bZ4XはV2Hに対応しています。ただし「電池の全量が家で使える」わけではなく、2026年8月29日時点でV2H機器への国の補助金は受付が終わっています。 判断で効いてくるのは、カタログの容量ではなく実際に取り出せる電力量と、機器と工事の費用をどう賄うかの2点です。
【2026年8月29日時点】 令和7年度補正の「V2H充放電設備・外部給電器」補助金は、2026年8月27日にセンターへ到着した申請をもって交付申請の受付を終了しました。当初の受付期間は2026年7月17日〜9月30日の予定でした。出典: 次世代自動車振興センター「交付申請受付終了のお知らせ」(PDF)
この記事でわかること(数値はすべてメーカー公式・公的機関の公表値です)
- bZ4XのV2H対応可否と、トヨタが公式に付けている2つの条件
- 総電力量は74.69kWh / 57.72kWh。「71.4kWh」は旧型の数字
- 放電下限があるため、満充電の全量は家で使えない
- V2H機器の価格帯と、国・東京都の補助金の現在地
- 電気代の時間シフトで実際どれくらい変わるのかの試算
bZ4XはV2H対応。ただし条件が2つある
トヨタの主要諸元表・装備一覧(PDF)の充電装備欄には、充電インレットの項目として「急速充電(外部給電機能[V2H]付)」が掲載されています。そこに付いている注記が実務上は重要です。
- 注記*2「急速充電インレット(外部給電機能[V2H]付)から取り出したDC(直流)電力を住宅へ供給するには別売りの『V2H機器』が必要です」
- 注記*3「電動自動車用充放電システムガイドラインV2H DC版に準拠し、一般社団法人チャデモ協議会の認証を受けたV2H機器を使用してください」
車両側は「出せる」状態で出荷されますが、家に流し込む機器は別途の買い物になります。価格を公表しているニチコンの現行機で本体128万円(税抜)+工事費という水準です(後述)。しかもV2H機器なら何でもよいわけではなく、チャデモ協議会の認証品であることが条件です。
機器メーカー側の裏取りもできます。ニチコンのEVパワー・ステーション VSG3シリーズ 対応車種一覧(トヨタ欄は2026年6月現在)には、bZ4XのZAA-XEAM11-MWDHR(57.7kWh)、ZAA-XEAM11-MWDHN・ZAA-XEAM15-MWDHN(74.7kWh)、2022年式〜2025年式のZAA-YEAM15・ZAA-XEAM10(71.4kWh)、そしてbZ4X Touringまで掲載されています。GグレードもZグレードも対応車種です。
「71.4kWh」はもう現行の数字ではない
71.4kWhは2022年式〜2025年式の値です。現行モデルの主要諸元は次のとおり(価格はメーカー希望小売価格・消費税10%込み、2025年10月現在)。
| 項目 | Z(FWD) | Z(4WD) | G(FWD) |
|---|---|---|---|
| 総電力量 | 74.69kWh | 74.69kWh | 57.72kWh |
| 一充電走行距離(WLTC) | 746km | 687km | 544km |
| 交流電力量消費率(WLTC) | 113Wh/km | 121Wh/km | 111Wh/km |
| 価格 | 5,500,000円 | 6,000,000円 | 4,800,000円 |
Zに20インチタイヤ&アルミホイールを装着すると、一充電走行距離は673km(FWD)・622km(4WD)になります。急速充電については、トヨタは「常温時に150kW(350A)出力の急速充電器で、駆動用電池容量表示約10%から約80%までおおよそ28分」と説明しています(トヨタ bZ4X 公式)。
なおV2Hとは別に、車内で使えるAC100V・1500Wの非常時給電システムも設定があります。ただし合計消費電力が1500Wを超えると保護機能が働いて給電が停止する、という注記付きです(同 主要諸元表)。家全体をまかなう用途はV2H機器側の役割になります。仕組みそのものは「V2Hとは何か」で整理しています。
満充電の全量は家で使えない:放電下限という制約
ニチコンの対応車種一覧では、bZ4X(2025年式〜)の**充電上限が約100%、放電下限が約10〜25%**と示されています(2022年式〜2025年式は約10〜30%)。同ページには「総電力量はEVパワー・ステーション接続時の実使用可能容量とは異なります」「充放電動作を行っている際、車両側でもバッテリー保護機能等のために最大数百Wの電力を消費する場合があります」とも書かれています。
さらに直流と交流の変換ロスがあります。ニチコンが自社の試算条件として公開している値はAC・DC変換効率85%、充放電時のEV内部消費300Wです(ニチコン VSG3シリーズ)。
これを機械的に当てはめると次のようになります。基準にした家庭の電力消費は、環境省の家庭部門のCO2排出実態統計調査(令和5年度確報)の世帯当たり年間電気使用量3,911kWh(1日あたり約10.7kWh)です。
| グレード | 総電力量 | 放電下限を引いた分 | 変換効率85%後 | 1日10.7kWh換算 |
|---|---|---|---|---|
| Z | 74.69kWh | 約56〜67kWh | 約48〜57kWh | 約4〜5日 |
| G | 57.72kWh | 約43〜52kWh | 約37〜44kWh | 約3〜4日 |
家庭用蓄電池が5〜20kWh程度であることを考えれば、それでも桁違いに大きい容量です。ただし「満タンで6日分」といった数字は放電下限と変換ロスを無視した計算になります。加えて、停電が復旧するまでに車を動かす可能性があるなら、その分は残しておく必要があります。定置型との使い分けは「EV蓄電池とV2Hはどちらを選ぶか」にまとめています。
V2H機器はいくらか。出力はどれも6kW前後
次世代自動車振興センターが公開している補助対象V2H充放電設備の型式一覧(PDF、令和8年7月17日更新)を見ると、登録機器はGSユアサ、オムロン、シャープ、ダイヤゼブラ電機、デンソー、ニチコン、パナソニック、住友電気工業、新電元工業、長州産業など十数社に及びます。
充放電出力は大半が5.9〜6kWで、一部に充電9.9〜11kW・放電9〜9.9kWの機種があります。機器選びで劇的に充電が速くなるわけではありません。ニチコンは6kW級の自社機を「200V/3kWの普通充電に対して最大約2倍のスピード(最大6kW未満)」と説明しています。
価格が公表されている代表例として、ニチコンのVSG3シリーズはメーカー希望小売価格1,280,000円(税抜、自動切替開閉器付き標準モデル)、重塩害モデルは1,400,000円(税抜)。いずれも工事費は別途必要です(重塩害モデルは輸送費も別)(ニチコン公式)。多くのメーカーは価格を公表しておらず、取引価格は販売店ごとに異なります。総額は見積もりで確認を。
工事費には公的な目安もあります。国のV2H補助金では設置工事費の交付上限が1基あたり55万円(公共施設・災害拠点は95万円)と定められていました(交付規程 別表2)。東京都の助成事業の手引き(PDF)の助成額シミュレーションでも、本体55〜70万円+工事40万円という例が使われています。制度上の上限や例示にすぎませんが、桁感の目安にはなります。機種ごとの価格と対応車種は「V2H機器の比較」に一覧をまとめています。
停電時の挙動はメーカーで差があります。ニチコンVSG3の場合、コネクタがロックされていれば停電を検知して自動で放電を開始し、自立出力は6kVA、全負荷200V対応と説明されています。ただしbZ4Xには注意点があり、対応車種一覧の注記*7で「自立運転(手動起動)を充放電コネクタで起動すると、余剰電力が充電できません。余剰電力の充電が可能となる12V電源ケーブルを使用してご利用になることを推奨します」とされています。太陽光の余剰充電を前提にするなら、起動方法まで販売店に確認しておきましょう。
補助金は2026年8月時点でどうなっているか
制度の状況は3つに分かれます。
V2H機器への国の補助金:受付終了
令和7年度補正の「V2H充放電設備・外部給電器」補助金は、設備の購入費が補助率1/2以内・上限75万円/基、設置工事費が定額・上限55万円/基(公共施設・災害拠点は95万円)という制度でした。受付期間は2026年7月17日〜9月30日の予定でしたが、2026年8月27日に到着した申請をもって受付終了。8月28日以降に到着した申請は無効と案内されています(次世代自動車振興センター)。開始からおよそ6週間で予算に達した計算です。次回の予定は公表されていません。
蓄電池側も同様で、国の「令和7年度補正 DRリソース導入のための家庭用蓄電システム等導入支援事業」(上限60万円/申請)は2026年5月29日に予算到達で公募終了しています(SII公式)。経緯は「国の蓄電池補助金が終了、次回はいつか」で整理しています。
車両のCEV補助金:受付中、bZ4Xは130万円
一方、車両向けのクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)は2026年8月29日時点で申請受付中です。補助対象車両一覧(令和8年4月1日以降の登録分、令和8年8月27日現在)によれば、bZ4XはZ(FWD)・Z(4WD)・G(FWD)いずれも130万円、bZ4X Touringも130万円です。
注意したいのは処分制限期間が自家用車両で4年と定められている点。補助を受けた車を4年以内に手放すと返還が生じる場合があります。中古車と事業用車両は対象外です。
自治体の助成:東京都は継続中
東京都の令和8年度 戸建住宅におけるV2H普及促進事業は受付中です。助成額は助成対象経費の1/2・上限50万円(国などの補助金を充てる場合はその額を控除)。さらに、交付申請時に要件を満たす太陽光発電システムとEV/PHEVを所有していれば「増額申請」で10/10・上限100万円になります。事前申込は2026年5月29日開始、令和8年度の受付終了日は2027年3月31日17時です(手引き(PDF))。
蓄電池側も東京都は令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業で10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸を継続しています。他の自治体にも同種の制度があります。制度全般は「V2Hの補助金の探し方」を参考にしてください。
電気代はどれだけ変わるのか(前提を全部公開した試算)
V2Hの経済効果は「太陽光の余剰を売らずにEVへ貯め、夜に家で使う」時間シフトが中心です。前提を固定して機械的に計算します。
| 前提 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 1日にシフトする電力量 | 5kWh(年1,825kWh) | 記事内の仮定 |
| AC・DC変換効率 | 85% | ニチコンの試算条件 |
| 買電単価 | 31円/kWh(税込) | 全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価 |
| 売電単価 | 5〜10年目 8.3円、1〜4年目 24円 | 2026年度の住宅用FIT |
年1,825kWhを売電に回さずEVへ充電し、変換ロス15%を差し引くと家で使えるのは約1,551kWh。買電削減額は31円×1,551kWh=約4.8万円。一方で失う売電収入は、FIT5〜10年目なら8.3円×1,825kWh=約1.5万円なので、差引で年約3.3万円です。
ところがFIT1〜4年目は売電が24円/kWhなので、失う収入は約4.4万円。差引は年約0.4万円にしかなりません。時間シフトの妙味が出るのは、売電単価が8.3円/kWhに下がる5年目以降という構造です(目安単価31円/kWhは令和4年7月22日改定の値)。
この規模だと、機器と工事で100万円超の投資を電気代削減だけで回収するのは現実的ではありません。V2Hの価値は、停電時に家全体へ給電できること、普通充電の約2倍の速さで充電できること、そして補助金が使えるかどうかに寄っている、と考えるのが実態に近いはずです。
契約前に確認したい5つのこと
- 見積もりを機器費と工事費に分解する ── 国の制度では工事費上限が1基55万円でした。総額だけでは高いか安いか判断できません。
- チャデモ協議会の認証品か確認する ── トヨタの諸元表が指定している条件です。
- 自立運転の起動方法を確認する ── bZ4Xは12V電源ケーブルでの起動が推奨されています。
- 自治体の助成の締切を先に押さえる ── 継続している制度は事前申込の順番が実質的な締切になります。
- 4年間手放さない前提か考える ── CEV補助金には処分制限期間があります。
まとめ
- bZ4XはV2H対応。ただしトヨタの諸元表は別売りのV2H機器とチャデモ協議会の認証品という2条件を明記している
- 総電力量はZ 74.69kWh / G 57.72kWh。放電下限(約10〜25%)と変換ロスがあるため、家で使えるのはZで4〜5日分、Gで3〜4日分程度(1日10.7kWh換算)
- 2026年8月27日で国のV2H機器補助は受付終了。車両のCEV補助金(bZ4X 130万円)は受付中、東京都の助成は継続中
- 電気代の時間シフト効果はFIT5年目以降で年3万円台の規模。V2Hの主な価値は停電時のバックアップと充電速度にある
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