2026年の電気料金は、「11月」が分岐点です。 国の電気・ガス料金支援は2026年9月使用分で終わる予定で、値引きのない請求は11月分から始まります。さらに2026年11月1日からは、大手送配電会社の託送料金改定が適用される見込みです。
一方で、「2026年は月◯円上がる」と1つの数字で言い切れる段階ではありません。 託送料金の改定内容は国の審査中で、小売電気事業者の新しい料金単価もまだ出そろっていないからです。この記事では、2026年8月25日時点で公式資料に書かれていることだけを並べ、家計として何を見ておけばいいかを整理します。
【2026年8月25日時点】 国の電気・ガス料金支援の値引き対象は2026年7月使用分〜9月使用分(電気・低圧で1kWhあたり3.5〜4.5円)です。10月使用分以降の継続は公表されていません。出典: 電気・ガス料金支援(経済産業省 資源エネルギー庁)
この記事でわかること
- 2026年11月に重なる2つの変化(支援終了と託送料金改定)の中身
- 燃料費調整単価がどこまで確定していて、どこから未定か
- 2026年5月分から上がった再エネ賦課金の実額
- 電気料金の裏側で増えている容量拠出金の推移
- 電気・ガスの契約勧誘への注意点
2026年11月、電気料金に2つの変化が重なる
まず全体像です。2026年8月25日時点で公式に確認できる予定は、次の2つが同じタイミングで来る、という点に集約されます。
| 時期 | 何が起きるか | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年9月使用分まで | 国の電気・ガス料金支援で低圧3.5〜4.5円/kWhの値引き | 資源エネルギー庁 |
| 2026年10月使用分〜 | 支援の継続は未公表 | 同上 |
| 2026年11月1日 | 託送料金の改定が適用予定(国の審査中) | 東京電力パワーグリッド |
「支援が消える」と「送配電のコストが上がる」が続けて来るため、11月以降の請求書は、使用量が同じでも金額が変わる可能性が高い、というのが現時点の読み方です。
ただし、この2つが同じ請求書に同時に載るわけではありません。値引きが消えるのは10月使用分(東京電力エナジーパートナーの表記では11月分の請求)から、託送料金の改定が効いてくるのは2026年11月1日以降の使用分からで、家庭の請求書に表れる時期はさらに後ろにずれます。しかも託送料金は金額が確定していないため、断定はできません。
国の電気・ガス料金支援は「9月使用分」で終わる
値引き単価と期間
国の電気・ガス料金支援は、2026年5月25日の総理会見で示された方針にもとづき、使用量が多くなる7月から9月に限って実施されているものです。資源エネルギー庁の特設サイトでは、値引き単価が次のように公表されています。
| 対象 | 2026年7月・9月使用分 | 2026年8月使用分 |
|---|---|---|
| 電気(低圧・一般家庭) | 3.5円/kWh | 4.5円/kWh |
| 電気(高圧・企業) | 1.8円/kWh | 2.3円/kWh |
| 都市ガス | 14.0円/立方メートル | 18.0円/立方メートル |
同サイトは「電気・ガスを利用する立場の方の申請は不要です」と明記しており、契約中の小売事業者が毎月の料金から自動的に値引きします。LPガス(プロパンガス)は対象外です。
請求書の「◯月分」とのズレに注意
ここでつまずきやすいのが、使用月と請求月のズレです。東京電力エナジーパートナーの公表資料では「2026年8月分(2026年7月使用分)」と明記されており、同社の場合、値引きは請求月ベースで2026年8月分・9月分・10月分に反映されます(出典: 2026年9月分電気料金の燃料費調整等について)。
つまり、値引きが入った最後の請求は2026年10月分です。11月分の請求(10月使用分)から、この値引きはなくなる見込みです。検針日と請求サイクルは小売事業者ごとに違うので、他社と契約している場合は自社のお知らせで対応月を確認してください。
金額でどれくらいか
同社の平均モデル(従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月、再エネ賦課金と消費税等相当額を含む)では、支援の有無で次のように変わると公表されています。
| 請求月 | 支援反映前 | 支援反映後 |
|---|---|---|
| 2026年7月分 | 8,823円 | (支援対象外) |
| 2026年8月分 | 8,933円 | 8,023円 |
| 2026年9月分 | 9,013円 | 7,843円 |
出典: 東京電力エナジーパートナー 2026年8月分、同 2026年9月分
同社は8月分について「910円(使用電力量260kWh×3.50円/kWh)の値引きを含みます」と注記しています。裏を返せば、支援が終われば260kWhの家庭で月910円、400kWh使う家庭で月1,400円だけ請求額が増える計算です(最後の対象月と同じ3.50円/kWhで単純計算した場合)。
託送料金の改定が2026年11月1日に予定されている
送配電8社が値上げを申請している
託送料金は、発電所から自宅までの送配電ネットワークを使う料金で、電気料金の中に含まれています。2023年度からは「レベニューキャップ制度」のもと、5年ごとの規制期間で収入上限が決まる仕組みです。
一般社団法人送配電網協議会は、一般送配電事業者8社が2026年7月10日に「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認申請を経済産業大臣に行ったと公表しています。理由として「昨今の物価や労務費、金利の上昇により、託送料金制度(レベニューキャップ制度)における第一規制期間(2023〜2027年度)の当初の想定を上回る費用の増加が生じています」と説明されています(出典: 送配電網協議会)。
東京電力パワーグリッドの申請内容は次のとおりです。
- 申請した「収入の見通し」: 7兆6,062億円(第1規制期間2023〜2027年度の5年合計)
- 現行の「収入の見通し」との差: 2,516億円の増額
- 新たな託送料金の適用: 2026年11月1日を予定
出典: 東京電力パワーグリッド「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認申請について(PDF)
同社は「今後、国による審査等を経て、経済産業大臣による承認を得たうえで、これに基づき託送料金等を設定し、託送供給等約款の変更届出を行う予定」としています。つまりまだ確定ではありません。
小売電気事業者は「反映する」と表明し始めている
託送料金が上がれば、小売電気事業者の仕入コストが上がります。九州電力は2026年8月3日、「2026年11月1日に、一般送配電事業者が定める託送料金の見直しが予定されています。これに伴い、当社はすべてのお客さまを対象に、同日から託送料金の見直しを電気料金へ反映します」と公表しました。具体的な電気料金単価については、2026年9月を目途に知らせるとしています(出典: 九州電力プレスリリース)。
2026年8月25日時点で、大手電力の多くはまだ新単価を公表していません。2026年9月から10月にかけて各社の発表が続く見込みなので、契約中の電力会社のお知らせページを確認しておくのが実務的です。
燃料価格は2026年春から上がっている
燃料費調整の仕組みとタイムラグ
電気料金には毎月変動する「燃料費調整額」が含まれます。東京電力エナジーパートナーの説明によれば、原油・LNG・石炭の貿易統計価格の3か月平均から「平均燃料価格」を算定し、その2か月後の電気料金に反映する仕組みです。
規制料金(従量電灯Bなど、特定小売供給約款にもとづくプラン)には基準があります。
- 基準燃料価格: 86,100円/kl
- 上限: 129,200円/kl(基準燃料価格の1.5倍、100円未満四捨五入)。これを超えた分は調整しない
一方、自由料金(スタンダードプランや電化上手など、電気需給約款[低圧]にもとづくプラン)には上限がありません。同社は、燃料価格が急激に上昇した場合には自由料金プランの燃料費調整額のほうが高くなる可能性があると案内しています(出典: 燃料費調整制度とは(東京電力エナジーパートナー))。
燃料価格の実際の動き
同社が公表した平均燃料価格は、2026年3〜5月の実績が49,100円/kl、2026年4〜6月の実績が50,800円/klです。基準の86,100円/klを下回っているため、燃料費調整単価は現在マイナス(差し引き)で推移しています。
ただし内訳を見ると、貿易統計の原油価格は1バレルあたり2026年3月が68.9ドル、6月が117.2ドルと、3か月で7割近く上がりました。3か月平均で見ても、2026年3〜5月の86.7ドルから4〜6月は112.8ドルへと3割上がっています(出典: 2026年8月分、2026年9月分)。
その結果、関東エリア低圧の燃料費調整単価(支援反映前)は、2026年7月分の▲7円19銭から、8月分▲6円77銭、9月分▲6円46銭へと、マイナス幅が縮んでいます。差し引かれる額が減るということは、実質的な値上がりです。9月分は7月分より0.73円/kWh高く、260kWhなら月およそ190円の差になります。
資源エネルギー庁の特設サイトも、支援を決めた背景として「その後は、燃料輸入価格の上昇が電気料金に反映されていくと見込んでおり」と説明しています。2026年7月以降の燃料価格は、これから先の請求に順次反映されます。
再エネ賦課金と容量拠出金も上がっている
再エネ賦課金は2026年5月分から4.18円/kWh
再生可能エネルギー発電促進賦課金は、国が全国一律に定める単価で、年度ではなく毎年5月分から翌年4月分までが適用期間です。
| 適用期間 | 単価(税込) |
|---|---|
| 2026年5月分〜2027年4月分 | 4.18円/kWh |
| 参考: 2026年4月分 | 3.98円/kWh |
同社の平均モデル(260kWh/月)では、この期間の賦課金は月1,086円とされています(出典: 東京電力エナジーパートナー 2026年9月分電気料金の燃料費調整等について 注記6。260kWh×4.18円/kWhの円未満切り捨て)。単価の上げ幅0.20円/kWhを使用量にかけると、260kWhで月52円、400kWhで月80円の増加です。制度の中身は再エネ賦課金のしくみで詳しく解説しています。
容量拠出金は2026年度・2027年度と増える
容量拠出金は、将来の供給力(kW)を確保する「容量市場」の費用として、小売電気事業者と一般送配電事業者が負担するものです。家庭の請求書に単独の項目として載るとは限らず、電力量料金などに含まれる形で転嫁されます。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表しているメインオークションの約定価格(東京エリア)と、小売電気事業者が負担する容量拠出金の試算(全国計)は次のとおりです。
| 対象実需給年度 | 約定価格(東京エリア) | 小売電気事業者の負担(試算・全国計) |
|---|---|---|
| 2024年度 | 14,137円/kW | — |
| 2025年度 | 3,495円/kW | 4,713.4億円 |
| 2026年度 | 5,834円/kW | 7,812.9億円 |
| 2027年度 | 9,555円/kW | 11,986.3億円 |
出典: OCCTO オークション情報・結果、約定結果(対象実需給年度:2026年度)PDF、同2025年度、同2027年度
2026年度は全国の約定総容量が1億6,271万kW、経過措置を踏まえた約定総額が8,504億円でした。試算は一般送配電事業者の負担割合などの前提が年度で異なる(2026年度はH3需要の7%相当、2027年度は8%相当)ため金額の単純比較には注意が必要ですが、2025年度から2027年度にかけて負担が増える方向であることは公式資料から読み取れます。
なお、この費用が家庭の1kWhあたり何円になるかは、小売事業者ごとの料金設計によって変わります。公的に一律の転嫁単価は示されていませんので、「容量拠出金で月◯円上がる」という説明を受けたら、その根拠を確認してください。
値上げに備えて家庭でできること
まず請求書の内訳を確認する
対策の前に、自分の請求書の構成を把握しておくのが近道です。確認したいのは次の4点です。
- 契約プランが規制料金か自由料金か(燃料費調整の上限の有無が変わります)
- 燃料費調整額がプラスかマイナスか、前月からいくら動いたか
- 再エネ賦課金の額(使用量×4.18円が目安)
- 国の値引きが反映されているか(2026年10月分の請求まで)
使う時間帯と使用量を動かす
料金単価そのものは家庭側でコントロールできませんが、使用量と使う時間帯は動かせます。時間帯別プランを使っている場合は、単価の安い時間に洗濯や給湯を寄せるだけでも差が出ます。考え方はピークシフトで電気代を下げる方法にまとめました。
より踏み込んだ値上げ対策の全体像は電気代値上げへの対策を参照してください。
補助金は「今どうなっているか」を毎回確認する
太陽光や蓄電池を検討する場合、補助金の状況は短期間で変わります。国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。次回公募は未公表のため、2026年8月時点で新規申請はできません(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。詳しくは国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸で、2026年10月1日以降はSII令和8年度登録品のみが対象です(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。
電気・ガスの契約勧誘に注意する
料金の話題が増える時期こそ、契約先の切り替えを勧める訪問や電話には落ち着いて対応したいところです。国民生活センターは2026年2月10日、「電気・ガスの契約トラブルにご注意!−ウォーターサーバーのレンタルなど、電気・ガス以外のサービスを勧誘されるケースも−」を公表しています。「訪問してきた事業者からアパート全体の電力プランが変更になると言われて契約したが電力プランの変更は事実ではなかった」「電力会社の代理店を名乗る事業者から電気の切替やウォーターサーバーのレンタルなどを長時間勧められ契約した」といった相談事例が挙げられ、同センターは「契約先の事業者名や契約条件などをしっかりと確認し、料金プラン等の説明を受けたうえで契約の要否を検討しましょう」「契約の意思がない場合は、はっきりと断り、検針票の記載情報は慎重に取り扱いましょう」とアドバイスしています(出典: 国民生活センター)。
検針票には契約種別や供給地点特定番号が載っています。玄関先で見せる前に、相手が誰かを確認してください。訪問販売の手口は訪問販売への対処法でも整理しています。
まとめ
- 2026年の電気料金は11月が分岐点。国の電気・ガス料金支援は9月使用分(10月請求分)までで、10月使用分以降の継続は2026年8月25日時点で未公表
- 同じ2026年11月1日に託送料金の改定が適用予定。一般送配電事業者8社が2026年7月10日に変更承認申請を行い、国の審査中。九州電力は同日から電気料金へ反映すると公表
- 再エネ賦課金は2026年5月分から4.18円/kWh(前月まで3.98円)。容量拠出金の原資となる容量市場の約定価格も2026年度・2027年度と上昇している
- 一方で値上げ幅を1つの数字で言い切れる段階ではない。各社の新単価は2026年9月以降に順次公表される見込みなので、契約中の電力会社のお知らせを確認するのが確実