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モダンな戸建住宅

FIT→FIP移行の影響は住宅用にどこまで及ぶ?2026年度の制度と売電単価を公式資料で確認

エネチョイス編集部

この記事の結論

FIT→FIP移行が住宅用太陽光(10kW未満)に直接及ぶことは、2026年8月時点ではありません。調達価格等算定委員会の「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」では、太陽光でFIP制度のみが認められる対象は2026年度・2027年度とも50kW以上と整理されており、住宅用は引き続きFIT制度、調達期間10年間です。家庭に実際に効いてくるのは制度名の変更ではなく単価の形で、2026年度の住宅用FITは運転開始から4年目まで24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhという階段型(初期投資支援スキーム)になっています。同じ委員会の資料では自家消費分の便益の想定値が27.45円/kWh、卒FIT後の買取メニューの平均が10.0円/kWhとされており、5年目以降は売電より自家消費の価値のほうが大きくなる構造です。

FIT→FIP移行の影響を一言でまとめると、2027年度までの制度上、住宅用太陽光(10kW未満)はFIPに移りません。 太陽光でFIP制度のみが認められる対象は2026年度・2027年度とも50kW以上で、家庭の屋根はその範囲に入っていないからです。

そのうえで、家計に効いてくる変化は制度名ではなく単価の形で起きています。 2026年度の住宅用FITは、運転開始から4年目まで24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhという階段型です。5年目からは、売るより自分で使うほうが価値が大きくなる水準に切り替わります。

【2026年8月25日時点】 2026年度以降の買取価格等は、2026年3月19日に経済産業省が設定を公表しています。太陽光でFIP制度のみが認められる対象は2026年度・2027年度とも50kW以上で、住宅用(10kW未満)は含まれません。出典: 経済産業省 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します資源エネルギー庁 買取価格・期間等(2026年度以降)

この記事でわかること

  • 住宅用太陽光がFIPの対象外である公式な根拠と、いつまでその整理が続くのか
  • FIP制度がFITと何が違うのか(プレミアム・参照価格・インバランス
  • 2026年度のFIT/FIP区分と価格を、資源エネルギー庁と経済産業省の公表値で確認
  • 住宅の家計に本当に効いてくる4つの変化(階段型価格・条件付き認定・2029年度の見直し・卒FIT単価)
  • 蓄電池を検討するときに使える公的な想定値(自家消費分の便益27.45円/kWhなど)

住宅用太陽光はFIPの対象外。2026年度もFITのまま

「FIPのみ」の線引きは50kW

FIT→FIP移行の話がどこまで自宅に及ぶかは、「FIP制度のみが認められる対象」がどこで線引きされているかで決まります。

調達価格等算定委員会の「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月5日)は、次のように整理しています。

昨年度の本委員会では、FIP認定の状況や、FIP制度を活用する発電事業者の契約先であるアグリゲーターの動向等を踏まえ、FIP制度のみ認められる対象については、事業の予見性に配慮し、2025年度は250kW以上とし、2026年度は50kW以上とした。(中略)2027年度についても、FIP制度のみ認められる対象を50kW以上とすることとした。 (出典: 調達価格等算定委員会 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(PDF)、配布元: 経済産業省

一般的な戸建て住宅の屋根に載る太陽光は10kW未満です。50kWという線からは大きく離れているため、2027年度までの整理を見るかぎり、住宅用がFIPに移る予定はありません

住宅用は「FIT・調達期間10年間」

資源エネルギー庁の買取価格表でも、10kW未満の調達期間は10年間と明記されています。全量ではなく、自分で使った後の余剰分が買取対象という点も変わっていません(出典: 資源エネルギー庁 FIT・FIP制度の概要)。

出力制御も、住宅用は当面対象外

制度変更とセットで不安を煽られやすいのが出力制御ですが、こちらも住宅用の扱いははっきりしています。資源エネルギー庁は「10kW未満の設備は当面の間、出力制御実施対象外です」としています。ただし複数太陽光発電設備設置事業に該当する場合は、10kW未満でもオンライン代理制御による出力制御の対象になり、運用開始時期はエリアごとに異なるとされています(出典: 資源エネルギー庁 なるほど!グリッド 出力制御について)。仕組みの全体像は太陽光の出力制御にまとめています。

FIP制度はFITと何が違うのか

住宅に直接は関係しないとはいえ、「なぜ国が市場統合を進めているのか」を知っておくと、この先の価格改定の向きが読めます。

資源エネルギー庁の解説によれば、FIP制度は2020年6月に導入が決まり、2022年4月からスタートしました。FITのように固定価格で買い取るのではなく、発電事業者が卸電力市場などで売った価格に、一定のプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みです。

  • 基準価格(FIP価格): 再エネ電気が効率的に供給される場合に必要な費用の見込み額をベースに、あらかじめ設定される価格
  • 参照価格: 市場取引などによって発電事業者が期待できる収入分。市場価格に連動し、1カ月単位で見直される
  • プレミアム: 基準価格と参照価格の差。参照価格の変動に応じて1カ月ごとに更新される

参照価格の内訳は「①卸電力市場の価格に連動して算定された価格+②非化石価値取引市場の価格に連動して算定された価格−③バランシングコスト」と説明されています。

FITとの実務上の大きな違いは、インバランスの負担です。FIPでは発電の「計画値」と「実績値」を一致させるバランシングが求められ、差が出た場合の費用は発電事業者が支払います。FITでは免除されていた負担で、その分がバランシングコストとしてプレミアムの一部に手当てされ、経過措置として2022年度の開始当初は1.0円/kWhが交付されました(出典: 資源エネルギー庁 再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート)。

同じ解説は、小規模な再エネ電源を束ねて蓄電池システムなどと組み合わせて需給管理を行い、市場取引を代行する「アグリゲーション・ビジネス」の発展に期待するとも述べています。ただしこれは発電事業者やアグリゲーターがバランシングを行うための蓄電池の話で、家庭用蓄電池を導入すべき根拠として書かれているわけではありません。

2026年度のFIT/FIP区分と価格を公式資料で確認する

2026年度の区分と価格は次のとおりです(太陽光)。金額はすべて1kWhあたりの調達価格または基準価格で、FIT制度なら調達価格、FIP制度(入札対象を除く)なら基準価格、入札対象区分なら上限価格を指します。

区分2026年度の価格調達期間/交付期間制度
住宅用(10kW未満)24円(〜4年)/ 8.3円(5〜10年)10年間FIT
事業用・屋根設置(10kW以上)19円(〜5年)/ 8.3円(6〜20年)20年間50kW未満はFIT選択可、50kW以上はFIPのみ
事業用・地上設置(10kW以上50kW未満)9.9円20年間FIT(自家消費型の地域活用要件あり)
事業用・地上設置(50kW以上・入札対象外)9.6円20年間FIP
事業用(250kW以上・屋根設置を除く)入札により決定(2026年度は4回、上限価格はいずれも9.6円)20年間FIP(入札)

出典: 資源エネルギー庁 買取価格・期間等(2026年度以降)経済産業省 2026年3月19日 プレスリリース

事業用側でいま一番大きな変更は、価格そのものより支援の打ち切りです。経済産業省は「2027年度以降は、事業用太陽光発電(地上設置)はFIT/FIP制度における支援の対象外となります」と明記しています。一方で、既にFIT認定を受けた地上設置案件については、支援対象外となる2027年度以降もFIP移行を認めるとされました(出典: 経済産業省 2026年3月19日 プレスリリース調達価格等算定委員会 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(PDF))。FIT→FIP移行は、いま現実には「事業用の受け皿」として機能しているわけです。

住宅用と事業用の考え方の違いは住宅用と産業用太陽光の違いでも整理しています。

住宅の家計に効いてくる4つの変化

1. 5年目から8.3円に落ちる「階段型」

2025年度下半期の認定分から、屋根設置太陽光には初期投資支援スキームが導入されました。住宅用は24円/kWh(〜4年)と8.3円/kWh(5〜10年)、事業用の屋根設置は19円/kWh(〜5年)と8.3円/kWh(6〜20年)です。狙いは「発電事業者の早期の投資回収を支援」することとされています(出典: 資源エネルギー庁 屋根設置太陽光発電の初期投資支援スキーム(PDF))。

前半4年で厚く受け取り、5年目からは大きく下がる設計です。「10年間ずっと24円」ではないので、回収シミュレーションを見せられたら、前半と後半で単価が分かれているかを確認してください。

2. 途中でFITをやめられない「条件付き認定」

同じリーフレットのQ&Aは、単価が下がる時期にFITをやめて自家消費+余剰売電に切り替えられるかという問いに、次のように答えています。

原則として、再エネ特措法に基づく認定を受けた事業は、認定発電設備を廃止(撤去及び処分)しない限り、FIT/FIP制度から離脱することは認められていません。(中略)「階段型の価格設定」による初期投資支援スキームの適用を受ける案件は、調達期間中に特定契約によらない売電を行うことができない旨の条件付き認定を行うこととします。

つまり、5年目以降に「もっと高く買う会社に乗り換える」という出口は制度上ふさがれています。なお事業用については、調達期間の途中でFITをやめてFIPに転じること(FIP転)は可能と明記されています。

3. 2029年度に「支援期間の短縮」が始まる方針

将来の話として、公的な資料に書かれている範囲で唯一はっきりしているのがこれです。調達価格等算定委員会は、初期投資支援スキームについて「卒FIT後のビジネスモデルが成熟するまでの猶予期間として更に2年程度の準備期間を設けることとし、2029年度に支援期間の短縮の適用を開始することを基本とすることとした」と整理しました。あわせて2026年度からモニタリング体制を構築するとしています。

「支援期間の短縮」とは、FITで買い取る期間を10年より短くし、その後は小売電気事業者の買取メニューに移ってもらうという考え方です。住宅用がFIPに移るという話ではありませんが、買取期間そのものが動く可能性は公式資料に書かれているということです。

4. 卒FIT後の相場は平均10.0円/kWh

同委員会は、卒FIT後の売電価格について、2025年12月時点で確認できた小売電気事業者の買取メニューの平均値が10.0円/kWh、中央値が9.5円/kWhだったとしています。そのうえで「10円/kWh水準以上のメニューは、当該小売電気事業者による電気供給とのセット販売や、蓄電池併設等の条件付きであることが比較的多いため、状況を注視することが重要である」とも書かれています。

高めの単価には条件が付いているのが実態です。卒FIT時の選択肢はFIT期間終了後の進め方にまとめています。

売電と自家消費、どちらが有利かを公的な想定値で見る

27.45円と8.3円と10.0円

調達価格等算定委員会は、2026年度の自家消費分の便益について27.45円/kWhと記載しています。大手電力の直近10年間(2014〜2023年度)の家庭用電気料金単価に消費税率10%を加味した値です。同じ考え方で2015〜2024年度の平均を取ると27.86円/kWhになるとも書かれており、想定値は据え置かれました。なお同じ資料の結論部分(別紙)の一覧表では、2026年度の自家消費分の便益は前年度想定値の据え置き(27.31円/kWh)と示されています。どちらを取っても27円台で、以下の比較の結論は変わりません。

同じ資料から、住宅の太陽光まわりの数字を並べるとこうなります。

項目公的な想定値・実測値
自家消費分の便益(2026年度想定値)27.45円/kWh
FIT単価(2026年度・5〜10年目)8.3円/kWh
卒FIT後の買取メニュー(2025年12月時点)平均10.0円/kWh・中央値9.5円/kWh
余剰売電比率(2025年1〜8月の実績平均)64.8%(中央値60.7%)・想定値70.0%
設備利用率(2025年1〜8月の実績平均)14.1%・想定値13.7%
システム費用(2026年度想定値)25.5万円/kW

出典: 調達価格等算定委員会 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(PDF)

1kWhを売れば8.3円、同じ1kWhを自宅で使えば27.45円相当。この差が、FIT→FIP移行という制度論よりもはるかに大きく家計に効きます。 発電したうちの約65%を売電に回している現状(余剰売電比率の実績平均64.8%)を、蓄電池で夜間側に振り替えられれば、その分だけ差額を取りにいけるという理屈です。

ただし、蓄電池がいくらの投資でどれだけ自家消費を増やすかは、容量・生活パターン・電気料金プランで変わります。一律の目安を当てはめるのは無理があるので、自宅の使用実績を入れた試算を出してもらいましょう。売電と自家消費の比較の考え方は自家消費とFITの比較で解説しています。

維持費も織り込む

同委員会が太陽光発電協会に行ったヒアリングでは、5kWの設備を想定した場合、発電量維持や安全性の確保の観点から3〜5年ごとに1回程度の定期点検が推奨され、1回あたりの点検費用の相場は約3.8万円程度、パワーコンディショナは20年間で一度は交換され38.4万円程度が一般的な相場とされています。回収年数の計算からこれらを外すと、実態より短く出ます。

補助金は「国が使えない期間」

蓄電池側のお金の状況も確認しておきます。国のDR家庭用蓄電池事業(令和7年度補正・上限60万円/申請)は2026年3月24日に公募が始まり、2026年5月29日に交付申請額の合計が予算に達したことを確認して公募終了しています。次回公募は未公表です(出典: SII 令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業)。詳しくは国のDR補助金の終了と次回の見通しにまとめています。

自治体の制度は動いています。東京都の令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業は蓄電容量10万円/kWh、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸で、2026年10月1日以降に事前申込を行う場合はSIIの令和8年度登録済製品一覧に登録された機器のみが助成対象になります(工事完了時期による例外あり)(出典: 東京都 家庭における蓄電池導入促進事業)。

なお、2026年度の再エネ賦課金単価は1kWhあたり4.18円で、1カ月の電力使用量が400kWhの需要家モデルでは月額1,672円・年額20,064円、適用は2026年5月検針分から2027年4月検針分までとされています(出典: 経済産業省 2026年3月19日 プレスリリース)。制度の負担側もこの水準で動いている、という前提で読んでください。

「制度が変わるから今すぐ」に注意

制度改定は勧誘のフックに使われやすいテーマです。国民生活センターは2021年6月3日に家庭用蓄電池の勧誘トラブルについて注意喚起しており、PIO-NETに寄せられた家庭用蓄電池の相談件数は2016年度325件、2017年度553件、2018年度926件、2019年度1,302件、2020年度1,314件と増加していました。その場で契約せず、複数社から見積もりを取って比較検討することが呼びかけられています(出典: 国民生活センター)。

この記事で挙げた制度の内容は、すべて資源エネルギー庁・経済産業省の公開資料で確認できます。説明が公式資料と食い違っていたら、その場で出典を確認するのがいちばん確実な防御です。

まとめ

  • 太陽光でFIP制度のみが認められるのは2026年度・2027年度とも50kW以上。住宅用(10kW未満)はFIT制度のままで、調達期間は10年間
  • 家計に効くのは制度名ではなく単価。2026年度の住宅用は**24円/kWh(〜4年)と8.3円/kWh(5〜10年)**の階段型で、階段型の適用案件は調達期間中に特定契約によらない売電ができない条件付き認定になる
  • 将来の変更として公式資料に書かれているのは**「2029年度に支援期間の短縮の適用を開始することを基本とする」**という方針。買取期間そのものが動く可能性はここにある
  • 自家消費分の便益の想定値27.45円/kWhに対し、5年目以降のFIT単価は8.3円/kWh、卒FIT後の買取メニューは平均10.0円/kWh。差を取りにいく手段が蓄電池だが、費用対効果は自宅の使用実績を入れた試算で確認する

よくある質問

Q.住宅用の太陽光もFIPに移行しますか?

A.2026年8月時点では移行しません。調達価格等算定委員会の「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月5日)では、太陽光でFIP制度のみが認められる対象は2025年度が250kW以上、2026年度が50kW以上とされ、2027年度についても50kW以上に据え置くと整理されています。住宅用(10kW未満)はこの範囲に入っていません。ただし同じ資料では、住宅用の初期投資支援スキームについて「2029年度に支援期間の短縮の適用を開始することを基本とする」とも書かれており、買取期間そのものを見直す議論は進んでいます。

Q.FIT→FIP移行で住宅の売電収入は減りますか?

A.FIPへの移行が原因で減るわけではありません。住宅用は今もFIT制度です。ただし2025年度下半期以降に認定を受けた住宅用は「初期投資支援スキーム」が適用され、運転開始から4年目までが24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhという階段型の価格になります。前半に多く受け取り、後半は下がる設計なので、5年目以降は売電収入が大きく下がる前提で試算しておく必要があります。

Q.FIT期間の途中でFITをやめて、高く買ってくれる会社に売ることはできますか?

A.できません。資源エネルギー庁のリーフレットは「原則として、再エネ特措法に基づく認定を受けた事業は、認定発電設備を廃止(撤去及び処分)しない限り、FIT/FIP制度から離脱することは認められていません」と明記しています。さらに階段型の価格設定による初期投資支援スキームの適用を受ける案件については、「調達期間中に特定契約によらない売電を行うことができない旨の条件付き認定を行う」とされています。なお事業用太陽光については、調達期間の途中でFITをやめてFIPに転じること(FIP転)は可能とされています。

Q.住宅用の太陽光も出力制御の対象になりますか?

A.資源エネルギー庁の「なるほど!グリッド」は「10kW未満の設備は当面の間、出力制御実施対象外です」としています。ただし「複数太陽光発電設備設置事業(第一種複数太陽光発電設備設置事業または第二種複数太陽光発電設備設置事業を含む。)の場合は、10kW未満であっても『オンライン代理制御』による出力制御の実施対象となります」という例外があり、運用開始時期はエリアごとに異なるとされています。

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