太陽光発電の損得を決めるのは、売電価格ではなく「日中にどれだけ自分で使えるか」です。 2026年度の売電は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh。対する自家消費1kWhの価値は、制度上2026年度の便益として27.45円/kWhと設定されています。5〜10年目は売るより使うほうが3倍以上価値が高い構造です。
【2026年8月28日時点】 2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh、調達期間10年間。出典: 資源エネルギー庁「買取価格・期間等」
この記事でわかること(数字はすべて公的機関・メーカー公式の公表値です)
- 2026年度のFIT価格と補助金がいまどうなっているか
- 一次情報で確認できるメリット5つ
- 契約前に押さえたいデメリット6つ
- 5kWシステムの回収年数の試算と、その前提
- 得しやすい家庭と、慎重に判断したい家庭の条件
2026年8月時点の前提:FIT価格と補助金の現在地
売電価格は「前半に寄せる」形に変わった
2026年度の住宅用(10kW未満)の調達価格は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh。調達期間は従来どおり10年間で、資源エネルギー庁はこれを「国民負担には中立的な形で、投資回収の早期化を図る価格設定(初期投資支援スキーム)」と説明しています(資源エネルギー庁「買取価格・期間等」)。
10年の買取期間が終わったあと(卒FIT)は、各小売電気事業者の買取メニューで売ることになります。調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(PDF)によれば、2025年12月時点の買取メニューの売電価格は平均10.0円/kWh、中央値9.5円/kWh。10円/kWh水準以上は電気とのセット販売や蓄電池併設などの条件付きが多い点にも注意が促されています。
国の蓄電池補助金は公募終了、自治体の助成は継続
蓄電池をセットで検討している場合、国の「令和7年度補正 DRリソース導入のための家庭用蓄電システム等導入支援事業」(1申請あたり上限60万円)は2026年5月29日に交付申請額が予算に達し、公募が終了しています。次回の予定は公表されていません(SII 公式)。
一方、自治体の助成は続いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸。太陽光パネル本体への助成は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体の公式ページで最新の公募要領を確認してください。
なお東京都では2025年4月から、延床面積2,000㎡未満の建物を新築する大手ハウスメーカー等に太陽光パネルの設置等が義務付けられています(東京都 建築物環境報告書制度。開始時期は国民生活センター 2025年6月4日公表資料による)。義務の対象は事業者で、住宅を買う個人ではありません。
太陽光発電のメリット5つ
メリット1:売電より自家消費のほうが価値が高い
調達価格等算定委員会は、2026年度の自家消費分の便益を27.45円/kWhと設定しています(大手電力の直近10年間=2014〜2023年度の家庭用電気料金単価に消費税10%を加味した値)。同じ考え方を1年ずらした直近10年(2015〜2024年度)に当てはめ直すと27.86円/kWhとなり、電気料金が上がるほど自家消費の価値も上がる関係です(同委員会 意見PDF)。
売電単価(1〜4年目24円、5〜10年目8.3円、卒FIT後は中央値9.5円)と並べると、自家消費1kWhの価値は5年目以降ずっと売電を上回ります。日中に在宅している、エコキュートやEV充電を昼間に寄せられる世帯ほど有利です。
メリット2:収入が最初の4年に集中する
1〜4年目の売電単価24円/kWhは5年目以降の8.3円/kWhの約3倍。返済が重い最初の数年に収入が寄る設計は、家計上の実務的なメリットです。
メリット3:停電時に自立運転で電気が使える
太陽光発電協会(JPEA)は、自立運転機能で使用できる電力は最大1.5kW、太陽が出ている時間帯の日射量によって変わるとしています。テレビや炊飯器、電気ポット、携帯電話の充電器などが使える水準です(JPEA 公式)。近年の機種はこれを上回り、オムロンのパワーコンディショナKPKシリーズは4.0kW機で自立出力 最大2.0kVA、5.5kW機で最大2.75kVAに対応します(オムロン 公式)。
ただし自立運転は自動では始まりません。ブレーカーをオフにしてモードを切り替え、専用の自立運転用コンセントに機器をつなぐ手順が要ります(JPEA「停電時でも電気が使えます」)。平常時に操作方法を確認しておきましょう。
メリット4:CO2削減効果は数字で示せる
JPEAの試算では、住宅用太陽光発電のCO2削減効果は1kWシステムあたり年間0.53t-CO2(設備利用率13.5%、年間発電電力1,183kWh/kW/年が前提)。4kWなら単純計算で年間約2.1t-CO2です。JPEAは4kW約8棟分が東京ドーム1個分の森林に相当するとしています(JPEA 公式)。
メリット5:日々の維持費そのものは小さい
調達価格等算定委員会が2025年設置案件の定期報告データを分析したところ、運転維持費の平均は1,045円/kW/年で、2026年度の想定値3,000円/kW/年を下回りました。ただしこの平均は、同データの88%が0円/kW/年であることに引きずられた値です。委員会は「対象年に点検費用や修繕費用が発生していない案件が多く存在する可能性」を指摘しています(同委員会 意見PDF)。点検やパワーコンディショナ交換が発生しない年のコストは小さい、という程度に読むのが妥当で、長期の実勢は後述のとおり高くなります。
太陽光発電のデメリット6つ
デメリット1:初期費用は依然として100万円台
調達価格等算定委員会によると、**2025年設置の新築案件のシステム費用は平均28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW)**で、2026年度の想定値25.5万円/kWを上回りました。2024年設置より0.2万円/kW(0.6%)、2023年設置より0.5万円/kW(1.9%)増えており、直近は上昇傾向です。費用の内訳は太陽光パネルが約47%、工事費が約29%です(同委員会 意見PDF)。
この平均単価で5kWを単純計算すると約145万円。実際の見積額は屋根形状や足場の要否で変わります。
デメリット2:長期ではパワーコンディショナ交換が効いてくる
同委員会がJPEAへのヒアリングで得たコストデータでは、5kWの設備を想定した場合、
- 3〜5年ごとに1回程度の定期点検が推奨され、1回あたりの相場は約3.8万円
- パワーコンディショナは20年間で一度は交換され、38.4万円程度が一般的な相場(前年度のヒアリング調査では42.3万円程度)
とされています。年間運転維持費に換算すると約5,740円/kW/年で、想定値3,000円/kW/年を上回りました。
点検の頻度についてJPEAは設置後1年目、その後は4年に1度を推奨し、改正FIT法の事業計画策定ガイドラインで保守点検および維持管理の実施は義務とされていると説明しています(JPEA「長く使っていただくために」)。
デメリット3:発電量は屋根と天候で決まる
2026年度の設備利用率の想定値は13.7%、2025年1〜8月の実績平均は14.1%。5kWなら年間6,000kWh前後ですが、これは全国平均の条件での数字です。屋根の方位・傾斜・周囲の影で実発電量は変わるため、自宅の屋根条件でのシミュレーションを施工事業者に出してもらうことが欠かせません。
また余剰売電比率の実績は平均64.8%(中央値60.7%)で、発電した電気の6割前後は売電に回っているのが実態です(同委員会 意見PDF)。
デメリット4:住宅用でも出力制御の対象になり得る
再エネが増えた地域では、需給バランスを保つために発電を止める「出力制御」が行われます。九州電力送配電は2022年12月以降の実施方法について、10kW以上の制御を行ったうえでなお必要な場合には、10kW未満の発電所についても出力制御を行うと明記しています(九州電力送配電 公式)。
運用は地域と契約時のルールで異なります。売電収入を前提に計画を立てるなら、契約前に送配電事業者の条件を確認しましょう。
デメリット5:撤去・廃棄の費用は自分で用意する
FIT/FIP制度の廃棄等費用積立制度は事業用(10kW以上)を対象に措置されており、住宅用はこの積立の枠外です。環境省の資料では現状のリサイクル費用は8,000〜12,000円/kW、埋立処分費用は2,000円/kW程度〜とされています(環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律の概要」PDF)。これは処分側の費用で、屋根から取り外す撤去工事費は別です。
JPEAは撤去・廃棄費用を「①撤去工事費」と「②産業廃棄物処分等の費用」に分け、パネル枚数・屋根形状・階数・足場の要否で①が変わるとしています。取り外したパネルや架台は一般廃棄物ではなく産業廃棄物です。また補助金を受けた設備を法定耐用年数17年に満たないうちに廃棄すると、補助金の返還が必要になるケースがあります(JPEA「住宅用太陽光発電システムの廃棄を検討している方へ」)。
2026年5月29日には「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」(令和8年法律第33号)が成立、6月5日に公布されました。義務の対象は多量の事業用太陽電池を廃棄しようとする者で、家庭は直接の規制対象ではありません(環境省「太陽光パネルリサイクル関連」)。
デメリット6:契約トラブルが急増している
いま最も現実的なリスクは、設備そのものより契約です。国民生活センターが2025年6月4日に公表した資料によると、PIO-NETに寄せられた「太陽光発電システムの点検商法」の相談は2021年度90件 → 2022年度154件 → 2023年度304件 → 2024年度613件と、2023年度・2024年度がそれぞれ前年度の約2倍に急増。契約当事者の平均年齢は69.1歳、平均契約購入金額は約113万円です(国民生活センター「太陽光発電システムの点検商法が急増!」PDF)。
「点検が義務化された」などと無料点検を持ちかけ、洗浄やコーティングの高額契約へ誘導する手口が報告されています。同センターは、その場で契約せず複数社から見積もりを取ること、不安なときは**消費者ホットライン188(いやや)**に相談することを勧めています。訪問販売や電話勧誘販売に該当する場合、法定書面を受け取った日から8日以内であればクーリング・オフができます(消費者庁「訪問販売」)。
火災リスクは設置形態で差があります。消費者安全調査委員会が2019年1月28日に公表した報告書では、調査対象72件のうち野地板へ延焼して被害が大きくなった7件はすべて「鋼板等なし型」(モジュール直下に鋼板等がない設置形態、累積設置棟数の約4.5%)で、一般的な屋根置き型では野地板への延焼は確認されていません(消費者安全調査委員会 報告書概要 PDF)。
5kWの太陽光は何年で回収できるか
すべての数字を公表値に固定した機械的な試算です。実際の見積額や電気の使い方で結果は変わります。
| 前提 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| システム容量 | 5kW | 記事内の仮定 |
| 初期費用 | 28.9万円/kW × 5kW = 約145万円 | 2025年設置の新築案件の平均単価 |
| 年間発電量 | 5kW × 8,760時間 × 13.7% = 約6,000kWh | 設備利用率は2026年度想定値 |
| 余剰売電比率 | 70%(売電4,200kWh、自家消費1,800kWh) | 2026年度想定値 |
| 売電単価 | 1〜4年目24円、5〜10年目8.3円、11年目以降9.5円 | FIT価格と卒FIT中央値 |
| 自家消費1kWhの価値 | 27.45円 | 2026年度の自家消費分の便益(設定値) |
| 運転維持費 | 3,000円/kW/年 × 5kW = 1.5万円/年 | 2026年度想定値 |
| 期間 | 売電収入 | 自家消費による削減 | 運転維持費 | 差引 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜4年目 | 約10.1万円 | 約4.9万円 | −1.5万円 | 約13.5万円/年 |
| 5〜10年目 | 約3.5万円 | 約4.9万円 | −1.5万円 | 約6.9万円/年 |
| 11年目以降 | 約4.0万円 | 約4.9万円 | −1.5万円 | 約7.4万円/年 |
累計すると10年目で約96万円。初期費用145万円を上回るのは16〜17年目です。運転維持費を想定値ではなく、定期点検とパワーコンディショナ交換を織り込んだ実勢(約5,740円/kW/年、5kWで年約2.9万円)に置き換えると、回収は20年を超えます。
ただしこの試算は補助金をゼロ、**自家消費率を30%**に置いています。自治体の助成が使えるか、日中の自家消費率を上げられれば回収年数は短くなります。売電単価が動かせない以上、自家消費率をどこまで上げられるかが最大の変数です。
導入して得しやすい家庭・慎重に判断したい家庭
得しやすい条件
- 日中に在宅している(在宅勤務、小さな子どもや高齢の家族がいる)
- エコキュートや食洗機、EV充電を昼間に動かせる
- 屋根に十分な面積があり、南寄りで大きな影がない
- 自治体の助成が使える、10年以上住み続ける予定がある
慎重に判断したい条件
- 日中はほぼ不在で、自家消費率を上げにくい
- 屋根の面積が小さい、または大きな影がかかる
- 数年以内に屋根の葺き替えや外壁塗装を予定している(先に屋根工事を済ませれば撤去・再設置の費用を避けられる)
- 数年以内に転居の可能性がある、見積もりが1社だけ
契約前に確認する5ステップ
- 自宅の屋根条件でシミュレーションを出してもらう ── 全国平均ではなく方位・傾斜・影を反映した年間発電量で判断する。
- 複数社から見積もりを取る ── 国民生活センターも、その場で契約せず相見積もりを取ることを勧めている。
- kW単価に分解する ── 総額を「万円/kW」に直せば平均28.9万円/kWと比較できる。
- 長期の維持費を計画に入れる ── パワーコンディショナ交換(20年間で1回、38.4万円程度)と定期点検(1回約3.8万円)を織り込む。
- 保証と契約書面を確認する ── パネル・パワーコンディショナ・施工の保証範囲と年数、法定書面の記載を確かめる。
まとめ
- 2026年度の住宅用FITは1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh。5年目以降は自家消費(27.45円/kWh評価)のほうが価値が高い
- システム費用は2025年設置の新築案件平均28.9万円/kWで直近は上昇傾向。長期ではパワーコンディショナ交換38.4万円程度が効く
- 制度上の想定値で5kWを試算すると回収は16〜17年目。補助金と自家消費率が、回収年数を動かす最大の変数
- 点検商法の相談は2024年度613件と急増中。その場で契約せず複数社の見積もりを比べる
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