冬の暖房費は、器具を買い替える前に「設定温度」「運転時間」「手入れ」の3つを動かすほうが費用対効果が高くなります。 資源エネルギー庁の試算では、エアコンの暖房設定を21℃から20℃に下げるだけで年間約1,650円、フィルターを月1〜2回清掃するだけで年間約990円が下がります(いずれも電気31円/kWh換算)。
この記事では、暖房費の記事でよく見かける「1時間あたり◯円」の相場表は使いません。公的機関が条件を明示して公表している数値だけを並べ、2026年に実際に使える断熱・設備の補助金の状況まで整理します。
【2026年9月8日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。次回公募は未公表です。一方、窓の断熱改修に使う先進的窓リノベ2026事業は受付中で、公式サイトの表示では、予算に対する補助金申請額の割合(概算値)は2026年9月8日午前0時時点で22%です。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業、環境省 先進的窓リノベ2026事業
この記事でわかること
- 冬季の家庭の電気使用のうち暖房が占める割合と、その内訳
- エアコン・ファンヒーター・こたつ・電気カーペットで設定を1段下げたときの年間節約額(資源エネルギー庁の試算値)
- 窓の断熱に使える先進的窓リノベ2026事業の補助額と、公式が公表している補助金申請額の割合
- 太陽光・蓄電池が冬の電気代に効く仕組みと、国の補助金が使えない現状
- 訪問販売で契約する前に確認したいこと
冬の電気代は「暖房」に3割が消えている
資源エネルギー庁が令和7年10月に発行した「冬季の省エネメニュー(ご家庭の皆様)」には、冬季1日間の家庭の電気の使用割合が示されています。
| 用途 | 冬季1日間の電気使用割合 |
|---|---|
| 暖房 | 32.7% |
| 冷蔵庫 | 14.9% |
| 給湯 | 12.6% |
| 照明 | 9.2% |
| 炊事 | 7.8% |
| 待機電力 | 5.5% |
| テレビ・DVD | 4.2% |
| 洗濯・乾燥機 | 2.2% |
| パソコン・ルーター | 0.9% |
| 温水便座 | 0.6% |
| その他 | 9.4% |
さらに、暖房32.7%の内訳も同じ資料に出ています。
| 暖房の内訳 | 割合 |
|---|---|
| エアコン | 17.0% |
| 電気ストーブ | 3.8% |
| こたつ | 2.1% |
| 電気カーペット | 1.8% |
| その他 | 8.0% |
出典: 資源エネルギー庁 冬季の省エネメニュー(ご家庭の皆様)東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州版(PDF)(配布元: 令和7年度「冬季の省エネルギーの取組について」を決定しました)
ここから読み取れることは2つです。ひとつは、エアコンが単独で17.0%と最大の1台であること。もうひとつは、電気ストーブ・こたつ・電気カーペットを全部足しても7.7%で、エアコン1台に届かないことです。補助暖房の見直しにも意味はありますが、順番としてはエアコンの使い方が先になります。
なお、この割合は電気だけの内訳です。灯油やガスのファンヒーターを使っている家庭では、その分は電気代の外側に乗ります。年間を通した電気代の構成は家庭の電気代の内訳で解説しています。
エアコン:室温20℃とフィルター清掃で年いくら下がるか
資源エネルギー庁の省エネポータルサイトは、省エネ行動ごとに前提条件を明示したうえで、年間の削減量と節約額を公表しています。暖房に関わる数値は次のとおりです。
| 省エネ行動 | 前提条件 | 年間の削減量 | 年間の節約額 |
|---|---|---|---|
| 暖房設定温度を21℃から20℃へ | 外気温度6℃、エアコン2.2kW、使用時間9時間/日 | 電気53.08kWh | 約1,650円 |
| 暖房を1日1時間短縮 | 設定温度20℃ | 電気40.73kWh | 約1,260円 |
| フィルターを月に1〜2回清掃 | 目詰まりしたエアコン2.2kWとの比較 | 電気31.95kWh | 約990円 |
金額は電気31円/kWhで換算されています。これは全国家庭電気製品公正取引協議会が令和4年7月22日に改定した「新電力料金目安単価(税込)」で、同協議会も目安単価は「ご契約の小売電気事業者により異なる」と注記しています(出典: 同協議会 よくある質問、省エネポータルサイト 省エネ効果の算出根拠)。自宅の単価が違えば、上の金額はその比率で読み替えてください。
3つはそれぞれ別の前提で個別に試算された数値なので、単純に足した額はあくまで目安です。そのうえで合計すると年間およそ3,900円になります。金額そのものは派手ではありませんが、器具を買い替えず、工事もせず、今日から実行できる範囲でこれだけ動くという点に意味があります。
温度を下げても寒くしないための工夫
省エネポータルサイトは、暖房時の具体的な工夫も挙げています(最後の1点は「暖房時の工夫」ではなく、冷暖房に共通する注意点として別立てで示されているものです)。
- ドア・窓の開閉は少なく
- 厚手のカーテンを使用する。床まで届く長いカーテンのほうが効果的
- 扇風機を併用し、暖まった空気を循環させる
- 室外機の吹出口にものを置かない(冷暖房の効果が下がる)
同ページには「適宜、換気をしましょう」という注記も添えられています。
「冬季の省エネメニュー」では、これらの効果が1日間の家庭の電気使用量に対する概算値としても示されています。重ね着や加湿などで体感温度を上げて室温を22℃から20℃に下げると2.7%、目詰まりしたフィルターを清掃すると0.8%、窓に厚手のカーテンを掛けると**0.8%**の削減率です(地域・気候条件等によって変動する、という注記付き)。エアコン単体の使い方はエアコンの電気代を下げる使い方にまとめています。
ファンヒーター・こたつ・電気カーペットは「1段下げる」が効く
補助暖房や燃焼式暖房についても、同じ省エネポータルサイトに条件付きの試算があります。
| 機器 | 省エネ行動と条件 | 年間の削減量 | 年間の節約額 |
|---|---|---|---|
| ガスファンヒーター | 設定温度21℃→20℃(外気温度6℃・9時間/日) | ガス8.15m3 | 約1,320円 |
| ガスファンヒーター | 1日1時間短縮(設定温度20℃) | ガス12.68m3+電気3.72kWh | 合計 約2,150円 |
| 石油ファンヒーター | 設定温度21℃→20℃(外気温度6℃・9時間/日) | 灯油10.22L | 約880円 |
| 石油ファンヒーター | 1日1時間短縮(設定温度20℃) | 灯油15.91L+電気3.89kWh | 合計 約1,470円 |
| 電気カーペット(3畳用) | 設定温度「強」→「中」(1日5時間使用) | 電気185.97kWh | 約5,770円 |
| 電気カーペット | 3畳用ではなく2畳用を使う(室温20℃・「中」・1日5時間) | 電気89.91kWh | 約2,790円 |
| 電気こたつ | 温度調節「強」→「中」(1日5時間使用) | 電気48.95kWh | 約1,520円 |
| 電気こたつ | こたつ布団だけの場合と、上掛けと敷布団を併用した場合の比較(1日5時間使用) | 電気32.48kWh | 約1,010円 |
出典: 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「空調」。換算単価はガス162円/m3、灯油86円/L、電気31円/kWh(出典: 省エネ効果の算出根拠)。ガスの単価は平成29年版ガス事業便覧(平成28年度実績)、灯油の単価は平成29年1月〜令和元年12月の全国平均店頭価格の3年平均が基礎データなので、直近の店頭価格とはズレます。灯油の最新価格は石油情報センターで確認できます。
この表で目を引くのは、電気カーペット3畳用の「強」→「中」で年間約5,770円という数字です。今回並べた行動のなかで最大でした。設定を1段下げるだけの操作としては、効き目が大きい部類に入ります。
床暖房については、省エネポータルサイトに金額の試算はなく、使い方の指針だけが示されています。「室温は低めに設定する」「就寝や外出の約30分前にスイッチを切る」「床暖房の上にはカーペットやラグマットを使わないほうが効果的」の3点です。石油・ガスファンヒーターについても「お出かけや寝る15分くらい前に切るのがコツ」と書かれています。
ここで押さえておきたいのは、暖房器具どうしの1時間あたりコストを同一条件で比較した公的データは見当たらないということです。電気・ガス・灯油は単価の根拠も改定タイミングも異なり、部屋の広さ・断熱性能・外気温でも消費量が変わります。前提が書かれていない「1時間◯円」の比較表は、そのまま自宅に当てはめないほうが安全です。
窓の断熱と、2026年に使える補助金
使い方の工夫は無料でできますが、削減幅には上限があります。そこから先に進むなら、逃げる熱そのものを減らす方向です。
資源エネルギー庁の「冬季の省エネメニュー」も、コラムで手軽な窓断熱を勧めています。ホームセンターなどで手に入る窓用の断熱シートやハニカムスクリーンを挙げ、「一つひとつの対策は小さくても、家中の窓に広げれば、確実に省エネ効果が期待できます」としています。
先進的窓リノベ2026事業(環境省)
本格的な窓の断熱改修には、国の補助事業が使えます。2026年9月時点で受付中なのが先進的窓リノベ2026事業です。
- 正式名称: 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2026事業)
- 予算規模: 1,125億円(令和7年度補正予算)
- 対象工事: 既存の住宅・非住宅建築物に行う開口部の断熱改修。公式の区分はガラス交換・内窓設置・外窓交換・ドア交換の4つで、外窓交換とドア交換にはそれぞれカバー工法とはつり工法があります。ドア交換は他の窓工事と同一の契約であり、同時に申請する場合のみ対象
- 上限額: 住宅は1戸あたり100万円。延床面積240m2以下の非住宅建築物は1棟あたり100万円、240m2超は1棟あたり1,000万円
- 下限: 1申請あたりの合計補助額が5万円以上であること
- 対象期間: 2025年11月28日以降に着手した工事が対象。交付申請は遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合はその時点まで)
- 予算に対する補助金申請額の割合(概算値): 2026年9月8日午前0時時点で22%。これは交付申請および交付申請の予約が提出された総額(審査中のものを含む)の割合で、実際に交付が決まった額ではありません
内窓設置の補助額は、性能区分とサイズで決まります。戸建住宅・延床面積240m2以下の非住宅建築物の場合は次のとおりです。
| 性能区分 | 特大(G)4.0m2以上 | 大(L)2.8〜4.0m2 | 中(M)1.6〜2.8m2 | 小(S)0.2〜1.6m2 |
|---|---|---|---|---|
| P(SS)1.1以下 | 140,000円 | 89,000円 | 58,000円 | 36,000円 |
| S 1.5以下 | 76,000円 | 52,000円 | 34,000円 | 22,000円 |
出典: 先進的窓リノベ2026事業 事業概要、内窓設置の補助額、トップページ(補助金申請額の割合)。低層・中高層の集合住宅と240m2超の非住宅建築物は別の金額表(P(SS)特大152,000円〜小40,000円、S 特大83,000円〜小24,000円)が用意されています。
公式サイトには「予算上限(100%)に達し次第、交付申請の受付を終了します」と明記されています。窓の断熱を検討しているなら、契約前に最新の申請額割合を自分で確認するのが実務上の要点です。数値は公式サイトのトップページで更新されています。
冬に増えるのは暖房だけではない
冬季1日間の電気使用割合では、給湯が12.6%を占めていました。給湯設備の入れ替えには給湯省エネ2026事業があり、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の補助額は基本額7万円/台、性能加算額3万円/台です。加算を受けるには、基本の性能要件を満たす機種と比べてCO2排出量が5%以上少なく、2025年度の目標基準値+0.2以上の性能値をもつことが求められます。公式サイトのトップページでは、予算に対する補助金申請額の割合(概算値)が撤去加算措置分とあわせて毎日更新されています。こちらも上限に達し次第終了します(出典: 給湯省エネ2026事業、エコキュート)。
太陽光・蓄電池で冬の電気代をどう下げるか
暖房の使い方と断熱を詰めたあとに検討する選択肢が、太陽光発電と蓄電池です。冬に効く理屈は「発電した電気を売らずに自分で使う」ことにあります。
2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT調達価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh、調達期間は10年間です。この2026年度の調達価格は2025年度下半期にも適用されており、資源エネルギー庁は投資回収の早期化を図る「初期投資支援スキーム」と説明しています(出典: 資源エネルギー庁 FIT・FIP制度 買取価格・期間等(2025年度以降))。買う電気の目安単価31円/kWhと比べると、5年目以降は差が大きく開きます。売るより使うほうが有利になる場面が増えるというのが、蓄電池が話題になっている背景です。
もっとも、単価の差がそのまま設備投資の回収を意味するわけではありません。国民生活センターは家庭用蓄電池の勧誘トラブルに関する注意喚起のなかで、消費者へのアドバイスとして「必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません」「家庭用蓄電池導入のメリットだけではなく、それに伴うコストも十分考慮しましょう」と述べています(出典: 国民生活センター)。導入費用まで含めて計算しないと、単価差の話は結論になりません。
冬特有の注意点もあります。ひとつは、暖房で消費が増える一方、発電量は地域・屋根の向き・傾斜・その時期の日射条件で変わることです。販売店のシミュレーションを見るときは、どの日射量データを何年分使っているかまで確認してください。前提が示されない試算は比較に使えません。
もうひとつは温度です。オムロンのKPBP-Aシリーズの公式仕様では、蓄電池ユニットの使用周囲温度は型式により-10〜45℃または-15〜45℃(結露および氷結なきこと)とされ、「使用周囲温度範囲内であっても、蓄電池保護のために充放電を制限することがあります」と注記されています。KP-BU127-B・KP-BU63-Bには設置周囲温度-20〜45℃の規定もあり、「-20℃〜-10℃では大幅に制限がかかりますが、充放電可能です」と書かれています(出典: オムロン マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズ 仕様)。寒冷地では設置場所の選び方が性能に直結します。詳しくは気温が蓄電池の性能に与える影響を参照してください。
補助金の状況は冒頭のとおりです。国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、2026年9月時点で新規申請はできません(交付決定は2026年9月4日更新時点で12,067件、総額約51億7,311万円)。次回公募は未公表です。詳しくは国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめました。
自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸(増設は6万円/kWh・上限72万円/戸)。事前申込は令和8年5月29日開始で、令和8年10月1日以降に事前申込をする場合はSIIが登録している機器に限られます(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。詳細は東京都の蓄電池補助金2026にまとめています。
契約前に確認したいこと
暖房費が気になる冬は、省エネ設備の勧誘も増える時期です。国民生活センターは2021年6月3日に家庭用蓄電池の勧誘トラブルについて注意喚起を公表しています。PIO-NETに寄せられた相談件数は2016年度325件、2017年度553件、2018年度926件、2019年度1,302件、2020年度1,314件と増加傾向にあります(2021年4月30日までの登録分)。挙げられている相談事例は、太陽光パネルの無料点検で訪問した事業者に「国の補助金が出るので安くなる」と言われて約200万円の蓄電池を契約した、「補助金の申請は代行する」と説明されたが実際は申請されていなかった、「この値段は今日限り」「安くできるのはあと2件」と急かされて十分に検討できないまま契約した、電力会社の関連会社を名乗る事業者に勧誘された、といったものです(出典: 国民生活センター)。
国の蓄電池向け補助金は2026年9月時点で公募終了中です。「国の補助金が出るから今が安い」と説明されたら、その場で公式サイトの公募状況を確認してください。受付中の窓リノベや給湯省エネでも、申請額の割合は日々動きます。見積書では、次の点が書面に落ちているかを確認しましょう。
- 補助事業の正式名称と、その事業の現在の受付状況および公式サイトが公表している補助金申請額の割合
- 申請主体(事業者が申請するのか、自分で申請するのか)と、補助金が入金される時期
- 対象製品が登録済み製品かどうか(型番で確認できるか)
- 工事着手日・完了日が対象期間に収まっているか
- 節約額の試算に使われている電気・ガス・灯油の単価と、その出典
判断に迷ったら、消費者ホットライン188に相談できます。その場で契約せず、複数社から見積もりを取って比較するのが基本です。
まとめ
- 冬季1日間の家庭の電気使用は暖房が32.7%、その内訳はエアコン17.0%が最大。補助暖房より先にエアコンの使い方を見直すのが順番
- 資源エネルギー庁の試算では、設定21℃→20℃で年間約1,650円、1日1時間短縮で約1,260円、フィルター清掃で約990円(電気31円/kWh換算)。電気カーペット3畳用の「強」→「中」は年間約5,770円と効き目が大きい
- 器具どうしの「1時間◯円」を同一条件で比べた公的データは見当たらない。前提が書かれていない比較表は自宅に当てはめない
- 窓の断熱には**先進的窓リノベ2026事業(1戸あたり上限100万円)**が使えるが予算上限に達し次第終了。国の蓄電池向けDR補助金は2026年5月29日に公募終了しており、補助金前提の資金計画は最新の公募状況を確認してから組む