日産リーフをV2Hで使うかどうかは、「どの年式のリーフか」と「機器代+工事費に補助金がいくら乗るか」でほぼ決まります。 車両側の総電力量は現行モデルでB5が55kWh、B7が78kWh。ニチコンが挙げる家庭用蓄電システムの容量帯(5kWh〜19.9kWh)より大きく、停電対策としての伸びしろはあります。ただしV2Hは車両とは別に、機器の購入と設置工事が必要です。
【2026年8月29日時点】 国のV2H充放電設備の補助金(令和7年度補正予算)の交付申請期間は、当初は令和8年7月17日(金)〜令和8年9月30日(水)17時でした。しかし2026年8月28日到着分で予算額を超過したため、センターは交付規程第21条にもとづき申請期間を短縮し、2026年8月27日(木)中にセンターへ到着した交付申請をもって受付を終了しました。8月28日(金)以降の到着分は無効で、次回公募(令和8年度予算等)は未公表です。出典: 次世代自動車振興センター 受付終了のお知らせ(2026年8月28日・PDF)、同「V2H充放電設備の導入補助金」、応募要領(PDF)
この記事でわかること(数値はすべてメーカー公式・公的機関の公表値です)
- リーフのどの年式がV2H機器の対応表に載っているか
- 現行リーフの容量と、停電時に家へ回せる実際の量
- V2H機器のメーカー希望小売価格と工事費の考え方
- 2026年8月時点の補助金の受付状況と、上限額・交付条件
- 契約前に確認したい5つのポイント
リーフを買っただけではV2Hはできない
日産の公式カタログページは、V2Hについて「V2H(双方向充電器)(別売)をつなげば、日産リーフの電気を家へ送ることが可能です」とし、注記で「V2Hを行う場合には、日産リーフの他に別途V2H機器(別売)が必要です」と明記しています(日産「リーフ 蓄電池利用」)。車両価格とは別に、機器代と設置工事費がかかる前提で考えてください。
混同しやすいのが**V2L(外部給電)**です。リーフにはAC外部給電コネクターが標準装備され、車内には100V AC電源(1500W)が2個メーカーオプションで設定されています。日産は「AC外部給電と車内給電を合わせれば、最大3000Wまで給電可能」と説明しています。これは車のそばで家電を使う機能で、分電盤を経由して家全体へ電気を送るV2Hとは別物です。V2Hの仕組みそのものは「V2Hとは何か」で整理しています。
リーフのどの年式がV2Hに対応しているか
V2H機器メーカーの対応車種表が一次情報になります。ニチコンの現行機「EVパワー・ステーション VSG3シリーズ」の対応車種表に掲載されているリーフは次のとおりです。
| 年式 | 型式 | 電池容量 | 充電上限 | 放電下限 |
|---|---|---|---|---|
| 2013〜2015年式 | ZAA-AZE0 | 24kWh | 100%未満 | 約10% |
| 2016〜2017年式 | ZAA-AZE0 | 24kWh/30kWh | 100%未満 | 約10% |
| 2018〜2021年式 | ZAA-ZE1 | 40kWh/62kWh | 100%未満 | 約10% |
| 2022〜2025年式 | ZAA-ZE1 | 40kWh/60kWh | 100%未満 | 約10% |
| 2025年式〜 | ZAA-ZE2 | 55kWh/78kWh | 100%未満 | 約10% |
出典: ニチコン「EVパワー・ステーション VSG3シリーズ 対応車種」
ここで押さえておきたいのが2点あります。
ひとつは、2010〜2012年式(初代の前期型)はこの表に載っていないこと。「初代から全モデル対応」と説明されることがありますが、現行機の対応表に記載があるのは2013年式以降です。
もうひとつは注記です。ニチコンは「初期型のリーフでは、車両のプログラム更新が必要な車両もあります。詳しくは車両販売店にご確認ください」「上記プログラム更新前にEVパワー・ステーションで充電すると、エラー発生する場合もあります」としています。なお旧世代のVCGシリーズの対応車種表では、リーフの年式欄は「全年式」と書かれており、注記は「日産自動車株式会社の放電非対応EVは本システムを使用できません」です(ニチコン「EVパワー・ステーション VCGシリーズ 対応車種」)。世代によって表記が違うので、自分が買う機種の対応表を見てください。
中古リーフをV2H前提で買うなら、契約前に車台番号を控えて、日産販売会社とV2H機器メーカーの両方に対応可否を確認してください。ここを飛ばすと、機器を買ってから使えないという事態が起こり得ます。
現行リーフの容量と、停電時に家へ回せる量
日産の諸元表では、総電力量はB7が78kWh、B5が55kWhです。一充電走行距離(WLTCモード・国土交通省審査値)はB5 Sが521km、B5 XとB5 Gが469km、B7 Xが702km、B7 Gが685km(日産 主要装備一覧/諸元表 PDF)。日産は「交流電力量消費率および一充電走行距離は定められた試験条件での値です」とし、使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)、整備状況に応じて値は異なると注記しています。冬場に航続距離が落ちるのは、この注記の範囲内の話です。
では停電時に何日もつのか。前提を開示した単純計算をしてみます。
- 世帯当たりの年間電気使用量は3,911kWh(環境省・令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 確報値、全国平均。2025年6月25日公表)。1日あたり約10.7kWh
- 機器側の放電下限は約10%なので、55kWhのうち使えるのは約49.5kWh
- ニチコンが自社の試算条件で置いている**AC↔DC変換効率85%**を掛けると約42kWh
割り算すると約4日分。78kWhのB7なら約60kWhで、約5〜6日分です。ただしこれは平均的な使用量が続いた場合の機械的な計算で、実際は次の要素で上下します。
- 自立出力は6kVA。同時に使える電力に上限があります(ニチコンVSG3は全負荷200V対応で、200VのエアコンやIH調理器も使用可と説明)
- 充放電時はEV側でも数百W(ニチコンの試算条件では300W)を消費します
- 翌日の移動に使う分を残せば、その分は家に回せません
- ニチコンは対応車種表で「総電力量はEVパワー・ステーション接続時の実使用可能容量とは異なります」とし、充電上限も100%未満としています。55kWh・78kWhは満充電から使い切る前提の上限値で、実際はこれより短くなります
出典: 環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査」、令和5年度 結果について(確報値)PDF、ニチコン VSG3シリーズ
定置型の家庭用蓄電池とどちらを選ぶかは「EVのバッテリーとV2H、家庭用蓄電池の違い」で比較しています。
費用:機器代は現行機で128万円から
ニチコンの現行機VSG3シリーズのメーカー希望小売価格は、自動切替開閉器付き標準モデルで1,280,000円(税抜)、重塩害モデル(VSG3-666CN7HS、VSG3-666CN7HB)で1,400,000円(税抜)です。同社は「実際のお取引価格は、販売店にご確認ください。別途、工事費が必要です」としています。
一方、旧VCGシリーズ(生産終了品)の希望小売価格(税抜)は次のとおりでした。
| 型番 | モデル | 保証年数 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|---|
| VCG-663CN3 | スタンダード | 2年 | 498,000円 |
| VCG-663CN7 | スタンダード | 2年 | 548,000円 |
| VCG-666CN7 | プレミアム | 5年 | 898,000円 |
出典: ニチコン「EVパワー・ステーション VCGシリーズ 製品仕様」
つまり、ネット上でよく見かける「V2Hは50万円台から」という相場観は旧モデルの価格です。現行機で見積もると金額感が変わります。保証もモデルで差があり、VCGシリーズは型番により2年・5年。VSG3についてニチコンは「安心の長期保証」とし、適用には「事前確認書」「設置完了報告書」の提出が必要と注記しています。年数は保証書と販売店で確認し、価格だけでなく保証条件を並べて比較してください。機種ごとの違いは「V2H機器の比較」にまとめています。
工事費は現場条件で変わるため一律の相場は示せませんが、後述する補助金の工事項目別上限(個人宅で1基あたり合計550,000円)が、審査上どこまでが対象とみなされるかの目安になります。
2026年8月時点の補助金
国の補助は「令和7年度補正予算 V2H充放電設備の導入補助金」(次世代自動車振興センター)です。この制度は2026年8月28日到着分で予算額を超過したため、交付規程第21条にもとづく申請期間の短縮により、2026年8月27日(木)中にセンターへ到着した交付申請をもって受付を終了しました(8月28日(金)以降の到着分は無効。次回公募は2026年8月29日時点で未公表。出典: 次世代自動車振興センター 受付終了のお知らせ(2026年8月28日・PDF))。以下は、すでに交付決定を受けている場合と次回公募に備える場合の参考として、制度の中身を整理したものです。目的は「災害時に、電気自動車等の外部給電機能の活用を促進することによるレジリエンスの向上を図ること」と定められています。
設備費は、購入費(税抜)×補助率1/2以内と、型式ごとにセンターが定める上限額の低いほう。型式別上限(別表1、更新日 令和8年7月17日)の例は次のとおりです。
| メーカー | 型式 | 充電出力/放電出力 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| ニチコン | VSG3-666CN7HS | 6kW/5.9kW | 700,000円 |
| ニチコン | VSG3-666CN7FS・FB | 5.9kW/5.9kW | 660,000円 |
| ニチコン | VSG3-666CN7AS・AB | 6kW/5.9kW | 640,000円 |
| ニチコン | VSG3-666CN7ES・EB | 5.9kW/5.9kW | 600,000円 |
| デンソー | DNEVC-D6075-2 | 6kW/6kW | 550,000円 |
設置工事費は、個人宅(公共施設・災害拠点以外)の場合、基礎工事35,000円、据付工事80,000円、本体搬入費15,000円、電気関連工事300,000円、諸費用120,000円が項目別の上限で、1基設置の場合の交付上限は550,000円です。設備費と違い、工事費に1/2の補助率はかかりません。交付規程別表1の補助率は設備の購入費が「1/2以内」、設置工事費は「定額(1/1以内)」で、項目別上限と550,000円の枠内で審査された額が交付されます。
見落としやすい交付条件が5つあります。
- V2H機器の発注と工事着工は、補助金交付決定日以降であること。先に発注すると対象外になります
- 設備は設置完了日から5年間の保有・運用(保有義務期間)が求められます
- 設置情報を国・地方公共団体へ提供することへの了承と、災害時に要請があれば可能な限り協力することが交付条件です
- 個人宅に設置できるのは1基まで。さらに、設置場所を使用の本拠の位置とする電気自動車等があること(購入の発注が済んでいれば、実績報告で報告する形でも可)
- 実績報告の提出期限は令和9年1月29日(金)
出典: 補助対象V2H充放電設備一覧(型式ごとの補助金交付上限額)PDF、応募要領 PDF
なお、定置型の蓄電池側は状況が逆です。国の「令和7年度補正 DRリソース導入のための家庭用蓄電システム等導入支援事業」(1申請あたり上限60万円)は、2026年5月29日に予算到達で公募終了し、次回は未公表です。自治体の助成は続いており、東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限が120万円/戸。詳しくは「国の蓄電池補助金の終了と次回」と「V2H補助金の申請」を参照してください。V2H向けの上乗せ助成を持つ自治体もあるため、お住まいの自治体の公式ページも確認しましょう。
電気代はどこまで変わるか
先に結論を書くと、電気代の削減額だけで機器代を回収する前提は置かないほうがよいです。前提を開示して計算してみます。
太陽光発電がある家庭の場合、2026年度の住宅用FIT(10kW未満)は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh(資源エネルギー庁「買取価格・期間等」)。買電側の目安単価は31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会「電力料金 目安単価」、令和4年7月22日改定、税込)です。
- 余剰1kWhを売る → 8.3円(5〜10年目の場合)
- 余剰1kWhをリーフに貯めて夜に使う → 変換効率85%の往復を見込むと取り出せるのは約0.72kWh。31円で評価すると約22円
差は1kWhあたり約14円。1日3kWhをシフトできれば月あたり1,300円前後という規模感です。ただしこれは売電単価が8.3円まで落ちる5〜10年目の話で、FIT1〜4年目は売電24円のほうが自家消費の約22円より高く、ためて使うと逆に損になります。太陽光がない家庭で夜間電力を昼にシフトする場合は、電力会社・プランごとの時間帯別単価の差が効くため、契約中のプランの単価を電力会社の公式ページで確認して同じ計算をしてください。
これは前提を置いた単純計算で、効果を保証するものではありません。 実際のV2Hの価値は、電気代の圧縮よりも「停電時に家全体へ200Vで給電できる」「移動手段と非常用電源を1台で兼ねられる」といった点に寄っています。
契約前に確認したい5つのこと
- 年式とプログラム更新の要否。特に中古リーフ。車台番号ベースで日産販売会社と機器メーカーに確認する
- 分電盤と自立出力。ニチコンVSG3は全負荷200V対応で自立出力6kVA、自動切替開閉器を採用して一般分電盤に設置できるとしていますが、外部太陽光発電の併設時など配線によっては別途分電盤ボックスが必要になると注記されています
- 補助金の順序。交付決定前に発注・着工すると対象外です。令和7年度補正分は当初の締切(令和8年9月30日17時)を待たず2026年8月27日到着分で受付が終了したため、次回公募を待つ場合も工期と受付締切の両にらみが要ります
- 保証。日産のバッテリー容量保証は新車登録から8年間または160,000kmのどちらか早い方までで、容量計が9セグメントを割り込んだ場合の修理・部品交換が対象(日産「航続距離と充電」)。V2H機器側の保証はモデルによって差があります
- 走行と給電の両立。放電下限は約10%に設定されていますが、翌日の移動に必要な残量は自分で確保する必要があります
まとめ
- 現行リーフの総電力量はB5が55kWh、B7が78kWh。放電下限約10%と変換効率85%で機械的に計算すると、家へ回せるのは55kWhで約42kWh。環境省統計の平均的な使用量なら約4日分
- V2H機器は別売。ニチコンの現行機VSG3はメーカー希望小売価格1,280,000円(税抜、工事費別)で、旧モデルの「50万円台」とは水準が違う
- 国のV2H補助金は当初2026年9月30日17時までの受付予定だったが、予算超過により2026年8月27日到着分をもって受付終了(次回公募は未公表)。設備費は購入費の1/2以内かつ型式別上限、個人宅の工事費上限は1基550,000円、発注は交付決定日以降という内容だった
- 対応年式は機器メーカーの対応車種表が一次情報。2010〜2012年式は現行機の表に掲載がなく、初期型はプログラム更新が必要な場合がある