オール電化住宅に太陽光発電を足すかどうかは、「いくらで売れるか」ではなく「どれだけ自分で使えるか」で決まります。 2026年度の住宅用FIT(10kW未満)の売電単価は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。買う電気の単価がこれを上回るなら、発電した電気は売るより家で使ったほうが価値が高い、という単純な話に帰着します。
そしてオール電化住宅は、給湯・調理・冷暖房まで電気でまかなうぶん「昼間に使い切れる量」が多い。この記事では販売店のシミュレーションではなく、公的資料とメーカー公式仕様に書いてあることだけを並べます。
【2026年8月25日時点】 国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。次回公募は未公表です。一方、給湯省エネ2026事業(エコキュート等)は継続中で、「予算に対する補助金申請額の割合(概算値)」が公式サイトのトップページに掲載されています。この数字は毎日更新されるため、検討時は公式サイトで最新値を確認してください(予算上限に達し次第終了)。出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業、給湯省エネ2026事業
この記事でわかること
- 売電単価が下がるいま、オール電化 × 太陽光発電の価値がどこから出るのか
- 太陽光の年間発電量の公的な目安(1kWあたり1,183kWh/kW/年)と容量の考え方
- エコキュートの昼間沸き上げ機能(ソーラーチャージ・おひさまエコキュート)の公式仕様と注意書き
- 2026年8月時点で使える補助金と、使えない補助金の切り分け
- 蓄電池を足すかの判断順序と、見積もりで確認すべき項目
オール電化と太陽光発電が噛み合うのは「売電」ではなく「自家消費」
2026年度の売電単価は、10年間ずっと同じではない
2026年度の住宅用FIT(10kW未満)の調達価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh。前半に厚く後半で下がる設計で、5年目以降に売った電気は1kWhあたり8.3円にしかなりません。
一方、発電した電気を家で使えば、その1kWhは「買わずに済んだ電気」として購入単価ぶんの価値になります。購入単価が8.3円を下回る家庭はまず考えられないので、5年目以降は1kWhあたりの価値で自家消費が売電を上回るという構造です。ただしこれは1kWh単位の比較であって、設備の総額を回収できるかどうかは別問題です。回収可否は容量・屋根条件・見積金額しだいなので、本記事では踏み込みません。
太陽光発電協会(JPEA)も、買取期間が終了した住宅に向けたページで「売電より自宅で使う方が経済メリットが出る場合があります」とし、エアコン・洗濯・掃除を発電している時間帯に寄せること、エコキュートのある家では太陽光でつくった電気でお湯を沸かすことを選択肢として挙げています(出典: JPEA 買取期間が終了する方へ)。あくまで「出る場合がある」という書き方で、無条件に得だとは書かれていない点は押さえておいてください。
オール電化住宅は「昼に使い切れる量」が多い
自家消費を増やすには、発電している時間帯に電気を使う必要があります。オール電化住宅が有利なのは、給湯・調理・冷暖房がすべて電気で、日中に回せる負荷の選択肢が単純に多いからです。
なかでも決定的なのが給湯です。エコキュートは1日分の湯量をまとめて沸かす機器で、沸き上げの時間帯を設定で動かせる数少ない大型負荷です。この沸き上げを夜間から昼間に寄せられるかどうかが、オール電化 × 太陽光発電の成否をかなりの部分で決めます。
年間発電量の目安は「1kWあたり1,183kWh」
容量を考える前提として、発電量の公的な目安を押さえておきます。JPEAは年間発電電力量を1kWシステムあたり1,183kWh/kW/年としており、注釈で「経産省 調達価格等算出委員会の2019年度意見書により設定利用率13.5%として、年間発電電力(1kWシステムあたり)1,183kWh/kW/年を算出」と根拠を明示しています(出典: JPEA 住宅用太陽光発電システムのメリット)。
この目安をそのまま掛け算すると、次のようになります。
| 太陽光の容量 | 年間発電量の目安(参考値) |
|---|---|
| 3.0kW | 約3,500kWh |
| 4.0kW | 約4,700kWh |
| 5.0kW | 約5,900kWh |
| 6.0kW | 約7,100kWh |
JPEAの目安値を単純に掛けた参考値です。実際の発電量は地域の日射量、屋根の方位と傾斜、周囲の影、パネルの温度上昇で上下します。見積もり時は、業者のシミュレーションの前提(日射量データの出典、想定する損失率)を聞いておくと比較しやすくなります。
エコキュートを「昼に沸かせるか」が最大の分岐点
パナソニックの「ソーラーチャージ」
パナソニックのエコキュートには、太陽光発電の余剰電力を自家消費してお湯を沸かす「ソーラーチャージ」機能があります。仕組みは公式に「夜間の沸き上げ量を減らして、翌日の昼間に分散して沸き上げます」と説明されており、昼間に沸き上げることでエネルギーロスが削減されるという説明も添えられています。
対応するのはJX、JP、N、J、E、S、W、H、C、FP、F、LSシリーズのソーラーチャージ搭載機種で、太陽光発電のメーカーは問いません。設定方法は、日射量予報と設定値から自動判断するアプリ(スマートソーラーチャージ)、経済効果を判定してから自動実行するAiSEG3(HEMS)のAIソーラーチャージPlus、リモコンでの手動設定の3通りです(出典: パナソニック エコキュート ソーラーチャージ)。
同じページには、見落とすと損をする注意書きも並んでいます。
- 「太陽光発電システムを設置していないご家庭で設定すると、電気料金が増えます」
- 「実際の日射量が前日の18時時点の日射量予報と異なった場合、買電する場合があります」
- 「年間を通して昼間消費電力量比率は50%以下となります」
つまりこの機能は太陽光とセットで初めて成立し、湯沸かしのすべてを昼に移すわけでもないということです。「昼に沸かすから電気代がかからない」という説明を受けたら、この注記と突き合わせてください。
「おひさまエコキュート」は別カテゴリの機器
名前が似ていて中身が違うのが「おひさまエコキュート」です。これは昼間沸上げ形自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機の愛称で、昼間主体の運転設計になっている機器そのものを指します。
パナソニックの公式説明では、初期設定は9時から16時の沸き上げで、8時から17時の間で4時間以上の範囲に変更できます。ただし「太陽光パネルの設置条件によっては、発電量が多い時間でも沸き上げしないことがあります」との注記があり、削減効果は気象条件やパネルの設置状況で変わるとされています(出典: パナソニック おひさまエコキュート)。
三菱電機も同名の製品について「主に昼間にわき上げを行うことで太陽光発電の余剰電力を有効活用し、自家消費を促進します」と説明しています(出典: 三菱電機 おひさまエコキュート)。既設のエコキュートにソーラーチャージ機能があるのか、昼間沸上げ形の機器へ買い替えるのかは別の話なので、見積もりでは型番レベルで確認しましょう。
エコキュート単体の電気代の考え方はエコキュートの電気代は月いくら?節約のコツにまとめています。
国の補助制度そのものが「昼シフト」を要件にしている
この流れを裏づけるのが、国の給湯省エネ2026事業の要件です。ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の補助対象は、2025年度目標基準値以上の性能を備えたうえで、**インターネット接続機能を搭載し、天気予報や日射量予報と連動して昼間の沸き上げにシフトする機能を備えたもの、または「おひさまエコキュート」**とされています(出典: 給湯省エネ2026事業 ヒートポンプ給湯機)。
補助額は基本額7万円/台、性能加算が3万円/台(基本仕様比で5%以上のCO2排出削減、かつ2025年度目標基準値+0.2以上の性能値)。上限台数は戸建住宅で2台、共同住宅で1台です。
国が補助の条件に「昼に沸かせること」を組み込んでいる以上、太陽光を検討するなら給湯機側の対応可否は最初に確認すべき項目です。
2026年8月時点で使える補助金、使えない補助金
国:給湯器は動いている、蓄電池は止まっている
| 制度 | 2026年8月25日時点の状況 |
|---|---|
| 給湯省エネ2026事業(エコキュート等) | 実施中。交付申請は2026年3月31日〜2026年12月31日、予約申請は2026年11月16日まで(いずれも予算上限まで)。申請額の割合は公式トップで毎日更新 |
| DR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正) | 2026年5月29日に予算到達で公募終了。次回公募は未公表 |
給湯省エネ2026事業の予算は570億円(令和7年度補正予算、うち36億円は撤去補助)で、着工日が2025年11月28日以降であることが条件です。また一般消費者が直接申請することはできず、登録された事業者が申請と補助金の還元を行います(出典: 給湯省エネ2026事業 事業概要)。見積もりの段階で、その業者が給湯省エネ事業者として登録されているかを確認しておきましょう。
蓄電池側の状況は国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。「国の補助金が使えるので今が安い」という営業を受けたら、その場で公募状況を確認してください。
自治体:東京都は太陽光にも蓄電池にも助成がある
自治体の制度は国とは別枠で動いています。東京都(クール・ネット東京)の令和8年度事業を例に挙げます。
家庭における太陽光発電導入促進事業(令和8年度)
| 区分 | 助成単価 |
|---|---|
| 既存住宅 | 3.75kW以下:15万円/kW(上限45万円)、3.75kW超:12万円/kW |
| 新築住宅 | 3.6kW以下:12万円/kW(上限36万円)、3.6kW超:10万円/kW |
陸屋根への架台設置経費(既存戸建10万円/kW など)や、既存の陸屋根の防水工事経費(18万円/kW)の上乗せもあります。対象は発電出力50kW未満、未使用品、JET認証またはIEC認証を取得したモジュール。事前申込は令和8年5月29日開始、交付申請兼実績報告は令和8年6月30日から令和11年3月30日までです(出典: 東京都 家庭における太陽光発電導入促進事業 令和8年度)。
家庭における蓄電池導入促進事業(令和8年度)
蓄電池パッケージは蓄電容量あたり10万円/kWhで、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸。蓄電池ユニットの増設は6万円/kWh、DR実証非参加時は上限72万円/戸です。DR実証に参加する場合は、エネルギーマネジメント機器を設置すれば1台あたり15万円、設置しない場合は1台あたり10万円が加算されます。なお令和8年10月1日以降に事前申込をする場合は、SIIの令和8年度登録済製品一覧に登録された機器のみが助成対象になります(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業 令和8年度)。
容量を増やすとどこで頭打ちになるかは、次のグラフで確認できます。
東京都の蓄電池助成は、何kWhで頭打ちになるか
1kWhあたり10万円ですが、120万円/戸で上限に当たります。つまり12kWhを超えて容量を足しても助成額は増えません(DR実証に参加しない場合)。
助成額(万円) / 横軸: 蓄電容量(kWh)
助成額 120 万円 上限に到達
助成額 = 蓄電容量(kWh) × 10万円
上限 120万円/戸(DR実証に参加しない場合)
- 蓄電池ユニットの増設は 6万円/kWh・上限72万円
- DR実証に参加すると加算あり(機器の設置ありで1台15万円 / なしで1台10万円)
- 事前申込は令和8年5月29日開始
- 交付申請兼実績報告の受付終了は令和9年3月31日17時
金額も要件も自治体ごとに違い、年度の途中で受付が終わることもあります。東京都の詳細は東京都の蓄電池補助金2026を、他の地域はお住まいの都道府県・市区町村の公式サイト(.lg.jp)で最新の受付状況を確認してください。
蓄電池まで足すべきか、判断の順番
停電対策なら、まず太陽光の自立運転で何ができるかを知る
太陽光発電だけでも停電時に電気を使えます。ただし条件があります。JPEAは、パワーコンディショナの自立運転機能について「使用できる電力は最大1.5kWで、太陽が出ている時間帯の日射量によりことなりますが、テレビや炊飯器、電気ポット、携帯電話の充電器などの電源として利用することができます」と説明しています(出典: JPEA 住宅用太陽光発電システムのメリット)。
最大1.5kW、しかも太陽が出ている時間帯だけです。オール電化住宅は給湯も調理も電気なので、この制約は実感しやすいはずです。夜間や雨天をカバーしたいなら蓄電池、という順序になります。
なおJPEAは、自立運転用コンセントの位置と操作方法を平常時に確認しておくこと、停電復旧時には「自立運転モード」解除 → 「主電源ブレーカー」オン → 「太陽光発電ブレーカー」オンの順で元に戻すことを案内しています(出典: JPEA 停電時の使い方)。操作方法は機種で異なるため、取扱説明書の確認が前提です。
蓄電池は「国の補助が止まっている」ことを織り込む
蓄電池は本体価格の大きい設備で、補助金の有無が投資判断に直結します。前述のとおり国のDR家庭用蓄電池事業は2026年9月時点で新規申請ができません。「国と自治体の両方が出る前提」の試算を見せられたら、国の分がいま出ないことを指摘して作り直してもらうのが安全です。組み合わせの考え方はオール電化と蓄電池の相性で詳しく扱っています。
費用と見積もりで確認しておくこと
価格は「非公表」が普通だと知っておく
住宅用の太陽光発電システムも家庭用蓄電池も、メーカーが希望小売価格を公表していない(オープン価格)ケースが一般的です。公式サイトに価格の記載がないのは異常ではありません。総額はパネルの枚数と種類、パワーコンディショナ、架台、屋根の形状と工法、電気工事、足場、保証内容で変わるため、販売店の見積もりで確認するしかありません。複数社から相見積もりを取り、同じ容量・同じ保証条件で比較できる形に揃えてもらうと差が見えやすくなります。
契約前に頭に入れておきたい注意喚起
国民生活センターは2021年6月3日に「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」を公表しています。PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数は2016年度325件、2017年度553件、2018年度926件、2019年度1,302件、2020年度1,314件と増加傾向にありました(2021年4月30日までのPIO-NET登録分)。
なかでもこの記事のテーマと直結するのが、すでに太陽光発電を設置している家庭が狙われるという指摘です。同センターは「太陽光発電設備の無料点検で訪問した事業者に、家庭用蓄電池を勧誘されているケースもみられます」としています。掲載されている相談事例では、無料点検後に「売電するための装置の一部が壊れている」と説明されて蓄電池を契約したところ、後日訪問した工事担当者から「売電するための装置は壊れていない。部品もモーターも正常だ」と言われた、という経緯が紹介されています。
同センターのアドバイスは、その場で契約せず複数社から見積もりを取って比較検討すること、契約書の内容をしっかり確認すること、トラブルになったら消費生活センター等(消費者ホットライン188)に相談することです。あわせて**「売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限らない」という趣旨の注意**も添えられている点は、この記事の前提としても押さえておくべきところです(出典: 国民生活センター 家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!)。
複数社から見積もりを取るときの窓口は、対象条件や申し込み後の流れがサービスごとに違います。窓口ごとの条件はソーラーパートナーズとタイナビの違いで公式情報を並べて比較しています。
見積書で確認する項目
- 太陽光: モジュールの型番と枚数、システム容量(kW)、パワコンの型番と定格出力
- 発電量シミュレーションの前提条件(日射量データの出典、方位・傾斜角、損失率)
- 屋根の工法(穴を開けるのか、金具は認定品か)と雨漏りに関する保証の年数
- エコキュート: 型番と、ソーラーチャージ搭載機か昼間沸上げ形か
- 給湯省エネ2026事業を使う場合、その業者が登録事業者か、補助金の還元方法
- 自治体助成の申請主体・申請時期・提出書類を誰が担当するか
書面の読み方は見積書のチェックポイントで詳しく解説しています。
まとめ
- 2026年度の住宅用FITは1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh。オール電化 × 太陽光発電の価値は売電ではなく自家消費から出る
- 発電量の公的な目安は1kWあたり1,183kWh/kW/年(JPEA、設備利用率13.5%前提)。実際は方位・影・地域で変わるため、シミュレーションの前提条件まで見積書で確認する
- 分岐点はエコキュートを昼に沸かせるか。給湯省エネ2026事業は日射量予報と連動した昼間沸き上げ機能またはおひさまエコキュートを要件とし、基本額7万円/台+性能加算3万円/台を交付している(予算の消化率は公式トップで毎日更新・上限到達で終了)
- 国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に公募終了。蓄電池を含む試算は、国の補助が今は出ない前提で組み直してもらう。自治体助成(東京都は太陽光・蓄電池の両方に助成あり)は別枠で動いている