オール電化リフォームの「費用」は、相場表からは決まりません。 エコキュートもIHクッキングヒーターも、メーカーの製品ページに価格が載っていないことが多く、工事費は設置場所と分電盤の状態次第で動くからです。一方で、差し引ける側の金額は国の公式サイトに公表されています。
この記事では、金額が確定している補助金を先に押さえ、そのうえで見積書のどこを見れば総額が読めるのかを、公的資料の記載だけで整理します。
【2026年8月25日時点】 経済産業省の給湯省エネ2026事業は受付中で、公式サイトの予算執行状況は補助金申請額の割合39%(2026年8月25日午前0時時点)です。一方、国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、新規申請はできません。出典: 給湯省エネ2026事業、SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- オール電化リフォームの費用が4つの工事の合計で決まる仕組みと、相場が一律にならない理由
- 2026年8月時点で金額が公表されている補助金(給湯省エネ2026事業・みらいエコ住宅2026事業)の正確な額と期限
- エコキュートの設置場所で後悔しないための公的資料の指摘
- IH化とガス撤去で見落としやすい法令・電気工事の条件
- 契約前に見積書で確認する項目
オール電化リフォームの費用は「4つの工事」の合計
ガス併用住宅をオール電化にする工事は、性質の違う4つのパートに分かれます。見積書もこの単位で読むと比較しやすくなります。
| パート | 主な内容 | 見積書で確認したいこと |
|---|---|---|
| 給湯 | エコキュート(ヒートポンプ給湯機)本体と据付、既存給湯器の撤去 | 型番、タンク容量、寒冷地仕様の要否、基礎工事の有無 |
| 調理 | IHクッキングヒーター本体と据付、既存コンロの撤去 | ビルトインか据置か、天板の加工が必要か |
| 電気側 | 専用回路の新設、分電盤の交換・増設、アース工事 | 専用回路が何回路増えるか、分電盤交換が含まれるか |
| ガス側 | ガスの閉栓、ガス工作物の撤去手続き | どこまでが工事会社の作業で、どこからがガス事業者か |
相場が一律にならない理由
ひとつめは価格の表示方法です。パナソニックの公式ラインアップページは機種と容量が並ぶだけで、本体価格の記載がありません。三菱電機も製品ページ上に価格の表示はなく、価格は別掲の一覧表で案内される形です(出典: パナソニック エコキュート ラインアップ、三菱電機 エコキュート)。本体価格は販売店の見積もりで確認する商材だと考えてください。
ふたつめは、工事費が現地条件に依存することです。貯湯タンクを置くスペースがあるか、基礎を新設するか、分電盤に空きがあるか、既存のガス給湯器がどこに付いているか。この4点だけでも工事量は大きく変わります。ネット上の「◯万円〜」を自宅に当てはめる前に、現地調査を受けるのが早道です。
2026年8月時点で金額が確定している補助金
「費用がいくらか」は見積もり待ちですが、「いくら戻るか」は先に確定できます。
給湯省エネ2026事業(経済産業省)
住宅省エネ2026キャンペーンを構成する4事業のひとつで、高効率給湯器の導入を対象にしています(出典: 住宅省エネ2026キャンペーン)。
| 対象機器 | 基本額 | 性能加算 |
|---|---|---|
| ヒートポンプ給湯機(エコキュート) | 7万円/台 | 3万円/台(要件あり) |
| ハイブリッド給湯機 | 10万円/台 | 2万円/台(要件あり) |
| 家庭用燃料電池(エネファーム) | 17万円/台 | なし |
補助を受けられる台数は戸建住宅で2台まで、共同住宅等で1台まで。着工は2025年11月28日以降、交付申請は遅くとも2026年12月31日までとされています(出典: 給湯省エネ2026事業 事業概要)。
ここで誤解しやすいのが撤去加算です。加算の対象は「電気蓄熱暖房機の撤去 4万円/台(上限2台)」と「電気温水器の撤去 2万円/台(基本額の補助を受ける台数まで)」で、いずれも既存の電気式機器を外す場合の措置として定められています。ガス給湯器からエコキュートに替えるオール電化リフォームは、この加算の対象条件に当てはまりません。なお撤去加算の予算執行状況は19%(2026年8月25日午前0時時点)です(出典: 給湯省エネ2026事業)。
みらいエコ住宅2026事業(国土交通省)
同じキャンペーンの国土交通省側の事業で、「①開口部の断熱改修」と「②躯体(床・壁・天井)の断熱改修」を組み合わせた要件化工事が前提です。躯体だけ、窓だけでは要件を満たしません。原則として平成28年12月31日以前に新築された住宅が対象です。
| 住宅の新築時期 | 義務基準に相当する工事(①開口部+②躯体+③特定エコ住宅設備) | 次世代省エネ基準に相当する工事(①開口部+②躯体) |
|---|---|---|
| 〜平成3年 | 100万円/戸 | 50万円/戸 |
| 平成4年〜28年 | 80万円/戸 | 40万円/戸 |
上限額が高いほうの列に「③特定エコ住宅設備の設置」が入っている点が、オール電化リフォームでは効いてきます。この③に高効率給湯器と高効率エアコンが含まれるため、断熱改修とエコキュートを同じ工事でまとめると、上限の高い側の区分に乗ります。補助対象メニューは全部で9項目あり、③のほかに④エコ住宅設備、⑤子育て対応改修、⑥防災性向上改修、⑦バリアフリー改修などが並びます。工事着手は2025年11月28日〜2026年12月31日、交付申請予約は2026年11月16日まで、交付申請は2026年12月31日までです。リフォームの補助金申請額の割合は4%(2026年8月25日午前0時時点)と、給湯省エネ側より余裕があります(出典: みらいエコ住宅2026事業 リフォーム、執行状況は同事業トップページ)。
断熱工事を伴わないオール電化単体のリフォームでは使えません。逆に窓や壁の断熱を同時に考えているなら、給湯器を給湯省エネ側で申請するか、みらいエコ住宅側で申請するかという選択が生まれます。同じ設備をどちらで出すのが有利かは、登録事業者に試算してもらうのが確実です。
自治体制度と併用の考え方
住宅省エネ2026キャンペーンの公式サイトには「掲載している支援制度であっても、国費が充当されている制度は、本キャンペーンの各事業と併用できません」と明記されています(出典: 住宅省エネ2026キャンペーン)。自治体の制度を重ねたい場合は、その財源が国費かどうかを自治体に確認する必要があります。
蓄電池や太陽光を同時に検討している場合は、設備ごとに扱いが分かれます。蓄電池だけを対象にした国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、次回公募は未公表です(詳細は国のDR補助金の終了と次回の見通し)。ただし蓄電池そのものは、みらいエコ住宅2026事業の「④エコ住宅設備の設置(太陽熱利用システム、節水型トイレ、高断熱浴槽、節湯水栓、蓄電池、第一種換気設備)」に含まれており、要件化工事とセットで実施するなら国の補助対象になります。一方、同じ事業は対象外の工事として「×太陽光発電設備の設置工事」を明記しているため、太陽光パネルの設置費そのものはこの事業では出ません(出典: みらいエコ住宅2026事業 リフォーム)。
自治体側では、東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業が10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸で、2026年10月1日以降はSII令和8年度登録品のみが対象になります(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業、解説は東京都の蓄電池補助金2026)。
エコキュートは「どこに置くか」を費用より先に決める
エコキュートは屋外に設置します。後述する消費者安全調査委員会の報告書は、この機器について「深夜電力を利用するため、一般的には午後11時から午前7時までの時間帯に稼動する」と記述しています。家族が寝ている時間に、家の外で機械が動く設備だということです(実際の運転時間帯は契約する電気料金プランの時間帯区分によって変わります)。
消費者安全調査委員会は2014年12月19日、「家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動により不眠等の健康症状が発生したとの申出事案」について事故等原因調査報告書を公表しました。調査対象となった19事案について、報告書概要はこう記載しています。
ヒートポンプ給湯機の設置場所は、発症者の寝室から5m以下が19事案中13事案であった。寝室までの距離が短い、窓等の開口部に近い等、「騒音等防止を考えた家庭用ヒートポンプ給湯機の据付けガイドブック」に沿って設置されているとは言い難いものが多くみられた。 (出典: 消費者安全調査委員会 事故等原因調査報告書【概要】、配布元: 消費者庁 報告書ページ)
同報告書が引用している日本冷凍空調工業会の据付けガイドブックは、据付け場所の選定ポイントとして次の3点を挙げています。
- お客様および隣接するご近所様の寝室の傍は避ける
- ヒートポンプユニットの近辺(上方向含む)に窓や床下通風口等の音の侵入口があれば極力距離をとる
- ヒートポンプユニットの周囲に極力スペースを設け、壁や塀で音が反射しないように工夫する
問題は、このガイドブックが施工側に十分行き渡っていないと報告書が指摘している点です。認知率のアンケート調査では「電器店及び電気工事業者では約2割、工務店及びハウスメーカーでは約3割」という結果が出ており、報告書は「普及が不十分である状況が判明した」と述べています。つまり発注する側から設置場所を話題にしないと、配管の都合だけで位置が決まってしまう可能性があります。現地調査のときに、自宅と隣家それぞれの寝室・窓の位置を図面上で共有しておきましょう。
タンク容量と設置スペースは先に絞れる
容量のラインアップはメーカー公式で確認できます。パナソニックは195L・300L・370L・460L・560Lを、三菱電機は180L・300L・370L・430L・460L・550Lを公開しており、いずれも寒冷地向けの機種と、狭いスペース向けのコンパクト機種を用意しています(出典: パナソニック エコキュート ラインアップ、三菱電機 エコキュート)。
置ける寸法から逆算すると機種が絞れ、見積もりの比較もしやすくなります。容量の選び方はエコキュートの選び方ガイドにまとめています。
IH化とガス撤去で見落としやすい条件
電気側は「専用回路」が前提
日本電機工業会は、IHクッキングヒーターの設置について「定格容量以上の専用回路と漏電遮断機の設置が必要」であり、感電防止のためアース接続が必要だと案内しています(出典: 日本電機工業会 IHクッキングヒーターの安全情報)。
エコキュートも専用の配線を要するため、分電盤に空き回路がなければ分電盤側の工事が発生します。見積書に「専用回路新設」「分電盤交換」の行があるか、何回路分かを確認してください。ここが「一式」でまとめられていると、あとから追加費用の相談になりがちです。
ガス側は自分で外せない
同工業会は、ガス機器からIHクッキングヒーターへ付け替える場合の注意として「ガス事業者に連絡しないでガス工作物を無断で撤去することは法令により規制されています」と明記しています。あわせて「IHクッキングヒーターとガスオーブンの組み合わせはできません」とも記載されており、各社指定の電気オーブンレンジと組み合わせる必要があるとしています(出典: 日本電機工業会 ガス機器からIHクッキングヒーターへ付け替える場合のご注意事項)。
ガスオーブンを使っている家庭では、コンロだけ替えて終わりにならないということです。既存のガス機器を一覧にして、どれが残り、どれが不要になるかを工事前に確定させておきましょう。
IHの安全面も事実で押さえる
IHは炎が出ませんが、油の発火リスクがなくなるわけではありません。日本電機工業会は「油は炎がなくても発火の恐れがあります」として、本体のそばを離れないこと、メーカー指定の油量を守ること、取扱説明書に記載された鍋を使うことを挙げています。汚れ防止カバーの使用も温度検知機能を妨げるため危険だとしています。安全性を理由にオール電化を選ぶ場合でも、この前提は家族で共有しておきましょう。
回収年数は「電気料金プラン」と「売電単価」で変わる
オール電化にすると、契約する電気料金プランは夜間の単価が安い時間帯別プランに切り替えるのが一般的です。ただし単価も時間帯区分も電力会社とプランによって異なるため、現在の契約と切替後のプランを、契約先の電力会社の公式サイトで並べて確認する以外に正確な方法はありません。ガス代がゼロになる代わりに電気代が増える変化なので、光熱費の合計で比べます。
太陽光発電を併設する場合は、売電単価も判断材料になります。2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。売るより自分で使うほうが有利な水準に寄っており、給湯を電気にまとめて日中の発電を自家消費に回す設計は、この単価のもとでは合理性があります。
一方で「年間◯万円削減」「◯年で回収」といった試算は、家族人数、給湯量、住宅の断熱性能、ガスの種別(都市ガスかプロパンか)、選ぶ料金プランで結果が大きく動きます。業者から提示されたシミュレーションは、前提条件(想定使用量・想定単価・想定日射量)が書かれているかどうかで信頼度を判断してください。前提が書かれていない試算は比較材料になりません。自分で条件を置いて考える手順はオール電化の費用シミュレーションで解説しています。
見積もりの取り方と契約前チェックリスト
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターは、リフォーム見積書のセルフチェックとして次のような考え方を示しています。見積書は「複数の事業者からとりましょう」「見積書の比較表をつくることが有効です」、工事内容は「数量は正確に積算されていますか?」「記載漏れ等がないか確認しましょう」、契約前には「追加工事が発生した場合について事前に打ち合わせておきましょう」、そして「契約時には曖昧な部分を残さないことが基本です」。訪問販売の場合は契約から一定期間内であればクーリング・オフができるとも案内されています(出典: 住宅リフォーム・紛争処理支援センター リフォーム見積書セルフチェックのポイント)。
オール電化リフォーム特有の項目を加えると、確認したいのは次の点です。
- エコキュートの型番とタンク容量、寒冷地仕様か一般地仕様か
- 設置予定位置が図面に落ちているか。自宅と隣家の寝室・窓との位置関係を確認したか
- 基礎工事、既存給湯器の撤去・処分が見積書に明記されているか
- 専用回路の新設本数と、分電盤の交換・増設が含まれるか
- IHのビルトイン加工(天板やキャビネットの改造)が別途になっていないか
- ガスの閉栓とガス工作物の撤去について、誰がガス事業者に連絡するか
- 補助金の申請主体(登録事業者か施主か)と、着工前に必要な手続きの有無
- 補助金が交付されなかった場合の金額の扱いが契約書に書かれているか
- 機器保証と工事保証の年数と対象範囲
見積書そのものの読み方は見積書のチェックポイントで詳しく扱っています。
まとめ
- オール電化リフォームの費用は、機器価格がメーカー公式に非掲載で工事費も現地条件次第のため、相場表では確定しない。確定するのは補助金の側
- 2026年8月25日時点で受付中なのは給湯省エネ2026事業(エコキュート7万円/台、性能加算3万円/台、戸建2台まで、申請額の割合39%)とみらいエコ住宅2026事業(断熱改修が必須、リフォーム上限40万〜100万円/戸、同4%)。国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日で公募終了
- エコキュートは深夜に屋外で稼働する。消費者安全調査委員会の報告書は19事案中13事案で寝室から5m以下に設置されていたと指摘しており、設置場所は費用より先に決める
- IHは専用回路と漏電遮断機、アースが前提。ガス工作物の無断撤去は法令で規制されているため、ガス事業者への連絡が欠かせない