蓄電池とV2Hの一番大きな違いは容量ではなく、「いつ使えるか」と「いま補助金が出るか」です。 2026年8月29日時点では、国の家庭用蓄電池向け補助金(DR家庭用蓄電池事業)に続いて、V2Hの国補助も受付を終了しました。国の制度はどちらも新規申請ができない状態です。判断の前に、まずこの2つの現在地を押さえてください。
【2026年8月29日時点】 国の「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(上限60万円/申請)は2026年5月29日に交付申請額が予算に達し公募終了、次回は未公表です(出典: SII 公式)。V2H充放電設備のCEV補助金(令和7年度補正)も、当初の交付申請期間は令和8年7月17日〜令和8年9月30日17時でしたが、2026年8月28日到着分で予算額を超過したため、次世代自動車振興センターが交付規程第21条にもとづき申請期間を短縮し、2026年8月27日(木)中にセンターへ到着した交付申請をもって受付を終了しました。8月28日(金)以降の到着分は無効で、次回公募(令和8年度予算等)は未公表です(出典: 次世代自動車振興センター 受付終了のお知らせ(2026年8月28日・PDF)、応募要領 PDF)。
この記事でわかること
- 蓄電池とV2Hの容量・価格・保証をメーカー公表値で比較
- EVのバッテリーは総電力量の全量が使えるわけではないという制約
- 2026年8月29日時点の補助金の現在地(蓄電池もV2Hも国の補助は受付終了)
- 停電時に何時間もつのかのメーカー公式の目安
- 併用(トライブリッド)という選択肢と、その費用の考え方
蓄電池とV2Hの基本的な違い
家庭用蓄電池とは
家に専用のリチウムイオン電池を置き、太陽光の余剰電力や割安な時間帯の電力を蓄えて使うシステムです。ニチコンは自社サイトで、家庭用蓄電システムの容量を5kWh〜19.9kWhと説明しています(ニチコン EVパワー・ステーション VSG3)。据え付けたら車と違って外に出ていかないので、24時間いつでも充放電できます。
2026年8月3日に日本発売されたテスラ Powerwall 3 は容量13.5kWh、出力9.69kW、保証10年。メーカー希望小売価格は公表されておらず、費用は設置事業者の見積もりで確認する必要があります(テスラ公式 Powerwall)。
V2Hとは
EV(電気自動車)の駆動用バッテリーを、専用のV2H機器を通じて家庭の電源として使う仕組みです。ここで見落とされがちな前提が1つあります。ニチコンは対応車種一覧の注記で「急速充電口が付いていない車両では、V2Hによる充電・放電はできません」と明記しています(ニチコン 対応車種一覧)。普通充電しかできない車ではV2Hは成立しません。
蓄電池 vs V2H 7つの比較
比較1:蓄電容量
EV側の容量は、メーカー公式の対応車種一覧で総電力量が公表されています。
| 車種(例) | 種別 | 総電力量(電池容量) |
|---|---|---|
| 日産 サクラ | EV | 20kWh |
| 日産 リーフ(2025年式〜) | EV | 55kWh / 78kWh |
| 日産 アリア | EV | 66kWh / 91kWh |
| トヨタ bZ4X(2025年式〜) | EV | 57.7kWh / 74.7kWh |
| 三菱 アウトランダーPHEV(2025年式〜) | PHEV | 22.7kWh |
| BYD ATTO3 | EV | 58.56kWh |
出典はいずれもニチコン 対応車種一覧(2026年8月28日閲覧。同ページの記載内容は2026年3月現在)。対して家庭用蓄電池は、ニチコンのトライブリッド蓄電システムで7.4kWh・9.9kWh・14.9kWh・19.9kWhのラインアップです(ニチコン トライブリッド蓄電システム)。
容量ではV2Hが優位。 ただし同じ一覧には「総電力量はEVパワー・ステーション接続時の実使用可能容量とは異なります」という注記があり、さらに車種ごとに放電下限(そこまで放電したら止まる残量)が設定されています。日産リーフ・サクラ・アリアは約10%(クリッパーEVは約20%)、三菱ミニキャブEVは約20%、i-MiEVは約30%、BYD ATTO3は約15%(SEALION 6は約20%)、トヨタbZ4XとSUBARUソルテラは2022〜2025年式が約10〜30%・2025年式〜が約10〜25%といった具合です。満充電でも総電力量の全部が家に回せるわけではありません。
比較2:導入費用
まずV2H機器から。ニチコンのEVパワー・ステーション VSG3シリーズの標準モデル(自動切替開閉器付き)は**メーカー希望小売価格1,280,000円(税抜)**で、工事費は別途です。重塩害モデル(VSG3-666CN7HS/HB)は1,400,000円(税別)。旧来のVCGシリーズは希望小売価格89.8万円〜(税別、工事費別)ですが、スタンダードモデルは2024年8月、プレミアムモデルは2026年2月で生産終了です(VSG3、VCG)。
蓄電池側は、同じニチコンの希望小売価格(税抜)で単機能タイプが7.7kWhのESS-U5M1が2,400,000円、9.7kWhのESS-U5X1が3,000,000円、全負荷200V対応で16.6kWhのESS-U4X1が4,500,000円(ニチコン 製品一覧)。
ただしこの数字をそのまま予算にしてはいけません。ニチコンはVSG3の価格表示に「実際のお取引価格は、販売店にご確認ください。別途、工事費が必要です」と添えています(VSG3)。ハウスメーカー専用モデルなどはそもそもオープン価格で、希望小売価格自体が公表されていません。
目安として使えるのは、国の補助制度が置いた価格ラインです。SIIのDR家庭用蓄電池事業の公募要領は、令和7年度(2025年度)の**目標価格を「設備費+工事費・据付費(税抜)12.5万円/kWh(蓄電容量)」**と定め、購入価格と工事費の合計がこれ以下であることを補助の要件にしていました(SII 公募要領 PDF)。10kWhなら125万円。見積もりは総額ではなく「万円/kWh」に直して比べるのが実務的です。
比較3:使いやすさ・利便性
蓄電池は設置したら常時稼働します。V2Hは車が家にあるときだけ。ニチコン自身の経済性試算も、試算条件に「EVは平日に自宅に駐車し、主に近隣への移動に使用する想定」と明記しています(VSG3)。
停電時の起動も差があります。VSG3シリーズは車両が接続(コネクタロック)されていれば停電を検知して自動で放電を開始しますが、ロックされていない場合は手動起動が必要で、その方法は車種ごとに「12V電源ケーブル」か「充放電コネクタ」かに分かれます。トヨタ・レクサス・SUBARU系には「自立運転(手動起動)を充放電コネクタで起動すると、余剰電力が充電できません」という注記も付いています(対応車種一覧)。蓄電池のほうが手離れは良いというのが率直なところです。
比較4:停電時の対応力
蓄電池側は、メーカーが持続時間の目安を公表しています。ニチコンのQ&Aによれば、保証値ではないという前提つきで、満充電・家庭の合計消費電力430Wの場合に7.4kWhで約14時間、9.9kWhで約20時間、14.9kWhで約29時間、19.9kWhで約40時間(ニチコン トライブリッド蓄電システム)。
V2H側は、VSG3シリーズが自立出力6kVA・全負荷200V対応。トライブリッド蓄電システムのパワコン(ES-T5/ES-T6)の自立出力は5.9kVAで、ニチコンは「停電時でもエアコンやIH調理器などの200V機器に放電することが可能」と説明しています。容量が大きいぶんV2Hは長く持ちますが、比較1で触れた放電下限のぶんは差し引いて考えてください。詳しくは「V2Hで停電対策」でも解説しています。
比較5:太陽光発電との相性
2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)のFIT買取価格は1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWh、調達期間10年間です(資源エネルギー庁「買取価格・期間等」)。一方、電力料金の目安単価は全国家庭電気製品公正取引協議会が定める31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定)(家電公取協 Q&A)。
つまり5年目以降、1kWhを売れば8.3円ですが、ためて自分で使えば約31円分の買電が減ります。ためて使う設備の価値はこの差にあるという点は、蓄電池でもV2Hでも同じです。容量が大きいV2Hのほうが余剰を吸収しやすい一方、前述のとおり起動方法によっては余剰充電ができない条件があるため、施工店に運用パターンを確認してください。
比較6:寿命と保証
ニチコンのトライブリッド蓄電システムは15年保証で、蓄電池ユニットの保証条件は「ES-BSM・ES-CSM・ES-BSX・ES-CSXは充電可能容量50%以上、ES-DYLは60%以上」。無償保証にはニチコンオーナーズ倶楽部への無料会員登録と申請が必要です。同じ製品でも充放電コネクタケーブルは10年保証、室内リモコンは5年保証と、部材ごとに年数が違う点は見落としがちです(ニチコン トライブリッド蓄電システム)。
V2H機器側は、ニチコンのVSG3シリーズが保証期間10年。ただし「事前確認書」「設置完了報告書」の提出が条件です(VSG3)。テスラ Powerwall 3 の保証も10年です(テスラ公式 Powerwall)。EV側の駆動用バッテリーは車両メーカーの保証に従うため、条件は車種ごとに販売店で確認が必要です。
比較7:将来性
CEV補助金の応募要領は、この制度を「災害時に電気自動車や燃料電池自動車の外部給電機能の活用を促進することによるレジリエンスの向上を図ること」を目的として設置するV2H充放電設備への補助と定義しています。そのため交付条件には、V2H設置情報を国・地方公共団体へ提供することへの了承と、災害時等に要請があれば可能な限り協力することが含まれます。補助を受けた設備には設置完了日から5年間の保有義務期間もあります(次世代自動車振興センター、応募要領 PDF)。個人の設備でありながら、地域の非常用電源としても数えられ始めている——これがV2Hの位置づけです。
補助金の現在地(2026年8月29日時点)
国の家庭用蓄電池補助金は終了
「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」は、補助率3/10以内、補助金基準額3.45万円/kWh(初期実効容量)、1申請あたり上限60万円という内容でしたが、2026年5月29日に交付申請額が予算に達し公募終了。次回の予定は公表されていません。SIIの公表では2026年8月26日時点の交付決定は9,840件・4,185,076,700円です(SII 公式)。
V2Hの国補助も受付終了(2026年8月27日到着分まで)
V2H充放電設備のCEV補助金(令和7年度補正)は、当初の交付申請期間が令和8年7月17日〜令和8年9月30日17時でしたが、2026年8月28日到着分で予算額を超過したため、センターが交付規程第21条にもとづき申請期間を短縮し、2026年8月27日(木)中に到着した交付申請をもって受付を終了しました(8月28日以降の到着分は無効。次回公募は未公表。出典: 次世代自動車振興センター 受付終了のお知らせ(2026年8月28日・PDF))。以下は受付終了時点の制度内容です。設備費の補助額は「購入費(税抜)×補助率1/2以内」と「型式ごとにセンターが定める上限額」の低いほうで、別表1(更新日 令和8年7月17日)の上限額は最大75万円です。同じメーカーでも型式で差があり、ニチコンならVSG3-666CN7HSが70万円、トライブリッド用のESS-V1は55万円と設定されています。個人宅などの設置工事費は基礎工事35,000円・据付工事80,000円・本体搬入費15,000円・電気関連工事300,000円・諸費用120,000円の項目ごとの上限があり、1基設置の補助金交付上限は550,000円。
すでに交付決定を受けている場合の注意点は2つ。V2H機器の発注と工事の着手は交付決定日以降であること、実績報告の提出期限が令和9年1月29日であることです。応募要領が定めていた3つ目の条件、申請額の累計が予算を超えると予想される場合は期間中でも受付を終了するという規定は、今回そのまま発動しました(応募要領 PDF)。
自治体の助成は別枠で継続
東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸。V2Hについても令和8年度 戸建住宅におけるV2H普及促進事業があり、事前申込の受付開始は令和8年5月29日、受付終了は令和9年3月31日17時。「設置された日に、CEV規程に基づきセンターが実施する補助事業において補助金の交付対象のV2Hとなっていること」が条件です。国の制度の詳細は「国の蓄電池補助金(DR)が終了、次回はいつか」「EV・V2Hの補助金」もあわせてご覧ください。
蓄電池が向いている人・V2Hが向いている人
蓄電池が向いている人
- EVを所有しておらず、購入予定もない
- 日中も夜間も、在宅中に安定して使いたい(車の在宅時間に左右されたくない)
- 手離れの良さを優先したい(停電時の起動操作を車種ごとに覚えたくない)
- 自治体の助成が使える地域に住んでいる(国のDR補助は現在終了中)
V2Hが向いている人
- すでにEV・PHEVを所有している、または購入予定がある
- その車が急速充電口を備え、メーカーの対応車種一覧に載っている
- 停電時に200V機器を含めて長時間動かしたい(VSG3シリーズは自立出力6kVA・全負荷200V対応)
- 国のCEV補助金なしでも導入判断ができる(令和7年度補正分は2026年8月27日到着分で受付終了、次回公募は未公表。自治体の助成は別枠で継続)
V2Hそのものの仕組みは「V2Hとは」で基礎から解説しています。
蓄電池+V2Hの併用という選択肢
両方の弱点を補い合うのが併用です。ニチコンのトライブリッド蓄電システム(ESS-T5/T6シリーズ)は、太陽光発電・蓄電池・EVを1台のトライブリッドパワコンで制御します。仕様はES-T5が入力4回路・連系出力5.9kW・自立出力5.9kVA・最大発電電力8.8kW、ES-T6が5回路・9.9kW・5.9kVA・11kW。蓄電容量は7.4kWhから19.9kWhまで4段階で、全負荷200Vを標準装備しています(ニチコン トライブリッド蓄電システム)。
希望小売価格(税抜)はパワコンES-T5が1,500,000円・ES-T6が1,800,000円、蓄電池ユニット7.4kWh屋内ES-BSMが1,900,000円、9.9kWh屋内外ES-DYLが2,500,000円、V2Hスタンド&V2HポッドES-PL1が1,900,000円(ニチコン 製品一覧)。組み合わせると合計は高額ですが、実際の取引価格は販売店ごとに異なります。
なお、CEV補助金の補助対象V2H充放電設備一覧には、ニチコンのESS-V1やオムロン ソーシアルソリューションのKPTP-A-SET-TRI65-Tなど、蓄電池と組み合わせて使うトライブリッド型の型式も掲載されています。併用構成でもV2H側の補助は使えるということです。機器選びは「V2H機器の比較」も参考にしてください。
まとめ
- EVを持っているか、急速充電口のある対応車種を買う予定があるならV2H。EVがないなら蓄電池 ── V2Hは対応車種一覧に載っていない車では使えない
- EVの総電力量は全部使えるわけではない ── 放電下限が車種ごとに設定され(日産リーフ・サクラ・アリアは約10%)、メーカーも「総電力量は実使用可能容量とは異なる」と明記
- 2026年8月29日時点で、国の補助は蓄電池もV2Hも受付終了(V2Hは当初令和8年9月30日17時までの予定が、予算超過で2026年8月27日到着分をもって終了。次回公募は未公表)
- 価格は希望小売価格ではなく「万円/kWh」で比べる ── 国の制度が置いた令和7年度の蓄電池の目標価格は工事費込み12.5万円/kWh(税抜)