家庭のCO2排出量は「エネルギー使用量 × 排出係数」という掛け算ひとつで出ます。 難しいのは式ではなく、排出係数をどこから持ってくるかです。この記事では、環境省と経済産業省が公表している2026年8月時点の最新係数だけを使います。
そして比較対象になる平均値は、1世帯あたり年間2.47トン(電気・都市ガス・LPガス・灯油の合計、環境省 令和5年度調査の確報値)。このうち67.6%が電気です。自宅の数字が出たら、まずここと比べるのが出発点になります。
【2026年8月25日時点】 本記事の排出係数は、環境省・経済産業省が温対法の算定・報告・公表制度で公表している最新版(電気は令和6年度実績、都市ガスは令和7年度供給実績)です。係数は毎年更新されるため、計算する前に最新版を確認してください。出典: 環境省・経済産業省 算定方法・排出係数一覧
この記事でわかること
- 電気・都市ガス・LPガス・灯油・ガソリンの公的な排出係数(2026年8月時点)
- 検針票の数字から自宅のCO2排出量を出す手順と計算例
- 全国平均2.47トンとの比べ方(世帯人数・地域・戸建と集合で大きく違う)
- 用途別の内訳から、どこを削ると効くのかを判断する方法
- 太陽光・蓄電池で減るCO2と、減らないCO2の線引き
計算式は「使用量 × 排出係数」だけ
CO2排出量 = エネルギー使用量 × 排出係数
この1本で終わりです。日本では、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)の算定・報告・公表制度のなかで、環境省と経済産業省が排出係数を毎年公表しています。2026年8月時点で確認できる値は次のとおりです。
| エネルギー種 | 排出係数 | 出典の区分 |
|---|---|---|
| 電気 | 0.423 kg-CO2/kWh | 全国平均係数(令和6年度実績) |
| 都市ガス | 2.09 kg-CO2/m³ | 大半のガス事業者の基礎排出係数(令和7年度供給実績) |
| LPガス | 2.99 kg-CO2/kg | 算定省令にもとづく排出係数 |
| 灯油 | 2.50 kg-CO2/L | 同上(2.50 t-CO2/kL) |
| ガソリン(揮発油) | 2.29 kg-CO2/L | 同上(2.29 t-CO2/kL) |
| 軽油 | 2.62 kg-CO2/L | 同上(2.62 t-CO2/kL) |
出典: 環境省・経済産業省 算定方法及び排出係数一覧、ガス事業者別排出係数(令和7年度供給実績)、電気事業者別排出係数(令和6年度実績)
使うときの注意が2つあります。
LPガスはkgとm³の換算が要ります。 公的な係数は2.99 kg-CO2/kgですが、家庭の検針票はm³表記が一般的です。環境省の家庭CO2統計はLPガスの比容積を0.502 m³/kgとしているので、1m³はおよそ2.0kg。掛け合わせると約6.0 kg-CO2/m³になります(出典: 環境省 令和5年度調査について(確報値))。
都市ガスは事業者ごと・供給区域ごとに公表されています。 令和7年度供給実績では大半の供給区域が2.09 kg-CO2/m³ですが、1.81から2.91までの例外があり、料金メニュー別に0.16と公表されている例もあります。公表がない場合に使う代替値は2.05 kg-CO2/m³です。
なおネット上には古い年度の係数がそのまま残っていることが多く、数%ずれることがあります。計算するときは公表年度を確認しておきましょう。
電気の係数は「どこから買っているか」で変わる
家庭の排出量の3分の2は電気です。だからこそ、電気の係数をどれにするかで答えが変わります。
環境省・経済産業省は小売電気事業者ごとに係数を公表しています。令和6年度実績にもとづく事業者全体の参考値を並べると、こうなります。
| 小売電気事業者 | 基礎排出係数(参考値・kg-CO2/kWh) |
|---|---|
| 中部電力ミライズ | 0.376 |
| 関西電力 | 0.396 |
| 東北電力 | 0.400 |
| 東京電力エナジーパートナー | 0.421 |
| 北陸電力 | 0.431 |
| 四国電力 | 0.448 |
| 九州電力 | 0.449 |
| 中国電力 | 0.472 |
| 北海道電力 | 0.518 |
| 沖縄電力 | 0.677 |
出典: 環境省・経済産業省 電気事業者別排出係数(令和6年度実績)
低いほうと高いほうで1.8倍の開きがあります。さらに令和7年度報告からは料金メニュー別の公表に変わり、料金メニューによっては0.000と公表されているものもあります。契約先の係数が分からないときに制度上使う代替値は0.416 kg-CO2/kWhです。
先ほどの表に載せた0.423 kg-CO2/kWhは、非化石証書による削減相当量を算定するために公表されている「全国平均係数」です。本記事では全国の目安として使っていますが、自宅の値を出すときは、まず契約先の係数を確認してください。
つまり家庭の脱炭素には、「使うkWhを減らす」と「係数の低い電気に替える」という別々の打ち手があるということです。前者の入口としては電気代の平均から使いすぎを見つける方法が参考になります。
実際に計算してみる:全国平均世帯のケース
環境省の令和5年度「家庭部門のCO2排出実態統計調査」(確報値)によると、世帯当たりの年間使用量は電気3,911kWh、都市ガス177m³、LPガス23m³、灯油119L。4種計の支払金額は17.42万円でした。
この使用量に、先ほどの係数を掛けてみます。
| 項目 | 計算 | CO2 |
|---|---|---|
| 電気 | 3,911 kWh × 0.423 | 約1,654 kg |
| 都市ガス | 177 m³ × 2.09 | 約370 kg |
| LPガス | 23 m³ × 約6.0 | 約138 kg |
| 灯油 | 119 L × 2.50 | 約298 kg |
| 合計 | 約2.46 トン |
同じ調査が実測ベースで公表している世帯当たり排出量は2.47トン(電気1.67、都市ガス0.36、LPガス0.14、灯油0.30)。手計算の約2.46トンとほぼ一致します(出典: 環境省 令和5年度調査 結果について(確報値))。ただし完全に同じ数字にはなりません。調査側は令和5年度の電力会社別・供給事業者別の係数で積み上げているのに対し、ここでは令和6年度実績の全国平均係数で計算しているためです。年度と事業者が違えば数%はずれる、という感覚をつかむのが目的だと思ってください。
自動車は別勘定
この2.47トンに自動車の燃料は含まれていません。 調査が集計しているのは電気・都市ガス・LPガス・灯油の4種のみです。
車を使う世帯は自分で足します。年1万km・燃費15km/Lなら年間の給油量は約667L。2.29を掛けて約1.53トンです。走行距離が同じでも燃費で結果が変わるので、記憶より給油記録から拾ったほうが正確に出ます。
検針票からの手順
- 12か月分の電気・ガスの検針票(またはWeb明細)から使用量を拾う
- 灯油とガソリンは給油・購入の記録から年間量を出す
- 契約中の小売電気事業者の係数を環境省・経済産業省の一覧で確認する
- 掛けて足す
月ごとの推移まで追いたい場合は、スマートメーターのデータや計測機器を使う手もあります。詳しくは電力使用量の見える化にまとめています。
平均2.47トンと比べるときの注意
平均は均された数字です。自宅の値が2.47トンより多くても、そのまま「使いすぎ」とは言えません。同じ調査から、条件別の値を並べます。
世帯人数別(t-CO2/世帯・年)
| 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 6人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.47 | 2.58 | 3.24 | 3.60 | 4.12 | 5.12 |
建て方別は、戸建3.09トンに対して集合住宅1.74トン。戸建は集合の約1.8倍です。
地方別では、九州1.65トン、近畿2.00トン、四国2.29トン、関東甲信2.38トン、東海2.47トン、沖縄2.62トン、中国2.90トン、北陸3.45トン、東北3.46トン、北海道4.14トン。調査は、地方別の傾向がエネルギー消費量とCO2排出量とで異なるのは主に電気のCO2排出係数の違いによると考えられる、としています。暖房需要だけの話ではないということです。
季節も偏ります。1月が最大で、12月から3月の4か月で年間排出量の約45%を占めます。1年分をまとめて計算しないと実態からずれる理由がここにあります。
なお世帯当たりの排出量は、平成29年度3.20トンから令和5年度2.47トンへと長い目で見れば減っています。ただし一本調子ではなく、令和元年度2.72トンから令和2年度2.88トンへ一度増えています。令和5年度は前年度比マイナス4.6%でした。
どこを削ると効くのか:用途別の内訳
同じ調査は、用途別の推計値(参考資料)も公表しています。全国平均の1世帯・1年あたりの内訳です。
| 用途 | CO2排出量 | 構成比 |
|---|---|---|
| 照明・家電製品等 | 1.14 トン | 46% |
| 給湯 | 0.59 トン | 24% |
| 暖房 | 0.48 トン | 20% |
| 冷房 | 0.14 トン | 6% |
| 台所用コンロ | 0.11 トン | 5% |
冷房は6%しかありません。 夏に「エアコンを我慢する」という発想が、排出量の構造から見るとほとんど効かないことが分かります。逆に、照明・家電で約半分、給湯で4分の1を占めているので、機器の効率と使い方を見直すほうが打ち手として大きい。
戸建だけで見ると、暖房0.69トン、給湯0.73トン、照明・家電製品等1.37トンと絶対値が上がります。給湯と暖房の比重が増えるぶん、給湯機器の見直しが効きやすい構造です。
家電の買い替えで実際にどれだけ変わるかは、環境省が運営するしんきゅうさんで、現在の機種と買い替え候補を選んで比較できます。
太陽光と蓄電池で減るCO2、減らないCO2
減るのは「買う電気が減った分」
太陽光で発電した電気を自宅で使えば、その分だけ購入電力が減ります。減るCO2は「自家消費したkWh × 契約先の排出係数」です。
| 年間の自家消費量 | 削減量(0.423換算) |
|---|---|
| 1,000 kWh | 約0.42 トン |
| 2,000 kWh | 約0.85 トン |
| 3,000 kWh | 約1.27 トン |
| 4,000 kWh | 約1.69 トン |
契約先の係数が0.5なら削減量も約2割増える、という関係です。
自宅の発電量そのものは、屋根の向き・傾き・地域の日射量・設置できる面積で決まります。一般的な相場をそのまま当てはめると外れるので、販売店の試算については日射量データの出所と想定値を確認してください。
売電した分の扱いにも注意が要ります。売電した電気も系統の他の電源を置き換えますが、環境省の家庭CO2統計は「購入した電気」に係数を掛ける定義なので、家庭の排出量として減るのは自家消費した分です。自家消費と売電の関係は太陽光の自家消費を増やす考え方で整理しています。
蓄電池は発電しない
蓄電池はエネルギーをつくる機器ではありません。CO2が減るのは、太陽光の余剰を夜に回して購入電力が減る分だけです。
裏返すと、夜間の安い系統電力を貯めて昼に使う運用では、購入するkWhの総量が減らないためCO2は減りません。 充放電にはロスがあるので、むしろわずかに増える方向に働きます。電気代は下がってもCO2は下がらない、という分岐がここにあります。太陽光なしで蓄電池だけを検討している場合の考え方は太陽光なしで蓄電池を導入する場合にまとめました。
統計上の実測比較
環境省の調査では、太陽光発電システムを使用している戸建世帯の年間CO2排出量は2.79トン、使用していない戸建世帯は3.13トンでした。ただしこれは世帯属性も住宅性能もそろえていない平均同士の比較なので、差の0.34トンがそのまま太陽光の削減効果というわけではありません。
なお太陽光発電システムを使用している世帯の割合は、戸建で11.7%、集合住宅で0.0%、全体で6.3%でした。
補助金の状況
国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。2026年8月時点で新規申請はできません(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。詳しくは国のDR補助金の終了と次回の見通しを参照してください。
自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は新規設置で10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸です。2026年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIの令和8年度登録済製品一覧に載っている機器のみが助成対象になります(2026年4月1日から6月30日までに契約済みの場合を除く)。最新の要件は東京都の公式ページで確認してください(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。
公的な計算ツールと、2030年の目標値
手計算が面倒なら、診断ツールを使う手もあります。
- うちエコ診断WEBサービス: 環境省の家庭エコ診断制度にもとづくもので、運営事務局は一般社団法人 地球温暖化防止全国ネット(公式サイト)
- しんきゅうさん: 環境省。家電の買い替え前後の電気代とCO2を機種単位で比較できる(公式サイト)
- デコ活: 環境省の国民運動ポータル。家庭向けの取り組みがまとまっている(公式サイト)
- じぶんごとプラネット: Code for Japanが運営し、国立環境研究所の研究データを活用してカーボンフットプリントを試算できるツール(公式サイト)
目標値も押さえておきましょう。2025年2月18日に閣議決定された地球温暖化対策計画では、家庭部門のエネルギー起源CO2について、2013年度実績209百万トンに対して2030年度71百万トン(マイナス66%)、2040年度は約40〜60百万トン(マイナス71〜81%)という目安が示されています。日本全体の目安は2030年度マイナス46%、2040年度マイナス73%です。2030年度の目安で見ると、家庭部門のマイナス66%は部門別で最も高い削減率にあたります(産業マイナス38%、業務その他マイナス51%、運輸マイナス35%、エネルギー転換マイナス47%)。ただし2040年度の目安では業務その他マイナス79〜83%、エネルギー転換マイナス81〜91%のほうが高く、家庭部門が常に最上位というわけではありません(出典: 環境省 地球温暖化対策計画 関連資料1)。
実績側では、2024年度の日本の温室効果ガス総排出量は約9億9,400万トン(CO2換算)で、2013年度比マイナス28.7%でした(出典: 国立環境研究所 2026年4月14日 記者発表)。
まとめ
- 家庭のCO2排出量は**「使用量 × 排出係数」**だけで出る。2026年8月時点の公的な値は電気0.423 kg-CO2/kWh(全国平均係数)、都市ガス2.09 kg-CO2/m³、灯油2.50 kg-CO2/L、ガソリン2.29 kg-CO2/L
- 全国平均は1世帯あたり年2.47トン(電気・都市ガス・LPガス・灯油の合計、令和5年度確報値)。うち電気が67.6%。自動車の燃料は含まれないので、車を使うなら別に足す
- 平均との比較は条件をそろえて。世帯人数で1.47〜5.12トン、戸建3.09トンに対し集合1.74トン、地方別では1.65〜4.14トンの幅がある
- 用途別では照明・家電が46%、給湯が24%、冷房は6%。太陽光は自家消費した分だけCO2が減り、蓄電池は発電しないため、夜間電力を貯めて使う運用ではCO2は減らない