自宅のエネルギー診断は、お金をかけずに始められます。 環境省の家庭エコ診断制度が用意する「うちエコ診断WEBサービス」は無料で、シンプルモードなら約5分。そこに電力会社のマイページで見られる30分ごとの使用量を重ねれば、どの季節・どの時間帯に電気を使いすぎているのかまで絞り込めます。
そして診断のゴールは、節電のコツを知ることではありません。 年間で何kWh使い、そのうちどれだけが昼間なのかが分かって初めて、太陽光発電や蓄電池を入れるべきかを数字で決められます。この記事は、公的機関の公式ツールと公表統計だけで進める手順をまとめたものです。
【2026年8月25日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算に達して公募終了しています。次回公募は未公表のため、国の補助金を前提にした設備計画は現時点では立てられません。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- 自宅のエネルギー診断で実際に何を見るのか、3つの層に整理した全体像
- 環境省・自治体が用意している無料の公式ツールの中身と所要時間
- 検針票とスマートメーターのデータだけでできるセルフ診断5ステップ
- 比較の物差しになる環境省の最新統計値(世帯当たり3,911kWh・11.05万円)
- 診断結果を太陽光・蓄電池の判断につなげるときの見方と、注意すべき勧誘
自宅のエネルギー診断とは何をすることか
診断は3つの層に分かれる
「エネルギー診断」といっても、実際にやることは次の3層に分かれます。どこまで踏み込むかで、手間も答えの粒度も変わります。
| 層 | 何を見るか | 主な手段 |
|---|---|---|
| 第1層 使用量の把握 | 年間・月別の電気やガスの使用量と金額 | 検針票、電力会社のWeb会員サービス |
| 第2層 平均との比較 | 自宅が平均からどれだけ外れているか | 環境省の家庭部門統計、うちエコ診断WEBサービス |
| 第3層 原因の特定 | どの時間帯・どの機器が重いか | スマートメーターの30分ごとのデータ、HEMS、診断士による対面診断 |
第1層だけでは「高い気がする」から先に進めません。設備投資の判断に使うなら第3層まで必要です。
比較の物差しになる公的統計
自宅の数字が多いのか少ないのかは、全国平均と比べないと判断できません。環境省は統計法に基づく一般統計調査「家庭部門のCO2排出実態統計調査」を実施しており、令和5年度の確報値が2025年6月25日に公表されています。
| 項目 | 世帯当たりの年間値 |
|---|---|
| 電気 | 3,911kWh・11.05万円 |
| 都市ガス | 177m3・3.02万円 |
| LPガス | 23m3・2.02万円 |
| 灯油 | 119L・1.33万円 |
| 4種計 | 27.80GJ・17.42万円・2.47トンCO2 |
出典: 環境省 令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 結果について(確報値)(一覧は環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査)
注意点が2つあります。この表は「各エネルギー種を使用していない世帯を含む平均値」です。都市ガスとLPガスを両方使う家庭はまれなので、4種計をそのまま自宅と比べると実態からずれます。また電気の11.05万円を3,911kWhで割ると1kWhあたり約28円になりますが、これは編集部が割り算した参考値で、契約プランや燃料費調整で実際の単価は変わります。
名前が似ている事業者向け制度と混同しない
検索すると出てくる「省エネ最適化診断」は、一般財団法人省エネルギーセンターが実施する中小企業などの事業者向けの診断で、自宅(住宅)は対象ではありません(出典: 一般財団法人省エネルギーセンター 省エネ・節電ポータルサイト)。自宅なら、環境省の家庭エコ診断制度か自治体の家庭向け事業が入口になります。
無料で使える公的な診断ツール
うちエコ診断WEBサービス(環境省の家庭エコ診断制度)
家庭エコ診断制度の運営事務局は一般社団法人地球温暖化防止全国ネットです。WEBサービスは無料で、登録すると診断ファイルを最大3件まで保存できます。
- 入力するもの: 電気・ガス・灯油・ガソリンの使用量、都道府県と郵便番号、家電の使用状況、暖冷房や給湯の設備
- 所要時間: シンプルモードで約5分。事前調査票を使うモードは質問数が多い代わりに、対策を広く洗い出せる
- 出てくるもの: 年間CO2排出量と光熱費、平均世帯との比較、分野別の内訳、家庭に合わせた対策と削減効果。パソコン・スマートフォン・タブレットから利用可能
公式サイトは「住まいやライフスタイルから、光熱費を減らせるところが一目でわかります」と説明しています(出典: うちエコ診断WEBサービス、同サービスについて)。
うちエコ診断士による診断
もう少し踏み込むなら、資格を持つ「うちエコ診断士」による診断があります。公式の説明は「年間エネルギー使用量や光熱費などの情報をもとに、専用ソフトを用いて、お住まいの気候やご家庭のライフスタイルに合わせて無理なくできる省CO2・省エネ対策をご提案するもの」で、受診時間は1家庭50分程度。事前調査票に家族構成と電気・ガス・ガソリンの使用量を記入したうえで、当日は診断士が対面で進めます。形式は訪問・窓口・会場・団体・オンラインがあり、実施内容は地域の実施機関によって異なります(出典: うちエコ診断について、受診方法)。なお受診料が無料かどうかは公式サイトに明記がなく、実施機関の一覧には「有料にてお受けいたします」と案内している機関もあります。申し込む前に、お住まいの地域の実施機関の案内を確認してください。
しんきゅうさんと省エネ型製品情報サイト(機器を選ぶとき)
環境省の「しんきゅうさん」は、いま使っている家電と最新機種の電気代の差を見るサービスです。対象はエアコン、冷蔵庫、テレビ、照明・器具(LED照明)、温水洗浄便座の5種類で、トップページでは照明・器具(LED照明)で電気代86%減、冷蔵庫で46%減といった例が示されています(出典: 環境省 しんきゅうさん)。
機種を絞り込む段階では、統一省エネラベルとひもづく「省エネ型製品情報サイト」が使えます。現在販売されている家電や機器の省エネ性能表示データベースで、トップランナー基準に基づく省エネ基準達成率などが確認できます(出典: 省エネ型製品情報サイト)。
自治体の無料点検・アドバイザー派遣
住まいの断熱まで見てほしいなら、自治体の事業が有力です。東京都では、公益財団法人東京都環境公社 東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)が「省エネ点検・改修キャンペーン」を実施し、都内の家庭を対象に無料でアドバイザーを派遣して、断熱窓・断熱ドア・高効率給湯器の省エネルギー化などに関する点検を行うと案内しています(出典: クール・ネット東京 省エネ点検・改修キャンペーン、キャンペーン特設サイト)。同種の事業は自治体ごとに名称も条件も違います。自治体名と「省エネ 点検」で公式サイトを確認してください。
自宅でできるセルフ診断5ステップ
ステップ1 12か月分の使用量を並べる
検針票か電力会社のWeb会員サービスから、直近12か月分の使用量(kWh)と請求額を書き出します。1年分そろえるのは、冷暖房で月ごとの差が大きいためです。ガスや灯油も同様に並べます。
ステップ2 全国平均と比べる
環境省統計と突き合わせます。世帯当たりの年間電気消費量は3,911kWh。これを大きく上回るなら削減余地が残っている可能性が高い、と当たりがつきます。ただし世帯人数・建て方・地域で平均は変わるので、あくまで出発点です。電気代の中身を分解する考え方は電気代の内訳の見方で整理しています。
ステップ3 30分ごとのデータで時間帯を見る
スマートメーターは「30分ごとの電気のご使用量を計測することができ、かつ通信機能を保有した電力メーター」と定義され、電気の使用形態を把握して節電に役立てられる点がメリットに挙げられています(出典: 中部電力パワーグリッド スマートメーターとは)。
ただし、その30分値をそのままの粒度で見られるかは電力会社とWeb会員サービスによって違います。中部電力ミライズの「カテエネ」では、利用者の声として「日毎、1時間毎の使用量もわかる」と紹介されており、閲覧できる粒度は1時間単位です(出典: カテエネ)。30分ごとの計測値そのものを自宅で受け取りたい場合は、電力メーター情報発信サービス(Bルートサービス)を申し込むと、「スマートメーターで計測した電気ご使用量などのデータを、お客さまのHEMSなどへ発信するサービス」を利用できます(別途申し込みが必要。出典: 中部電力パワーグリッド 電力メーター情報発信サービス)。
見るポイントは3つです。
- 昼間(おおむね9〜16時)の消費が全体のどれくらいか — 太陽光の自家消費で吸収できる量に直結します
- 夜間にどれだけ使っているか — 蓄電池の容量検討の土台になります
- 誰もいない時間帯のベースライン — 常時動いている機器の合計で、待機電力や設定の見直し余地が見えます
機器ごとの実測方法は電気使用量モニターの選び方にまとめています。
ステップ4 用途別に当たりをつける
同調査は、世帯当たりの年間CO2排出量を用途別にも推計しています。同調査自身が「推計値であるため、参考資料とした」と断っている点に注意してください。次の値は参考図2-5の「全体」(全国平均)の内訳です。
| 用途 | 世帯当たり年間CO2排出量 |
|---|---|
| 照明・家電製品等 | 1.14トンCO2 |
| 給湯 | 0.59トンCO2 |
| 暖房 | 0.48トンCO2 |
| 冷房 | 0.14トンCO2 |
| 台所用コンロ | 0.11トンCO2 |
出典: 環境省 令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 結果について(確報値) II-2 用途別CO2排出量等(参考)参考図2-5「全体」
合計に対する割合を編集部が計算すると、照明・家電製品等が約46%、給湯が約24%、暖房が約20%、冷房が約6%、台所用コンロが約5%。ただしこれはCO2排出量の内訳であって、電気代の内訳ではありません。エネルギー種ごとに排出係数が違うため、金額の構成比とは一致しません。それでも「照明・家電と給湯と暖房で大半」という順番は、優先順位を決める参考になります。
ステップ5 機器の年式と住まいの断熱を確認する
最後に、重そうな用途の機器の製造年と、窓の仕様を確認します。同調査では、二重サッシまたは複層ガラスがすべての窓にある世帯は24%、一部の窓にある世帯は16%でした。単板ガラスのままなら、機器の買い替えより窓の対策が効く場合があります。機器側は「しんきゅうさん」と「省エネ型製品情報サイト」で確認すれば、公的ツールだけで完結します。
診断結果を太陽光・蓄電池の判断につなげる
太陽光を入れている世帯の実際の数字
すでに入れている世帯の実績を見ると期待値がずれません。環境省の令和5年度調査では、太陽光発電システムを使用している世帯は戸建11.7%、集合住宅0.0%、全体6.3%。使用世帯当たりの数字は次のとおりです。
| 項目 | 使用世帯当たりの値 |
|---|---|
| 太陽電池の総容量 | 平均5.0kW |
| 年間発電量 | 5,800kWh |
| 年間売電量 | 3,953kWh |
| 売電による年間受領金額 | 9.1万円 |
出典: 環境省 令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編
発電量5,800kWhから売電量3,953kWhを引くと、自家消費はおよそ1,850kWh(編集部の計算)。発電した電気のうち自宅で使っているのは3割程度という姿です。受領金額9.1万円を売電量で割ると1kWhあたり約23円になりますが、これは単価が高かった時期のFIT契約を含む平均で、これから契約する条件ではありません。
蓄電池は「夜間に使うkWh」から逆算する
蓄電池の容量は、ステップ3で見た夜間の消費量が出発点です。夜へ回す量が小さければ、大きな容量を入れても使い切れません。容量の考え方は蓄電池のkWh容量の選び方で整理しています。
同調査では家庭用蓄電システムの使用率は戸建3.7%・集合住宅0.1%・全体2.0%、HEMSの使用率は戸建4.2%・集合住宅1.0%・全体2.7%でした(出典: 環境省 令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編 図2-124・図2-103)。普及率はまだ低く、「みんな入れているから」で判断する段階ではありません。HEMSを検討するなら機器の供給状況も確認してください。パナソニックは公式サイトで「AiSEG2は2026年9月生産終了予定です」と告知しています(出典: パナソニック AiSEG2)。
売電単価と補助金の現状を織り込む
2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。売るより使うほうが有利な場面が増えているため、診断で把握した昼間の消費量がそのまま経済性を左右します。
補助金は国と自治体で状況が分かれています。国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に予算到達で公募終了し、2026年8月時点で新規申請はできません(経緯は国のDR補助金の終了と次回の見通し)。一方、東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は動いています。蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸で、DR実証参加時は加算があります。令和8年10月1日以降の申込では、SIIによる令和8年度の登録済製品一覧に登録された機器のみが助成対象です(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業、解説は東京都の蓄電池補助金2026)。
診断をきっかけにした勧誘には距離を取る
無料の「診断」「点検」を入口にした訪問販売は、実際にトラブルとして報告されています。国民生活センターは2021年6月3日に「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」を公表しました。PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数は2016年度の325件から2020年度の1,314件へ増加傾向にあり、太陽光発電設備の無料点検で訪問した事業者に勧誘される事例などが挙げられています。同センターは、その場で契約せずに複数社から見積もりを取って比較検討するよう案内しています(出典: 国民生活センター 家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!)。
見分け方はシンプルです。公的な診断は、その場で設備の契約を求めません。 うちエコ診断も自治体の点検も、診断そのものが目的だからです。「診断」と名乗りながら当日の契約を迫るなら、公的制度とは別物だと考えてください。見積もりの段階では、次の項目が書面に落ちているかを確認します。
- 機器の型式と、蓄電池なら蓄電容量と初期実効容量の両方
- 保証の年数と対象機器の一覧、無償か有償か、申請手続きの要否
- 補助金を前提にしている場合、その制度名と現在の公募状況
まとめ
- 自宅のエネルギー診断は、環境省の家庭エコ診断制度が提供する**うちエコ診断WEBサービス(無料・シンプルモード約5分)**から始められる。診断士による診断は1家庭50分程度
- 比較の物差しは環境省の令和5年度統計。世帯当たり年間電気3,911kWh・11.05万円、4種計17.42万円・2.47トンCO2。用途別CO2は照明・家電製品等1.14トンが最大で、給湯0.59トン、暖房0.48トンが続く
- 設備投資の判断まで進めるなら、スマートメーターの30分ごとのデータで昼と夜の比率を出す。太陽光使用世帯の実績は平均5.0kW・発電5,800kWh・売電3,953kWhで、自家消費は3割程度
- 国のDR補助金は2026年5月29日に公募終了。東京都など自治体の制度は継続しているため、資金計画は最新の公募状況を確認してから組む