーズのほか、切替分電盤と設置サービス付きのセットも販売
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- 返品は購入日から30日以内・未開封が条件(特商法表記では原則返品不可の記載もあり)
- 配送料は日本全国無料。DELTA Pro 3は専用バッテリーで最大12kWhまで拡張
条件・注意:DELTA 2・DELTA 2 Max・DELTA 3は2026年9月5日時点で公式ストアに「販売終了」表示。DELTA Pro 3のUPS機能はデータ機器向けではないと公式が注記。当サイトは提携申請中のため公式サイトへの通常リンクです
公式サイトで条件を確認する →BLUETTI 公式サイト公式ストア・製品別に最大6年保証PR
- BLUETTI JAPAN株式会社の公式ストア。基本保証は2年で、AC180は5年・AC240は6年など製品別に設定
- 公式サイト購入品に30日間の返金保証と、購入後30日以内の値下がり差額を返す価格保証
- 顧客都合の返品は到着後7日以内・未開封のみ。開封済みは商品代金の50%を負担
- 配送料は基本無料(離島・一部地域は有料の場合あり)
条件・注意:Elite 200 V2は公式内で「5年保証」と「4年保証」の表記が混在。AC200Lは終売表示。転売目的と判断された注文はキャンセルされることがあります
BLUETTI公式サイトで価格を見る →DJI 公式ストア(DJI Power)公式ストア・3年+登録で最大5年保証PR
- DJI JAPAN株式会社の公式ストア。DJI Power 2000・1000 V2・1000 Mini・1000を展開
- 保証は3年で、アプリ接続や製品登録により2年延長して最大5年(延長条件は機種で異なる)
- Power 2000は拡張バッテリー最大10台で22,528Whまで。UPSモードは停電時0.01秒以内に給電開始と公式が説明
- 3,500円以上の注文は送料無料
条件・注意:返品可能期間は公式内で「7日以内」と「30日」の記載が割れており、購入前にヘルプセンターで確認。沖縄は到着まで3日以上
DJI公式ストアでDJI Powerの価格を見る →Dabbsson 公式サイト公式ストア・公式購入は自動で5年保証PR
- 販売事業者はDABBSSON LIMITED(特商法表記)。半固体電池を採用した製品ライン(300E〜3000L)を展開
- 公式サイト購入は自動的に5年保証(他の正規販売店は登録で3年+2年)。ソーラーパネルは1+1年
- 顧客都合の返品は到着後30日以内・未開封のみ(返送料は購入者負担)。初期不良は30日以内に返品返金または新品交換
- 全商品送料無料(沖縄の離島を除く)。30日間の価格保証あり(プロモコード割引は対象外)
条件・注意:法人名の表記がサイト内で3通り(DABBSSON LIMITED / DABBSSON JAPAN / DABBSSON INC.)あり、日本法人の所在地は特商法表記に記載がありません。注文キャンセルの受付は注文時刻で締切が変わります
Dabbsson公式サイトで価格を見る →ほかの選択肢:Jackery 公式サイト(PR・無料)・EcoFlow 公式サイト(公式・提携申請中)
停電時に必要な電力量の計算は 災害時の電源の備え方 を参照してください。
携帯発電機|燃料がある分だけ発電できるが、屋内では使えない
燃料を足せば発電を続けられるのが携帯発電機の強みです。カセットボンベを燃料にするタイプなら、ガソリンの保管を伴わずに済みます。
代表的な製品であるホンダの「エネポ EU9iGB」の公式諸元は次のとおりです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 定格出力(交流) | 900VA(単相100V・9.0A) |
| 使用燃料 | カセットこんろ用ボンベ |
| 連続運転時間 | 定格負荷で約1.1時間、1/4負荷(エコスロットル作動時)で約2.2時間 |
| 騒音値 | 84dB(定格負荷時)、79dB(1/4負荷時) |
| 乾燥質量 | 19.5kg |
| 寸法 | 365×262×524mm(ハンドル折りたたみ時) |
| メーカー希望小売価格 | 131,340円(税込) |
ここから読み取っておきたいのは3点です。900VAという定格出力は、消費電力の大きい家電を同時に動かす用途には足りないこと。定格負荷では1時間強でボンベを消費するため、長時間動かすならボンベの備蓄量がそのまま稼働時間の制約になること。そして84dBという騒音値は、住宅密集地では近隣への配慮が要る水準だということです。
そして安全面の前提があります。NITEは携帯発電機について、次のように注意喚起しています。
携帯発電機は屋内では絶対に使用せず、屋外の風通しの良い場所で使用する。 (出典: NITE 備えただけでは、憂いあり〜ライフライン停止時に活躍する製品で気を付けるポイント〜)
これは精神論ではなく、事故の実績に基づく注意です。NITEに通知された製品事故情報では、2020年から2024年までの5年間に携帯発電機の事故が21件あり、被害状況の内訳は死亡5件(被害者6人)、重傷1件(4人)、軽傷4件(16人)でした。原因が判明した12件のうち**6件が「換気が悪く一酸化炭素(CO)中毒」**で、その6件だけで死亡4件・被害者20人に達しています。事故件数自体は多くないのに、1件あたりの被害者数と死亡割合が突出して高いのがこの製品の特徴です。
具体例も公表されています。2020年9月には、窓と玄関が施錠された一般住宅で3名が一酸化炭素中毒で倒れているのが発見され、玄関に携帯発電機がありました。NITEは「携帯発電機に異常は認められず、換気が十分に行えない屋内で使用したため」と推定しています。2018年9月8日にも、北海道胆振東部地震の発生後に、停電時に携帯発電機を換気の不十分な屋内で使用したため排ガスが滞留し、1名が一酸化炭素中毒で死亡した事故が報告されています(出典: NITE 災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!)。NITEは屋内で携帯発電機(ガソリン式)を運転した際のCO濃度の変化を実験(試験室の内寸は幅2.7m・奥行2.7m・高さ2.3m)で示しており、閉じた空間では短時間で危険域に達することが確認されています。
さらに注意したいのが、屋外なら安全とは限らないという点です。NITEは「屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等の危険性があります」「排ガスが逆流しないように出入口、窓などの開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用してください」としています。車中泊やテント泊での使用は、屋内使用と同じ危険があると考えてください。ホンダも製品ページで、屋内での使用と、屋外であっても換気の悪い場所での使用を禁止する旨を明記しています。加えて、漏電や感電のおそれがあるため雨天時に濡らさない配慮も必要です。
集合住宅のベランダは、構造上どうしても排気がこもりやすく、隣戸にも影響します。発電機は「屋外に十分な距離を取れる敷地がある家」向けの手段と割り切ったほうが、判断を誤りません。
太陽光+蓄電池|家の回路に給電できる選択肢
家全体を数日単位で支えたい場合、現時点で有力な選択肢は太陽光発電と家庭用蓄電池の組み合わせです。ポータブル電源と違い、分電盤を経由して家の中の回路そのものに給電でき、日中の発電で蓄電池を再充電できます。
具体的な数値で見てみます。オムロンのマルチ蓄電プラットフォームKPBP-Aシリーズは、停電時(自立運転時)の定格出力が2.0kVA、トランスユニットを接続した場合は4.0kVAです。トランスユニット接続時は単相3線式でAC202V/101Vの出力に対応し、全負荷用分電盤(KP-DB75B)と特定負荷用分電盤(KP-DB20B-2)が選べます。蓄電池ユニットは型式により蓄電容量16.4kWh(実効容量14.8kWh)、9.8kWh(同8.8kWh)、6.5kWh(同5.9kWh)などが用意されています(出典: オムロン マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズ 仕様)。
ここで効いてくるのが全負荷型と特定負荷型の違いです。特定負荷型は、あらかじめ決めた回路(照明・冷蔵庫・コンセントの一部など)にだけ給電します。全負荷型は家中の回路に給電できますが、その分だけ蓄電残量の消費も速くなります。さらに200Vのエアコン、IHクッキングヒーター、エコキュートを停電中も使いたいなら、200V出力への対応が要件に加わります。オール電化住宅では調理も給湯も電気に依存するため、この判断がそのまま停電時の生活水準を決めます。詳しくは全負荷型と特定負荷型の違いにまとめました。
新しい選択肢として、テスラのPowerwall 3が2026年8月3日に日本で発売されました。容量13.5kWh、定格出力最大9.69kWという仕様で、日本での価格は非公表です(出典: テスラ Powerwallの仕組み)。保証は日本向けの限定保証書で「最初の設置日から10年間」と定められ、蓄電容量については太陽光発電による自家消費用途で最初の設置日から10年間で定格13.5kWhの70%を保証しています(出典: テスラ Powerwall 限定保証書(日本・PDF))。ただし発売と設置開始は別で、2026年8月時点では実際の設置は9月から10月以降とされています。この夏の停電にすぐ間に合う選択肢ではないので、導入時期は販売店に確認してください。
なお家庭用蓄電池はオープン価格としているメーカーが多く、公式サイトに本体価格の記載がないのが一般的です。価格は販売店の見積もりで確認する前提で検討してください。電気自動車を持っている、あるいは検討している場合は、車載バッテリーを住宅で使うV2Hも選択肢になります。こちらはEVを停電時のバックアップ電源にするで解説しています。
電源以外に決めておくこと
カセットボンベには使用期限がある
停電と同時にガスが止まることも、電気調理器が使えなくなることもあります。カセットこんろとボンベは有力な備えですが、備蓄しているつもりで期限切れになっているケースが少なくありません。
NITEの集計では、2020年から2024年までの5年間でカセットボンベ等の事故は204件(うち火災189件、死亡4件・被害者5人)あり、原因が判明した128件のうち109件が「漏れたガスに引火」でした。製造から26年経過したカセットボンベのパッキンが劣化して亀裂が生じ、ガスストーブに装着した際にガスが漏れて引火した事故(2021年1月・京都府)も公表されています。
東京都が都内在住でカセットこんろの使用経験がある人2,000人(各性別・各年代200人ずつ、令和5年11月のインターネット調査)に行った調査では、**カセットボンベの使用期限の目安(7年)を超えたものを所有している人が12.8%、カセットこんろの使用期限の目安(10年)を超えたものを所有している人が23.6%**でした。都はいずれについても「『覚えていない』の一部を含めるとそれ以上」としており、実際の割合はこれより高い可能性があります(出典: 東京都生活文化局 カセットこんろの安全性に関する調査(令和6年4月))。古いものから使い切って新しいものを補充するローリングストックが、NITEの推奨する備え方です。保管時は使用機器から取り外し、室内の40℃未満の場所に置くこととされています。
また、避難先のテント内や車内など狭い場所でカセットこんろを使うのは避けてください。NITEは、周囲の可燃物への着火に加えて「狭い場所で使用すると、不完全燃焼して一酸化炭素(CO)中毒に至るおそれがあり大変危険です」としています。
停電が「復旧するとき」に火災が起きる
見落とされがちなのが、停電中ではなく復旧後のリスクです。NITEは通電火災を「自然災害に伴う停電の復旧後、可燃物が接触した状態の電熱器具や水没したり部品が破損したりした電気製品に電気が流されることに伴い発生する火災」と定義し、次の対策を挙げています。
- 地震で可燃物が散乱しないよう家具を壁に固定し、電熱器具の周辺に可燃物を置かない
- 自宅から避難する際に時間の猶予があれば、分電盤のブレーカーを切る。日頃から分電盤の位置と操作方法を確認しておく
- 停電時には、ヒーターを内蔵した電気ストーブ等の電源プラグをコンセントから抜く
- 復旧後は機器の外観(電源プラグやコードの損傷、焦げ跡など)を確認したうえでブレーカーを入れ、電源プラグを1台ずつ差して様子を見ながら使う。異音や異臭がすれば使用を中止し、メーカーや販売店に相談する
実際に、停電前にスイッチが入ったままだった電気こんろや電気ストーブが、復旧時の再通電で作動して周囲を焼損した事故が公表されています。台風の水害で水没した鉛蓄電池を、販売事業者が乾燥させるために事務所兼倉庫に置いていたところ、内部に浸入した水が原因で異常発熱し、周囲を焼損した事例(2022年10月・静岡県)もあります。水没した機器を「乾かせば使える」と判断しないでください。避難する前にブレーカーを落とすという一手間が、この種の火災を防ぎます。
情報と灯りは電源系統を分ける
電源が確保できても、スマートフォン1台に依存する構成は脆弱です。照明は懐中電灯だけでなく両手が空くヘッドライトを、情報は電池や手回しで動くラジオを、というように電源系統の異なる手段を組み合わせると、片方が使えなくなっても対応できます。飲料水と非常食は前述のとおり、まず3日分が政府の目安です。
補助金と、契約前に確認したいこと
蓄電池の導入を検討する場合、2026年8月時点の制度状況は次のとおりです。
国の制度は新規申請ができない期間に入っています。令和7年度補正のDR家庭用蓄電池事業は1申請あたり上限60万円で、公募期間は2026年3月24日から2026年12月10日と設定されていましたが、2026年5月29日に予算に達して終了しました。SIIの公表では2026年9月4日更新時点で交付決定総数12,067件、交付決定総額は約51.7億円です(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。次回公募は未公表です。経緯は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
自治体の制度は動いています。 東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は、蓄電池パッケージが10万円/kWh(助成対象経費(税抜)が上限)で、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸です。蓄電池ユニットの増設は6万円/kWh、同じくDR実証非参加時の上限は72万円/戸。DR実証に参加する場合は、エネルギーマネジメント機器を設置すれば1台あたり15万円、設置しない場合は1台あたり10万円が加算されます。事前申込は令和8年5月29日開始、交付申請兼実績報告は令和8年6月30日開始で、令和8年10月1日以降の事前申込ではSIIの令和8年度登録済製品一覧に登録された機器のみが対象となります(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026を参照してください。
契約前に知っておきたいのが、勧誘トラブルです。国民生活センターは2021年6月3日に「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」を公表しています。PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数は2016年度325件、2017年度553件、2018年度926件、2019年度1,302件、2020年度1,314件と増加傾向にあります。同センターが挙げる相談事例には、無料点検で訪問した事業者から虚偽の説明とともに「国の補助金が出るので安くなる」と勧誘されて約200万円の契約に至ったケースや、「補助金の申請は代行する」と説明されたのに実際には申請されておらず補助金を受け取れなかったケースが含まれます。同センターは「契約後の設置工事や補助金をめぐるトラブルも」あるとして、その場で契約せず複数社から見積もりを取って比較検討するよう呼びかけています(出典: 国民生活センター 家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!)。災害の直後は不安が高まり、判断が急ぎがちになる時期でもあります。停電への備えという動機で検討を始めたときこそ、この呼びかけが効いてきます。
見積書では、次の項目が書面に落ちているかを確認しましょう。
- 蓄電池ユニットの型式と、蓄電容量・実効容量の両方
- 停電時の**定格出力(kVAまたはkW)**と、全負荷か特定負荷か
- 200V出力に対応しているか(オール電化住宅では特に重要)
- 機器保証・容量保証の年数と対象機器、申請手続きの要否
- 補助金を前提とした金額の場合、その制度が現在申請できる状態か
まとめ
- 停電の備えは**「何日分を、どの家電まで」**から逆算する。政府の目安は飲料水3日分(1人1日3リットル)、大規模災害なら1週間分
- 携帯発電機は屋内では使用できない。 NITEの集計では2020年から2024年の5年間で事故21件・死亡5件、原因が判明した12件のうち6件が換気不良による一酸化炭素中毒。車内やテント内も屋内と同等に危険とされている
- ポータブル電源はリチウムイオン電池製品。同じ5年間で110件の事故が報告されており、衝撃・高温・雨水への配慮が要る。家全体を賄いたいなら太陽光+蓄電池で、全負荷か特定負荷か、200V出力が要るかを先に決める
- 停電が復旧するときの通電火災まで備える。避難前にブレーカーを切り、電熱器具のプラグを抜き、復旧後は1台ずつ確認しながら通電する
- 国のDR補助金は2026年5月29日で公募終了。補助金前提の資金計画は、現在の公募状況を確認してから組む