オール電化とは、給湯・調理・冷暖房をすべて電気でまかない、ガスの契約をなくした住宅のことです。 ガスの基本料金がなくなり火を使わない安全性が得られる一方、光熱費が下がるかどうかは契約する電気料金プランの単価しだいで、「深夜電力が日中の3分の1」という説明は全国どこでも当てはまるわけではありません。
【2026年8月28日時点】 国の「給湯省エネ2026事業」はエコキュート1台あたり7万円で交付申請を受付中(申請額の割合は公式トップページで毎日更新・予算上限に達し次第終了)。一方、蓄電池向けの国のDR補助金(上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。出典: 給湯省エネ2026事業 / DR家庭用蓄電池事業(SII)
この記事でわかること
- オール電化の仕組みと、実際に入る3つの機器(メーカー公式仕様ベース)
- 電力会社の公式単価で見る「夜間はどれくらい安いのか」の実際
- ガス代がいくら消えるのか(東京ガスとLPガスの公式価格)
- 停電時・断水時に本当に何が使えなくなるのか
- 2026年8月時点で使える補助金と、すでに終わった補助金
オール電化とは?家中のエネルギーを電気に一本化する仕組み
ガス併用住宅では調理にガスコンロ、給湯にガス給湯器を使いますが、オール電化ではこれらを電気機器に置き換えます。中心になるのは次の3つです。
エコキュート(給湯)
空気の熱を汲み上げるヒートポンプ方式の給湯機です。三菱電機は公式サイトで、ヒーター式電気温水器と比べて「消費電力量は約1/3に低減」すると説明しています。同社によれば家庭のエネルギー消費のうち約3割が給湯であり、ここを効率化できる点がオール電化の柱です(出典: 三菱電機 エコキュートとは)。貯湯タンクの容量は、同社の製品ラインアップで180L・300L・370L・430L・460L・550Lが用意されています(出典: 三菱電機 エコキュート 製品ラインアップ)。
IHクッキングヒーター(調理)
磁力線で鍋底自体を発熱させる電磁誘導加熱の調理器です。パナソニックは「IHの熱効率は約90%」と公表しています。ただしこれは鉄・ステンレス対応IHについて日本電機工業会の自主基準に基づく測定方法で同社が標準鍋を使って実測した値で、発電から送電までのロスは含みません(出典: パナソニック)。ガスコンロの熱効率とは測定条件が異なるため、数字をそのまま並べて比較することはできません。
エアコン・電気式床暖房(冷暖房)
暖房もヒートポンプ式のエアコンや電気式の床暖房でまかないます。ガスファンヒーターやガス温水床暖房を使っていた住宅では、この部分も電気に置き換わります。
オール電化の3つのメリット
1. ガスの基本料金と使用料がまるごとなくなる
東京ガスの一般料金(2026年9月検針分)は、1か月の使用量0〜20立方メートルで基本料金759.00円/月・単位料金160.90円/立方メートル、21〜80立方メートルで基本料金1,056.00円/月・単位料金146.05円/立方メートルです。なお東京ガスは2026年10月1日付の約款改訂で、2026年11月検針分から基本料金を各料金表とも月150円引き上げると公表しています(0〜20m³は909.00円/月、21〜80m³は1,206.00円/月に。出典: ガスのご契約内容の変更に関するお知らせ)(出典: 東京ガス ガス料金表)。基本料金だけでも年9,108円〜12,672円で、これに使用量ぶんが加わります。なお同社は同じページで、2026年10月1日付で約款を改訂しガス料金を見直すと告知しています。10月検針分以降の単価は改めて確認してください。
LPガス(プロパン)エリアではインパクトがさらに大きくなります。石油情報センターの2026年7月31日調査では、家庭用LPガス10立方メートルの全国平均は9,785円、地域別では北海道11,569円、関東9,227円でした(出典: 石油情報センター)。なお都市ガスとLPガスは1立方メートルあたりの発熱量が異なるため、体積あたりの単価をそのまま比べることはできません。
2. こんろ火災の大半を占めるガスこんろを使わなくなる
消防庁の令和7年版消防白書によると、令和6年中の出火件数37,141件のうちこんろによる火災は2,718件(全火災の7.3%)で、種類別ではガスこんろが2,346件と最多でした。ただし経過別に見ると「放置する、忘れる」が1,067件と最も多く、これはIHでも起こりうる原因です(出典: 消防庁 令和7年版消防白書)。IHにすれば火災がなくなるわけではないため、切り忘れ防止機能の有無は確認してください。高齢者世帯での考え方は「高齢者にオール電化をおすすめする理由」にまとめています。
3. 太陽光発電の自家消費先として相性がよい
2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁)。一方、東京電力エナジーパートナーのスマートライフS/Lで昼間に買う電気は35.76円/kWh。売るより使うほうが単価が高いため、給湯や調理で電気を多く使うオール電化住宅は自家消費先として有利です。詳しくは「オール電化+太陽光発電のベストな組み合わせ」をご覧ください。
オール電化の4つのデメリット
1. 初期費用は見積もりでしか確定しない
エコキュートの価格は販売店によって大きく異なります。参考として三菱電機が公表している価格一覧表では、標準仕様(耐塩害仕様を除く)の本体+リモコンセットが税別97万円〜161万円(一部機種はオープン価格、設置工事費は別途)と示されています(出典: 三菱電機 価格一覧表(PDF))。実際の販売価格はここから大きく変わるため、「相場は◯万円」という表示を見たら、その数字の出所を確認してください。
2. 停電時・断水時は平常どおりには使えない
三菱電機の公式案内では、停電時も貯湯タンクにお湯が残っていれば給湯できますが、温度調節ができず高温のお湯が出ることがあるためやけどに注意が必要で、追いだきはできません。断水時は蛇口から給湯できず、タンク下部の非常用取水栓にバケツを当てて取り出します(出典: 三菱電機 停電・断水時のご注意)。IHクッキングヒーターは停電中は使えないため、カセットコンロや蓄電池の備えが現実的です。対策は「オール電化の停電リスクと蓄電池による対策」で詳しく解説しています。
3. 使えない調理器具がある
パナソニックの公式FAQによると、土鍋・陶磁器・耐熱ガラス・アルミの鍋はIHでは使えず、鉄・ステンレス・ホーロー製の鍋が使えます。底の丸い中華鍋は接触面積が小さく熱効率が落ちるため推奨されていません。オールメタル対応機種ならアルミ鍋や銅鍋も使えますが、土鍋と耐熱ガラスは対応機種でも使えません(出典: パナソニック 使用できる鍋について)。機種選びは「IHクッキングヒーターのメリット・デメリットと選び方」を参考にしてください。
4. 使用量が少ないと昼間単価が割高になりうる
東京電力エナジーパートナーの従来型プラン(スタンダードS)の電力量料金は、120kWhまで29.80円/kWh、121〜300kWh 36.40円/kWh、301kWh〜 40.49円/kWhの3段階です(出典: 東京電力エナジーパートナー)。オール電化向けのスマートライフS/Lは昼間が一律35.76円/kWhなので、使用量が少ない世帯では第1段階(29.80円)より割高になります。
電気料金プランで結果が変わる — 公式単価で確かめる
「深夜電力は日中の3分の1」という説明をよく見かけますが、電力会社によって夜間の割安幅はまったく違います。関東と関西の代表的なオール電化向けプランを公式単価で並べると次のとおりです(いずれも税込。燃料費調整額と再エネ賦課金は別途)。
| プラン | 夜間の単価 | 夜間の時間帯 | 昼間の単価 | 基本料金 |
|---|---|---|---|---|
| 東京電力EP スマートライフS | 27.86円/kWh | 午前1時〜午前6時 | 35.76円/kWh | 311.75円/10A |
| 関西電力 はぴeタイムR | 15.37円/kWh | 午後11時〜翌午前7時 | 28.87円/kWh(夏季デイタイム) | 2,409.40円(10kWまで) |
東京電力エナジーパートナーのスマートライフS/Lは、安いのは午前1時〜午前6時の5時間だけで、昼間との差は約2割です(出典: 東京電力エナジーパートナー)。一方、関西電力のはぴeタイムRはナイトタイムが8時間あり、その単価はデイタイム(平日午前10時〜午後5時・夏季)の約半分です。朝晩のリビングタイムは22.80円/kWhです(出典: 関西電力 電気の基本料金・単価表)。
なお基本料金は2社で単位のとり方が違います。東京電力エナジーパートナーは10Aあたり311.75円(契約アンペアに比例)、関西電力は最初の10kWまで2,409.40円の定額(10kW超は1kWにつき416.94円)なので、上の表の基本料金の数字どうしをそのまま比べることはできません。
つまり、オール電化で光熱費が下がるかどうかはエリアとプランで結論が変わります。自宅の検針票にある月々の使用量(kWh、立方メートル)に、契約予定プランの公式単価を当てはめて計算すれば、自分の家での差額を具体的に確かめられます。手順は「オール電化の電気代シミュレーション」と「オール電化向け電力プランの選び方」で解説しています。
2026年8月時点の補助金と、終わった補助金
| 制度 | 2026年8月28日時点の状況 | 補助額 |
|---|---|---|
| 給湯省エネ2026事業(国) | 交付申請受付中(消化率は公式トップで毎日更新) | ヒートポンプ給湯機7万円/台+性能加算最大3万円 |
| DR家庭用蓄電池事業(国) | 2026年5月29日に予算到達で公募終了。次回は未公表 | (終了) |
| 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業 | 令和8年度事業として実施中 | 10万円/kWh(DR実証不参加は上限120万円/戸) |
給湯省エネ2026事業の交付申請受付は2026年3月31日から始まっており、予算上限に達し次第終了(遅くとも2026年12月31日まで)です。ハイブリッド給湯機は10万円/台、エネファームは17万円/台が基本額となっています(出典: 給湯省エネ2026事業)。
蓄電池を同時に検討している場合、国のDR補助金はすでに新規申請できません(出典: SII)。次回公募の見通しは「DR補助金は終了、次回はいつか」にまとめています。東京都の蓄電池補助金は継続しています(出典: 東京都地球温暖化防止活動推進センター)。
オール電化に向いている家庭・向いていない家庭
向いている可能性が高い家庭
- LPガス(プロパン)エリアに住んでいる:ガス代の削減額が大きくなりやすい
- 夜間単価が大きく下がるプランを契約できるエリアに住んでいる
- 太陽光発電を導入済み、または導入予定:売電単価より買電単価のほうが高い
- 日中の在宅時間が短く、電気の使用が朝晩に寄っている
慎重な検討が必要な家庭
- 日中の在宅時間が長い:昼間単価が高いプランでは不利になりやすい
- 月々の電気使用量が少ない:従来型プランの第1段階単価のほうが安い場合がある
- 土鍋や中華鍋を日常的に使う:IHでは使えない、または効率が落ちる
- 停電時にも調理・給湯を平常どおり続けたい:蓄電池やカセットコンロの併用が前提になる
まとめ
- オール電化とは給湯・調理・冷暖房を電気に一本化した住宅のこと。給湯はヒートポンプ式のエコキュートが担い、三菱電機はヒーター式電気温水器比で消費電力量が約1/3になるとしている
- 「深夜電力は日中の3分の1」は全国共通ではない。東京電力EPのスマートライフS/Lは夜間27.86円/kWh・昼間35.76円/kWhで差は約2割、関西電力のはぴeタイムRは夜間15.37円/kWhが昼間28.87円/kWhの約半分
- ガス代は基本料金ごとなくなる。東京ガス一般料金の基本料金は月759.00円〜1,056.00円(2026年9月検針分)で、LPガスエリアならさらに大きい
- 2026年8月28日時点で、国の給湯省エネ2026事業(エコキュート7万円/台)は申請可能だが、蓄電池のDR補助金は2026年5月29日に終了している