オール電化とガス併用のどちらが得かは、全国一律では決まりません。 決定要因は「都市ガスエリアかLPガスエリアか」と「電気を深夜に寄せられる生活か」の2つで、この2つが違えば結論も反転します。
この記事では、相場や体感ではなく、電力会社・ガス会社・国・業界団体が公表している数字だけを並べます。自宅の検針票と突き合わせて使ってください。
【2026年8月25日時点】 給湯器の「給湯省エネ2026事業」は申請受付中で、エコキュートだけでなくエネファーム・ハイブリッド給湯機も補助対象です。一方、蓄電池向けの国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しています。出典: 給湯省エネ2026事業 事業概要、SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業
この記事でわかること
- 電気・都市ガス・LPガスの公表単価と、その読み方
- 都市ガスかLPガスかで結論が反転する理由(地域差の実数)
- 初期費用が「見積もりでしか分からない」構造と、メーカー希望小売価格の水準
- 補助金は電気側にもガス側にも出ているという事実
- 停電・災害時の挙動の違いと、火災統計から見える安全性の話
まず「単価」を公式の料金表で確かめる
比較の出発点は、体感の光熱費ではなく契約単価です。関東エリアの例で見ます。
電気:オール電化向けプランは「深夜が安く、昼間はフラット」
東京電力エナジーパートナーの料金表(税込、1か月あたり)は次のとおりです。
| 区分 | スタンダードS(一般向け) | スマートライフ(オール電化) |
|---|---|---|
| 基本料金(10Aにつき) | 311.75円 | 311.75円 |
| 電力量料金 〜120kWh | 29.80円/kWh | ― |
| 電力量料金 121〜300kWh | 36.40円/kWh | ― |
| 電力量料金 301kWh〜 | 40.49円/kWh | ― |
| 午前6時〜翌午前1時 | ― | 35.76円/kWh |
| 午前1時〜午前6時 | ― | 27.86円/kWh |
| 最低月額料金(1契約) | 328.08円 | 328.08円 |
出典: 東京電力エナジーパートナー スタンダードS/L(関東エリア)、同 スマートライフ(オール電化)
この単価だけを比べると、深夜帯(午前1時〜午前6時)はスタンダードSの第3段階40.49円/kWhに対して27.86円/kWhで、差は12.63円/kWh。一方、昼間の35.76円/kWhは第1段階29.80円/kWhより5.96円/kWh高く、第2段階36.40円/kWhとはほぼ同水準です。つまり**「深夜に寄せられる量」がそのまま損得になります**。
重要な条件がひとつあります。スマートライフは誰でも入れるプランではなく、公式サイトに「夜間蓄熱式機器またはオフピーク蓄熱式電気温水器(総容量(入力)が1kVA以上)をご使用のお客さまがお申込みいただけます」と明記されています。エコキュートなどの設置が加入の前提です。なお旧「スマートライフプラン」(基本料金501.03円/kW)は新規加入の受付が停止されています。
都市ガス:基本料金と単位料金は使用量帯で変わる
東京ガスの一般料金(東京地区等、2026年8月検針分)は次のとおりです。同社は料金表に「消費税込みの単価を表示しております」と注記しています。
| 料金表 | 1か月の使用量 | 基本料金(円/月) | 基準単位料金(円/立方メートル) | 2026年8月検針分の単位料金 |
|---|---|---|---|---|
| A表 | 0〜20立方メートル | 759.00 | 145.31 | 162.85 |
| B表 | 21〜80立方メートル | 1,056.00 | 130.46 | 148.00 |
| C表 | 81〜200立方メートル | 1,232.00 | 128.26 | 145.80 |
出典: 東京ガス ガス料金表
なお東京ガスは2026年10月1日付で約款を改訂し、2026年11月検針分から基本料金を各料金表とも月150円引き上げると公表しています(A表759.00→909.00円、B表1,056.00→1,206.00円、C表1,232.00→1,382.00円)。基準単位料金も原料構成比率の見直しにあわせて再設定されます(出典: 東京ガス ガスのご契約内容の変更に関するお知らせ・新旧対照表PDF)。上の表は2026年8月検針分の数字なので、11月検針分以降は最新版で引き直してください。
右端の列が原料費調整後の実際の単位料金です。基準単位料金より高くなっており、カタログ上の単価と請求される単価は一致しません。電気にも同じ構造(燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金)があります。
さらに2026年時点では政府補助も乗っています。東京ガスは経済産業省の「電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金」に伴い、2026年8月・10月検針分でガス14.0円/立方メートル・低圧電気3.5円/kWh、9月検針分でガス18.0円/立方メートル・低圧電気4.5円/kWhの値引きを行うと公表しています(出典: 東京ガス「電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金」に伴う値引きについて)。
B表の単価で月30立方メートル使う場合、1,056.00円+148.00円×30=5,496円、ここから政府補助420円(東京ガスの例示どおり14.0円×30立方メートル)が引かれて5,076円になります。補助は電気にもガスにも入っているため、この値引きだけで有利不利が入れ替わるわけではありません。
都市ガスエリアで「時間帯別と三段階のどちらの単価構造が自分に合うか」を突き詰めたい場合は、判断の型をオール電化とガス併用はどちらがお得?で詳しく整理しています。この記事はここから先、地域で結論が変わる要素に絞ります。
LPガスエリアかどうかで、結論が反転する
ここが最大の分岐点です。LPガスは自由料金で、公表された全国一律の単価がありません。参考になるのが石油情報センターの価格調査です。
2026年7月31日調査の一般小売価格(消費税込み)は次のとおりです。
| 地域 | 10立方メートル使用時 | 20立方メートル使用時 |
|---|---|---|
| 北海道 | 11,569円 | 20,062円 |
| 東北 | 10,698円 | 18,792円 |
| 関東 | 9,227円 | 16,217円 |
| 中部 | 9,641円 | 16,751円 |
| 近畿 | 9,475円 | 16,386円 |
| 中国 | 10,132円 | 17,502円 |
| 四国 | 9,414円 | 16,190円 |
| 九州及び沖縄 | 9,755円 | 16,787円 |
| 全国平均 | 9,785円 | 17,022円 |
出典: 石油情報センター 価格情報(LP(プロパン)ガス 速報)
同じ10立方メートルでも北海道11,569円と関東9,227円では2,342円の開きがあり、北海道は関東の約1.25倍です。これは地域平均どうしの比較なので、同じ地域内の販売店ごとの差はこれとは別に存在します。
なお、LPガスは1立方メートルあたりの発熱量が都市ガスと異なるため、立方メートル単価をそのまま都市ガスと並べても意味のある比較にはなりません。比べるなら、自宅の請求書の合計額どうしで見てください。
制度も動いています。全国LPガス協会は、液化石油ガス法施行規則の改正省令が2024年7月2日に施行され、「LPガス料金の表示・計上方法に関する新しいルール」(三部料金制の徹底=設備費用の外出し表示・計上禁止)が2025年4月2日に施行されたことを公表しています(出典: 全国LPガス協会 取引の適正化・料金の透明化)。請求書の内訳は以前より読み取りやすくなっているはずです。
初期費用は「相場」ではなく見積もりで確認する
エコキュートやガス給湯器の設置費用は、機器代・工事費・撤去費・電気工事の合計で決まり、販売店ごとに大きく変わります。ネット上で見かける「相場」の多くは出所が示されていません。
数字が公開されている数少ない例が、三菱電機の価格一覧表です。同社はエコキュートの形名別価格(税別)を公表しており、たとえば370リットルクラスのSRT-N377が本体970,000円、本体+リモコンで1,007,000円、SRT-C377が本体1,010,000円と記載されています。SRT-B306DMなど一部はオープン価格です。この表には「商品の価格には配送・設置調整・据付工事などの費用は含まれておりません」と注記があります(出典: 三菱電機 三菱エコキュート 価格一覧表(PDF)、容量区分は同 ラインアップ(PDF))。
つまり公表されているのはメーカーの価格表に載った金額(税別・工事費別)であって、実際に支払う金額ではありません。他のメーカーではオープン価格として価格自体を公表していない例も一般的です。
判断に使えるのは、複数社から取った見積書の内訳だけです。書面の読み方は見積書のチェックポイントにまとめています。
補助金は電気側にもガス側にも出ている
「オール電化のほうが補助金で得」という説明を受けたら、事実関係を確認してください。2026年9月時点の給湯省エネ2026事業の補助額は次のとおりです。
| 設置する給湯器 | 基本額 | 性能加算額 | 補助上限 |
|---|---|---|---|
| ヒートポンプ給湯機(エコキュート) | 7万円/台 | 3万円/台 | 戸建住宅はいずれか2台まで、共同住宅等は1台まで |
| 電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機) | 10万円/台 | 2万円/台 | 同上 |
| 家庭用燃料電池(エネファーム) | 17万円/台 | 加算なし | 同上 |
撤去加算は、電気蓄熱暖房機の撤去が4万円/台(2台まで)、電気温水器の撤去が2万円/台(基本額の補助を受ける台数まで)です。ただし公式に「エコキュートの撤去は加算対象となりませんので、ご注意ください」と明記されています。撤去加算は予算額36億円を目途に実施され、予算到達で終了予定です。
対象となる着工日は2025年11月28日から予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)です。出典: 給湯省エネ2026事業 事業概要
つまり、都市ガスを使い続ける選択肢にも補助制度が用意されています。エネファームの17万円/台はエコキュートの基本額7万円/台を上回ります。「電化するから補助が出る」という単純な話ではありません。
蓄電池側は状況が異なります。国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に予算到達で公募終了しており、次回公募は未公表です(国のDR補助金の終了と次回の見通し)。自治体の制度は動いており、東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸で、2026年10月1日以降はSII令和8年度登録品のみが対象です(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。
太陽光を併設するなら売電単価も押さえておきましょう。2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです(出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等)。売電より自家消費に振ったほうが有利な場面が増えており、これはオール電化との相性を高める方向に働きます。機器単体の電気代の考え方はエコキュートの電気代にまとめています。
停電・災害・安全性は、公式資料と統計で確認する
停電時のエコキュートは、機種で挙動が変わる
「オール電化は停電に弱い」という一般論はよく聞きますが、実際の挙動はメーカー資料に書かれています。三菱電機はエコキュートの停電時について、「タンクにお湯があれば給湯できますが、温度調節ができないため、設定温度のお湯が出ないことがあります。高温のお湯が出る場合もありますので、やけどに気を付けてください」と案内しています。そのうえで、SRT-P・SRT-S・SRT-B・SRT-V・SRT-W・SRT-C(C20Dを除く)・SRT-Nなどのタイプは「シャワーや蛇口からのお湯を使用することができます(断水時は除く)」、それ以外の機種は「原則、蛇口からお湯はご使用になれません(ただし、水は出ます)」としています。追いだきは停電時には「できません」。断水時は、貯湯ユニット下部の非常用取水栓からお湯(水)を取り出す手順が示されています(出典: 三菱電機 停電・断水時にご注意いただきたいこと(PDF))。
LPガスは災害復旧が相対的に早いとされている
ガス側の災害特性も公式に整理されています。日本LPガス協会は、LPガスを「各需要家ごとに個別に供給可能な『分散型エネルギー』」と位置づけ、「災害発生時にガスの供給が遮断された場合も、個別に調査・点検を行うことで都市ガスや系統電力に比べて相対的に早く復旧させることができます」と説明しています。東日本大震災では岩手・宮城・福島の3県で「津波で建物が損壊又は流されてしまったもの等を除いて、地震発生後約3週間程度で大方の復旧が完了し、都市ガス及び電力よりも早い時期に全面復旧を果たしています」とも記載されています。津波で設備そのものが失われたケースは、この「約3週間」の外側にある点に注意してください(出典: 日本LPガス協会 災害に強い)。
停電時の給湯はオール電化でも機種によって一定量は使え、災害復旧の早さではLPガスに分があります。どちらか一方が全面的に強いという構図ではありません。
火災統計は「熱源の差」より「使い方」を示している
総務省消防庁の令和7年版消防白書によると、令和6年中の出火原因別で「こんろ」による火災は2,718件、全火災の7.3%です。こんろの種類別ではガスこんろによる火災が2,346件と最も多く、主な経過別では「放置する、忘れる」が1,067件で最多でした(出典: 消防庁 令和7年版 消防白書 4.出火原因)。
ただしこの件数は設置台数を補正したものではなく、件数の差をそのまま製品の危険度の差として読むことはできません。読み取れるのは、最も多い出火経過が「放置する、忘れる」だという点です。
機器の寿命側では、日本ガス石油機器工業会が給湯機・ガス湯沸器などの経年劣化について「目安として10年でまずは点検を受けましょう」と呼びかけています(出典: 日本ガス石油機器工業会 経年劣化と点検)。どちらを選んでも、10年前後で点検・更新の費用が発生する前提で資金計画を立てるのが現実的です。
自分の家で判断するための手順
一般論では決まらない以上、手順はこうなります。
- 検針票を用意する。 電気は使用量(kWh)と時間帯、ガスは使用量(立方メートル)と請求額の内訳を確認します。
- 上の公表単価で計算し直す。 同じ使用量のまま、オール電化向けプランに変えるといくらになるかを試算します。深夜に寄せられる量が損得を決めます。
- 見積もりを複数社から取る。 機器代・工事費・撤去費・電気工事を分けて記載してもらいます。
- 補助金の適用条件を書面で確認する。 給湯省エネ2026事業は着工日の期間と対象製品の登録が要件で、予算上限で締め切られます。
- 停電時に何が使えるかを機種名で確認する。 「オール電化だから使えない」ではなく、設置予定の形名で公式資料を見ます。
オール電化そのものの仕組みはオール電化とは何か、月額シミュレーションの考え方はオール電化の電気代シミュレーションで解説しています。
まとめ
- オール電化とガス併用の優劣は全国一律では決まらない。分岐点は都市ガスかLPガスかと、電気を深夜に寄せられるかの2点
- 関東エリアの公表単価では、オール電化向けスマートライフの深夜27.86円/kWhに対し、スタンダードSの301kWh以上は40.49円/kWh。一方、昼間35.76円/kWhは第1段階29.80円/kWhより割高で、使い方次第で逆転する
- LPガスは石油情報センターの2026年7月31日調査で全国平均10立方メートル9,785円。北海道11,569円と関東9,227円のように地域差が大きく、販売店差もこれとは別にある
- 補助金は電気側だけではない。給湯省エネ2026事業の基本額はエコキュート7万円/台、ハイブリッド給湯機10万円/台、エネファーム17万円/台。一方、国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日で公募終了しており、蓄電池を前提にした資金計画は現状の公募状況を確認してから組む