電気料金の今後の見通しについて、数字で語れるのは「すでに公的資料に書かれているもの」だけです。 2026年8月時点で確定しているのは、再エネ賦課金が2026年度に1kWhあたり4.18円へ上がったこと、政府の電気・ガス料金支援が2026年9月使用分までしか公表されていないこと、そしてカーボンプライシングの開始年度の3つです。
逆に、2027年以降の家庭の電気料金そのものを予測した政府の数値は存在しません。 この記事では、確定している数字と、まだ決まっていない部分を切り分けて整理します。
【2026年8月25日時点】 2026年度の再エネ賦課金は1kWhあたり4.18円(2025年度は3.98円)。政府の電気・ガス料金支援は2026年7月〜9月使用分のみが公表済みで、10月使用分以降は未公表です。出典: 経済産業省「2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」、資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」
この記事でわかること
- 2026年度に確定した再エネ賦課金の単価と、家庭の負担額
- 政府の電気・ガス料金支援がいつまで公表されているか
- 電気料金が毎月動く仕組み(燃料費調整制度)と、その上限
- カーボンプライシングの開始年度と、まだ決まっていないこと
- 2040年に向けた電源構成と発電コストの公的な見通し
2026年8月時点で数字が確定している要因
再エネ賦課金は4.18円/kWhに上がった
再生可能エネルギー発電促進賦課金は、FIT・FIP制度で買い取った再エネの費用を電気料金に上乗せする仕組みで、単価は毎年度、経済産業大臣が設定します。
経済産業省は2026年度の賦課金単価を1kWhあたり4.18円と公表しました。1か月の電力使用量が400kWhの需要家モデル(総務省家計調査に基づく一般的な世帯の使用量)では、月額1,672円、年額20,064円の負担になります。この単価は2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます(出典: 経済産業省 2026年3月19日公表)。
前年度と比べると次のとおりです。
| 年度 | 賦課金単価 | 400kWhモデルの月額 | 適用期間 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 3.98円/kWh | 1,592円 | 2025年5月検針分〜2026年4月検針分 |
| 2026年度 | 4.18円/kWh | 1,672円 | 2026年5月検針分〜2027年4月検針分 |
出典: 経済産業省 2025年度の設定(2025年3月21日公表)、同 2026年度の設定
差は1kWhあたり0.20円、400kWhモデルで月80円です。賦課金の仕組みそのものは再エネ賦課金とは何かで詳しく解説しています。
政府の料金支援は「9月使用分まで」しか公表されていない
2026年は、夏の電気・ガス料金に政府の値引き支援が入っています。資源エネルギー庁によれば、令和8年5月25日の内閣総理大臣の記者会見を受けて、使用量が増える7月から9月までの支援が決まりました。単価は以下のとおりです。
| 使用月 | 電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス |
|---|---|---|---|
| 2026年7月使用分 | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | 14.0円/㎥ |
| 2026年8月使用分 | 4.5円/kWh | 2.3円/kWh | 18.0円/㎥ |
| 2026年9月使用分 | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | 14.0円/㎥ |
出典: 資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」、支援の概要(PDF)
一般家庭の契約はほぼすべて低圧です。資源エネルギー庁の資料は令和8年度一般会計予備費5,135億円を措置し、「標準的な家庭において、3ヶ月5,000円程度の負担引下げ効果を実現」するとしています。
ここで押さえておきたいのは、10月使用分以降の扱いが2026年8月25日時点で公表されていないことです。支援が継続されなければ、7月・9月使用分の3.5円/kWhに相当する分だけ請求額が戻ります。400kWhを単純に掛ければ月1,400円です。「秋から電気代が上がった」と感じる原因になり得るのはこの部分で、電力会社が値上げしたわけではありません。
2026年度の売電単価も決まっている
同じ経済産業省の公表資料で、2026年度以降の住宅用太陽光(10kW未満)の買取価格も設定されています。屋根設置の導入を加速するため2025年度下半期から導入された初期投資支援スキームにより、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。
買う電気の単価(電力量料金+燃料費調整額+賦課金)と、売る電気の単価が近づくほど、発電した電気を売るより自宅で使うほうが有利になります。この考え方は自家消費とFIT売電の比較にまとめています。
電気料金が毎月動く仕組み——燃料費調整制度
「今後の見通し」を考えるうえで、賦課金よりも振れ幅が大きいのが燃料費調整額です。
資源エネルギー庁の説明によれば、燃料費調整制度は原油・LNG・石炭の燃料価格(為替を反映した円建ての日本着ベースの価格)の変動を、毎月の電気料金に自動で反映する仕組みです。具体的には、料金改定申請の直近3か月の貿易統計価格に基づく「基準燃料価格」と、各月の3〜5か月前の貿易統計価格に基づく「実績燃料価格」の差を燃料費調整単価に換算して反映します。大手電力の規制料金では、反映できる範囲に基準燃料価格の1.5倍という上限が設定されています(出典: 資源エネルギー庁 燃料費調整制度について)。
ここから読み取れることは2つあります。
- 今日の燃料価格や為替は、3〜5か月後の請求書に効いてくる。ニュースで原油高や円安が報じられても、請求額に出るのは数か月後です
- 燃料価格は上下どちらにも動く。資源エネルギー庁も、燃料輸入価格の高騰で2022年度は電気料金が上昇したが、その後価格が低下したことなどにより2023年度は2022年度より低い水準になった、と整理しています(出典: 資源エネルギー庁 エネルギー動向 電気料金の推移)
つまり、燃料費調整額の先行きは国際市況と為替次第で、公的機関も将来値を示していません。「電気料金は今後◯年で◯%上がる」と数字を断定する説明を見たら、その前提を確認するのが安全です。
2026年度から段階的に始まるカーボンプライシング
もう一つ、制度として日程が決まっているのがカーボンプライシングです。GX推進法に基づく3つの仕組みは、開始年度が次のように公表されています。
| 制度 | 開始 | 直接の対象者 |
|---|---|---|
| 排出量取引制度(GX-ETS) | 2026年度 | 二酸化炭素の直接排出量が前年度までの3年度平均で10万トン以上の事業者 |
| 化石燃料賦課金 | 2028年度 | 化石燃料の輸入事業者等 |
| 排出枠のオークション(特定事業者負担金) | 2033年度 | 発電事業者 |
出典: 経済産業省 排出量取引制度、GX推進機構 排出量取引制度・化石燃料賦課金
いずれも家庭が直接納める制度ではありません。そして重要なのは、これらが家庭の電気料金をいくら押し上げるかを示した公的な試算は、2026年8月時点で公表されていないことです。賦課金の単価も、オークションの落札価格も、まだ決まっていません。
したがって、「2028年から電気代が月◯円上がる」という具体額を伴う説明を見かけた場合は、その数字がどの資料に基づくのかを確認してください。制度の開始年度は公表されていますが、家庭負担額は公表されていない、というのが正確な現状です。
2040年に向けた電源構成と発電コストの公的見通し
料金そのものの予測はなくても、料金の背景にある構造については政府の見通しがあります。
2025年2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、2040年度のエネルギー需給の見通しを次のように示しています。
| 項目 | 2023年度(速報値) | 2040年度(見通し) |
|---|---|---|
| 発電電力量 | 9,854億kWh | 1.1〜1.2兆kWh程度 |
| 再エネ | 22.9% | 4〜5割程度 |
| 原子力 | 8.5% | 2割程度 |
| 火力 | 68.6% | 3〜4割程度 |
2023年度の火力の内訳はLNGが32.9%、石炭が28.3%、石油等が7.4%です(出典: 資源エネルギー庁 エネルギー動向)。発電の7割近くを輸入燃料に頼る構造が、燃料価格と為替を電気料金に直結させている理由です。同計画は、この比率を2040年度に3〜4割程度まで下げる一方、発電電力量そのものは増える見通しを示しています。
発電コストについても、発電コスト検証ワーキンググループが2025年2月6日に取りまとめを公表しています。2040年に発電設備を新設・運転した場合の1kWhあたりコスト(政策経費あり)の試算は次のとおりです。
| 電源 | 2040年の試算値 |
|---|---|
| 太陽光(住宅用) | 7.8〜10.6円/kWh |
| 太陽光(事業用) | 6.9〜8.8円/kWh |
| 原子力 | 12.5円〜 |
| LNG(専焼) | 16.0〜21.0円/kWh |
出典: 資源エネルギー庁 発電コスト検証に関するとりまとめ(令和7年2月6日・PDF)
同じ資料の2023年時点の試算では住宅用太陽光は14.5円/kWhでした。ただしこの試算は発電設備を新設・運転した際のコストを一定の前提で機械的に計算したものであり、家庭が支払う電気料金そのものではありません。資料自身も「試算の前提を変えれば、結果は変わる」と注記しています。
「これから電気代が上がる」という営業トークの読み方
電気料金の見通しは、設備販売の営業で使われやすいテーマです。
国民生活センターは2021年6月3日に「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」を公表しています。PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数は2016年度325件、2017年度553件、2018年度926件、2019年度1,302件、2020年度1,314件と増加傾向にあり、電力会社の関連会社を名乗る事業者に「電気料金が安くなる」と勧誘された、「この値段は今日限り」と急かされた、「安くできるのはあと2件」と急かされた、といった事例が挙げられています。同センターは、メリットだけでなくコストも十分考慮し、その場で契約せずに複数社から見積もりをとって比較検討するようアドバイスしています(出典: 国民生活センター)。
見積もりの場で確認したいのは次の3点です。
- 提示された将来の電気料金はどの公的資料に基づく数字か(前提の年率、燃料価格、為替)
- 補助金を前提にしているなら、その制度が今この瞬間に申請可能か
- 売電単価は2026年度の**24円(1〜4年目)・8.3円(5〜10年目)**で計算されているか
家庭でできる備えと、2026年8月時点の補助金
国の蓄電池補助金は「使えない期間」に入っている
国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まりましたが、2026年5月29日に交付申請額の合計が予算に達したため公募終了しています。当初の公募期間は2026年12月10日までの予定でした。予算規模は関連3事業の合計59.6億円のうち54億円程度です(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電システム導入支援事業)。次回公募は公表されていないため、2026年8月時点で国の補助金を前提にした購入計画は立てられません。詳細は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。
自治体の制度は動いている
東京都の令和8年度「家庭における蓄電池導入促進事業」は、蓄電容量1kWhあたり10万円(助成対象経費が上限)で、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸です。事前申込は令和8年5月29日開始。令和8年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIが令和8年度の登録済製品一覧に登録した機器のみが対象になります(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。都道府県別の状況は東京都の蓄電池補助金2026などを参照してください。
制度に左右されない対策から順に
電気料金の先行きが読めない以上、まず効くのは使用量そのものを減らす対策です。契約プランの見直し、使用量の見える化、断熱の改善は、燃料価格が上がっても下がっても効果が残ります。そのうえで、太陽光や蓄電池のように初期費用が大きい設備は、補助金の公募状況と売電単価を確認したうえで判断するのが順序です。
なお、蓄電池本体の価格はメーカーがオープン価格としていることが多く、公式サイトに記載がないのが一般的です。販売店の見積もりで確認する前提で検討してください。2026年の電気料金全般の動きは2026年の電気料金はどうなるかでも扱っています。
まとめ
- 2026年度の再エネ賦課金は1kWhあたり4.18円(2025年度は3.98円)。400kWhの需要家モデルで月1,672円、適用は2026年5月検針分から2027年4月検針分まで
- 政府の電気・ガス料金支援は2026年7月〜9月使用分のみ公表(低圧で7月・9月3.5円/kWh、8月4.5円/kWh)。10月使用分以降は2026年8月25日時点で未公表
- カーボンプライシングは排出量取引制度が2026年度、化石燃料賦課金が2028年度、排出枠オークションが2033年度に開始予定。ただし家庭の電気料金への転嫁額を示した公的試算はない
- 電気料金そのものの将来予測を政府は公表していない。将来値を根拠にした試算を見せられたら、前提と出典を確認するのが最初の一手