V2Hの蓄電池として見るならBEVです。そしてPHEVは「ガソリンで発電しながら家に給電し続ける」ことができません。 V2H機器につないでいる間はエンジンによる発電が止まる仕様で、これは三菱自動車もV2H機器メーカーのニチコンも公式に明記している内容です。ネット上でよく見かける「PHEVならガソリンがある限り家に電気を送れる」という説明は、この一点で不正確です。
【2026年8月29日時点】 令和7年度補正のV2H充放電設備・外部給電器補助金は、2026年8月27日中に到着した交付申請をもって受付終了となりました(8月28日以降に到着した申請は無効)。車両側の令和7年度補正CEV補助金(車両)は申請受付中です。出典: 次世代自動車振興センター「交付申請受付終了のお知らせ」(PDF)、CEV補助金(車両)
この記事でわかること(数値はメーカー公式・公的機関の公表値のみを使っています)
- V2H接続中にPHEVがエンジン発電できない仕様と、その回避手順
- アウトランダーPHEVと日産リーフ・サクラの公式諸元の差
- 停電時にV2H機器から取り出せる出力と対応範囲
- 2026年8月時点の補助金の受付状況
- PHEVとBEV、どちらを選ぶかの判断軸
まず押さえる:公式諸元で見たPHEVとBEVの差
カタログ値を並べると、V2Hで使える電気の量の差がはっきりします。
| 項目 | 三菱アウトランダーPHEV | 日産リーフ | 日産サクラ |
|---|---|---|---|
| 駆動用バッテリー総電力量 | 22.7kWh | B5:55kWh / B7:78kWh | 20kWh |
| 走行距離(WLTCモード) | EV走行換算距離102km(Mグレードは106km) | B5:469〜521km / B7:685〜702km | 180km |
| ガソリンタンク | 53L | なし | なし |
| エンジン | 4B12(総排気量2.359L) | なし | なし |
出典: 三菱自動車 アウトランダーPHEV 主要諸元(PDF)、日産リーフ 諸元表(PDF)、日産サクラ 諸元表(PDF)
PHEVの22.7kWhは、軽BEVである日産サクラの20kWhとほぼ同じ水準です。「PHEVの電池は小さい」というより、「PHEVの電池は軽BEV並み」と捉えるのが実態に近いでしょう。対してリーフのB7グレードは78kWhで、アウトランダーPHEVの約3.4倍です。
なお総電力量は電池が持つエネルギー量の表示値であり、実際にV2Hで家庭に取り出せる量とは一致しません。放電の下限設定や、V2H機器での直流と交流の変換ロスが差し引かれます。
最大の誤解:V2H接続中、PHEVはエンジンで発電できない
三菱自動車はアウトランダーPHEVのV2H説明に、次の注記を付けています。
V2H機器に接続している場合、エンジン始動による発電はできません。エンジンでの発電を行う場合は、V2H機器との接続を終了してください。
V2H機器の側も同じことを書いています。ニチコンのEVパワー・ステーション対応車種一覧では、三菱アウトランダーPHEV・エクリプスクロスPHEVに「エンジンがかかった状態もしくはイグニッションONの状態では、EVパワー・ステーションによる充放電はできません」との注記があります。トヨタのPHEV各車には「PHEVはエンジンがかかった状態では、EVパワー・ステーションによる充放電はできません。(停電時のHV給電モード時を除く)」と書かれています(ニチコン VSG3シリーズ 対応車種一覧)。
つまりPHEVをV2Hで使う場合、多くの車種では「エンジンで発電しながら同時に家へ送る」という運転はできません。三菱が公表している「ガソリン満タンの状態であればアウトランダーPHEVは最大約11日間家庭に電力を供給することも可能」という数字も、連続給電の話ではありません。同社は前提として、一般家庭での一日当たりの使用電力量を約10kWh/日として算出し、V2H機器等の変換効率は含まないと注記しています。実際の運用は、電池を使い切ったらV2Hの接続を解除してエンジンで充電し、また接続し直す、という往復になります。
停車したままエンジンで発電する行為そのものにも注意が要ります。三菱は車内のアクセサリーコンセント使用時に自動でエンジンが始動する場合について、「車両の停止中にエンジンが始動した場合、アイドリングストップに関する条例に抵触することがありますので、十分にご注意ください」と促しています。長期停電の備えとしてPHEVを検討するなら、この手間と地域のルールを織り込んでおきましょう。
停電時に使える電気は、車ではなくV2H機器が決める
「何が使えるか」を決めているのは車の電池ではなく、壁側のV2H機器です。ニチコンのEVパワー・ステーションVSG3シリーズの場合、停電時の自立出力は6kVAで全負荷200Vに対応しており、同社は200VのエアコンやIH調理器も使用できると説明しています。停電を検知すると自動で放電を始めるため、暗い中で操作する必要はありません。充電側は最大6kW未満で、200V/3kWの普通充電に対して最大約2倍の速さとされています(ニチコン EVパワー・ステーション VSG3シリーズ)。
ニチコンは、家庭用蓄電システムの容量が5kWh〜19.9kWhであるのに対しEVのバッテリーは車種によって100kWh前後まであると説明しています。据置型とV2Hのどちらを選ぶかはEV蓄電池とV2Hの違いも参考にしてください。
三菱が使う「一日約10kWh」の前提をそのまま当てはめると、変換ロスを無視した単純計算で22.7kWhのアウトランダーPHEVは約2.3日分、78kWhのリーフB7は約7.8日分です。ただしニチコンは自社の試算条件でAC↔DCの変換効率を85%と置いています。これを掛けると約1.9日分と約6.6日分まで下がります。前提を固定した機械的な割り算であり、実際は放電の下限設定の分だけさらに短くなります。
対応車種は、V2H機器メーカーの一覧で確認する
「V2Hに対応しているか」を車のカタログだけで判断するのは避けたほうが安全です。V2H機器メーカーが公表する対応車種一覧が、そのまま可否の一次情報になります。
ニチコンのVSG3シリーズの対応車種一覧には、日産(リーフ、アリア、サクラなど)、三菱(アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEV、eKクロスEVなど)、トヨタ(bZ4X、プリウスPHV、RAV4のPHEVグレードなど)、ホンダ、マツダ、スバル、BYD、Hyundai、KIA、ダイハツ、メルセデス・ベンツの各車が並んでいます。ただし掲載時点はメーカーごとに異なり、同ページでは日産が2026年3月現在、トヨタが2026年6月現在、三菱が2025年8月現在と明示されています。
同じ車名でもグレードやモデルイヤーで扱いが変わることがあるため、契約前に最新の一覧と販売店の両方で確認してください。V2H機器そのものの選び方はV2H機器の比較、仕組みの基本はV2Hとは何かにまとめています。
費用と補助金:2026年8月時点の現在地
ニチコンのVSG3シリーズのメーカー希望小売価格は、自動切替開閉器付き標準モデルが1,280,000円(税抜)、重塩害モデルが1,400,000円(税別)で、いずれも工事費は別途です。保証期間は10年とされています。実際の取引価格は販売店により異なるため、見積もりで確認してください。太陽光・蓄電池と組み合わせた場合の費用の考え方は太陽光・蓄電池・V2Hの3点セットにまとめています。
補助金の状況は2026年8月時点で次のとおりです。
- V2H充放電設備・外部給電器補助金(令和7年度補正): 2026年8月27日中に到着した交付申請をもって受付終了。8月28日以降に到着した申請は無効です(次世代自動車振興センター「交付申請受付終了のお知らせ」(PDF))
- CEV補助金(車両・令和7年度補正): 申請受付中。補助を受けた車両には原則として4年または3年の保有義務があります。補助額は車種ごとに異なるため、公式の補助対象車両一覧で確認してください(次世代自動車振興センター)
- 家庭用蓄電池のDR補助金(令和7年度補正): 1申請あたり上限60万円でしたが、2026年5月29日に交付申請額が予算に達し公募終了。次回は公表されていません(SII)
- 東京都の蓄電池助成: 令和8年度の家庭における蓄電池導入促進事業は蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合の上限は120万円/戸(東京都)
自治体独自のV2H助成は続いている地域があります。制度ごとの探し方はEV・V2Hの補助金ガイドにまとめました。
日常の電気代で見ると
V2Hの経済性は、安い電気を車に貯めて高い時間帯に使う差額で決まります。ニチコンが自社シミュレーションで置く前提は買電単価31円/kWh、売電単価8.5円/kWh。この31円は、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める電気料金の目安単価31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定)と同じ値です(全国家庭電気製品公正取引協議会)。
太陽光を併設している家庭では、2026年度のFIT買取価格が1〜4年目24円/kWh、5〜10年目8.3円/kWhと定められており、5年目以降は売るより車に貯めて自宅で使うほうが単価上は有利です(資源エネルギー庁)。蓄電容量が大きいBEVのほうが吸収できる余剰も大きくなります。
ただし容量が大きいほど得だとは限りません。車を日中に使う家庭では、太陽光が発電している時間帯に車が家にないため、容量を活かせない時間が生まれます。在宅時間と車の使い方をセットで考えてください。
PHEVとBEV、どちらを選ぶか
判断軸は3つに絞れます。
1. V2Hを主目的にするか。 V2Hで家庭に供給できる電気の量を重視するなら、公式諸元の差がそのまま効いてBEVが有利です。
2. 車としての航続と非常用コンセントを重視するか。 PHEVは充電できない場所でもガソリンで走れます。また車内のAC100V最大1500Wコンセント(V2L)を使う場合は、バッテリー残量が減ると自動的にエンジンが始動して充電するため、V2Hを介さない小規模な給電では長く粘れます。ここはV2Hとは別の機能です。
3. 停電時の操作に手間をかけられるか。 PHEVでガソリンを電力に変えて家全体に回すには、V2Hの接続解除と再接続を繰り返す必要があります。この運用を許容できるかが分かれ目です。
なお、どちらを選んでもV2H機器の設置には電源工事と設置スペースが要ります。分電盤と駐車位置の関係で工事費が変わるため、車種を決める前に施工事業者に現地を見てもらいましょう。分電盤まわりで何が起きるかは200V充電コンセント工事の要点が参考になります。
まとめ
- V2Hの蓄電容量ではBEVが有利。 アウトランダーPHEVの総電力量22.7kWhに対し、日産リーフはB5 55kWh・B7 78kWh。PHEVの電池は軽BEVのサクラ(20kWh)とほぼ同じ水準です
- PHEVはV2H接続中にエンジンで発電できない。 三菱自動車もニチコンも公式に明記しています。「ガソリン満タンで最大約11日」は、接続解除とエンジン充電を挟む運用と一日約10kWhの前提に基づく三菱の試算値です
- 2026年8月時点で国のV2H補助金は新規申請できない。 令和7年度補正分は2026年8月27日到着分をもって交付申請の受付を終了しました(8月28日付で公表)。車両側のCEV補助金は受付中です
- 停電時に何が使えるかは車ではなくV2H機器の仕様で決まる。 ニチコンVSG3シリーズは自立出力6kVA・全負荷200V対応で、価格は標準モデル1,280,000円(税抜)+工事費です